メタファーの世界を救うために、明智が転生してペルソナ能力で戦う話 作:XX(旧山川海のすけ)
「あの、陛下」
そこに。
ユーファジアさんが手を上げた。
「ならば、ギドさん以外の惺教の信徒に、本家を立ち上げて貰えばどうですか?」
「心当たりがあるのかい?」
国王は王妃に目を向けて、先を促す。
ユーファジアさんは頷き
「……陛下、ハイペリックさんは覚えておいでですか?」
「ハイペリック……? ああ、あの人か」
国王はテーブルに肘を置き、少しだけ悲し気な表情を浮かべる。
……悲しい別れに至った人物なのか?
「彼がどうしたんだ? 彼はもう、この世には……」
「ええ、ですが」
国王の言葉にユーファジアさんは頷き
あの人が守っていた信徒はまだいます。
そう続けた。
そして会議の結果。
俺が、そのハイペリックというすでに故人の惺教の司祭の関係者に接触することになった。
ハイペリックが存命なら、きっとこの状況をギド同様に受け入れたりしないはず。
そういう見立てだ。
だから一応、政府とは無関係の立場にいる俺が接触するんだな。
接触して、惺教を抜けて正しい信仰を守れと促し、新しい勢力を立ち上げさせる。
大事なのは正しい惺教を残すことで、同じくらいの勢力を守ることは重要じゃないわけだし。
そのために、一応ハイペリックという司祭がどんな人間だったのかを資料として受け取ったので読み込んだ。
それによると……
ハイペリックはローグ族の男で。
惺教の司祭でありながら、ユージフ族やパリパス族のような立場の弱い、軽視されがちな人々を分け隔てなく救っていた博愛精神に満ちた人物。
しかし惺教聖典の内容を絶対視するあまり、病は性根が曲がっているから起きる神の警告と捉え、信者に適切な治療を施さずに祈祷ばかりを繰り返していたらしい。
……やってることが江戸時代……いや、もっと前だな。
読んでて思った。
まあ、種族差別だけは一切しなかったらしいから、人間としては良い人なんだろう。
で。
最終的に浄化目的で病に喘ぐ信者たちを無理矢理火山に連れて行き。
そこで精神が限界に達して人格崩壊。
発狂し、無差別に近寄った者を誰彼構わず魔法で攻撃する存在になったとのこと。
……なるほどね。
真面目過ぎたから、病を祈祷で治せない自分に対する怒りとその焦りで精神が壊れたのか。
そう思うと、哀れだと思った。
「ここが惺教の信者の宿舎か……」
昔はこの国中に宿舎があったらしいが。
今はここだけらしい。
……他は軒並み潰れたそうだ。
例の、国王暗殺未遂の前科が表沙汰になったときに。
後ろ指を指されるから、熱心でない信者から辞めていったんだろう。
分からんでもないか。
信じていることを貫くのは難しいことだしな。
それくらいは俺でも分かる。
惺教の信者宿舎は石造りの大きな建物で。
見た感じ、刑務所のように感じた。
まぁ、清潔感はあるのだけど。
機能美だけを追求すると、こんな感じになるんだろうか?
敷地はそれなりにあるけど庭はあまり広くない。
木が植えられていて、なおさら狭く感じる。
立地の条件は、マンションに似ている気がした。
庭と呼べるスペースが小さい。
……まあ、それは今は重要じゃない。
宿舎が住居として快適かどうかを視察に来たわけじゃ無いんだ俺は。
「こんにちは」
俺は宿舎の前で箒で掃き掃除をしているパリパスの男性にそっと近づき
「申し訳ありません。オヴィというユージフの女性はご存知ですか?」
そう、訊ねた。
なるべくにこやかに。