メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「いや、僕が勝手にやったことですし」
俺は頭を下げて来る女性に、やめてくれという調子でそう返す。
俺の言葉に彼女はホッとした表情で
「ここで惺教の教義について説いていたら、いきなり……助かりました」
ルサント族の男たち曰く、惺教は昔は散々なことをしたらしいが
それを彼女に問うのは……
いや、訊いておいた方が良いか。
ここでしか実際のことが訊けないかもしれないじゃないか。
そのせいで後で問題が起きたらまずい。
少しだけ心が痛んだが
「僕も散々酷い目に遭わされましたから、正直いい気味だと思う面はありましたけど、そこでそんな理由であなたたちを見捨てたら、それこそ惺教の同類ですしね」
……皮肉たっぷりな内容を、俺の気持ちと称して口にした。
俺の言葉に女性は辛そうな表情になり
「……確かに。昔の惺教は歪んでいました」
そう言って語ってくれた。
惺教という宗教がどういうものかについて。
惺教とは、この世界を創った唯一の神を奉じる宗教で。
その神に向けて、祈りの言葉「コージュラ」を唱えれば誰もが救われると説く。
……前の世界でも似たような宗教があったな。
最初のその説明を聞いて思ったのはそれで。
一神教の常として、他の宗教に非寛容。
それがどうもあったようだ。
ただ、前の世界と違うのは
改宗すれば、建前上は同じ信者として同列に扱うことが義務付けられていた前の世界の一神教とは違い
惺教では「罪深い穢れた種族」という設定があったそうだ。
その中で最も罪深い種族として設定されていたのがエルダ族で。
エルダ族が困っていたら、決して無償で助けてはいけない。
見返りとして十分な寄進が見込めないのであれば、むしろ見捨てることが神の御心に適う。
そう、大教主とされた人間が言っていたらしい。
……なんだそりゃ。
酷過ぎんだろ。
……俺の前いた世界には、メシア教という新興宗教があった。
それの他宗教への対応が、そんな感じだったな。
非メシアであれば、騙そうが殺そうが一切構わない。
むしろそうすることが神の御心に適う、と。
「ですが、それはフォーデンが言い出したことで、本当の惺教は違うんです」
フォーデンというのは、その大教主って役職についていた男の名前。
この男が惺教の指導者になったとき、惺教は大きく膨らんだらしい。
「コージュラとは、神の前に全ての驕りを捨てて平伏するという意味があるんです」
自分は取るに足らない存在。
その想いを決して忘れてはいけない。
少し周囲より優れているから、裕福だからと、自分が偉大な存在であるなどと思うな。
そういう気持ちを表す言葉が「コージュラ」らしい。
だからその祈りを捧げるとき、惺教の信徒は立ったまま上半身で地べたに額を擦りつけるようなポーズを取るそうだ。
実際に女性がやったポーズを見る。
それは……
古代中国人の礼のポーズ……
手を目の前で組み合わせ、首肯する。
よく映像作品で出て来るアレ。
あれの組み合わせた手で作った輪の中に、頭を伏せるようなポーズだった。
なるほど……
「分かりました。誤解があったようですね。訂正します」
色々教えて貰えたので、話を切り上げるために俺はそう口にする。
女性は少し嬉しそうだった。
俺はそのとき、その女性の名を知らないことに気づき
「えっと、お名前は?」
ようやくそのことを訊ねる。
女性は俺の言葉に
「……リーフです。本日は助けていただき、本当にありがとうございました」
そう言って、彼女は俺に
「……コージュラ」
祈りのポーズをとった。