クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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家族への報告(水無月家)

私達が喫茶店『泡沫ノ夢』に入店してから数時間が経過し、空が赤く染まり始めカラスの鳴く声が聞こえてきます。喫茶店で話し込んでいたせいか、時間が経つのを忘れてしまっていたようです。

 

 

そして、綾香さんはというと喫茶店のマスターや数人の常連客の方々と既に打ち解け合っています。そして、私を幼い頃からよく知る常連さん達に絡まれているようです。

 

 

「いやー。時雨ちゃんに、こんな別嬪さんのお友達が出来るなんてなぁ・・・。」

 

 

「ちょっと、アンタ!なに若い子に目移りしてんのよ!!」

 

 

そういう風に、仲良さげに痴話喧嘩を始める御夫婦に絡まれてはいますが、綾香さんは持ち前のコミュニケーション能力で会話に華を咲かせております。

 

 

「いえいえ、奥様も物凄くお綺麗ですよ!」

 

 

その綾香さんの言葉に、奥様は機嫌を良くしたようで喜色満面の笑みを浮かべていらっしゃいます。

 

 

「あらやだ!この子、本当に良い子だわー!!時雨ちゃん!こんな良い子、滅多にいないよ!嫁に貰っちまいな!!」

 

 

その声に私は苦笑しながらも緩やかに首を振りますが、常連の御夫妻達は更に追撃を重ねてきます。

 

 

「気が早すぎますよ。それに、私はまだ学生ですし・・・。」

 

 

「なーに言ってんだい!別に、水無月さんとこの旦那さんから見合い婚を提示されてるわけじゃ無いんだろう!?話を聞く限り、気立ても良いし料理もできる!こんな優良物件な子、他に居ないさ!ねぇ、あんた!!」

 

 

その奥様の言葉に、旦那様も豪快に笑いながら相槌を打っておられます。

 

 

「そうさなぁ!モタモタしてっと、(とんび)に油揚げを攫われちまうぞ!!ガハハ!!」

 

 

「お嬢ちゃんはどうなんだい!時雨ちゃんは背は小さいけど、それを補う様に度胸があるし頼りがいも有るときたもんだ!!今の御時世じゃあ珍しい、硬派で古風な良い男だとは思うがねぇ!」

 

 

まさか自分に話を振られるとは思っていなかったようで、綾香さんは少し焦りながらもなんとか言葉を紡ぎ始めます。

 

 

「え、えっと・・・。私も、ちょっと分からないです・・・。最近、浮気をされてフラれたばかりなので・・・。新しい恋に切り替えるのが難しくって・・・。」

 

 

「・・・おや、そうかい。悪い事を聞いちまったねぇ。まぁ、確かに失恋は辛いもんだからねぇ・・・。けど浮気をしたその男は、幸せそうにしてんのかい?」

 

 

その言葉に、先日お弁当箱を買いに行った時の事を思い出したのか綾香さんは辛そうな顔に成られました。そんな彼女の顔を見た奥様は、申し訳なさそうにしながらもハキハキと持論を話し始められます。

 

 

「辛い事を、思い出させちまったみたいだねぇ。けどその様子じゃあ、アンタを傷つけたその浮気男は、のうのうとのさばってるって訳だ。」

 

 

「はい・・・。連絡先もブロックして、もう振り切った筈なんですけど・・・。多分、健治・・・元カレに振られた事が辛いんじゃなくて、遊び半分で付き合わされてた事が辛いんだと思います・・・。」

 

 

「そうかい・・・お嬢ちゃん。こいつは、50年以上生きてきたしがないババアの独り言だがね・・・。相手に不幸を押し付けて来ておいて、テメェだけ幸せを掴み取ろうとするクズに対する最大の復讐はね、お嬢ちゃん自身が幸せになる事さ。」

 

 

「私が・・・幸せになる事ですか?」

 

 

その言葉に奥様は大きく頷き、自らの過去を話し始められました。

 

 

「実はアタシもね、お嬢ちゃんぐらいの歳じゃあなかったが浮気された経験があるんだよ。当然、浮気しやがった男を憎んださ。けどね、それじゃあ駄目だって気づいたよ。女の恋心を弄んで浮気する様なクズに対する最大の復讐は、自分自身が幸せになることだってね。そこからは、我武者羅(がむしゃら)に幸せを模索したもんさ。・・・で、今の旦那と出会ったわけなんだけどね。」

 

 

そう言いながら、旦那様の背中を叩く奥様の快活ぶりに綾香さんの眼に光が宿っていきます。

 

 

「私が・・・幸せになる。それが、健治への最大の復讐・・・。」

 

 

「復讐って言やぁ、聞こえは悪いがね。お嬢ちゃんは真面目そうだし、心の中じゃあフラれたばっかりの自分がすぐに新しい恋を見つけるのは、はしたない事だと思ってんだろう?」

 

 

その言葉に、綾香さんはびくりと肩を震わせます。どうやら、図星だったようですね。そんな彼女を見ながら奥様は穏やかな笑みを向けながら金言をくださいました。

 

 

気障(きざ)な言い方かもしれないけどね、今のお嬢ちゃんは浮気男って言う鎖から解き放たれた、自由に飛び立って幸せを掴める鳥なんだ。今のお嬢ちゃんは、好きな場所に何処へだって飛び立てるんだ。そいつを忘れちゃぁいけないよ。」

 

 

「自由に飛び立てる・・・鳥。幸せを掴める、鳥・・・。」

 

 

「まぁ、色々難しいこと言っちまったが、要はこの店の常連の皆は、お嬢ちゃんの味方ってぇ事だ!だから、どーんと構えてな!」

 

 

その言葉に、綾香さんの瞳にも光が戻ってきたようです。

 

 

「そう・・・ですね。少し怖いけど、一歩ずつ踏み出していこうと思います!幸せを掴み取れるように!」

 

 

「その意気さ!まぁ、幸せを運んでくれる王子様は案外近くにいるのかもしれないけどねぇ・・・。」

 

 

そう意味深に笑う奥さんに私は首を傾げましたが、何故か綾香さんは耳まで真っ赤に染めておられました。そうして、そんな時間は過ぎて私達は『泡沫ノ夢』をあとにします。

 

 

「何と言うか、もの凄く居心地のいいお店だったわ。何度でも行きたくなっちゃうかも。」

 

 

そうにこやかに話す彼女を見ると、私は思わず笑みが溢れてしまいます。

 

 

「それは良かったです。今度、また一緒に行きましょう。」

 

 

「あら?もう、次のお出かけの計画を立ててくれてるの?」

 

 

「はい。もしかして、御迷惑でしたか?」

 

 

私がそう言うと、彼女は目を瞑ってゆっくりと首を振られました。

 

 

「いいえ、迷惑なんかじゃないわ。またいつでも誘ってね。そうだ!今度はカラオケに行きましょ!時雨君の歌声とかも聞いてみたいわ!!」

 

 

「カラオケですか・・・。昨年の、体育祭の打ち上げでは行きましたが・・・。」

 

 

「そうなの!?・・・どうして私、去年は時雨君のクラスじゃなかったのかしら・・・。因みに、何点を叩き出したの?」

 

 

「たしか・・・、99.89点でしたね・・・。」

 

 

「ほとんど100点じゃない!!ジャンルは!?どんなの歌ったの!?」

 

 

「演歌ですね。たしか・・・あば●太鼓という曲名だったような。」

 

 

「へぇ~、やっぱり最近の曲はあまり歌わないの?」

 

 

その言葉に、私は眉を寄せて苦笑いをしてしまいます。曲調が苦手という訳では無いのですが、最近の音楽はあまり肌に合わないのですよね・・・。

 

 

「そうですね。教室でよく耳にする、"けーぽっぷ"などというのもあまりよく分からず・・・。」

 

 

「あぁ。K-POPは、韓国発祥のポップミュージックの事よ。韓国は英語でKoreanでしょ?だから、K-POPっていうのよ。私もカラオケで、結構歌ってるわ。」

 

 

「なるほど、韓国発祥の歌なのですね。そういえば・・・昨年の夏季休暇の際に、弥生が韓国に行って"けーぽっぷ"を聞きに行っていたと仰っていましたね。」

 

 

「そうなの?やっぱり、本場で聴くと色々と違うのかしら?」

 

 

私達がそう話していると、いつの間にか常世通りの所まで来ていました。そこを通り過ぎようとした瞬間、空気が張り詰めるような感覚に襲われます。それは、私だけではなく弥生さんも同じ様です。

 

 

「ね、ねぇ・・・。ここって、マスターが言ってた常世通りよね・・・。なんか、空気が重いんだけど・・・。もしかして、神様が物凄く怒ってたり?」

 

 

「分かりませんが・・・、異常な空気ですね。・・・綾香さん。御時間を取らせてしまうかもしれませんが、破壊された祠まで出向いても宜しいでしょうか?損壊具合を、父上に報告したいので。」

 

 

「時雨君の、お父さんに?」

 

 

「はい。ここら一帯の祭事は、古来から水無月家が取り仕切っております。荒ぶる神の怒りを鎮める為にも、神楽舞を行います。この祠に祀られております荒魂は、あくまでも分霊(わけみたま)です。御霊は、我が水無月家のすぐ隣の社にて祀られておりますので。」

 

 

「そっか・・・。大丈夫なの?」

 

 

そう不安そうにする彼女に、私は安心させるように笑いかけます。

 

 

「大丈夫です。本殿には、和魂も祀られておりますから。なにしろ厳粛なる祭事の場ですから、神様も悪いようにはしないでしょう。・・・宜しければ、見に来られますか?」

 

 

「え!?良いの?なんか、(おごそ)かそうだけど・・・。」

 

 

「大丈夫ですよ。祭事の際には、老若男女問わず多くの地域の方々がいらっしゃいますから。」

 

 

そう話していると、件の祠が設置されている道に到着します。そして、道端に設置されている祠の状態を見ると、私は思わず顔を顰めてしまいました。そこにあった祠は、以前から確かに老朽化が進んではいましたが神聖な雰囲気をまとって此の地に根差していました。ですが今の状態は・・・。

 

 

「酷いわ・・・。神様の御家なのに、ボロボロに成ってるじゃない!!」

 

 

「そうですね・・・。百聞は一見にしかずとは言いますが、まさかここまでとは・・・。」

 

 

祠の屋根は大きく損壊しており、扉の兆番は外れていました。そんな祠を見た綾香さんは憤慨し、顔を真っ赤にして怒っておられました。もちろん私も神道を信仰する者として、これ以上ない程の怒りを覚えます。ですが、ここで怒っていても何かが変わる訳でもありません。私と綾香さんは、手を合わせると謝罪の言葉を並べます。

 

 

「本当に申し訳ありませんでした・・・。この祠は、我ら水無月家が責任をもって修繕致します・・・。勝手な願いとは承知しておりますが、どうか怒りを御鎮めください・・・。」

 

 

「本当に、ごめんなさい・・・。」

 

 

私達がそう願うと、柔らかな風がそっと吹きました。

 

 

「綾香さん、帰りましょう・・・。」

 

 

「えぇ・・・。」

 

 

そう言うと、私は綾香さんを彼女の自宅に送り届けた後に自宅へと帰ったのでした。

 

 

「父上、ただいま帰りました。」

 

 

私がそう言いながら父上の部屋の襖の前に座ると、しばしの沈黙の後に父上から返事が返ってきました。

 

 

「入りなさい。」

 

 

「失礼いたします・・・。」

 

 

私がそう申し上げながら部屋に入ると、そこには一人の男性が座っていらっしゃいました。その男性こそが、我が父上であり水無月家当主である、水無月翡翠です。そんな父上は、穏やかな声を発しながら私に問いを投げかけてきます。

 

 

「時雨、お帰りなさい。今日は、学校の友達と出歩いてきたのかい?」

 

 

「はい、桐野綾香さんという方と・・・。」

 

 

「そうか・・・。その名前からして、女性かな?」

 

 

「はい、明朗快活な女性です。本日は、私にタピオカという飲み物を教えてくれました。それに、この前に昼餉を忘れてしまった際に、昼餉を分けてくださいました。」

 

 

「なるほど、とても思いやりのある子なんだね。」

 

 

そう話す父上の顔は、とても嬉しそうでした。父上が嬉しそうにしていらっしゃると、私まで嬉しくなってしまいます。そうしていると、襖が開いて我が母上・・・。水無月雫も御越しになられました。

 

 

「時雨、帰っていたのね。お帰りなさい。」

 

 

「はい。挨拶が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。」

 

 

「あらあら、気にしなくても良いのよ?・・・それにしても、ただ帰って来たことを知らせる為に此処に来た訳じゃないんでしょう?」

 

 

そう話す母上の眼差しは、私の心を見透かしている様でした。そんな母上に嘘を付けるはずもありませんし、元より誤魔化すつもりも無いので私は口を開きます。

 

 

「父上、母上。常世通りの、荒魂が祀られている社の件で馳せ参じました。」

 

 

私のその言葉に、父上と母上は先程の笑顔は何処へやら。神妙な顔つきになります。

 

 

「やはり、その話で来たんだね・・・。その件については、私達も耳にしているよ。どうやら、昨夜に壊されていたようだね。」

 

 

「なんとも、罰当たりな事ね・・・。それに、あの祠は荒魂を祀っている社よ。信仰心が薄れ、神通力が弱まっているとはいえ・・・。」

 

 

「はい。この眼で確認しましたが、損壊具合から見て人為的に破壊されていたようです。どうやら、礼節を弁えない不届き者の仕業のようですね。」

 

 

私のその言葉に、父上と母上も大きく頷かれます。

 

 

「そうだね。その不届き者にどの様な神罰が下るかは分からないが、その余波で咎の無い民衆まで危険に陥れられるのはあってはならない事だ。早急に、祭事を執り行わなくてはならないね。件の神の御霊(みたま)が祀られている神社には、私が連絡しておこう。それから、時雨。申し訳ないが神楽を舞ってくれるかい?なるべく早く行う為にも・・・、舞うのは2週間後だ。」

 

 

父上のその言葉に、私は大きく頷きます。

 

 

「分かりました。件の神の怒りを鎮める為にも、粉骨砕身の想いで執り行わせて頂きます。」

 

 

その言葉に、父上も大きく頷いてくれました。そして、母上にも声を掛けます。

 

 

「雫さん。今回破壊された祠の神の怒りは、早急に鎮めなければなりません。無理を言って申し訳ありませんが、可能な限り早急に取り仕切りを御願いできますか?私は、近隣の方々に協力を仰ぎに向かいます。」

 

 

「えぇ、分かりました。広報に関してはお任せください。時雨、貴方は神楽舞の練習に励みなさい。良いわね。」

 

 

「委細承知いたしました。」

 

 

「それでは、明日から各々準備に取り掛かるように。今日は遅いし、床に就かなければね。」

 

 

父上の言葉に頷くと、私は湯浴みをした後に寝室に向かい床に就いたのでした

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