クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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スポーツテスト

朝の朝礼が終了し、1限目を終えた私は更衣室に居ました。何故なら、1限目は座学でしたが2限目は体育だからです。そんな私が更衣室で着替えていると、クラスの陽気な方々が私の体をじっと見てきています。

 

 

「あの・・・。先程から、何を御覧になっているのですか?人の身体を舐めるように・・・。」

 

 

私がそう問いかけると、彼等は慌てて目を逸らして話し始めます。

 

 

「い、いや。その・・・水無月様の体が、案外引き締まってて・・・。」

 

 

「男の体を見て、そんなに楽しいのですか?下世話な事を申し上げますが、貴方達の年頃なら女性の身体に興を抱く事が普通だと思うのですが・・・。」

 

 

「そ、それとこれとは話が違いますって!なんというか、こう性的興奮とかじゃなくて『うぉぉ・・・、可愛らしい顔とのギャップがすげぇ・・・。』みたいな感じっす!!」

 

 

「左様ですか・・・?」

 

 

そう彼等は話してきますが、私にはその感覚は分かりません。彼等が男色家ならいざ知らず、そうでもないのに舐めるように見るというのは・・・。

 

 

私がその様に唸っていると、一人の生徒が私に教えに来てくれます。

 

 

「そういえば水無月様、本日は他クラス合同のスポーツテストらしいっすよ!楽しみにしてますからね!!」

 

 

「楽しみ?何の話ですか?」

 

 

私がそう首を傾げると、彼らは鼻息を荒くして話し始めます。

 

 

「神宮寺様との対決に決まってるじゃないっすか!成績上位2名同士の対決!!これを見逃さない手はないっすよ!!既に、賭け試合も始まってますからね!」

 

 

「ちなみに俺らは当然、水無月様に賭けてるんで!絶対に勝ってくださいね!!」

 

 

何やら、勝手に賭け試合が行われているようですね・・・。まぁ、彼等も節度は守る方々ですから公序良俗(こうじょりょうぞく)に反するような真似はしないでしょう。

 

 

「ちなみに聞いておきますが、まさか金銭の類は賭けておりませんよね。」

 

 

一応、私が(いぶか)し気に問いかけると彼等は苦笑いしながら否定をします。

 

 

「ま、まさかぁ!金は賭けてませんけど、うちのクラスが勝ったら海人様のクラスの奴等に食券を奢って貰うんです!!直接現金を貰う訳じゃないし、それならセーフっしょ?」

 

 

そう冷や汗を流す彼等を私はじっと見つめた後、溜息を吐きます。

 

 

「まぁ・・・、そうですね。それくらいなら、良しとしましょう。では、行きますよ。」

 

 

私がそう言うと、彼等はホッと息を吐いて運動場に向かいます。そこには既に、幾人かの他クラスの生徒達も揃っていました。そのとき、遠くから見知った顔が走ってきました。

 

 

「おーい!時雨ー!!」

 

 

走ってきたのは、我が幼馴染である海人です。そんな彼は、頭に何故か帽子ではなく鉢巻(はちまき)を巻いていました。

 

 

「海人・・・。何ですか?その頭に着けているものは。」

 

 

「あ、これか?鉢巻だよ鉢巻。」

 

 

「それは分かっています。何故、鉢巻を巻いているのかと聞いているのです。」

 

 

「え?せっかくのスポーツテストなんだから、鉢巻でも巻いた方が良くね?」

 

 

そうあっけらかんと笑う海人の後ろから、弥生が苦笑いしながら現れます。

 

 

「いやー。なんか海人君、張り切ってもうててな。帽子被りや~ってゆうても、『鉢巻巻いてこそのスポーツテストだろ!』って言うて聞かんくって。」

 

 

「暑さで頭がやられたのですかね?」

 

 

「いや、いつも通りやからこそちゃう?」

 

 

そうこう話していると、私の肩がトントンと叩かれます。そして、私が振り向こうとすると頬に指が当たります。そこに居たのは、悪戯が成功した子供のように笑う綾香さんでした。

 

 

「ふふっ、引っかかった。」

 

 

「綾香さん、悪戯は止めて下さいよ・・・。スポーツテスト、自信の方は如何ですか?」

 

 

私がそう聞くと、綾香さんは自信満々に答えてくれます。

 

 

「フフン。自信満々に、決まってるじゃない!見てなさい、ビックリさせちゃうんだから!」

 

 

彼女のその様子に、私は少し安堵の溜息を吐きます。どうやら朝の女子生徒からの不躾な質問は、そこまで堪えていないようですね。

 

 

「そうですか、楽しみにしていますね。」

 

 

そのとき、私の背後から突き刺さる様な視線を感じました。気になって振り向いてみると、目線の先に居たのはこちらを恨めしそうに見ている近藤さんでした。そんな私の様子に、海人が怪訝そうな顔をしてきます。

 

 

「どうした?」

 

 

「いえ・・・、彼の様子が気になりまして。」

 

 

「あぁ・・・。中学の頃、お前にボコボコにされたからな。それで、意識してるんだろうよ。そもそも、俺達とあいつじゃ住んでるステージが違うっつーの。」

 

 

「海人・・・。将来、神宮寺グループを導く者である貴方が他者を見下してはいけませんよ。貴方の御爺様も、他者を敬う者がこの社会を牽引していくと仰っていたでしょう?」

 

 

「時雨君の言う通りや、乱暴な言葉を使ったらあかんよ。まぁ、放っといたら良いんちゃう?どうせ時雨君には勝てへんのやし。」

 

 

その言葉に、綾香さんも大きく頷きます。

 

 

「全くよ。はぁ・・・、何であんな心の狭い男に告白したのかしら私・・・。」

 

 

その言葉に、私は苦笑しながらも先生方が指定した列に並んでスポーツテストが始まるのを待ちました。

 

 

(まぁ、この学年だけでも100人以上の生徒が在籍していらっしゃるわけですし、そうそう彼と戦う事は無いでしょうね。)

 

 

そう思いながら、先生の指示通りに事を進めて行きます。私達の学校では、スポーツテストは運動場を使いながら50m走、ハンドボール投げ、立ち幅跳び、握力検査、最後にシャトルランを走る事に成っています。

 

 

そうして次々と私は、競技を片付けていきます。この時点で、私と海人の成績は五分に成っており、両クラス陣営も固唾を飲んで見守っています。

 

 

「くっそ!今の時点で五分かよ!!」

 

 

「そもそも、ただの各々の身体能力を測るだけの行事なのですから、そこまで熱くならずとも良いのでは?」

 

 

「んな事関係ねぇよ!!最終種目のシャトルランで、白黒つけてやるからな!!」

 

 

そう熱く叫ぶ海人に呆れながら、シャトルランが行われる場所まで歩を進めます。どうやら、女性陣は既に終了している様で各々応援を送ってくれています。

 

 

「海人くーん!がんばりぃやー!!」

 

 

「時雨君!ファイトー!!」

 

 

その声援に、私と海人は気分が高揚するのが分かります。単純だと言われようとも、関係ありません。古来より、一言主という言霊の神様がいらっしゃるように、言葉というものは気を高めさせる事も気を沈めさせてしまう事も出来るほどの力があると言いますからね。

 

 

私がそう考えていると、横から不自然な殺気が当たってきました。その方向を見ると、私の右隣の走者は近藤さんのようですね。そんな彼は、私の方を睨みつけてきますが私は無視をします。そもそも、彼がこちらに話し掛けてこない以上、私が何かを申し上げる筋合いはありません。

 

 

そう考えていると、彼の方から話し掛けてきました。

 

 

「おい。」

 

 

「・・・如何なさいました?」

 

 

「俺と賭けをしろ。」

 

 

その言葉に、私は怪訝そうな顔をしますがとりあえず話を聞く事にします。聞くだけはタダと言いますからね。

 

 

「はぁ・・・、詳しくお聞かせ願いますか?」

 

 

「俺が勝ったら、二度と綾香に関わんなよ。」

 

 

その言葉に私は呆れてしまいます。そもそも、私と綾香さんが交友関係を続けるか否かは彼女が決める事であり、近藤さんが決める事では無いからです。

 

 

「何故、そこまでして彼女に構うのですか?関係を絶ったのは、貴方自身でしょう?」

 

 

「俺は幼馴染だから、アイツを守らねぇといけねぇんだよ!そもそも、綾香の親父さんとお袋さんにもアイツの事を頼まれてんだよ!お前が入り込む余地はねぇんだよ、分かるか!?」

 

 

その言葉に、私は頭が痛くなってきます。これでも父上に、会社同士の会食に連れて行かれ多種多様な人々を見てきたつもりではありましたが・・・。ここまで、傍若無人な方は見た事がありませんね。

 

 

私の様子に、海人も眉間の皺を揉んで何かを言おうとしましたが私はそれを遮って了承します。

 

 

「良いでしょう・・・。その条件を飲ませて頂きます。」

 

 

その言葉に、海人は目を見開き近藤さんは嫌らしい笑みを浮かび上がらせます。

 

 

「言ったな。俺が勝ったら、綾香には指一本触れんなよ。」

 

 

「おい!お前、何を勝手に勝負を受けてんだよ!!」

 

 

そう耳打ちしてくる海人に、私は緩やかに首を振って諫めます。

 

 

「海人・・・。こういった類の人は、一度現実を分からせてやらなくては引き下がりませんよ。」

 

 

その言葉に海人は何かを言おうとしたのか口籠りますが、結局は首を振って前方に設けられている折り返し地点に目をやります。そうしてスタートのホイッスルが鳴った瞬間、私達は走り出します。とはいえ、初めは体力温存の為にゆるりと出るのが基本的な事なのですが・・・。

 

 

「おらぁぁぁ!!」

 

 

なんと、近藤さんは最初から全速力で走り出し、音楽が鳴り終わる前に折り返し地点までに到達して自慢げな顔をしています。そんな彼の様子に、海人が思わず口ずさんでしまいます。

 

 

「・・・あいつ、やっぱりテニス馬鹿だよな・・・。後半の体力とか、考慮してねぇんじゃねぇの?」

 

 

「・・・あれが彼のやり方なら、私達に口出しをする権利はありませんよ。」

 

 

そう言いながら、後半戦も考慮した速さで折り返し地点に着くと彼は嘲笑う様な視線を向けてきます。

 

 

「おぅおぅ!生徒会コンビともあろう連中が、随分と遅いじゃねぇか!!だっせぇな!!」

 

 

ですが、私達二人は彼に対して『呆れ』以外の感情が浮かび上がりませんでした。

 

 

(いや・・・、こいつ馬鹿じゃねぇの・・・?絶対、後半で体力無くなってバテるだろ。)

 

 

(私に勝つこと以外、考えられずに視野が狭くなっているのでしょうね・・・。(あわ)れな・・・。)

 

 

そうして、2回・・・3回・・・、10回・・・50回・・・。そうして、80回を超えたあたりで近藤さんから野次が飛んできますが・・・。

 

 

「お、おい・・・。そろそろギブ・・・アップしたらどうだ・・・?負けを認めるなら今の内だぜ・・・ゴホッ!!」

 

 

明らかに体力切れの様で、滝のような汗を流しながら彼は忠告してきます。心配してくれるのはありがたいのですが、生憎ながら私と海人は・・・。

 

 

南方熊楠(みなかたくまくす)。」

 

 

「杉田玄白。」

 

 

「空海。」

 

 

「伊藤博文。」

 

 

歴史の偉人しりとりに励ませてもらっていました。正直な気持ちを申し上げますと、たかだか往復するだけの作業など普段の打ち込み稽古に比べればなんて事もない物なのですよね。

 

 

「宮本武蔵。それにしても、お前相変わらずスタミナえぐいよな。」

 

 

「渋沢栄一。貴方達は、常に筋肉を緊張させ過ぎなんですよ。筋肉の緊張と弛緩を、滑らかにすれば疲労も軽減できますよ。」

 

 

「千葉周作。簡単に言ってくれるぜ。」

 

 

そう話していると、つい先程まで隣に居た近藤さんの気配が消えていました。後ろを振り向くと、どうやら酸素欠乏症を引き起こして倒れたみたいですね。駆け寄ろうとしましたが、既に保険係の子が運ぼうとしている最中でした。

 

 

そうして120往復を超え、お互いに歴史の偉人の名前が出尽くしたところで、先生から強制的に走る事を辞めさせられたのでした。

 

 

数分後、全ての種目が終了した事が先生から告げられると、綾香さんと弥生が駆け寄ってきてくれました。

 

 

「海人君に、時雨君。お疲れさまやね~。」

 

 

「御水持ってきたわ。ゆっくり飲んでね。」

 

 

そう言って水を差し出してくださる彼女達の姿は、聖母か女神の様でした。そうして、彼女達から差し出された水を飲むと全身の細胞が蘇るような感覚に陥ります。

 

 

「それにしても、大丈夫やったん?なんか、近藤君と揉めとった感じやったけど。」

 

 

「大丈夫ですよ、特に実害は・・・。」

 

 

私がそう申し上げようとすると、海人が遮って事の成り行きを話し始めます。

 

 

「いや!実害ありまくりだったろ!!あの野郎、時雨にな・・・。」

 

 

その海人の説明が進むにつれ、綾香さんの顔がどんどん(しか)められたかと思うと掌で顔を覆ってしまいました。

 

 

「はぁ・・・?つまり健治は時雨君に、シャトルランに自分が勝ったら二度と私に近づくなって言ったの?私の事を、何だと思ってるのよ・・・!自分自身の付き合いは、自分で選ぶわよ!!」

 

 

そう憤慨する彼女に、私は思わず苦笑いをしてしまいます。

 

 

「私の為に怒ってくれて、有り難う御座います。」

 

 

そうこう話していると、私のクラスの生徒と海人のクラスの生徒が走り寄ってきました。

 

 

「水無月様!神宮寺様!!今回のスポーツテストの勝者は、どちらなのですか!?」

 

 

「見たところ、引き分けの様なのですが・・・。」

 

 

その言葉に、私と海人は顔を見合わせます。そうして、私のクラスと海人のクラスの成績で彼等が賭け事をしていた事を思い出しました。本来なら、ここで引き分けになったと伝えるべきなのでしょうが・・・。彼らの悲しむ顔を見たくない私は、とある提案を持ちかけます。

 

 

「単刀直入に申し上げますと、今回の我々の成績は互角。つまり、引き分けとなりました。それ故に、賭けは無効という事にさせていただきます。」

 

 

その言葉に、落胆の声が聞こえてきますが想定内です。海人と弥生と目配せをし、彼等が頷いた事を確認すると、私は話を続けます。

 

 

「ですが、不純な動機があったとは言えども、今回の皆さんの頑張りは十二分に評価できることだと思います。それ故に、学食の食券を我々生徒会で一人一枚奢らせて頂くという判断に成りました。希望者は、投票用紙に御自身の名前と御希望の献立を書いて、2年生の各クラスの教室前に設置している投票箱にお入れください。生徒会が、それらを回収して熟考した後に、食券を配布させて頂きます。投票期限は1週間後までです。」

 

 

私がそう申し上げると生徒達は歓声を上げ、どの様な食券を入れるのかと話し合っています。まぁ食券は高くとも600円程度ですから、私達3人がそれぞれ2万円程度出すくらいなら、どうという事は無いでしょう。

 

 

私達がそう話し合っていると、綾香さんが恐る恐る(たず)ねてきます。

 

 

「だ、大丈夫なの?この人数分を奢るとなると、もの凄い額になる様な気が・・・。」

 

 

「大丈夫やよ~。皆が笑顔に成るんやったら、この程度の出費は痛くも痒くもないわな~。」

 

 

「そうそう。綾香も何か食いたかったら、投票して良いんだぜ。」

 

 

その言葉に綾香さんはしばらく熟考しますが、緩やかに首を振ります。

 

 

「私は・・・遠慮しとくわ。お弁当作るのが好きだし・・・、今は時雨君に恩返しをしたいから。」

 

 

「私にですか?」

 

 

「えぇ、時雨君は嫌?私のお弁当食べるの・・・。一応、今日も作ってきたんだけど・・・。」

 

 

そう不安な顔で彼女は聞いてきますが、私はその言葉を否定します。

 

 

「いえ・・・恐悦至極に御座います。今日は、御昼休みが始まってからも生徒会室に居ります故・・・。昼餉に向かう際には、生徒会室にお越しになってください。」

 

 

「良かった・・・。じゃあ、今日の御昼休み楽しみにしててね。」

 

 

その言葉を聞くと、私は更衣室に行きシャワーを浴びた後に生徒会室に向かったのでした。




次回、幼馴染の思い
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