メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
俺はレガリス大聖堂の敷地内に飛び込んだ。
巨大建築物の足元に広がる広い庭園。
木や花が植えられていて、中央には共存神ルシファーの像があり。
そこの周囲にヒトがいる。
正確に言うと、レガリス大聖堂の側に。
……こっちで法の神、魔王アバドン、メタトロンとの戦いが繰り広げられているから。
傍に行きづらいだろうしな。
無理も無いと思う。
俺は走りながら、姿を変える。
今更かもしれないが、黒の怪盗服から白の怪盗服へ。
人々に呼び掛けるのに、これはまずいだろ。
どうみても悪党だし。
人々に駆け寄って、俺は
「ここにマリアさんはいないか!? 蜜蜂のささやき亭で働いている女の子の!」
声を張り上げる。
仮面を外し、素顔を晒しつつ。
「どうしても頼みたいことがある! レガリス大聖堂のバルコニーで、国王の勝利を祈って欲しい!」
声は抑えない。
それだと意味が無いからだ。
全て分かった上で無いと、意味が無いんだ。
女神の言った君臣一体の実現方法……
それは
危険を承知で、本来は守られるだけの民草が王のために一歩踏み出す。
それが出来るのであれば、君臣一体であろう、と。
なので
「無論危険だ。僕が全力で守るけど、あの邪神たちが全力で阻止してくるかもしれない!」
大きく身振りを交えながら、人々の注目を引くことを意識し
伝えたいことを全力で
「それでもやって欲しい!」
言い切った。
そして
「マリアさんが無理であるなら、誰か他のヒトでもいい! 誰でも良いんだ!」
一番の重要事項に繋げる。
「ユークロニア連合王国の普通の国民の身で、一歩前に出られる誰かが要るんだ!」
……俺はマリアを名指しした。
だからマリアがここで手を上げたとしても
それは圧力に負けての、泣く泣くの行動かもしれない。
だけど
マリア以外の誰かが手を上げたなら、それは違うだろ。
正真正銘、自分の意思だ。
君臣一体の実現に最も近くなるはず……
俺の声に、人々がざわつく
「オイ、だってよ」
「どうしよう……?」
「さっきまで、化け物に消化されそうになっていたのに……また死にそうになるのか?」
皆、青褪めていた。
嫌なのか。
……そりゃそうだろうな。
出来ればやりたく無いだろ。危険なことは。
仕方ないよな。
でも
そこでスッと手を上げて、前に出る人影があった。
それは……
「お兄ちゃん……いえ、陛下のためになるなら」
灰色の髪の、ローグ族とイシュキア族の混血の女の子。
マリアだった。
やっぱりこの子は手を上げてくれた……
この子は王室への敬愛の情が元々高いのが普段の言動で予想できたから、ここで来てくれると思ったんだ。
その顔は血の気が引いていたが、目には強い意思を感じる。
この子ならきっと……
俺はそこで君臣一体の実現を確信した。
だけど
そこでさらに
前に出る人影があった。
それはユージフ族で……
「私も行きます。ゴローさん」
俺のことを知っていた。
俺はユージフ族の顔の違いが良く分からない。
他の種族と違って、外見が違い過ぎる種族だから。
交流のあるハイザメ氏の場合、声で判別をつけているけど。
それ以外は全然だ。
この人の場合、女性だろうということくらいしか分からない。
だから
「ええと……」
僕のことを知ってるんですか?
そう訊こうとした。
だけど
「お忘れですか……私です」
苦笑交じりに
名乗る。
「オヴィです」
その一言で俺の記憶が蘇る。
真惺教に納得がいかず、俺が旧惺教の教えを守るグループを作ることを持ち掛けた、ユージフ族の女性……
あのときの……!
俺の表情から俺が気づいたことに気づいたのか
オヴィは笑った。
「……あのときはどうもです。おかげさまで、自分に嘘を吐いて生きなくてすみました」
俺が独立の話を持ち掛けたから、納得のいかない宗教を続けなくて済んだ。
そのことへの感謝の気持ち。
それをオヴィは忘れないでいてくれたのか。
そして
「あのときに陛下と王妃様から受けた恩を返させてください」
即位前のウイル国王と、ユーファジア第一王妃から受けた恩。
それも忘れてはいないんだな。
この人は……!
俺の胸が熱くなった。
「……コージュラ」
そして彼女は祈りを捧げた。
惺教特有の、独特の祈りの仕草で。