メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第39話 贖罪意識への反逆

「ロキ、とどめだ!」

 

 俺の声に応え、俺のペルソナ・ロキが

 

 その2本の角の間に集中する魔力の弾。

 

 その魔力を凝縮した光弾は

 

 発射され、赤ちゃんニンゲンの目を貫き。

 そのまま後頭部まで撃ち抜いた。

 

 オギャアアアア!

 

 最後に甲高い悲鳴を残し。

 その凶悪な赤ちゃんニンゲンは消滅する。

 

 これで危機は去った。

 

 だけど……

 

 俺の一歩前に、もう1体を倒した俺の父親に俺は向き直った。

 

 そのまま、対峙する。

 

 時間にしては数分無かったと思うんだけど

 だいぶ長くそうしていた気がする。

 

 やがて俺の父親は語り出した。

 

「信じられないだろうがな、俺だって昔は真っ当に日本を理想的な素晴らしい社会にしようと思っていたんだ」

 

 怪盗服を解除しないで、俺の父親は語る。

 昔の自分はどうだったのか。

 

「政治家の家の長男に生まれ、父親の地盤を引き継ぐことが俺は昔から決まっていた」

 

 ……俺の父親は二世議員だったらしい。

 少し情けないが、俺はこれを初めて知った。

 

 父親の実家のことを調べて無かったからな。

 どうやれば接触できるかはだいぶ考えたけど。

 

「……で、あの惨状になったのはどうしてだ? 何か決定的な裏切りにでも遭ったのか?」

 

 そう「同情して欲しいのか?」という口調で訊く。

 そんな俺の言葉に

 

「段々だよ……理想だけで人は動かない。便宜だとか、根回しだとか。そして正しいと思うことを主張しても、まともに訊く奴がいない……そう、諦めるようになったんだ」

 

 俺の父親の言葉には、わずかだが怒りが含まれている気がした。

 

 今でも前の世界の一般大衆に対する恨みがあるのか。

 それともその「諦めた自分」が許せないのか。

 

 俺にはよく分からなかった。

 

 コイツの肩を持つわけじゃ無いけど

 

 コイツが怒りを覚えたという人間は確かに実在していた。

 自分が楽をすることばかり考えて、真面目に生きることを馬鹿にする。

 カスみたいなやつら。

 

 そんな奴はいっぱい居た。

 

 コイツの立場だと、そういうのが良く見えて。

 国民のほとんどがそういう奴らばかりだと思うに至ったのかもしれない。

 

 それで正当化できるわけじゃないけどな。

 

 俺の父親は続ける。

 

「そしてその後、怪盗団の奴らの改心でそれを思い出し、俺は破滅した」

 

 その言葉を口にしたときの父親の表情は、悲しそうに見えた。

 そしてその中に、わずかだが喜びも。

 

 怪盗団の改心を受けなければ、その気持ちを思い出すことも無かった。

 そう思っているのかな。

 

「その後、自殺に追い込まれ、この世界に来たが……」

 

 そして続けた。

 自分がこの世界に来たことについて。

 

 俺同様、死を迎えたときにこの世界に転移して。

 運よくベルギッタに拾われて俺の父親は仕事を得た。

 

「俺は今の会長の下でやり直すつもりで働いていた」

 

 けれども

 

「前の世界であれだけの罪を犯した俺が、こうして何食わぬ顔で働くのは許されるのか? ……その思いがあったんだ」

 

 償えないほど大きな罪の意識……

 

 その言葉は、俺にも突き刺さった。

 俺だって、散々罪を重ねてこの世界に来たんだ。

 

「その思いに悩んで、答えが出たとき……俺はこの能力を得ていた」

 

 俺の父親の出した答え。

 それは

 

 他人のために仕事をするのは、本来は評価されるためじゃない。

 罪を犯したからと、その者が他者のために働くことを否定するのは違うだろう、と。

 

 贖罪意識への反逆……

 贖罪することが罪からの逃避であると思う気持ちへの反逆……

 

 そういうことなのかな。

 

 それは……

 

 不愉快だけど、俺は少しだけ分かる。

 

 今の俺の在り方を「反省が足りない」というのであれば

 勝手に罪に数えればいい。

 

 それで最終的にさらに罪状が重くなると言うのであれば、そうしてくれ。

 

 ただ、こっちは別に救われたくてこんなことをしてるんじゃ無い。

 それだけは言っておく。

 

 だから俺は

 

「……アンタの力を一枚紙に書いて纏めて、俺にくれ。明日までに」

 

 そのことを、俺の父親に言ったんだ。

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