メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「あの金属の箱は何なんだ?」
ヒュルケンベルグが窓から、外のモノについて指を差す。
指差す先を見ると……
「あれはバスですね」
直方体の車体に、緑のカラーリング。
……バスだな。
「バス?」
俺の説明は当然伝わらないので、補足説明。
「いっぺんに複数の人間を同じ場所に運ぶための乗り物です。……こっちだと乗合馬車の概念に近い。乗合馬車の規模が大きい版を想像してください」
俺の説明はそれなりに伝わったのか。
ヒュルケンベルグは続けて
「結構いっぱいあるように見えるが?」
数について訊ねてくる。
大量輸送が基本なのに、あの数は多過ぎないか?
それに言うほど大人数……数百人、数十人が乗れるように見えない……
そんなところだろうか?
俺はその疑問に
「それだけたくさん運行していたんです。……分刻みのダイヤで」
そう返し。
俺はヒュルケンベルグにバスの運行ダイヤの話をする。
昔の街では、バスがいつどこに来るのか決まってて。
バスを利用したい人間はそこに集まってバスが来るのを待っていた。
その本数はたくさんあったから、大して待たなくてもほぼ望み通りの時間にバスに乗れた……
みたいな。
東京の街の交通網に関する話を。
ヒュルケンベルグたちは俺の話を興味深げに聞いていて
「……旧世界はものすごく便利だったんだな」
そうコメントされる。
まあ、文明レベルに恐ろしい開きがあるしな。
そりゃそうだろうさ。
「ああそうだ、ひとつ聞きたいんだが」
バスの説明をした後。
新宿の遺跡の中を進んでいくことを再開すると。
思い出したかのようにヒュルケンベルグが話を切り出す。
「何ですか?」
俺の返しを受けて彼女は
「……旧世界の日付の区切りは何故7日なんだ?」
そんなことを。
……この遺跡のどこかに前の世界のカレンダーでも残ってたのかね?
そこはまあ、俺も気にはなってたんだけどな。
こっちの1週間は5日なんだよ。
前の世界とは違うよなって。
多分、こっちでは指の数から1週間が5日になったと踏んでるんだけど。
おそらく十進法も、指の数から生まれたはずだし。
俺は
「多分宗教由来です。旧世界で最も有力な宗教が、神が7日で世界を創ったと説いていたので」
そう返した。
だけど
「……それは正確では無いな。大元はそうではなく」
いきなり隣を歩いていた俺の父親が、俺たちの会話に口を挟んで来たんだ。
「太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星……と肉眼で確認できる天体がちょうど7つ。そして月の満ち欠けのサイクルが約7日……宗教で7日サイクルになった理由の根本は、そっちだ」
俺の説明に対する補足。
「旧世界の古代人は、その天体が時間を支配していると考えていた。それに、月の満ち欠けは暦の設定の基準にすることに関してはうってつけの基準……そうなるのが自然というもの」
……俺の説明は、言うなれば「豚肉を食わない理由」を「宗教で禁じられているから」と返すようなもので。
まあ確かに、正確では無いよな。
ヒュルケンベルグが聞きたいのはそこじゃなく。
その宗教で禁じられるに至った理由、のはずなんだし。
……でも。
なんか腹が立った。
俺の父親が言う通り、俺の説明が至らないことにはその通りなんだけど。