【新】ウルトラマンになったのに   作:ショウ・ノボル

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一度は辞めたけれどアイデアを捨てきれずに戻ってきました。
今一度よろしくお願いします


光の巨人になれたけど

 

…ここは何処だ。俺は…俺は、いま何処に居る…?

あかるい……目前には強い光だけが広がっていて他には何も認識できない。

 

ただ強い光特有の目に様な突き刺さる感じはなく寧ろ安心感と暖かみを感じる。

こういう光もあるんだなと変な感心までしてしまった。太陽光にしろ電灯にしろ強過ぎる光は人間を害するが、この光にはそういった通常の光から感じられる僅かばかりの嫌悪すらも感じられない。

 

待てよ…待てよ……いま、俺の身体はどうなってるんだ?

強い光で見えなくなってしまっているにしても体を動かす感覚は存在する筈だ。それにさっきから俺は()()()()()()()()…。

 

何だ、俺は何か事故にでも遭ったのか…?こうなる前、俺は何をしていたんだ……?

………ダメだ、何も思い出せない。自分の顔も名前も…友達や家族の事すら思い出せない…。

それに、こんな状況なのに俺は大して怖いとも思えていない…。自分という存在を形成する情報の殆どが欠けているのにも関わらず、俺はそれに執着する事すら出来ていない。

 

……その癖に雑多な記憶は少し残っている。自分の好きな食べ物、好きな本、好きだった作品群の事とかそういった自己を形成するのに決定的かも怪しい様な記憶ばかりが。

この最悪とも言える状況で俺は記憶にある特撮番組の『ウルトラマン』とかにありそうな場面(シーン)だな、なんて下らない事を考えている始末だ。

ウルトラマンといえば光の巨人である事だし、こんな風景ならウルトラマンの誕生シーンとかにでもなりそうだな…なんて、そんな馬鹿みたいな思考までしてしまって……

 

……何だ?光が段々と収まってきているのか?…違う、光が俺に集まってきている!?

しかも感覚の様なのを感じ始めている様だし、それに光に包まれて見えなくなっていた他の風景も見れるようになって…?

 

__________________

___________

 

………何か、暗くない?それに背中に何か硬い板か何かを押し付けられてる感じがするし…というか砂が上から溢れてる気がするし煙い。

体勢がキツい…何故か片足をついて全力で背を曲げてるみたいなポーズをとっているらしい。それに空腹感とはまた違う様な()()()()()()()()、そんな不思議な感覚がある。

それとは関係ない気もするけど胸元は何故か比較的明るい。スマホか何かのライトか…?

 

…まあいいか。取り敢えずは立ち上がれるか試してみよう。

周りに助けを求めてみるのはその後でも遅くないだろう。もしかしたら誘拐か何かされていて、こんな状況なのかもしれないし。

 

よいしょっ、と。

 

俺が立ち上がろうとすると、背上にあった硬い板の様な物は思っていたよりも簡単に崩れた。パラパラも砕けた砂や細かい石が背に当たる感覚がある。

しかし立ち上がった俺にはその様な些事は思考するに値しなかった。ひょっとすると、先程の一面の光よりも異常な光景を目の当たりにしたからである。

 

 

俺の足元には内側から立ち上がった俺によって破壊された神殿のようなもの、周囲にあるのはミニチュア大の木々。

それに何より目前の脅威である。()()は今の俺と殆ど同じくらいのサイズ感であり、やたらと太い二本足とそれに反比例するように短い両手でありながら人間のように直立し、それを補助するように太い尻尾が後ろに伸びて、驚愕している様にも見える表情の顔はギザギザの牙と悪魔のようなドリル角を携えていた。

そして黒いシルエットに映える赤い皺模様は血管が浮き上がっている様にも見える。

 

俺は奴を知らないが、アレが何と呼ばれるのかを知っている。

アレの名は怪獣。人間の脅威であり、自然の化身であり、不自然の象徴であり、空想の権化であり、破壊の使者である。

 

そんな思考をしている内に件の怪獣と俺との距離は殆どなくなっていた。

奴が俺に向かって突進を仕掛けてきていたからである。何とか対応しようと両手を前に突き出して奴の角を満身の力で掴み、足で踏ん張って食い止めようとするがズンズンと歩を進める奴を止めるには足りない。

 

遂には押し切られ、頭突きをもろに胸にくらって後方に倒れ伏した。同時に上半身が水に沈むのを感じる。

どうやらさっき俺が壊した神殿の裏手には湖か何かがあったようでそれに浸かってしまったらしい。何がそんなに嬉しいのかギャアギャアと喚く怪獣を尻目に、胸の痛みを堪えながら何とか立ちあがろうと湖の浅瀬に手をつき立ち上がる。

 

……立ち上がり、目に入った水面に映る自分の姿は予想通りではあった。周囲の風景がミニチュアに見える程の巨体、神殿の天井を容易く壊してしまう力、何故か暗がりで明かりを保つ胸部に怪獣の突進に対応出来る反射神経、そして突進を受けても痛いで済む頑強な肉体。

まさかとは思いつつ可能性として考えてはいた、その姿。

 

銀色で引き締まった肉体に、胸部の青い光。そして他に見ない特徴的な顔。

俺は光の巨人(ウルトラマン)、その姿になっていた。

 

目の前の怪獣とは対照的に面白みのない一色の身体、俺の世代の(ニュージェネ)ウルトラマンに見られる赤と銀に差し色……どころか初代にもあった赤い色すらない。シン・ウルトラマン冒頭のリピア君くらいには薄い色味について考察したいところだが、奴が油断している内に不意打ちを決めたいので思考を中断する。

 

(抜き足差し足、忍び足っと…)

 

俺を沈めたと思い込んで背を向け、油断し切っている怪獣に俺は息を殺して__息をしているのかは知らないが比喩として__極力足音をたてないようにしながら少しずつ近づいていって……飛び上がってその勢いのままに殴りかかった。

 

「ゥオゥリャアッ!!」

 

「ギュイ!?グギュアーガァ!!!」

 

驚きの声を上げ、後ろから抱きつくような形になっている俺を振り解こうと怪獣が暴れ出した。その凄まじい力に驚きながら何とかしがみつき、何度もその首筋やみぞおちなどのダメージが入りやすそうな箇所に必死に打撃を加える。

しかし……

 

「ヌゥアァ!??」

 

「グキュルァーガァ!!!」

 

大したダメージを与えた実感を得ることも出来ない内に振り解かれ、更に尻尾を振り回す攻撃で追撃を喰らわせられてしまった。

折角近づけていたのに尻尾の追撃でまた距離を取られてしまったのだ。

このままでは先程のようにまた突進を受けてしまうだろう。…まあ何か考え事をしていようといなかろうと自分が上手いこと突進をいなしたり防いだり出来るとは思えはしなかったが。

 

ツィオン!ツィオン!ツィオン!

 

「ハ!?」

 

俺の胸部にある青い光を放っていたライト___カラータイマーが赤く点滅を始めていた。

最早知らぬ者などいない程の知名度であろうウルトラマンが3分間しか戦えないという制限(厳密には違うが)。その制限時間が迫っている事を伝える装置がカラータイマーである。

確かに限界が近づいているのだろう。自分自身、炎天下でずっと動き続けた時の周りの音が小さく感じて力が抜けていくのに似た感覚を感じている。

 

しかしこれは逆にチャンスかもしれない。ウルトラマンとして活動するのに消費するエネルギーは人間が動くのとはまるで別のモノだろう。

いま現在、消費し続けているエネルギーを攻撃の為に意図的に消費すれば逆転の一手となるかも……

 

「グゥルゥオオ!!!」

 

そうこう思考を重ねているうちに怪獣は準備を整えたらしく、何度となく足を後ろに蹴る動作をして土煙を上げている。ウォーミングアップのつもりなのだろうか。

しかし、これ以上の時間は与えてくれないだろう。だから今回の案が上手くいくことを祈るしかない…!怪獣の突進に合わせて光線技を命中させるんだ!

 

怪獣が一歩踏み込んだ…!それに合わせて力一杯腕を左右に広げ、更に右側に身体を大きく捻る。それに合わせて腕に今までになかった光のエネルギーが満ちていくのを感じる。

それを敵も察したのか走り出していた足を止め、強引にその場に留まって踏ん張り出した。それを見ながらも光線を止めることは出来ない…いや、しない!

 

「ヌゥゥウン……ハァッ!!!」

 

捻った体を勢いよく前方に引き戻しその勢いのままに左手を横、右手を縦に構えてクロスさせるあのポーズをとった。すると腕に溜められていた光のエネルギーが奔流となって放出されていった。

これで奴を倒せる!…そう思った矢先、予想外の出来事が起きた。なんと堪えるような体勢をとっていた怪獣がバッと顔を上げ口を広げ、そこから熱線を放ってきたのだ。

 

「ヌゥア!?」

 

俺の放った光線と怪獣の放った熱線が衝突し、膠着状態となってしまった。おそらく俺の見立て通り怪獣に光線を直撃させる事が出来れば撃破は可能だったのだろう…だからこそ怪獣は攻撃を取りやめ、あえて光線を迎え撃つ選択をしたのだ。

この膠着状態を耐えきり、このまま光線を放ち続けるか威力を一瞬だけでも上昇させれば勝機は俺にある。だが、それは難しい…!

 

ツィオン!ツィオン!ツィオン!ツィオン!ツィオン!

 

やはり前よりもタイマーの警告音が早まってきている。今の俺はエネルギーが尽きかけているのに無理をしてエネルギーを更に消費する光線を放っている状態で、これ以上の威力の上昇は出来ない。

感覚で分かるのだ。いま更なる消耗をすれば光の巨人(ウルトラマン)としての形を維持できなくなり胡散してしまうと。

 

「グギュアーガァ!!」

 

「ヌゥ、ゥウ!!」

 

怪獣側も限界は近いのだろう。戦っていて感じたが基本的に俺のスペックはあの怪獣を大きく上回っている筈だ……()()()()()

先程から怪獣の攻撃は俺にまともに通じていない。幾度も戦場とは思えないような隙を晒しているのにも関わらず、俺は痛いと思う程度で済んでいる事からも少なくとも耐久性は俺が遥かに有利な筈だ。

しかしそれ以外の部分で何故か勝ち切れない。不意をついて加えた打撃もこの光線も、奴になんら有効といえるダメージを与えられていないのだ。

 

最初に感じた力が()()()()()()()()()()()()()。これを何とか出来なければ俺は、奴に勝てない。

 

「グゥ…ル、ルルゥガァ…!」

 

「ク、ゥア…ァ……!」

 

光線と熱線の撃ち合いは終わった。怪獣は渾身の力を振り絞った反動か膝をついてダウン気味だ。

しかし俺はそのくらいの事では済まなかった。全ての力を振り絞った一撃を相手に当てる事が出来ず、それを悔しく思いながらも身体は地面に落ちていく。

 

ツィオン!ツィオン!………

 

カラータイマーの音が鳴ったのを聞きながら俺の意識も堕ちていった。

 




一応以前よりは構想をちゃんとしているので応援・感想いただけると有り難いです
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