ハイスクールD×D ~比翼の連理の行き着く果て~   作:レナ丸

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 話の進みが遅いとは我ながら思いますが、伸び伸びとやっていきたいと思います。
 お付き合いくださればとてもとても嬉しいです。


第三話 金烏玉兎

 

 ──◯◯──

 

 「舐めんじゃねえええよ!あの桃髪の女もテメエもスカしやがって!苛つくぜ!」

 

 

 

 

 ───馬鹿が。と仰陽の中の彼女は嬉しそうに吐き捨てた。

 

 

 《さ、代わる?龍愛から返答があったけど、あの魔法使いが操ってる霧はやっぱり神滅具の一つ───『絶霧』だ。あと龍愛が戦った情報からして多分あの無害そうな子は『魔獣創造』を所持してる。

 仰陽も私の勘もあの子に反応してるんだから、まず間違いないよ》

 

 

 成る程、確か『煌天雷獄』は教会の戦士が所有しているのは知っている。

 話したことはないが、遠目に見たことがある。

 仰陽と彼女は『神滅具』所有者、もしくは『神滅具』そのものに対してセンサーのように第六感が昔から働くことがあった。

 当然、神器自体がレアな上に神滅具所有者と出会うともなれば極々低確率だろうが、この異形の世界に身を置いていればその限りではない。

 それでもまずないものだが。

 

 そして、何故そんな力があるのかは、明確には二人とも理解できていない。多分、魂や根元的なもののような曖昧な感覚がある。

 恐らくではあるが、文字通り「神をも滅ぼす具現」たる力の塊に対して、肉体と、器の力たる二人の──。

 

 

 (いや待て、んなことよりお前、オレと同じでアイツらの組織名くらいしか知らねえっつってただろ!?

 いつの間に龍愛と『経路』通して連絡取ってんだ!)

 

 

 《怒らないでよ、仰陽が接触された瞬間に聖槍遣いに襲われたって『経路』から飛ばしただけだから。

 龍愛達はある程度情報掴んでたみたい、共有してなかったのにもワケアリだよ。私達が単独で動いてる間に龍愛が『禍の団』を独自で調査してわかったのもつい先日みたいだし、何より───アイツらの頭は『無限の龍神』》

 

 

 (───マジか、そりゃ慎重になるわ)

 

 仰陽達は、全員が全員情報の素早い共有を徹底している。にも関わらず、それをおこわなかった龍愛の意図は理解できる。

 

 

 少なくとも表舞台にも出てきたことがない世界最強の存在が謎の組織の頭とくれば確実な精度ある情報が必要だろう。

 

 

 「おい!聞いてんのか!」

 

 筋肉男───ヘラクレスが自身の言葉に返答のない仰陽に更に苛立ち、大声を張り上げる。

 

 既に戦闘体勢の彼に続くように、傍らのジークフリートが魔帝剣グラムを抜き放ち、ジャンヌは『聖剣創造』を発動させ二振りの剣を構える。

 

 

 「───リーダーとしては、止めるべきなんだろうが先ほどの不完全燃焼感もあるし、彼らの怒りを少しでも発散させるべきだろう。お付き合い願えるかな?」

 

 

 仰陽が、チラリと曹操に目線を向けると返答は言葉で返ってきた。確かに挑発したのはこちらではあるし、仲間の襲撃によって危険分子なのは理解できている。

 そして彼我の実力を考慮すれば逃げの一手か、何かしらの嫌がらせの一手ぐらいは打たれると思っていたが応じられるとは思っていなかった。

 

 「勿論だ、『黄昏の聖槍』に『絶霧』『魔獣創造』に、他の三人も知らない人間が少ないほどのビッグネームを受け継いでるじゃねえか───腕が鳴るぜ」

 

  

 そう告げると、仰陽は前髪を半分かきあげると、悠然と両手を広げた。

 

 

 

 「───行くぜ、英雄共」

 

 

 

 ──◯◯──

 

 

 (俺や目の前で神器を使ったゲオルクならともかくレオナルドはかなり秘匿してきたんだけどな……グラム、は見るものが見ればわかるか)

 

 

 考え込む曹操の意図を察したのか、ゲオルクが小さく謝罪を述べた。

 

 成る程、合点がいった。彼の仲間に襲撃されたという際にレオナルドの神器まで使用したのだ。

 

 当然、隠していてほしかったがゲオルクを筆頭とした彼等の表情を見るにそんな余裕はない程の実力者だったのだろう。

 

 

 少なくともこの場にいる幹部面子の触りの手の内はバレていると考えるべきだ。

 彼は知らなそうな素振りだったが、()()()()だろうか。まぁいい。

 

  ───いつだって、強者との戦いは心踊るのだから。

 

 

 

 「───では、改めて。『禍の団』で、とある派閥の頭を務めている曹操だ」

 

 

 

 槍の穂先を向け、先端が花開くと同時に光が溢れだす。稀代の聖なる槍の持ち手に、力の化身は応える。

 

 

 「よろしくな曹操───葉菊仰陽だ」

 

 

 名乗りを上げる。それは、どこか晴れ晴れとしたものを感じさせ、周囲にも伝わった。

 

 一歩、また一歩と二人は川を挟んで、横へと歩き出す。

 

 

 「───ジークフリート、ジャンヌ、ヘラクレス。彼は俺よりも速く、その力はまともに貰えば誰であろうと致命的だ。だから隙を狙って動くんだ。

 ゲオルクは出来るだけ魔法を使用するな。噂が本当なら彼の中にいる『彼女』に益になる。

 レオナルドは、俺かゲオルク、ジークフリートの命があるまで動くんじゃない」

 

 

 短く、端的に仲間に危険性を伝えると同時に曹操と仰陽は瞬時にその姿を消し、次に視認できたのは川の中央。

 

 足首程の浅瀬とはいえ、踏み込みだけで流れる水を弾け飛ばした人間(バケモノ)達の開幕は、驚天動地の結果だった。

 

 

 「───嘘だろ」

 

 異口同音に発せられたその言葉は、英雄の魂を継ぐ者達から。

 眼前の光景に思わず固まってしまう。

 

 

 曹操は『黄昏の聖槍』を一切の手加減なく、尚且つ聖なる攻撃が弱点となる悪魔なら上級悪魔といえど瞬殺できる程の出力にしている。

 当然、弱点となる悪魔や神仏に以外でも、決して無視出来るものではない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 いやその表現すらも的確ではない。

『黄昏の聖槍』は、仰陽の心臓を正確に刺し貫くべく左胸へと吸い込まれたのにも関わらず、衣服を破ったものの、薄皮一枚すら突き破れずに止まってしまったのだ。

 

 有り得ない。

 

 

 「オイオイ、曹操。ちょっとばかり出力が足りねえんじゃねえか」

 

 

 脳裏に浮かんだ否定は次の瞬間に現実に叩き潰される。

 

仰陽は胸に突き立てられた、いや突き立てられてはないが、自身を貫かんとする槍を無視し、曹操を頭から潰さんと右拳を振り上げた。

 

 山河を揺るがすその拳を。

 

 

 「───ぐっ」

 

 

 咄嗟に後方へ距離を取り、比較的余裕を持って回避できたが、前方から地響きのような音が轟くと同時に、形を取り戻さんと流れ迫った川を、石を、吹き飛ばし、大規模な窪みを作り上げた。

 

 

 

 「で、出鱈目かてめえ!神器も持ってねえ人間なんだろーが!!」

 

 

 

 天高く舞い上がった水飛沫と、岩石の中でヘラクレスは思わず叫ぶ。

 ゲオルク、ジークフリート、ジャンヌ、レオナルドも同様に。

 

 当然、異形の中には今の仰陽と同じ程度の破壊を出来るものは幾らでもいるだろう。

 だが、人間では果たして───。

 

 

 

 「あぁ、混じりっけなしの人間だよ、オレらはな」

 

 

 小さく、小さく呟いたそれは誰にも聞こえることもなかった。

 

 

 そして、自ら舞いあげた水飛沫よりも速く、大地を踏みしめ曹操に追撃を仕掛ける。

 

 

 鳩尾を狙った拳を体を捻って避ける、回避の流れの中で体の勢いに合わせ振るった槍はやはり衣服を切るに留まる。

 距離を取り出力を上げようとする曹操を逃がさず、拳打の嵐が曹操を襲う。

 秒間に数えるのを諦める程の拳が曹操を襲い、衝撃波だけで木々は倒れ、二人が進んでいくほどに森は虫喰いのようにその姿を哀れ、削られていく。

 

 山河を砕く肉体から放たれる拳は、掠るだけでも恐らく曹操の肉体強度ではアウトだ。

 

 

 故に必要以上に強いられる回避が、体力を予想以上のペースで奪い、息が段々と荒くなってきた。

 最強の神滅具をここまで追い詰めている当の本人は、楽しそうに笑みを浮かべているもののその顔は依然として涼しいままだ。

 

 

 (やはり先の戦闘でも感じたが、葉菊仰陽!君は槍を使う相手との戦いに慣れている節があるな...っ!)

 

 

 長物が故、懐に入られた場合の対応は難しい。だが当然曹操はそもそも懐に入られるまでもなく相手を屠ってきたし、入られようものなら持ち手を短くし叩きのめすか、距離を取るなど幾らでも手段はあった。

 

 

 ───だがこちらの攻撃を意に介さず、あちらの攻撃は一発KOなど理不尽にも程がある。

 

 

 (それでいいっ!だからこそ君を制した先の俺と槍は高みに昇るのだからっ!)

 

 

 体力に限界が近づきつつあるのか、ここで乱打を紙一重で躱していた曹操の脚がふらつく。

 

 そこで仰陽は頑なに使わなかった蹴りを曹操の太ももに向けて放った──。

 

 数秒とたたない内の攻防だが、意識は上半身に向いている。これで決着だろう。

 

 

 

 そう捉えた仰陽だが、流石にそれは曹操という男を侮っている。

 

  空しくも蹴りは空を切り、その威力を示すように風が吹き荒れる。

 

 

 先までのふらつきが嘘のように軽やかにバックステップで距離を取ると、曹操がハッ!と渇を入れる。

 

 同時に聖槍の出力が、数段階あがる。

 

 

 仰陽といえども、先のように無防備に受けてはならない程に。

 

 

 そして聖槍に気を取られた刹那、背後から襲い掛かる気配。

 

 振り向き様に、後ろ回し蹴りで空まで吹き飛ばすつもりが、またしてもそれは空を切る。ただ、紫の霧を蹴り割いて。 

 その背後から三重の衝撃。

 

 

 「おっ、と!」

 

 

 二歩ほどふらつき、直ぐ様体勢を整え背中越しに振り返ると、そこにはジャンヌとヘラクレス、ジークフリートが剣と、拳を振り切った体勢でいた。

 

 

 (巧い。曹操の野郎、実際体力はなくなってきてるんだろうが、こっちが足技を使わなかった意図と己の消耗具合を逆手に取って距離を置いて、オレに届くであろう出力まで上げる隙を作ったうえに、タイミングを合わせた仲間の奇襲。

 振り向き様に仕留めたと思いきや『絶霧』で更にオレの背後に転移か、イイねそうだそれでいいんだ)

 

 

 決めにいった一手を外された、己達の有利に少しでも状況を作り上げたその策謀とセンスは脱帽ものだ。

 

 

 「……嘘でしょ、私とヘラクレス、ジークフリートのグラムでも傷一つないじゃん。本当に人間?」

 

 

 とはいえ、依然として有利なのは仰陽に変わりはない。

聖槍のパワーは増してはいるが、仰陽の見立てではまだ足りない。無防備に受けるのは不味くなったが、それならそれで最初の一発で騙し討ちできる。

 

 

 《はいもうダメ交代。相手の攻撃で傷付かないの理解した組み立てかたとはいえ、そうじゃなかったらどうする?ってそれならそれで避けてるか》

 

 相方から手厳しい意見を頂いた。返す言葉もない。

 

 

 

 (わーったよ、後は頼むぜ)

 

 

 《任された》

 

 

 陽は落ち、月が昇る時がきた。

 

 

 

 

 ──◯◯──

 

 

 「曹操、無事かい?」

 

 

 「あぁ、なんとかなジーク。良いタイミングで差し込んでくれた。お陰で息を整えられる」

 

 

 短い間に詰め込まれた激戦に、全員が一息つく。

遅れてゲオルクも駆けつけてきた。レオナルドの姿は見えない。

 

 (レオナルドは逃がした。見たままの葉菊仰陽の性格なら子供は狙わないとは思ったが)

 

 (了解した)

 

 

 

 眼前数メートルに佇む彼を、全員で注視する。

彼のスピードからして、先を取るべきではあるのだが、下手に動けば手痛いカウンターを喰らう───それほどの緊張感を先の攻防で植え付けられた。

 

 

 

 

 

 

 ふと、陽が沈み始めていることに気が付いた。

 

 

 

そこで、葉菊仰陽が動き出す。

 

 

 だが、彼は不可解な動きをした。

全員が構えるが、彼は足元に拳を突き立て粉塵を撒き散らす。

 

 

 先までの威力が嘘かのように、己一人を包む程度の煙に身を隠した。

 

 撹乱、目眩まし。疑問が首をもたげるが、動く様子が全くない。

 

 何の意味がある?時間稼ぎか?出方を疑わず突っ込むべきか?

 

 

 逡巡を踏み潰すように、曹操、ジークフリート、ジャンヌ、ヘラクレスの近接組が一歩踏み出した刹那──。

 

 

 

  ───鋭く冷えた絶大な気配が膨れ上がった。 

 

 

 

 

 

 ───◯◯──

 

 

 ゴァ!!と中心から吹き飛ぶように粉塵が弾け飛び──そこにいたのは、陽ではなく月。

 

 

 一人の女だった。

 

 

 粉塵の中から姿を表すはずの、葉菊仰陽はいずこかへ消え失せ、姿を現したのは、土や木々、落ち葉を連想させるどこか懐かしく温かい色合いのウェーブがかった茶髪を腰まで伸ばし、仰陽の持つ瞳よりもやや明るい葵色の瞳が、切り揃えた前髪の隙間から曹操達を見据える。

 

 彼女は上着を脱ぎ捨て、女性的な膨らみの胸に手を当てると、深呼吸を行う。

 

 女の子らしい可愛らしさと、女性的な美しさを併せ持った彼女が放つ雰囲気は、仰陽が太陽のような力強さや陽光のような暖かいものだとすれば、彼女は月影のように美しく、月光のように神秘的で幻想的な雰囲気を持っていた。

 

 

 

 

 まるで全てが対極かのように───。

 

 

 

 訝しむ曹操達に、彼女は淡い声音を届けた。

 

 

 

 「───初めまして、私は葉菊葵月(はぎくあおい)。日輪を仰ぐ月花にして、落陽の守り手──。

 さっ、二週間ぶりの世界!でもまずはキミ達に伝えたいんだよね。 

 ───おいたは程々にねってサ」

 

 

  

 ──◯◯──

 

 

 





 
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