メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第29話 マルティラの名物

 リーフさんと別れて俺は

 

 ……偽善じゃねえか。

 

 内心、呟いた。

 

 俺は前の世界で決して許されないことをした。

 その負い目を、全く同じ顔の女性を助けることで誤魔化そうとした。

 

 吐き気がする。

 なんて見苦しいんだ。

 

 自分自身に腹が立ったけど、ここは往来。

 イラついたからと暴れるわけにはいかない。

 

 クソッ

 

 ……腹は立った。

 

 けども腹は減る。

 そもそも、食事にしようと思っていたところだったし。

 

 でも今の俺の精神状態では、店を選ぶ気分じゃ無かった。

 高く無さそうな店であれば、どこでもいい。

 

 場所やメニューを選ぶような気分じゃないんだ。

 もはや食えれば。

 

 なので、目についたいかにも庶民の店のような飲食店に飛び込んだ。

 

 中はルサント族の女主人が経営している店で。

 

「おやいらっしゃい」

 

 大荷物を軽々運びながら、女主人が俺にそう言ってくれた。

 

 ルサント族は身体能力に優れた種族で。

 女性でも、他の種族の男性を上回る腕力があるらしい。

 

 なので女主人は、大量の食材が入ったコンテナを軽々と、1人でせっせと何個も運んでいた。

 

「テキトーに座んな。メニューは壁に貼ってあるからどれでも」

 

 メニュー……

 

 俺は言われるままに、テーブルの1つについて壁を見る。

 そこには

 

 砂蟲幼虫の蒸し焼き。

 

 砂蟲幼虫のモツ煮込み……

 

 砂蟲……ムシかよ。

 血の気が引いた。

 

 見れば、壁に貼り付けてあるメニューには、まともそうなメニューが無い。

 蟲料理ばっかりだった。

 

 正直、俺はそういうのは苦手だ。

 興味本位で食べたいと思ったこともない。

 

 ……でも。

 

 今の俺は、食べ物の選り好みをする気分じゃ無かった。

 なんだかそういうの、罪悪感がある。

 

「では……砂蟲幼虫の肉シチューを」

 

 俺はメニューの中から、一番マシそうなのを選び

 手を上げて注文した。

 

 女主人はそんな俺を見て

 

「肉シチューね。ちょっと待ってな」

 

 庶民の店の主人らしく、ラフな応対で。

 そう言った後に厨房に引っ込んで行った。

 

 

 

 そして出て来たのは。

 深皿の料理で。

 クリームシチューにぶつ切りの大芋虫が入ってるような一品。

 

 親指くらいの太さの芋虫のブツ切り……

 

「……砂蟲って、砂漠に居るやつですよね……?」

 

 一応、訊く。

 確かそうだったはずだ。

 

 借りた本に書いてたし。

 

 多分、俺がこの世界に来たときに、最初に出会った化け物……

 その幼虫……

 

 俺の脳裏に蘇る、大きさ数メートルに達する怪物の姿。

 

 そんな俺の言葉に女主人は頷いて

 

「それは生まれたばかりの幼虫なんだ。間違いなく砂蟲の幼虫だよ」

 

 ……ですか。

 

 見た感じ、そういうマカロニに見えなくもない。

 直径数センチくらいある、そういうマカロニ……

 

 匂いは良い。

 美味しそうに思える。

 

 しかし……

 

 どうしても、最初のひと匙が進まなかった。

 

 でも、そのときだった。

 

「うむ。やはりマルティラ名物砂蟲料理は良いな」

 

 いきなりだ。

 

「うまし!」

 

 隣のテーブルに座っていた客が、そんなことを言った。

 多分独り言なんだろうけど。

 

 俺の耳には、それが本気の言葉に聞こえた。

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