クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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海人視点です


幼馴染の思い

この日・・・、スポーツテストが終了した後の昼休み。この俺、神宮寺海人は生徒会室で突き刺さる様な視線を感じていた。その視線を向ける主は、俺の一番の親友であり幼馴染の水無月時雨だ。

 

 

俺と時雨と弥生は、赤ん坊の頃からの付き合いだ。俺達は日本三大企業の、令息と令嬢として生まれた。

 

 

俺達は明治時代から続く、三大旧華族って奴の末裔らしい。そんな俺達は、ガキの頃から家族のように育った。俺が馬鹿な事をやって、時雨がそれに怒って弥生が仲裁に入るのがお約束みたいなもんに成ってた。

 

 

俺達の人生は、幼稚園時代の頃から他とは違っていた。幼稚園の頃から受験をして、私立幼稚園って所に入園して、小学校も金持ちだらけの所に入校した。

 

 

けれども、小学校を卒業した頃に俺達3人はそれぞれの爺様方に呼び出された。なんでも、「偉く踏ん反り返る事だけが、会社を導く者の行動ではない。常に他者に敬意を払い、皆を導く者がこの国の経済を牽引するのだ。故に、庶民と関わる事も重要だ」ってな。

 

 

そんな中、俺は一抹の不安を抱いてた。弥生なら、持ち前の人当たりの良さで周囲に溶け込んでいくのは早いだろう。俺も、それなりに周囲と打ち解ける事の出来る程のコミュニケーション能力は持ち合わせていた。

 

 

問題は・・・、時雨の事に関してだった。

 

 

こいつは、とにかく超が付くほどの生真面目人間だった。今は、それなりに真顔でジョークを飛ばす様にはなったけど・・・。なんというか、生まれつき責任感が強過ぎる奴なんだ。

 

 

幼稚園で御遊戯会をした時なんかは酷かった。時雨が全体を取り仕切る指示係に着いてんだが・・・ある日突然、一人の園児が劇の最中に、機材の配線に引っかかって転んじまったんだ。勿論それは、そんな所に機材を出しっぱなしにしていた先生の責任だ。けれども、あいつは違った。

 

 

真っ先に転んだ園児の所に駆け寄って、保健室まで運んだ。そこまでは良かったんだが・・・その日から(しばら)くの間、自分を責めるようになってしまったんだ。

 

 

幸い誰も時雨を責めはしなかったし、御遊戯会の本番までにはメンタルも回復はしたんだが・・・。

 

 

(責任感が強すぎるのも、考えものなんだよなぁ・・・。)

 

 

そう溜息を吐きながら、未だに突き刺さる様な視線を送ってくる時雨の方を恐る恐る見やる。

 

 

(あの様子じゃあ、今朝の事もバレているな・・・。)

 

 

今朝俺は、時雨と綾香の両方に電話を掛けた。「学校近くの喫茶店に、行ってくれ。そこで面白いものが見れるぜ」ってな。時雨には、色々警戒されちまったが・・・。

 

 

なんで、綾香の電番を知ってるかって?俺のコミュニケーション能力舐めんなよ?

 

 

話を戻すが俺は敢えて、お互いが待ち合わせしている事は伝えなかった。サプライズの方が色々面白いからなぁ。そして、俺の狙い通りに二人は仲良く登校して来たらしい。

 

 

あぁ、因みに健治のクソ野郎が綾香にちょっかい出さないように、待ち合わせの近くに俺専属のSPを張らせてたけどな。

 

 

何故、そんな事をするのかって?決まってんだろ!俺は、時雨に青春を楽しんで貰いたいからだよ!!

 

 

こいつは!青春を楽しまない!!学園祭の打ち上げのときなんかは、クラスの奴らと飲食店なんかに行ったりするけど、プライベートでは絶対に遊ばない!!

 

 

ゲーセンやカラオケ!!そんな青春の思い出が作れそうな場所には、一度も行った事が無いのかもしれないくらいには生真面目過ぎる!!もちろん、生徒会の仕事も大事だ!だが、それ以前に俺達は学生!そうだろう!!

 

 

だが、生真面目で頑固なこいつにストレートに青春を送れと言っても、こいつは絶対に耳を持たない。いや、それどころか・・・

 

 

『青春?そんなものを送る暇があるなら、生徒達が快く学生生活を送れるように考えた方が良いですよ。』

 

 

こんな台詞を吐くのは目に見えている。

 

 

そんな状況に、毎日俺が頭を抱えていると転機が訪れた。どうやら、学校一のギャルである桐野綾香が近藤健治と別れたという情報が時雨から入った。まぁ、俺達が無理矢理聞き出したんだけどな。そんな状況に、綾香には悪いがこの状況を利用させて貰う事にした。

 

 

(傷心中の綾香に対して、世話焼きの時雨は色々と世話を焼くだろう。そして、お互いその内親密に成って・・・。付き合う事ができるのが、ベストなんだけどなぁ・・・。)

 

 

そう考えながら、俺は未だに俺を睨みつけてくる時雨の方を見やる。

 

 

(この様子じゃあな・・・。時雨はまだ、綾香に惚れてる訳じゃなさそうだ。)

 

 

そう考えていると、先程まで黙っていた時雨がようやく口を開く。

 

 

「海人・・・。先程の体育の授業では聞きそびれましたが、今朝のあれは如何いうつもりだったのですか?」

 

 

「け、今朝の?何の事だ?」

 

 

「とぼけないでください。綾香さんの背後に、貴方の護衛を付けていたでしょう?」

 

 

「あー・・・。そ、それはあれだ!ほら、健治の奴が綾香に絡んだりしたらまた面倒臭い事に成るだろ?それでだよ。要は健治除けだ!」

 

 

そんな俺の言葉に、時雨はますます怪しそうな顔に成る。だが、ここで俺の策略を話す訳にはいかない。今回の様なチャンスは二度とやってこないだろう。この機を逃せば、時雨は卒業まで生徒会室に閉じこもって青春を楽しむ事は出来なくなってしまう!!

 

 

それ故に、今回の作戦・・・。題して「時雨と綾香をくっつける作戦」がパーになったらお終いだ。

 

 

因みに、今回の作戦内容は弥生にも話してある。弥生も弥生で、生真面目過ぎる時雨に頭を悩ませていたそうだ。

 

 

「それにしても、どうだったんだ?朝の通学路は、いつもとは新鮮だったろ?」

 

 

「そうですね。おかげで、生活リズムが崩れそうになりますよ。」

 

 

時雨はそう皮肉って来るが、生憎今の俺はハイなんだよ!

 

 

・・・しかし、問題は山積みだ。恋人関係に持っていく為には、この二人の交友を育ませなければならない。そして、こいつは前述したように超が付くほどの仕事人間。まともな方法では、こいつに青春を味わわせる事は出来ないだろう。

 

 

(だが、だからこそ面白い!!ガチガチに固まったこいつの脳を、綾香とぶつける事でどういった化学反応を起こすのか・・・。俺はそれが見たい!!そして、こいつに青春の楽しさを味わわせてやりたい!!)

 

 

「全く・・・綾香さんにまで、迷惑を掛けて・・・。」

 

 

「けど、楽しかったか楽しくなかったかで言えば?」

 

 

「何故、その二極化された選択肢しかないんですか・・・。まぁ、新鮮ではありましたよ。」

 

 

「だろう?」

 

 

俺がそうドヤ顔をすると、時雨は苦虫を噛み締めたような顔に成る。その様子を見た俺は、あと一押しと思い話し掛けてみる。

 

 

「なぁ、時雨・・・。」

 

 

「結構です。」

 

 

「まだ、なんも言ってねぇだろ。」

 

 

「どうせ、『今の綾香はフリーなんだから、付き合ってみたらどうだ?』などと仰るのでしょう?」

 

 

「なんで分かったんだよ!」

 

 

「何年の付き合いだと思ってるんですか?あなたの考えてる事など、手に取るように分かります。・・・海人。綾香さんはロクでもない男とはいえ、恋人に傷つけられたばかりなのですよ。そんな彼女の弱みにつけ込むような真似をすれば、私は近藤さんと同類になってしまいます。それだけは嫌なのです。」

 

 

その言葉に、今度は俺が苦虫を噛み潰したような顔に成る。しかし、ここで先程まで俺達の話を聞いていた弥生から援護射撃が撃たれ・・・。

 

 

「まぁまぁ、二人ともいったん落ち付きぃや。海人君も綾香ちゃんの事思って、SPの人達を配置したんやしなぁ~。まぁ、朝っぱらから電話した事は咎められるべきやけど。」

 

 

いや、援護射撃は撃たれなかった!それどころか、更に咎められてしまった!!

 

 

や、弥生・・・。お前だけは俺の味方だと思ってたのに!!そうして、俺は親友からはジトリとした目で睨みつけられ、恋人からは(たしな)められるという地獄を味わおうとしていた。しかし次の瞬間、俺の下に救世主が現れた。

 

 

「あの~・・・。時雨君、居る?」

 

 

そこに居たのは、絶賛俺達二人が時雨とくっつけさせようとしている当の本人である桐野綾香だった!彼女の登場に、俺の顔は歓喜に満ちる。

 

 

「おう!どうしたどうした!!」

 

 

「あ、いや・・・。そろそろお昼だから、植物園でお弁当食べたいんだけど・・・。」

 

 

その言葉に俺と弥生は大きく頷いて、机に座っている時雨を立たせてから背中を押して綾香の方へと連れて行く。

 

 

「ええやんええやん、時雨君と二人っきりで行ってきぃな。」

 

 

「健治に鉢合わせないようにな!」

 

 

「え?二人は一緒に食べないの?」

 

 

そう綾香は首を傾げるが、俺達はお前ら二人をくっつける為に動いてるんだ。一緒に食べに行ったら、折角の二人っきりのムードが台無しに成っちまうだろ?

 

 

「俺達は、生徒会室で食べるから気にすんなよな。」

 

 

「そうそう、気ぃ付けてな~。」

 

 

その言葉に、二人は首を傾げながら生徒会室を出て行く。そうして、二人っきりになった俺と弥生はグータッチをして互いに目配せをする。

 

 

「分かってるな、弥生。」

 

 

「もちろんや。あの二人の事、絶対にくっつけたろな。」

 

 

そう目配せをした後、俺は生徒会室のドアの方をじっと見やる。時雨・・・俺達がやろうとしてんのは、有難迷惑かもしんねぇし、俺の自己満足だ。

 

 

けれども、俺はお前に仕事ばっかりじゃなくて「青春」を楽しんでほしいと心の底から願ってる!

 

 

だから、覚悟しとけよ!お前ら二人を、完璧にくっつけてやるからな!!

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