メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第81話 惺教の解散

「何で今更解散なんだ?」

 

「あいつらが国教指定外されたの何年前だっけ?」

 

「確か3年前じゃないか?」

 

 聴衆が男に疑問をぶつけている。

 男は頷き

 

「皆の気持ちは分かる。3年前にフォーデンの悪事が明るみに出て、その結果国教から外された彼らだが……」

 

 男は慣れた仕草で、やや芝居がかった大袈裟な身振りを交えつつ

 良く通る声で話す。

 

「この度、それだけでは禊が済んだとは言えないと大教主が先日行われた大集会で言ったそうだ」

 

 ……アイツ、多分プロの報道官か何かだな。

 こういう場面で話すのが上手すぎる。

 

 それが一目で理解できるスピーチ技術だ。

 

「マジかよ……」

 

「惺教って、何年くらい続いてるんだっけ?」

 

「200年や300年できかなかったはずだぞ。確かフォーデンで70代以上じゃなかったっけ?」

 

 聴衆の動揺。

 別に彼らは惺教を信じてるわけじゃないんだろうが。

 

 歴史が長いものがいきなり「終わる」って言い出したんだから気持ちは分からなくもない。

 

「で、解散してどうするんだ? 皆、散り散りになって別の宗教の信徒になるのか?」

 

 誰かがそんなことを言った。

 その言葉に演説台の男は首を左右に振り

 

「おいおい、そんなわけがないだろう。モノは宗教。そうそう簡単に変えるわけないじゃないか」

 

 飄々とした態度を崩さずに、男。

 

 聴衆たちは

 

「あいつら国教時代は気軽に改宗しろって他人に言ってたぞ?」

 

「自分らは違うってか? クソじゃんやっぱ」

 

 聴衆たちのブーイング。

 ……嫌われてんなぁ。

 

 でも、なんとなく構図が見えて来た。

 

 3年前にフォーデンとかいう死んだ男の大悪事が明るみに出て、そのせいで一気に失脚したんだな。

 前の世界でもあったな、そんなこと。

 

 反社と親密な付き合いがあって、警察に反抗的な態度を示していたことが明らかになって。

 芸能界の上層部から蹴りだされた大物とか。

 

 犯罪を犯したことが発覚し、逮捕を切っ掛けに一気に無名になった時代の寵児とか。

 

 いたよなぁ。

 こういうの、人間社会の常なんだろうか?

 

「彼らは惺教教団を解散し、新しく真惺教教団を立ち上げるそうだ」

 

 そして続いた男のそんな言葉に。

 聴衆がヤジった

 

「それ、解散じゃ無いだろ」

 

「そのまんまじゃん」

 

 ……確かに。

 名前だけ変えて過去の罪の償いという責任を放棄した。

 

 そう思われても仕方ない。

 

 だけど

 

「どうもそうじゃないらしい」

 

 男はそんな口々に上がるヤジに対して、それを説き伏せるように。

 

「反省は本物だそうだ。……長い年月で歪に歪み、間違ってしまった教えを伝えていたと」

 

 かなり衝撃的なことを口にした。

 それは

 

「大教主自ら、聖典を焼くことを宣言した」

 

 ……え。

 

 それはすごいな……

 

 聖典を焼くなんて、前の宗教団体としての活動を全否定するのと一緒だろ。

 だったら「名前だけ変えて責任から逃げた」とは言えないかもしれない。

 

 だけど……

 

 本を焼く。

 俺はその行為に、なんだかどうしようもない不快さを感じた。

 

 ……確か前の世界でもこんな言葉があったな。

 

 本を焼く者は、いずれ人間も焼くようになる、って。

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