クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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映画の後は、喫茶店での謝罪

タピオカを飲み終わった私達は、映画館へと向かっていました。どうやら綾香さん曰く、映画館は大型商業施設の中に設けられているそうです。普段から映画を見に行かない私は、そんな説明を聞きながら、カルガモの(ひな)の様に彼女に付いて行きます。

 

 

そうして、数十分後。私と綾香さんは映画館に到着いたしました。

 

 

「ここが映画館・・・。なにやら、気が高揚してきます。」

 

 

「分かるわ!映画館って、入った瞬間からワクワクしちゃうのよね!」

 

 

「なにやら、良い香りもしてきます・・・。食欲をそそられる様な・・・。」

 

 

「ポップコーンの香りね!映画と言えば、ポップコーンよ!!良かったら買ってみる?」

 

 

「・・・そうですね。映画の券を購入した後に買いに行きましょう。」

 

 

そう言うと、私達は映画の座席券を券売機で購入します。幸いだったのは、二人で隣同士になれる席が取れた事でした。そうしてチケットを購入した私達は、映画館の席に向かい始めます。

 

 

「良かったわね、隣の席同士に成れて。」

 

 

「はい!良かったです!・・・それにしても、白のポップコーンは見た事があるのですが茶色のポップコーンは一体?」

 

 

「それは、キャラメル味よ。どうせなら味変もしたいし・・・。シェアし合いましょうね。」

 

 

そう言いながら、私達は指定された席に座ります。そこは列の真ん中より、やや前あたりの席でした。

 

 

「フゥー・・・緊張しますね。あと、十分ほどで始まるのでしょうか?」

 

 

「正確に言うと、始まるのは本編じゃなくて予告編とか上映中のマナーね。取り敢えず、始まる前とはいえ静かに話し合いましょう。」

 

 

「そ、そうですね・・・。」

 

 

そうして話し合っていると、客席がどんどん埋まっていき上映が開始されました。そうすると、綾香さんの言う通り始まったのは映画ではなく、上映中の注意事項や他の映画の予告が主となっている様です。その中には、私が幼少の頃に見ていた時代劇もありました。どうやら、作品内容を一部修正して再上映するようですね・・・。

 

 

「そろそろ始まるわ・・・。楽しみね。」

 

 

「はい・・・。上映が終了した暁には、感想を述べあいましょう。」

 

 

そう言い終わると、館内に居た方々も静かに成ります。そして、上映が始まったのですが・・・。流石は洋画と言ったところでしょうか。様々なカーアクションと共に、車が大破していく映像が流れていきます。それに、綾香さんが本作の主人公だと仰っていた二人の男性は・・・。どうやら、あまり仲が宜しくないという設定です。

 

 

(こ、これは中々・・・。今まで見てきた時代劇などとは、別の意味で凄い映画ですね・・・。それにしても、この主役の方々は犬猿の仲のようですが、この様な関係性で巨悪に立ち向かえるのでしょうか?)

 

 

そんな普段から見慣れない場面が続くと少し緊張してしまい、私は思わず両の手を震わせてしまいます。そのとき、私の右手が温かいものに包まれました。

 

 

「時雨君、大丈夫・・・?怖い?」

 

 

「だ、大丈夫・・・ではないかもしれません。」

 

 

「ちょっと、刺激が強すぎるかもしれないわね。大丈夫よ、手を握っててあげるから。」

 

 

そうウインクをする彼女に、私の心は段々と解れていきます。そうして、映画はいよいよ終盤に差し掛かり二人の主人公が大雨が降りしきる中、肉体改造手術を受けた巨悪と殴り合いを始めます。映画の序盤では、互いに罵り合っていた二人が連携を取りながら巨悪に立ち向かう姿に、私は高揚感を覚えます。

 

 

(凄いです・・・。これが、映画館で見る迫力・・・!)

 

 

そして、戦いが終わり主人公達は元の日常に戻って行くという場面で物語は終了しました。そして、映画館に居た人たちも続々と退出していきますが、私は興奮が冷めずに中々立ち上がる事が出来ませんでした。そんな私を、綾香さんは微笑みながら見てくださいました。

 

 

そして、数分後・・・。ようやく落ち着いた私は、映画館から出て彼女と歩き始めます。

 

 

「どうだった?初めての洋画と、映画館は。」

 

 

「何と言いますか・・・。物凄く、気分が高揚しています。鼓動が速くなって、頬が上気して・・・。」

 

 

「そう、気に入ってくれたみたいで良かった。」

 

 

そう言うと、彼女は私の頭を撫で始めました。その仕草に、何故か私の頬は更に上気していきます。何故でしょうか・・・?そう考えていると、突然何かを思い出したかの様に彼女が話し始めます。

 

 

「あ・・・、そういえばなんだけど・・・。この後、喫茶店に行きたいんだけど良いかしら?」

 

 

「喫茶店ですか?」

 

 

「そうなの。ほら、健治と別れたときの喫茶店。その・・・、あの日は喫茶店のマスターさんに迷惑掛けちゃったかもだし・・・。あと、もしかしたらボーっとしたまま御店を出た所為で、無銭飲食しちゃったかもしれないし・・・。」

 

 

「なるほど・・・。マスターなら、そこまで気にしてはいないかもしれませんが・・・。」

 

 

「マスターさんが気にしてなくても、私が謝りたいのよ。ケジメっていうか・・・。」

 

 

そう恥ずかしがりながら仰られる彼女の姿に、私は何故か微笑んでしまいます。そうしていると、彼女は改めて質問をしてきます。

 

 

「あのさ、時雨君。マスターさんの好きな御菓子とかって何か分かる?」

 

 

「はい・・・?マスターは、五三焼きが好みですね・・・。喫茶店から少し離れた甘味処に売っていますし、買っていきましょうか?」

 

 

「因みに、五三焼きって・・・?」

 

 

「高級カステラの事です。生地に使用する卵黄と卵白の割合が、5対3の割合で使用されているものですね。お値段は安いものでも千円以上はしますね。」

 

 

私がそう申し上げると、彼女の顔が一瞬引き攣りましたが何とか声を絞り出しました。

 

 

「せ、千円・・・。い、いや、謝罪に行くんだからその程度の出費は当然よね。というか、値段を気にしてる時点で謝罪の気持ちが無いとか見なされちゃうわよね・・・。」

 

 

「あの・・・。私の方からも、幾らか出しましょうか?」

 

 

「気持ちだけもらっておくわ。幸い財布の中には、まだお金はあるし。」

 

 

彼女のその言葉にうなずくと、私達二人は甘味処に向かって歩を進めたのでした。

 

 

・・・そうして数分後、甘味処から出た彼女は呆然とした表情をしながら紙袋を持つ手を震わせていました。その隣で、私は精一杯に頭を下げます。

 

 

「か、カステラ・・・十個入りで三千円越え・・・。十個で三千円・・・。」

 

 

「本当に申し訳ありません・・・。まさか、一番安価な物が売り切れているとは思いませんでした・・・。」

 

 

「コンビニのカステラなんて、三個入りで二百円ちょいなのに・・・。高級な御菓子屋さん、恐るべしだわ・・・。」

 

 

そう愕然とする彼女に苦笑しながら、私達は喫茶店・・・『泡沫ノ夢』へと向かいます。そうして店の中に入ると、お客さんはまだ来ていないようでマスターがカウンター内で新聞を読んでいらっしゃいました。しかし、私達が来た事を知らせる扉の鈴が鳴ると、マスターは顔を上げて出迎えてくださいました。

 

 

「いらっしゃい・・・。おや、時雨君じゃあないか。それに、隣に居る女の子はたしか・・・。」

 

 

「マスター、こんにちは。少しお時間宜しいでしょうか?実は、彼女からマスターに御話しがあるらしくて。」

 

 

私がそう言うと、マスターはにこやかな顔で綾香さんに話し掛け始めます。マスターのその声は、とても穏やかで聞いている者の心を解してしまいそうな声色です。

 

 

「いらっしゃい。私に用があるようだけど、どうしたのかな?」

 

 

マスターのその言葉に、綾香さんは緊張していたようですが深呼吸をすると頭を下げて話し始めます。

 

 

「あ、あの・・・。この前は、店内で大声を出してしまってすみませんでした・・・。あ、あとそれから、あの時は意識が朦朧としてて無銭飲食したまま御店から出ちゃったかもしれないし・・・。それで、御詫びの品です・・・。」

 

 

そう綾香さんが差し出してきた五三焼きの袋を見ながら、マスターは顔を綻ばせながら五三焼きの袋を丁寧に受け取ります。

 

 

「おやおや、気を遣ってくれてありがとうね。先日のあの件については、怒ったりはして無いんだけど・・・。それに、御代はしっかり受け取ったから大丈夫だよ。・・・まぁ一応、五三焼きは受け取っておこうかな。それで、先日は大丈夫だったかな?部外者ながら、少し心配していたんだけど・・・。」

 

 

「あ、あの。お気遣いいただき有り難う御座います。その・・・だいぶ落ち着きました。」

 

 

「そっか、よかったよかった。まぁ、二人とも取り敢えず座ってよ。何か飲むかい?」

 

 

その言葉に私達は席に座って、品書きを見ながら吟味します。

 

 

「そうですね。私はほうじ茶を頂きます。お茶請けに、羊羹を御願いできますか?」

 

 

「わ、私は・・・。アールグレイで御願いします。」

 

 

その注文に茶目っ気のある表情で頷いた後、マスターは懇切丁寧に御茶を淹れてくれます。この喫茶店のマスターは、基本的には茶目っ気のある方ですが仕事に対する姿勢は真剣に向き合うお方で、思わず尊敬の念を抱いてしまいます。そうして暫くすると、注文の品が並べられました。

 

 

「どうぞ、お口に合うと良いんだけれど。」

 

 

「有り難う御座います。では、いただきます・・・。」

 

 

そう言いながら、羊羹を口にすると繊細で優しい甘みが口いっぱいに広がって私は恍惚とした表情を浮かべてしまいます。『泡沫ノ夢』の常連になって早10年になりますが、いつ口に運んでも飽きる事無く食べる事が出来てしまうのは、マスターの熟練の腕があるからでしょうか?

 

 

そう首を傾げる私の隣では、綾香さんも目を輝かせて紅茶を飲んでいます。

 

 

「美味しいわ・・・。心が温まる感じね。付け合わせのケーキも美味しいし、もの凄く良い御店ね。」

 

 

「そうですね。マスターが20の頃から営業されているのですよね。」

 

 

その言葉に、マスターは頷きながら懐かしそうな眼差しで天井を仰がれました。

 

 

「そうだね、私がこの店を始めてから30年以上になるだろうか・・・。初めはよく閑古鳥が鳴いていたものだけれど、少しずつ常連さん達が増えていってね。今では、地元で愛される喫茶店になる事が出来たよ。時雨君のお父さんとお母さんも、よくデートで此処に来てくれていたものでね・・・。」

 

 

「左様ですか。ですが、ここまで愛されているのはマスターの手腕の賜物でしょう。」

 

 

そのとき、ふとした表情で綾香さんがマスターに質問を投げかけました。

 

 

「そういえば、マスターさんは小さい頃の時雨君を知ってるんですか?」

 

 

「そうだね。小さい頃によく時雨君が、時雨君のお父さんと一緒によく来ていたなぁ・・・。まだ小さいのに、頑張って苦い緑茶を飲もうと頑張っていたっけ。」

 

 

そうにこやかに、私の過去を暴露してくるマスターの言葉に私は顔の熱が一気に昇る感覚に陥ります。そして、そんな私の過去を聞いた綾香さんは微笑ましいものを見るような眼で私の方を見て、頭を撫でてきました。

 

 

「フフッ、頑張って飲もうとしてたのね。」

 

 

「か、勘弁してください・・・。」

 

 

そんな私達の事を微笑ましく見ていたマスターですが、急に神妙な顔に成って話し掛けてきます。

 

 

「そういえば、時雨君。あの話はもう耳に入ったかな?」

 

 

「あの話・・・ですか?」

 

 

マスターのその言葉に私は首を傾げましたが、次に放たれた言葉を聞いて羊羹を刺していた爪楊枝を手から取りこぼしてしまいました。

 

 

「常世通りの隅に設けられていた祠が・・・、何者かによって壊されたそうなんだ。」

 

 

「は・・・?も、申し訳ありません。まさか道の隅に置いてある、あの祠ですか?」

 

 

私の言葉に、マスターは大きく首を縦に振ります。次の瞬間、私は全身の力が抜けて椅子から倒れ落ちそうになりますが、綾香さんが何とか支えてくださいました。

 

 

「時雨君!大丈夫!?」

 

 

「あ、有り難う御座います。」

 

 

「ねぇ、常世通りの祠って何の事?何か不味い事でも起きるの?」

 

 

綾香さんのその言葉に、私とマスターは渋い顔をしてしまいます。何故なら、常世通りのあの祠は・・・。荒魂(あらみたま)が祀られている場所だからです。

 

 

「不味い・・・、ですね。どの程度の不味さかは、今の所は分かりませんが・・・。」

 

 

「あ、あのさ。私は神様関係に関しては、まだまだ疎いんだけど・・・。どんな感じで不味いの?もしかして、祟りとかそういった感じ?」

 

 

その綾香さんの言葉に、私は彼女に説明を始めます。

 

 

「綾香さん、貴方は和魂(にぎみたま)荒魂(あらみたま)については知っておられますか?」

 

 

「和魂に・・・荒魂?それってなぁに?」

 

 

「和魂とは平和の和に魂と書き、荒魂とは荒いの荒に魂と書きます。つまり、和魂とは神の優しく平和的な側面を指し、荒魂とは神の荒ぶる魂を指し天災などを引き起こす物です。」

 

 

「えっと、つまり・・・。和魂が人にとって得のある魂で、荒魂が人にとって損になっちゃう魂って事?」

 

 

その言葉にマスターも大きく頷き、私の説明に捕捉を入れてくださいます。

 

 

「そうだね。少し俗的な考え方だけど、その考えで大体は合ってるよ。」

 

 

「話を続けます。そして、今回破壊された常世通りの祠・・・。あの祠には、荒魂が祀られていたのです。それも、力の強い神通力を持った・・・。」

 

 

「えっ!?それって、物凄く不味いわよね。神通力って、神様のパワーって事でしょ!?」

 

 

「左様です。私も詳しい事は存じ上げませんが、常世通りの祠に祀られていた神様は今でこそ人々の信仰が薄れ、神通力も弱まっているかと思われますが、古来には数多の厄災を引き起こした神として畏敬の念を抱かれておりました。」

 

 

私の言葉に、マスターも重々しく口を開きます。

 

 

「私も、父から聞いた限りの話なんだがね・・・。昔、その神様に対して不敬を働いた男が居たそうなんだ。当然神様は、その男に対して怒りを抱いて、その男と男の家族を焼き殺したらしいんどね・・・。それだけでは飽き足らず、その男の隣人の家族までも焼き殺し末代まで呪い続けたそうだよ。」

 

 

その言葉に、綾香さんは愕然とした表情で口を塞いでしまいました。あまりの神の理不尽さに、恐れ戦いてしまった事でしょう。そんな彼女に、私は説明します

 

 

「う、嘘でしょ・・・?失礼な事をしたのは、その男だけでしょ!?なんで、隣人家族も巻き込まれるの!?」

 

 

「それが、神の特性だからですよ。綾香さん、仮の話をします。もしも、貴方が虫籠一杯に入った数百匹の蟻を観察しているとします。その時に、貴方は蟻を一匹一匹識別する事が出来ますか?」

 

 

「む、無理よ!蟻なんて皆、同じ顔だもの!」

 

 

「それと同じです。神にとって、我々人間など取るに足らない存在だという事です。我々が舞い散る木の葉や、雨が止んだ後に葉の先から零れ落ちる雫に気を向けないのと同じように・・・。」

 

 

「そ、そんな・・・。」

 

 

そう愕然とした彼女を安心させる様に、マスターは言葉を続けます。

 

 

「まぁ時雨君が言ったように、今は幸か不幸か信仰心も薄まっているからね・・・。天罰の内容も、昔よりかは控えめだとは思うよ。まぁ、祠を壊した犯人に厄災が降りかかるのは間違いないと思うけど・・・。」

 

 

そう神妙な顔で言うと、マスターは打って変わって笑顔を浮かべてくださいます。

 

 

「まぁ・・・信仰深い時雨君は勿論の事だし、君も誠実そうな子だからね。君達二人には、神様も悪いようにはしないさ。そういえば、二人共ランチはもう食べたかい?この時間帯は、ランチセットを出す時間帯なんだけど。」

 

 

その言葉と同時に、私達の御腹から虫が鳴き始めます。朝からタピオカと、ポップコーンしか食べてませんでしたからね。そんな私達が顔を赤くすると、マスターは苦笑しながらランチセットを作ってくださったのでした。

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