メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第89話 募兵舎

「ありがとう。大体分かった」

 

 ウイルはそう言って玉座から立ち上がり

 

「ジュナ、ユーファ、バジリオ」

 

 家臣3人……うち2名は王妃……の名前を呼ぶ。

 

 名を呼ばれた3人は1歩前に出た。

 そして

 

「ギドを早急に保護しに向かおう。もし旧世界の神々に惺教が乗っ取られていた場合、離反したギドを野放しにしておくとは考え難い」

 

 真顔で的確な指示を出す。

 確かに。

 

 惺教の中で起きたことを正確に把握している人物が、惺教を辞めて野に下った。

 俺が惺教を乗っ取った人間の一味なら、ギドを生かしておかないだろう。

 

 生かしておいても害にしかならない。

 だったら殺すのが最適解だ。

 

 ……でも

 

「ウイル陛下」

 

 敬称は要らないとは言われたが。

 だからはいそうですかと敬称を外せば、王室周辺メンバーの心証が悪くなる可能性あるしな。

 

 なので間をとって名前呼びと敬称の合わせ技で。

 

 家臣3人に「行くぞ」と呼びかけ、この部屋を出ようとする国王に。

 俺は

 

「ギドの行き先に心当たりがあるのですか?」

 

 その質問を投げ掛けた。

 

 国王は俺を振り返り

 

「ああ」

 

 そう答えた。

 

 

 

 俺は初めてここに来る。

 国王ウイルと一緒にやって来た場所は

 

 王都の募兵舎だ。

 人がごった返し、奥の方で面接のようなものが行われている気配がある。

 

 ここでは軍隊への入隊審査と賞金首の公示が行われているんだ。

 

 賞金首とは?

 

 それは、誰かの脅威になっている怪物や犯罪者。

 それらを生死を問わずに討伐することに懸賞金がついている存在のことだ。

 

「惺教をやめたとなれば、生活費をどう稼ぐかが問題になってくる」

 

 そう言いつつ、国王は掲示板に近づいて。

 

「だとすれば、ギドはおそらくここに来るだろうさ」

 

 僕だってそうだったし。

 懐かしそうな顔でウイルは呟く。

 

 今の彼は国王に相応しい儀式的衣装を脱ぎ捨て。

 前にマルティラで目撃したときにも着ていたような、簡素な旅人の服に着替えている。

 

 ……そのせいか、周囲の人間は彼が国王であることに気づいてない。

 

 まぁ、写真の技術無いもんな。

 記憶と似顔絵頼みじゃ、服装を変えるだけでお忍びで街に出るのは簡単なんだろうな。

 

 他の3人も臣下の衣装を脱いで平服に着替えている。

 

 ただ……

 

「ジュナ様!」

 

 ……ジュナだけが、気づかれていた。

 どうも彼女、国王の臣下になる前は世界的な歌姫として顔を売っていたらしく。

 ナマの彼女の顔を知っている人間が、山のようにいるらしい。

 

 そのせいか、彼女だけ俺たちから離れて歩いている。

 

 ウイルが傍にいると、国王であることがバレかねないからだろう。

 

 彼女は数人のパリパスの女の子に囲まれていたけど。

 そのファンたちへの対応を1人で行っていた。

 

 その間に俺たちは、賞金首関連の受付を行っている窓口に向かった。

 

 そこに立っている軍隊関係者に

 

「すまない。最近禿頭のルサント族の中年男が、賞金首討伐の申請をしなかったか?」

 

 賞金首討伐は、事前申請が求められている。

 その理由は、賞金首討伐の不正を防ぐためらしい。

 

 本物の賞金首を狩らず、偽装で賞金を騙し取ろうとする行為。

 それを防ぐためだそうだ。

 

 もしそういう不正が発覚した場合、賞金首討伐という行為に参加することが一切できなくなる。

 そのための事前申請だそうだ。

 

 だからギドが賞金稼ぎとして生きていくなら、ここに申請をしているはず。

 

 すると

 

「……そういう情報は言えないことになっている」

 

 窓口担当のクレマール族の男は仏頂面でそう返して来た。

 

 まぁ、そりゃそうか。

 どうする気なんだ?

 

 一瞬気になったが

 

「……これでもですか?」

 

 そこでユーファジアが。

 被っていた面を脱いだ。

 

 さっきから気になっていたけど、彼女も素顔を出してると目立つからだったんだな。

 ムツタリ族伝統の、被るタイプの穴が3つ開いてるお面。

 

 彼女は相当な美人だし、それでムツタリ族とあればそりゃバレるよな。

 第一王妃だって。

 

 受付の男はそれで硬直し

 

「……失礼しました!」

 

 背筋をピンと伸ばし。

 すぐに動き出した。

 

 記録を探ってる。

 さすがに気づいたらしい。

 

 目の前のエルダ族の青年が、この国の国王なんだということに。

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