メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第20話 報告はする

 言えるわけがない。

 そう言ったユージフたちの目。

 

 ……この目は見たことがある。

 

 俺が施設で育てられていたとき。

 新しくやってきた子供に、たまにこういう目をした人間がいた。

 

 誰にも頼れない。

 誰も信用できない。

 

 そういう、追い詰められた弱者の目だ。

 

 俺が言葉を返せないでいると、彼らは話し出した。

 血を吐くような口調で

 

「……ウィル陛下が御即位される前は、我々は最底辺の被差別種族でした」

 

 彼らの話。

 

 今の国王が即位する前。

 

 彼らの村に、盗賊団がやって来た。

 盗賊たちは彼らの村から財産を奪い、奴隷として売り飛ばすために人攫いまでやったらしい。

 

 彼らは王都に

 

 我々は税をこれまで納めて来た。どうか軍を動かして、盗賊団を退治して欲しい。

 

 そう言って助けを求めた。

 だけど

 

「……軍は派遣されませんでした! もう取るものもあるまい。問題ないと無視された!」

 

 それは……

 

 酷過ぎるな。

 この国、昔はそこまで酷かったのか。

 

 自治体に武器を持つことを許可しているから、一般の差別は酷くても国としては平等なのかと考えていたのだけど……

 

「確かに新王陛下の世になってから、陛下の直属家臣にユージフ出身の者が採用されてるって話は聞きました! でも!」

 

 いきなり国をそこまで信用するのは無理があるってことか。

 ……分からなくは無いな。

 

 国にあんな化け物が、村人が変身するという形で発生しているって話。

 連絡したら、逆に村ごと殲滅されるかもしれない。

 そう思う方が自然だ。

 

 ……だって昔なら、おそらくそうされたに決まってるわけだし。

 税だけ納めさせて、苦しいときに平気で見捨ててくるようなクソ政府だったんだから。

 少なくとも、昔は。

 

「あなたたちだって、エルダ族なんだからそれぐらい分かって貰えますよね!?」

 

 そして。

 俺たちにそう訴えかけるユージフたちの目は。

 

 ……本当に縋るように思えた。

 

 このことを国に報告しないでほしい。

 そう言ってるんだな。

 

 俺は……

 

 考えさせてくれ、と言おうとした。

 

 だけど

 

「では、買い足す魔導器は5本までということで良いですね?」

 

 その前に、俺の父親が仏頂面でそう言ったんだ。

 俺が戦っていたときは何も言わなかったくせに。

 

 ここで口を出すのかよ。

 

 

 

 俺の父親は、この村に出現したニンゲンについて色々訊ねた。

 前に出現したのも全く同じ個体なのかとか。

 何か兆候は無かったのかとか。

 

 すると前に出現したのは、今回のとは姿形が違っていたことが分かった。

 前のニンゲンは、巨大な卵にヒトの男性の顔と足、そして紐みたいな手が生えている姿だったらしい。

 

 ……どうも、同じ個体が出るわけではないらしいな。

 

 そして兆候については分からなかったとのこと。

 

 

 

 ……その過程で分かったことなんだが。

 ニンゲンというのは、魔力(マグラ)を暴走させたエルダ族が、化け物に変じた姿で。

 危険極まりない怪物。

 

 そういうことになっていたそうだ。

 それがユージフの中から現れた。

 

 彼らが村ごと殲滅される恐れを感じたのも、考え過ぎとは思えないな。

 そういうことなら。

 

 

 全部の事情を訊いた後、俺の父親は

 

「お聞きした事実を踏まえて、もう一度購入する魔導器を再検討しましょうか」

 

 そうユージフたちに伝える。

 

 言われたユージフたちは困惑と、あと安堵を見せていた気がする。

 

 用事が済んだ俺たちは、速やかに待機させていた馬車に乗り村を後にした。

 その去り際に

 

「仲間を倒して悪かった」

 

 俺はそれだけ詫びた。

 避けられなかったとはいえ、俺は彼らの仲間が変身した怪物を倒したんだ。

 

 彼らとしては思うところがあるだろう。

 

 だけど

 

「慣れてますから良いですよ」

 

 ……彼らはそんなことを返して来た。

 そんなことを言われたら、もう何も言えないな。

 

 

 

 馬車に再度揺られながら。

 

 俺は

 

「なぁ」

 

 俺の前の席で、メモ帳を開いて何か書いている父親に声を掛けた。

 俺の父親は俺に目だけ動かして視線を向けて来る。

 

 俺は

 

「……ユージフのこと、どうするんだ?」

 

 訊ねる。

 魔導器8本購入では無く5本購入にする。

 そう言ったけど。

 

 ニンゲンのことは?

 国に報告するのか?

 

 その意味で。

 

 すると俺の父親は

 

「ベルギッタさんに報告はする。まぁ、彼女なら問題あるまい」

 

 何せ、最下級の被差別種族とされるエルダ族を3人も雇うような女性(ひと)だ。

 そう言って俺の父親は、再び手帳にメモをする作業に戻った。

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