クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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ギャルとショタの初登校

この日、私は珍しく朝の4:30を過ぎても家を出ずにいました。理由はというと海人から昨日、私の携帯に連絡が入った為です。

 

 

内容としては、「最近、お前働き過ぎだから遅れて登校してこい」というものでした。

 

 

当然私は反対しましたが、「普段から終わらせるべき仕事を終わらせて、先送りに出来るはずの仕事すらも既に片付けているだろうが」と言われてしまい、ぐうの音も出ずに巻藁(まきわら)に打ち込みを続けています。

 

 

「シュッ!・・・ハァッ!!」

 

 

そう私が叫びながら拳を打つと、巻藁に巻かれた縄の繊維が(ほつ)れていくのが感じ取れます。上段突きや中段突き、貫手打ちに前蹴り、横蹴りに回し蹴りなどを途絶える事無く打ち続けます。

 

 

「スゥゥ・・・。セァァァア!!」

 

 

その掛け声とともに、巻藁を完全に破壊する事に成功致しました。今日で4本目の・・・。これ以上やると、流石に父上や母上からお叱りを受けるかもしれないので部位鍛練はここまでにしておきます。

 

 

そうして、いつも通り鍛練を終わらせ朝餉(あさげ)を食べていると、また海人から電話が掛かって来ました。

 

 

「時雨ぇー。ちょっと良いかー?」

 

 

「朝餉の最中です。切りますよ。」

 

 

「あー、待て待て!切るなよ!お前さ、今日は8時10分くらいに家を出ろ。そんで、喫茶店『泡沫ノ夢』の店前に行け。じゃあな~。」

 

 

そう言い残すと、勝手に電話が切れてしまいました。私は溜息を吐きながら、仕方なく鞄を肩に掛けると喫茶店へと向かいます。

 

 

(まったく・・・。人を振り回す事に関しては、天才的ですね・・・。)

 

 

そう脳内で愚痴をこぼしながらも、指定した場所に向かうとそこには信じられない人が立っていました。そこにいらしゃったのは・・・。

 

 

(綾香さん・・・?何故、お一人でいらっしゃるのですか?いや、そもそも・・・こんな時間に一人でいたら、近藤さんと鉢合わせてしまう可能性が・・・。)

 

 

しかし、私の心配は杞憂に終わりました。よくよく目を凝らすと、電柱の陰に数人のスーツを着用しサングラスを掛けた方々がいらっしゃったからです。

 

 

(あの方々は確か・・・。神宮寺家の護衛の方々ではないですか。まさか、朝の電話の件といい、海人が何か画策しているのでしょうか?)

 

 

そう思いながら、彼女のもとへと向かい声を掛けると彼女はビクッとしたかと思うと笑顔を浮かべてくれました。

 

 

「あら?時雨君じゃない!こんな所で会うなんて、凄い偶然ね!」

 

 

「おはよう御座います、綾香さん。あの・・・海人から連絡が来て、ここに来るように言われたのですが・・・。」

 

 

その言葉に、綾香さんも目を見開いて驚かれました。

 

 

「え?私も、海人君に此処に来るように言われたんだけど・・・。しばらくしてたら、迎えが来るって言われて・・・。」

 

 

その言葉に、私は眉間の皺を揉んでしまいます。何を企んでいるのかは分かりませんが、私達がこうして出会ったのは海人の策略という事で間違いはないようですね。

 

 

そんな私は、頭の中で悪鬼の様に高笑いをする海人の心像*1を脳内から追い出すと、彼女に向かって手を差し伸べます。

 

 

「取り敢えず、遅刻をしてはいけませんので向かいましょうか。」

 

 

「えぇ、手を繋いでいきましょ。」

 

 

そう言うと、私達は手を繋いで歩く事にします。海人の護衛の方々が、そそくさと退散する様子を目尻に映しながら。

 

 

「それにしても、かような時間に通学路を歩くのは新鮮な気分ですね。」

 

 

「たしかに、この前も私が学校に登校したときには既に校舎内に居たわね。」

 

 

「生徒会長である以上、出来る業務は可能な限り早めに終わらせるのが私のやり方ですから。」

 

 

「因みに聞きたいんだけど・・・。何時くらいに、いつも起きてるの?」

 

 

「4時くらいでしょうか?」

 

 

私がそう言うと、彼女はその時間に驚いたのか軽く天を仰ぎます。

 

 

「4時・・・。私には絶対無理・・・。」

 

 

そうこう歩いていると、だんだん登校する生徒数が多くなっていきます。そんな彼等は、物珍しそうにこちらをチラチラ見てきました。恐らくは、私と綾香さんの組み合わせが珍しいのでしょうか?そんな彼等は、コソコソと囁き合っています。

 

 

「見て。あそこに居るのって水無月様と、桐野さんじゃない?」

 

 

「本当だわ!珍しい組み合わせね・・・。」

 

 

「水無月様・・・。今日も(うるわ)しいわ・・・。」

 

 

「金髪碧眼ハーフ高身長ギャルと、男の娘ショタ・・・。グへへ・・・。」

 

 

そんな周囲の反応に、私は会釈をしながら前へと進みますが彼女は少し緊張しているようです。そんな彼女を安心させようと、私は手を少しだけ強く握ります。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「え、えぇ・・・。健治と登校してたときもそれなりには注目されて緊張したものだけど、注目度合が段違いすぎるわ・・・。流石は有名人ね。」

 

 

「注目され過ぎるのも、気が休まりませんがね。それにしても、今日は如何なさいますか?生徒会室で過ごすのも良いですが・・・。」

 

 

その言葉に、綾香さんはしばらく考えた後に首を振ります。

 

 

「いいえ、今日は教室に行くことにするわ。健治とは別のクラスだし、問題無いと思うの。それに、今は・・・。」

 

 

そう言うと、綾香さんは私の方を見て意味深に笑います。なにか、気に障る事でも申し上げてしまったでしょうか?そう私が首を傾げていると、彼女は口を開きます。

 

 

「こんなに、素敵な騎士(ナイト)様が居るんだもの。怖いものなんて、何処にも無いわ。」

 

 

「では、本日もお守りさせて頂きますね。姫様。」

 

 

私達はそう冗談を言いながら、学校へと歩を進めます。因みにそんな私達の背後から、怪しげな声が聞こえましたが聞こえないふりをしておきました。

 

 

「ギャルショタてぇてぇ・・・。」

 

 

「ギャル姫と、ショタ騎士様・・・。グゥッ・・・!!」

 

 

そうして、私達は学校に着くと教室に行くことにします。すると、教室中の生徒達が私に挨拶をしてくれます。

 

 

「生徒会長!おはよう御座います!!」

 

 

「水無月様!おはよう御座います!本日も美しい・・・。」

 

 

そんな彼等の溌溂(はつらつ)とした顔を見ると、生徒会長としての役割を全うできているのだと私は嬉しくなります。そんな中、一人の生徒が私と綾香さんを見ながら首を傾げました。

 

 

「あれ?桐野さんも一緒じゃん。二人とも仲良かったっけ?というか、近藤君と一緒に登校しなかったんだ?」

 

 

その言葉に、私と綾香さんはドキリとします。先日、綾香さんと近藤さんが喧嘩をしたのは生徒達が登校する少し前。そして、その間にも生徒達は登校していましたが、あの喧嘩をただの痴話喧嘩としてしか認識していない可能性が高いからです。

 

 

「それに、桐野さん。昨日は生徒会室に居たらしいけど・・・。何かあったの?・・・もしかして、近藤君に隠れて浮気・・・。」

 

 

そう一人の女子生徒が言おうとした瞬間、教室中の空気がピリッと緊張に包まれます。その正体は、もちろん私です。もちろん、質問してきた彼女に非がある訳ではありませんが、流石に看過する事は出来ませんでした。

 

 

「そのような訳がないでしょう・・・。昨日生徒会室には、海人や弥生もいらっしゃいました。もしも不貞を疑うなら、彼等にも聞いてみれば宜しいでしょう。疑わしきは罰せずという言葉を知らないのですか・・・?彼女だって、恋人以外の男性と登校する事も有るでしょう?」

 

 

私のその言葉に、その生徒は気まずそうにすると謝罪をしてきました。

 

 

「桐野さん。ごめん・・・。」

 

 

「だ、大丈夫よ!気にしてないし。」

 

 

綾香さんがそう言うと、彼女はそそくさと自分の席に戻って行きます。そんな雰囲気を和らげるかのように、クラスの活発なグループに所属する一人の男子が言います。

 

 

「いや、でも実際お前らが付き合ったら熱愛報道になるぞー!なんせ、クールで大人びてる水無月グループの御曹司の美少年と、モデル並みの体型の美人ギャルなんて見栄え最高じゃねぇか!!」

 

 

その声に、クラスメイト達も騒ぎ始めます。

 

 

「確かに!逆身長差カップルってのも、最近流行ってるし!!」

 

 

「というか、健治より水無月様の方が相応しくね?健治の奴、最近調子乗ってねぇか?」

 

 

「分かる!というか、あいつテニスしか能がないのにイキり過ぎなんだよ!」

 

 

「そういえば知ってるか?あいつ、浮気してるんだって噂。」

 

 

その声に、私達二人は静かに息を呑みます。まさか、もう彼の悪行はそこら中に知れ渡るほどに大きなものとなっているのでしょうか?

 

 

「マジで!?ソース何処だよ!?」

 

 

「いや、聞き伝手だから分かんねぇよ。けど、中学時代には彼氏持ちの女を寝取ってたって噂だ。そんで、口封じの為に強引に彼氏を転校させたらしいぜ?」

 

 

「どうやって!?」

 

 

「なんでも、アイツの親父は結構有名な会社の役員らしいんだよ。健治本人は、父親がどんな会社に所属してるのか知らないらしいけど。」

 

 

「うわ・・・。最低のクズ野郎じゃねぇか。今度から、アイツの事は話し掛けられても無視しようぜ。彼女寝取られたら、たまったもんじゃねぇよ・・・。」

 

 

その言葉に教室の空気がどんどん、不穏な物へと変わっていきます。

 

 

(いけませんね・・・。確かに彼は不貞を働く愚か者ですが、このままでは彼等が虐め加害者になってしまう!それだけは、避けなければ!!)

 

 

そう判断を下した私は、柏手(かしわで)を打ちます。次の瞬間バァァンという音と共に空気が震え、静寂が訪れます。

 

 

「皆さん!疑わしきは罰せずと、先程申し上げたばかりでしょう!彼に対する誹謗中傷は、そこまでにするように!・・・1限目が始まります。席に着いて、教材の準備をしてください。」

 

 

その声と共に、皆は急いで机に着いて教科書を並べ始めます。

 

 

「ふぅ・・・。何とかなりましたね。」

 

 

「えぇ・・・。それにしても、どうやってあんな大きい音出したわけ?」

 

 

その言葉に私はしばらく黙った後、意味深に微笑みます。

 

 

「ふふっ。内緒です。」

 

 

その言葉に彼女は不満げな顔をしましたが、苦笑いをした後に自身の席に座られたのでした。

*1
過去の経験や記憶などから、具体的に心の中に思い浮かべたもの。イメージ像の事

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