メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第25話 一色若葉

 マルティラに着いた。

 時刻は昼前だ。

 

 マルティラは、ヨーロッパの田舎町という感じの街だった。

 まるでグリム童話アニメの街並みのような。

 

 外壁は石を積んで作られてて、王都のような洗練された印象を受けない。

 元々、戦略上の拠点だったというのも関係しているんだろうか?

 

 拠点ということは、戦闘に巻き込まれやすかったということだろうし。

 

 そんな場所で、気合の入った建物は作りにくいだろう。

 何故って、戦闘で破壊される恐れが高いんだ。

 

 すぐに壊されるかもしれないものに、なかなか気合を込めるなんてできないだろ。

 

「お疲れさまでした。鉱石の業者との約束は?」

 

「明日の昼だ」

 

 リナと俺の父親が、仕事の話をしている。

 リナは鎧戦車の操縦が仕事だから、帰りの便がいつになるかが重要事項なんだろう。

 鎧戦車のことは全く分からないが……

 

 前の世界でも戦闘機は準備が無いとすぐには離陸できない乗り物だったから。

 ひょっとしたら事前にエンジンを温めるような、そういう面倒なことがあるのかもしれない。

 

 しかし、魔導器の素材の鉱石の業者と会うのが明日の昼か……

 

 だったら

 

「俺、ちょっと出て来る。夜までには帰るよ」

 

 一応、父親に断って。

 俺はマルティラの街に繰り出した。

 

 ……明日まで父親と一緒だなんて冗談じゃ無いし。

 少しは休まないと。

 

 俺の父親はそんな俺の背中に

 

「暗くなるまでには帰れ」

 

 ……そんな言葉を投げ掛ける。

 

 今更父親面してんじゃねえよ。

 腹の立つ。

 

 俺は内心毒づきながら、鎧戦車を降りて街に繰り出した。

 

 

 

 マルティラの町は、飾り気のない街だった。

 砦の中に街があるという感じで。

 

 王都のような華やかさはまるでない。

 

 ただ、人は気取ったところが無くて。

 自分としてはこっちの方が気が楽だった。

 

 あと……

 

「浮浪者があまりいないな……」

 

 路上で寝てる人間があまりいないんだ。

 王都では低所得者層居住区で結構目にしたのに。

 

 王都は浮浪者が結構いたと思う。

 前の世界と比較すると歴然だ。

 

 俺が目にしたのは全てパリパス族の男で。

 他は目にしていない。

 

 ……多分、女のパリパス族は路上生活に行く前に、娼婦に身を堕とすか

 それができないなら真っ先に死ぬから、あまり目立たないんじゃないだろうか?

 

 俺はそう思ってる。

 

 マルティラに浮浪者があまりいないように見えるのは、ここだと浮浪者を抱える余裕が少ないからなのか……

 それとも、ここの為政者の統治が上手く行ってるからなのか。

 

 どっちなんだろうな?

 

 まぁ、それは今はどうでもいい。

 どうせ、仕事で来ただけの街だし。

 

 食事にしようと思った。

 

 ぶらぶらと見てまわった。

 俺が入っても問題が起きなさそうな店……

 

 客層に「種族による差別が少ない」と思える店を探す。

 そのときだった。

 

「惺教の布教なんてしてんじゃねえぞ!」

 

「惺教が国教だった時代はもう終わったんだ!」

 

 ……男たちの怒号が聞こえた。

 

 えっ、この世界でもやっぱり宗教弾圧みたいなものがあるのか?

 当然気になったので俺はそちらに目を向けた。

 そして驚愕する。

 

 そこでは……

 

 1人のクレマール族の中年女性が、2人のガタイが良いルサント族の男たちに責められていた。

 

 角のある方がクレマール族。

 耳が長いのがルサント族。

 

 一目で良く分かる容姿。

 間違いようが無い。

 

 そこは問題ない。

 問題無いんだ。

 

 ……問題なのは……

 

 その、クレマール族の女性だった。

 

 彼女は白基調の、RPGの司祭みたいな衣装に身を包んでいて。

 顔に見覚えがあったんだ。

 

 その女性は黒髪のボブカットで。

 眼鏡を掛けていた。

 

 顔立ちは整ってて、美人に分類されると思う。

 忘れようがない。

 

 ……その女性は、前の世界で俺が最初に死に追いやった女性とそっくりだったんだ。

 

 一色若葉。

 

 確か、そういう名前だった。

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