クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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クズ男との関係を断ち切るギャル

「ふふっ・・・、今日の時雨君も凄かったわね。」

 

 

学校が終わり、家に帰宅してお風呂に入っていた私は湯舟の中でニヤニヤしながら天井に舞い上がる湯気を見ていた。

 

 

今日はまた、時雨君の新たなる一面を見る事が出来た日だったと思う。

 

 

スポーツテストではあの小さな身体からは想像できない程の高得点を叩き出し、シャトルランではしりとりをしながら走り続けるという芸当までやってのけた彼のスペックに、私は舌を巻くばかりだった。

 

 

(本当に、住んでる世界が違い過ぎるわよね・・・。)

 

 

そして、更に驚いたのはスポーツテストが終わってからの彼の手腕だった。私は詳しいことは知らなかったけど、どうやらクラスの皆は海人君と時雨君のどちらが勝つかで賭け事をしており、負けたクラスは食券を勝ったクラスに奢らなければならないという賭けをしていたらしい。

 

 

しかし、結果は引き分けに終わってしまい生徒達は落胆していたの。けれども、彼ら三人は生徒の頑張りを考慮して自費で食券を奢るという御褒美を提示したのだ。

 

 

(何と言うか・・・。カリスマ性が凄いって言うか、人心掌握術が凄いわよね・・・。やっぱり、ああいったタイプの人が社会で成功するのかしら?)

 

 

そして、御昼休みにも私が作ってくれたお弁当を心の底から美味しそうに食べてくれた。その後は、御昼休みが終わるまで他愛もない会話を楽しむ事が出来た。

 

 

(何と言うか・・・。時雨君と一緒に居ると、心が安らいでくるのよね。不思議な子だわ。)

 

 

そう思いながらも、私の頭には次々と時雨君の顔しか思い浮かんでくる。彼のクールな表情に柔らかな笑顔、ムッとした時の表情に恥ずかしがる顔。そんな彼の表情を頭に浮かべる度に、私の胸は温まり自然と笑みが溢れてくる。

 

 

(不思議ね・・・。まだ、マトモに話してから一週間も経ってないのに・・・。もう、彼の事で頭がいっぱいよ。)

 

 

そう思いながら、私はスマホのメッセージアプリを開いてアイコンを確認してみる。すると、トーク欄の一番上には時雨君のアイコンが映し出されていた。アイコンに表示されている三線は、おそらく年季が入ったものだとは思うけど、とても綺麗な状態で写されていた。

 

 

それを見た私は、想像を膨らませてみる。三線を奏でる時雨君は、どんな姿なのだろうと。

 

 

(偏見かもしれないけど、縁側とかで演奏してるのかしら?きっと、もの凄い綺麗な音色なんでしょうね・・・。今日のお昼みたいに、音楽に釣られた動物とかがやって来たりして。)

 

 

小動物達に囲まれながら演奏する時雨君を想像した私は、思わずクスッと笑ってしまう。まるで、動物使いの様になっている彼が面白く感じたからだ。そのとき、私のスマホから通知音が鳴る。

 

 

私は急いでお風呂から出て、メッセージ内容を確認すると時雨君からだった。

 

 

『こんばんわ。試験的に、文を送付させて頂きました。届いていますでしょうか?』

 

 

そう書かれたメッセージは、何処か堅苦しいものだったけど彼らしいメッセージにクスリと笑ってしまう。そして彼自身、堅苦しいと感じたのかは分からないけれど、疑問符を浮かべた可愛らしい狐のスタンプが送信されてくる。

 

 

『届いてるわよ。このスタンプ可愛いわね。』

 

 

『有り難う御座います。実は、敬語口調が携帯で文を打つ際にも出てしまうので・・・。少しでも、柔らかい雰囲気を(かも)し出せるようにと弥生にスタンプを送る様に申し付けられているんです。』

 

 

『なるほど、確かにギャップがあって良いかもしれないわね。』

 

 

『それで本題なのですが、本日申し上げられていた"たぴおか"の件なのですが・・・。いつ頃に食しに行きましょうか?』

 

 

そのメッセージの後に、今度はワクワクと目を輝かせる狐のスタンプが送られてくる。今は見えないけど、画面の向こうの彼も同じ様な気持ちになってるのかと思うと、ほのぼのした気持ちになってくる。

 

 

『そうねぇ・・・。明日の8:00に集合してブラブラ歩きながら、タピオカ屋さんに行くのとか良いかもしれないわね。』

 

 

そうしてメッセージを返信しようとすると、画面の上側の通知バーに雰囲気の違うメッセージが表示され、私は濡れた指が滑ってそこをタップしてしまう。そのメッセージの送り主は・・・健治だった。

 

 

『おっす、綾香!!今暇か?今度の休み、遊びに行かね?この前の話し合いは、御互いに言葉足らずだった事もあったしさ!ゆっくり腰据えて、腹割って話そうぜ!!また、水無月のチビ野郎に邪魔されたら最悪だしな!!というか、お前も優しいよな~。あんなチビ野郎に構って、夢見させてやってんだから。というかアイツ、家柄が良いからって調子に乗ってるよな!お前も、さっさと縁切った方が良いぜ!どうせ、あんな金持ちなんて心の中では庶民の事を見下してんだからな!』

 

 

その文面を見て一瞬呆けた後、私は怒りのあまり頭に血が昇って逆上(のぼ)せそうになる。

 

 

「時雨君が調子に乗ってる・・・ですって?馬鹿も大概にしときなさいよ!!あの子以上に、思慮深い子なんて居ないわよ!!それに、少なくともあんたみたいな奴なんかよりは1億倍マシよ!!」

 

 

あまりの傍若無人っぷりに健治も居ないのに、私は大声を出してしまった。一瞬、リビングに居る家族達に聞かれていないか心配になったが、どうやら聞かれてはいないようで誰も浴室には来なかったわ。

 

 

「せっかく、時雨君と話してたのに・・・。ってあれ?・・・よくよく考えたら健治の連絡先、ブロックしといた方が良いんじゃない?」

 

 

どうして、今まで気付かなかったのかしら。ブロックさえしておけば、学校で会わない限り健治と関わる事も無くなるじゃない。そう考えた私は、ブロックしようとするが、苛ついて指の動きの精度が下がっていたのと、水滴が付いた指で操作した為、誤反応で怒った絵文字を送ってしまい、既読も付いてしまった。

 

 

(うわ・・・、最悪。よりによって絵文字とか、「私、怒ってるんだからね!プンプン!」みたいな感じに成っちゃうじゃない・・・。・・・まぁ、どうでもいっか。どうせブロックするんだし。)

 

 

そうして、健治の返信が来るのを待たずに速攻でブロックをする。そして、電話帳からも完全に電話番号を消去して着信拒否設定にして一切の連絡手段を絶ってやる。

 

 

「はー・・・、清々したわ。取り敢えず、外で会わない限りはストレスが溜まる事は無さそうね・・・。」

 

 

そう考えた私は、時雨君に対して送り損ねた『そうねぇ・・・。明日の8:00に集合してブラブラ歩きながら、タピオカ屋さんに行くのとか良いかもしれないわね。私達が初めて会った、喫茶店前で集合は?』というメッセージを送る。

 

 

そうすると、数分後に『分かりました。楽しみにしておきますね。』というメッセージと共にワクワクしている狐のスタンプが送られてきたわ。そのスタンプに、思わず顔を(ほころ)ばせてしまう

 

 

それにしても、健治に対しては本当にイライラする。中学の頃から私の事を裏切り続けて、挙句の果てには浮気相手を交えて性行為に及ぼうなんて誘ってくるなんて・・・。けど、今回のメッセージでハッキリしたわ!私、思いっきりナメられてるって!!

 

 

多分だけど。時間を置いて機嫌を取れば、なぁなぁにして許してくれるとでも思ってるんでしょうね。

 

 

たしかに、これまでの私なら、なぁなぁにして今回の一件も終わらせてたと思うわ。

 

 

だけど、私は知ってしまったのだ。本当に優しい言葉を掛けてくれる存在を。他者を思いやり、敬う事を何よりも大切にしている素敵な男の子の事を。

 

 

フラれてまだ間もないのに他の男の子を好きになるなんて、みっともない事なのかもしれない。健治と同じ穴の(むじな)だと言われるかもしれない。

 

 

私自身、新しい恋に踏み切っても良いのかどうかは分からない。それ以前に、彼が私の事をどう思ってくれているのかどうかさえも分からない。

 

 

だからこそ、傍に居て確かめたいのだ。あの、男の子に対する感情を。ただの友情なのか、それとも・・・新しい恋心なのか。

 

 

「時雨君・・・。」

 

 

そう名前を呟くだけで、私の冷めきっていた心は温かくなっていく。

 

 

彼の笑う顔をもっと見たい。彼の凛々しい顔を、もっと近くで見てみたい。彼の可愛らしい声を聞きながら、何気ない会話に華を咲かせたい。

 

 

そう思うだけで私の心はグツグツと煮えたぎり、身も心もドロドロに溶かしてしまいそうだ。

 

 

(はぁ・・・。まぁ、これで一段落着いたとでも考えましょう。健治・・・いや、"あの男"との幼馴染としての縁も元恋人としての縁も、これで終わりね。)

 

 

そう思いながら、私はパジャマに着替えてベッドに行って眠りに入ろうとする。

 

 

(明日はデート・・・、じゃなかった。時雨君に、タピオカをレクチャーしてあげる日なんだから予習とかしといた方が良いわよね。というか、どんなタピオカが好みなのかしら?和風テイストでいけば、抹茶オレのタピオカもあるし、黒蜜タピオカなんてものもあるわね。あとは・・・。)

 

 

そう考えている内に、私は睡魔の波に飲み込まれてしまいスマホを手放したまま眠りについたのだった。




次回、クズ男視点です
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