メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
そしてあの騒動から半年が経過した。
その間、特に何も不穏なことは起きなくて。
表面上は再び穏やかな国になった。
あれから。
真惺教の幹部の多くが失踪し。
その中には大教主も含まれていて。
……天照大神曰く、問題行動を起こしていた真惺教の幹部たちは法の神の配下の悪魔と成り代わられていて。
大教主マリードという男は、法の神が成り代わっていたか、その肉体に入り込んで操っていたのではないかという見立て。
実際、大教主マリードは真惺教の僧兵たち曰く「レガリス大聖堂に向かった」らしいし。
それがあの「魔王アバドンによるレガリス大聖堂の呑み込み」の指示のためだったとするなら。
辻褄は合うよな。
大教主とその下の幹部の大量失踪で真惺教は瓦解。
どうしようもなくなった。
なのでそこでギドが新しい大教主になり、新しい惺教を引っ張ることに。
無論真惺教ではなく、元の惺教だ。
……彼はちょっと嫌味な部分が無いわけじゃ無いけどさ。
正義感は確実に持ってる男ではあるし。
問題ないんじゃ無いのかね。
で、俺たちの方はというと……
ウイル国王より、この件の功績から彼の家臣に加わることを提案されたけど。
それは俺も親父も辞退したんだ。
……それは何か違う気がするんだよな。
俺たちは報われるべきじゃない。
ただ、辞退自体が不敬であると思われる可能性はあるから少し心配した。
だけど
「……彼らには彼らの事情がある」
ストロールが俺たちの選択を認めてくれた。
そしてウイル国王に進言してくれたんだ。
国王に提案されると拒否するのは困難だから、1度断られた以上諦めるべきだ、と。
……ありがとう、としか言えないよな。
俺の過去については何も言って無いみたいだし。
で。
「なんだ獅童さんも飲まんのですか?」
「ええ。まあ」
今日はライケン魔道商会に勤務するエルダ族3人。
俺、親父、キンシローさんの3人で飲み会をしていた。
まあ、俺と親父は飲まないのだけど。
俺はまだ未成年だし。親父は酒乱だからな。
俺も親父も、お茶を注文した。
キンシローさんだけが麦酒のジョッキを持っていた。
陶器のジョッキだ。
上機嫌だな。
「ではまあ、一応この場では一番の先輩社員として音頭を取らせていただく」
……だいぶ長いこと一緒に働いているが、同じエルダ族の社員として一度も飲み会をしていなかったということで。
飲み会をしようと誘われたんだ。
どうしようか悩んだが、親父が行けというのでそういうものだと思い、参加した。
……その代わり場所はここにしてもらったけどね。
蜜蜂のささやき亭。
行きつけのこの店で、俺たちは飲み会を開始した。
ここは値段はそんなに高く無いし、エルダ族でも嫌な顔をされないし。
何より美味い。
「乾杯」
乾杯の後。
揚げ物と焼き物の料理を中心に、俺たちは話をした。
最近の仕事の話を。
俺は今でも王城でニューラス相手に日本語の教師をしている。
それはキンシローさんも知ってはいるんだが。
その話をしているとき
「諸岡さん」
ちょっと思うところがあった。
「僕と交代した方が良いんではないですか?」
キンシローさんは元々高校教師だ。
俺より向いてるんじゃないのかと思ったんだよな。
だけど。
キンシローさんは少し顔を顰めた。
そして
「もうお前さんは相手との信頼を構築しているわけだろう?」
そう一言。
教えられる側としては、別に俺が嫌だから変えて欲しいと言って無いのに。
元教師だからといって勝手に教師役を変えるのはどうなんだ?
そう言いたいのか。
……確かにそうかもしれない。
「まぁそれに」
キンシローさんは付け足す。
それは
「ワシはワシで、ちと他人に任せ辛い仕事を回されておるしな」
……こういうもので。
そう言いながらジョッキの麦酒を飲み干す。
まあこの人、ライケン魔道商会の金銭管理の仕事を回されてるしな。
ホイホイ他人に任すには問題がある仕事ではある。
そこに
「お待たせしました」
マリアが新しい料理を運んで来てくれた。
ビドー鳥の紅香草焼き。
それの大皿だ。
辛めの味付けの、鶏肉料理だよ。
俺たちのテーブルに料理を運んだ後、別の注文を取りに行く。
「お嬢さん、麦酒のお替りを頼む」
その背中にキンシローさんの追加注文。
マリアの「はーい」という返事。
……マリアは忙しく働いている。
今日はたまたま客が多いんだ。
大変そうだな。
そんなことを思いつつ、鶏肉料理を取り分ける。
……最初に食べたこの世界の料理がこれだったな。
俺は自分の分を口にしたときを思い出した。
あのときは寄る辺もなくてどう生きればいいのか見つからず。
実はわりと不安だったよ。
それが今はこの通り。
……分からんもんだよな。
「おい、聞いたか?」
そのとき。
隣のテーブルから、酔客の会話が耳に届いて来た。
それは
「王妃陛下3人が、ご懐妊されたそうだ!」
……へぇ。
俺はそこで意識的に隣の席の会話をシャットアウトした。
下種な話が聞こえて来たら気分悪いし。
なので
「王妃様方、3人同時にお世継ぎを身籠られたみたいですよ?」
こっちはこっちで、そのことの会話をはじめる。
こっちのテーブルなら、下種な話は出ないだろうし。
親父は
「そうか。同時ってのが良いな。揉め事が起きない」
眼鏡を掛け直しながらそうコメントし。
キンシローさんは
「国が乱れると一番にワリを食うのはワシらだからな」
そう言いながら運ばれて来た新しい麦酒に口をつけた。
同感ではあるが……
俺はどうしようか?
王城に出向いたとき、何か一言あるべきか?
迷いがある。
一言って言っても、俺が普通に会えるのはニューラスだけだからな。
王妃に直接会うのはまず無理だし。
かといって伝言頼むのは失礼な気がする。
どうするべきか……
……そのとき。
ふと思った。
募金とか無いのか?
祝い事に対するヤツ。
この国は国王は敬愛される存在だし。
あったとしても別に変ではないだろ。
探してみるか。
やってみないと分からないしな。
何事も行動だ。
<了>