クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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初めてのタピデビュー

この日、私は箪笥(たんす)の前で途方に暮れていました。

 

 

先日、綾香さんと連絡先を交換した際に"たぴおか"なる物を飲みに行こうと約束した為に私は外出用の服を吟味していました。

 

 

そして、出掛けるからにはそれなりの恰好をしなければいけないとは分かってはいるのですが・・・。

 

 

「着物しかありませんね・・・。」

 

 

そう、私の私服は生憎ながら和服しかないのです。そもそも、今までは生徒会の仕事で忙しく、誰かと遊びに行くなどという経験はありませんでしたし、遊びに行ったとしても学校行事の祝賀会の様なものだったので、制服を着たまま遊びに行っていました。

 

 

ですが、今回は全く違います。学校行事などは関係のない私的な外出・・・、更には女性との二人きりでの出歩きでもあります。それ故に、彼女の隣で歩いても違和感のない服を選ぼうとしたのですが、箪笥の中には着物しかありませんでした。

 

 

(使用人の方から、衣服を貸してもらいましょうか・・・。いや、そもそも彼等の体躯と私の体躯では大きさに差異があり過ぎますね。そもそも、この屋敷の中で洋装をしている者など見た事がありませんし・・・。)

 

 

そう考えている間にも、約束の時間は刻一刻と迫っています。その現実に焦燥感を抱いた私は、どうにでもなれという思いで木綿で出来た水色の着物を手に取り着替えます。そして、朝餉(あさげ)に漬物と握り飯を口に運ぶと、下駄(げた)を履いて家を飛び出しました。

 

 

そうして数分後、私は森林を抜けて大通りに出ます。そこには大勢の人が闊歩しており、皆々笑顔を浮かべて歩いておられました

 

 

(物凄い人の往来ですね・・・。本日は休日だからでしょうか?)

 

 

そう思いながら、私は約束の喫茶店前に到着します。そうして暫く待っていると、突然私の視界が暗闇に覆われました。何事かと思い、首を捻ろうとしても頭を固定されているのか動かせません。それに、なにやら後頭部に柔くフカフカした物が当たっています。

 

 

そう私が困惑していると、耳元で息遣いと共に声が掛かります

 

 

「ふふっ・・・だーれだ?」

 

 

「ひっ・・・!!そ、その声・・・綾香さんですか?」

 

 

「せーいかい。御待たせ、待った?」

 

 

その声と共に、私の視界が晴れていきます。そして後ろを振り向くと、そこに居られたのは綾香さんでした。しかし、いつもと違うのはその服装です。

 

 

彼女の服装は・・・。なんと言いますか、肌の露出が高いものとなっていました。胸元には白い布が巻かれているものの腹部は露出している状態で、そこに黒い革製の上着を羽織っていました。

 

 

(かような服装は、何と言うのでしょうか・・・?弥生なら、知っているのかもしれませんが・・・。)

 

 

私がそう首を傾げていると、彼女は困った様に笑いながら少し頬を染めて話しかけてきます。

 

 

「あ、あの・・・。露出の高い服を着て来て言うのもなんだけど、あまりジーッと見られたら恥ずかしいわ・・・。」

 

 

その言葉に、私は反射的に頭を下げてしまいました。いくら物珍しい服装だったとしても、女性の体を長時間眺めるなど失礼極まりない行為だからです。

 

 

「も、申し訳ありませんでした・・・!」

 

 

「き、気にしないで!もしかして、こういうファッションは珍しく見えるの?」

 

 

彼女のその言葉に、私は正直に頷きます。

 

 

「は、はい・・・。本日もそうですが、普段着は和装しか持ち合わせていないので・・・。家族や、女中さん方も和装でいる事が多いですから・・・。」

 

 

「あ〜・・・成程。だから、水色の着物を来てるんだ。洋服は苦手だったりするの?」

 

 

彼女のその言葉に、私は少し考え込んだ後に正直に頷いて話し始めます。

 

 

「はい・・・。流石に学校では、指定の制服を着なければいけないので洋服を着ていますが、休みの日などは(もっぱ)ら和服で過ごしています。洋服は、締め付けられる感覚がありまして・・・。」

 

 

「確かに、和服は袖口とか襟元に余裕があるから風通しが良さそうね。」

 

 

「申し訳ありません・・・。本来なら洋装が適しているのでしょうが、気が利かずに・・・。」

 

 

私がそう頭を下げると、彼女は手を振って話し始めます。

 

 

「大丈夫、大丈夫!そもそも昨日、急に誘った私が悪いんだから!それに似合ってるわよ、その着物姿。」

 

 

「あ、ありがとうございます。綾香さんも、その服装がよくお似合いです。」

 

 

「ありがと。因みに、こういう服はチューブトップスって言うのよ。」

 

 

チューブトップス・・・。トップスというのは上半身に着用する衣服の事を指し、チューブというのは管を意味したはず・・・。なるほど、管の様に上半身を包み込む事から名付けられたのでしょうね・・・。そう思っていると、彼女が私に手を差し出してきました。

 

 

「ほら、手を繋いで行きましょ。今日は、私が貴方をエスコートしたいんだから。」

 

 

「分かりました、色々教えてくださいね。」

 

 

そう言いながら彼女の手を握ると、彼女は私の歩幅に合わせるようにゆっくりと歩いてくれます。そうして、しばらく歩くと煌びやかな配色が施された店舗が目立ってきました。そして、そこには恋人同士であろう男女の方々や、綾香さんと似たような服装をしている女性達が多く居らっしゃいます。

 

 

(色彩が豊かな店が多いですね・・・。)

 

 

そう思いながら、私は少し目を細めてしまいます。そもそも、あまりこういった煌びやかな店舗には来た事が無いので、脳が混乱しているのでしょうか?

 

 

「大丈夫?目がショボショボしてるわよ?」

 

 

「だ、大丈夫です!少し、脳が驚いてるだけですから・・・。」

 

 

「ちょっと、目がチカチカしちゃった?」

 

 

「いえ!問題ありません!暗闇で目を凝らすと夜目が効くように、これも恐らく慣れれば大丈夫に成りますから!」

 

 

そう言うと私は心を落ち着かせながら目を閉じ、もう一度ゆっくりと目を開きます。すると、先程までの刺激が幾分か和らいできたようです。

 

 

「ふぅ・・・。御心配をお掛けしました。」

 

 

「本当に?辛くなったら、いつでも言ってね。」

 

 

「はい、承知いたしました。」

 

 

そうして再び歩を進めると、綾香さんがとある店の前で立ち止まりました。そこの看板には、綾香さんの連絡先の写真に載っていた"たぴおか"と同じ写真が貼り出されていました。

 

 

「あの、綾香さん・・・。もしかして、ここが件の店舗なのでしょうか?」

 

 

「えぇ。ここが、タピオカ専門店よ。とはいえ・・・、まぁまぁ並んでるわね。ブームはもう去ったのに、二次ブーム再来ってところかしら?」

 

 

「そうですね・・・。ですが、待ち時間が長い方が私は好きです。こうして、何を飲もうか考える時間が設けられますし、待てば待つほど期待値は上がりますからね。」

 

 

「分かるわ!こうやって、待ってる時間が何気に楽しいのよね!あ、そういえば・・・。」

 

 

そう言いながら、彼女は鞄から携帯端末を取り出すと私に画面を見せてきました。そこにはメモ帳アプリが映っており、"抹茶タピオカ"や"黒糖タピオカ"などの文字が書いていました。

 

 

「実は昨日、時雨君の口に合いそうなやつをチョイスしてみたの。抹茶タピオカとか、好きそうかなって思ったんだけど如何かしら?もちろん、時雨君の意思を尊重するけれども・・・。」

 

 

「そうですね・・・。私は、"たぴおか"は初体験ですので綾香さんのオススメを飲んでみようかと思います。強いて希望を申し上げるなら・・・、甘さは控えめで・・・。」

 

 

「オッケー!時雨君のタピオカデビューが成功するような、最高のチョイスをしてあげるわ!!」

 

 

そうして、数十分ほど他愛のない会話をしていると遂に私達の番がやってきました。そうして、店員さんに綾香さんは話し掛けて詰まる事なく注文を済ませます。

 

 

「すみません。宇治抹茶タピオカに苺ミルクタピオカを1つずつください。それから、宇治抹茶タピオカは甘さ控えめで御願いします。」

 

 

「分かりました、御注文を繰り返します。甘さ控えめの宇治抹茶タピオカに、苺ミルクタピオカですね。少々お待ちください。」

 

 

店員さんは綾香さんの注文を復唱すると、店の奥に注文を伝達します。そして、数分後には私と綾香さんに注文した品を提供してくださいました。そして、綾香さんは私に宇治抹茶タピオカを手渡してくださいます。

 

 

「はい、宇治抹茶タピオカよ。飲んだら、感想聞かせて?」

 

 

「分かりました。では・・・、いただきます。」

 

 

そうして私は、恐る恐るストローに口を付けて吸い始めます。・・・今思えば、ストローで飲み物を飲んだ経験も片手で数えるほどしかありませんでしたね・・・。そう思いながら、抹茶を飲んでいると口内に塊が入ってきました。

 

 

(この口の中に入って来た物・・・。これが、タピオカですか!)

 

 

そう思いながら、恐る恐る噛み締めてみるとモチモチとした食感が伝わってきました。・・・何と言いますか、病み付きになりますね・・・。

 

 

「その口の動きからして、タピオカが入ってきたんでしょ?どう?初めて食べた感想は?」

 

 

「上手く言葉にして表せませんが、芋餅の様な食感ですね。」

 

 

「プッ!・・・い、芋餅・・・。あながち、間違いじゃないけど。」

 

 

「そうなのですか?」

 

 

私がそう首を傾げると、笑いを抑え込んだ彼女は詳しく教えてくれました。

 

 

「タピオカの原材料は、キャッサバっていう芋のデンプンで出来てるのよ。原産地は・・・何処だったかしら?」

 

 

その言葉に、私は携帯端末で調べ始めます。すると検索結果が表示され、私はそれを読み上げます。

 

 

「調べたところ、中南米が原産地らしいですね。乾燥地帯に強い植物で、飢饉(ききん)耐性作物として注目を集めているそうですよ。」

 

 

「へぇー。確かに、乾燥地帯に強いなら雨が降らなくなったりとかの異常気象が起きても大丈夫そうだものね。」

 

 

「そうですね。・・・それにしても、もともとの色は白色なのですね。着色料で、色付けをしているのでしょうか?」

 

 

「みたいね、カラメルで色付けしてるらしいわよ。」

 

 

「待ってください!こちらの記事には、イカ墨で着色されていると書かれていますよ!?その所為で、甲殻類アレルギーの既往歴のある方が、アナフィラキシーショックを発症してしまったと書かれています!!」

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

タピオカを飲みに来ただけだというのに、いつの間にかタピオカ雑学を調べている私達でしたが我に返ると顔を見合わせて笑い合ってしまいました。

 

 

「ま、まさか・・・タピオカを飲みに来ただけで、ここまで白熱しちゃうなんてね。」

 

 

「そうですね、つい白熱してしまいました。」

 

 

そして、ひとしきり笑い合うと綾香さんが首を捻り始めます。

 

 

「それにしても、これからどうしましょう?時間的に、お昼御飯まで時間はあるし・・・。あ、映画とか見に行かない?」

 

 

「映画ですか?私は構いませんが・・・。昨今の映画事情が分からないのですが、どの様なものが上映されているのでしょうか?」

 

 

「うーん・・・。そうねぇ・・・、これとかはどうかしら?」

 

 

そう言って彼女が差し出してきた携帯端末を拝見すると、そこには数台の車とその傍で腕組みをしていらっしゃる俳優さん方が居ました。顔立ちからするに、西洋の映画でしょうか?

 

 

「これは・・・?」

 

 

「私も詳しくは知らないけど、ネットによると元MI6のエージェントと元CIAの敏腕捜査官が手を組んで巨悪を倒す映画らしいわ。カーアクション映画って感じかしら?」

 

 

「つまり、勧善懲悪といった作風でしょうか?」

 

 

「そうね。実力派の人気俳優たちが起用されてるし、見応えは抜群よ。とはいえ・・・、私も見るのは初めてなんだけど。」

 

 

「題名を調べてみたところ、かなりの数の作品が公開されていますね・・・。現在公開されているのは、番外編と言ったところでしょうか?」

 

 

「そうね、運が良い事にスピンオフ作品だからシリーズを履修してなくても、それなりに楽しめるはずよ。どうする?見に行ってみる?」

 

 

その言葉に、私はしばらく考え込みます。普段から私が見ている映画は時代劇などの日本の作品ばかりで、自宅のテレビで見てばかりでした。しかし、たまには西洋の映画を映画館で見てみるのも一興と言えるのかもしれません。

 

 

「分かりました。興も湧きましたし、見てみたいです。」

 

 

「決まりね!それじゃあ、映画館に急ぎましょう!!」

 

 

そう言うと、彼女は私の手を握って歩き出したのでした。




両者とも良い顔して飲んでいたようです。


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