メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
キシャアアア!
その赤茶色のミミズの化け物は吠える。
吠える声はエイリアンの声に似てる気がした。
独特の吠え声なんだ。
ミミズとは言ったが、無論ただ巨大なミミズそのものじゃない。
口にあたる部分が十字状に、まるで花弁のように裂けて開き。
そこに鋭い牙が並んでて。
その大顎の中から、鞭のような舌を生やしている。
明らかに肉食。
危険な生き物だ。
……対して、俺は丸腰。
武器なんて何も持っていない。
どうする……?
あの、玩具のサーベルなんか絶対に役に立たない。
金属製ならまだしも、プラスチック製だぞ?
こんな化け物相手に役に立つもんか。
せめてここが、認知世界だったら……
人の心の世界だったら、俺はペルソナを使えるのに……!
俺は超能力を持っていた。
ペルソナ能力という超能力だ。
その内容は「自分の心を象徴する神や悪魔、英雄を呼び出し、自分の分身として使役する」能力。
俺はこの能力で、あっちの世界では好き放題に殺し屋の仕事をこなしていたんだ。
ただし。
この能力は認知世界でしか発動できない。
多分、心由来の能力だからだろう。
認知世界は人の心の中の世界だから、当然かもしれないな。
だから俺は……
認知世界ではこういう化け物と戦う力を持っているのに、ここは認知世界では無いから、自分の力を使用できないんだ。
クソがッ……!
畜生……!
まぁ、俺は積み上げた悪行が多過ぎる。
こんな異世界で化け物に喰われて果てるのは、因果応報ってやつかもしれない。
だけど……!
アイツらは、俺を仲間と認めてくれて……!
裏切ったのに、父親の策で窮地に陥った俺を嘲笑ったりしなかった。
それなのに、足掻かずに諦めてしまうのは許されるのか……!?
だから俺は
認知世界では無いはずのここで。
出来るはずがないハズなのに。
力を込めて叫んでいた。
「――来い!」
ペルソナ。
もう一人の自分を呼び出す言葉を。
その瞬間だった。
突然、俺の身体が青い炎に包まれて。
俺の服装が変わったんだ。
ここはおそらく認知世界では無い。
そのはずだ。
なのに……
認知世界で俺自身を守るための鎧……怪盗服に服装が変わっていたんだ。
純白の貴族。
紳士を思わせる、俺の本性に全く相応しくない
正義を象徴する怪盗服姿に。
(……変わった!)
信じられなかった。
だけど
戸惑っている暇は無い!
俺は意識を目の前の、ミミズの化け物に向ける。
行くぞ――!
「――
俺は自分の中に呼び掛ける言葉を発しつつ。
俺の顔面を覆っている赤い仮面を、勢いよく剥ぎとった。
同時にその仮面が青い炎になり、人の姿を形成する。
それは逞しいアメコミヒーローのような肉体を、白基調の鳥をイメージするコスチュームで包んだ人影。
これが俺のペルソナ・ロビンフッド。
中世のイギリスの伝説的義賊で、2つ持っている俺のペルソナのうち、最も良く使用して来たペルソナだ……!
出現した俺のロビンフッドは、その手の中に巨大な弓を光と共に出現させ、矢を番え大きく引き絞り……
次の瞬間、ミミズ目掛けて解き放った。
放たれた矢は、波動を伴ってミミズの大顎の中に突き刺さり
その威力は、ミミズの頭部を木っ端微塵に爆散させた。
ギオオオオオオ……!
頭部を失ったミミズは悶えるように動いて。
横倒しに倒れ、大きな音を立てる。
……呼べた。
理由は分からない。
だけど……
俺はこの世界で、生き残っていけるのかもしれない。
そしてそれが何者かの意志で、俺に償いを求めているのだとするなら……
諦めず、やってみよう。
俺はアイツの……屋根裏のゴミと罵ったアイツの顔を頭に過らせつつ。
歩き出した。
取り敢えず見えている、あの建物に向かって。