クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
父上と母上に、常世通りの祠の事を話した次の週の月曜日。私がいつも通りに早起きして学校に向かっていると、トントンと肩を叩かれました。その仕草に海人だと思った私は、後ろを振り向こうとしたところ、そこには信じられない人が立っていました。
「え・・・?綾香さん?」
「ふふっ、おはよう。」
「お、おはようございます。あの・・・早いですね。」
「えぇ、昨日は21時くらいに寝てみたの。そしたら、こんな時間に目が覚めちゃって。」
「なるほど、早起きは三文の徳と言いますからね。良き行いだと思いますよ。では、行きましょうか。」
そう言うと、私と綾香さんは手を繋いで歩き始めます。この時間帯は街灯がまだ点いており、街灯に数匹の虫が集まっています。これも、風情というものでしょうね・・・。
「何と言うか、周りが静かなせいで不思議な気分になるわ。世界に私達二人が、取り残されたみたい。」
「そうですね。この静寂は、この時間帯でないと味わえませんから。」
「お日様が出て無いから、涼しくて良いわね~。」
「そうですね。ですが、夏になれば蒸し暑くなってくるでしょうね。」
「そうね。はぁ~・・・、梅雨の季節はジメジメしてて憂鬱よ。メイクとかも崩れるし。」
そう溜息を吐く綾香さんを見て、私は苦笑いをしてしまいます。弥生もこの時期は、化粧が崩れるから憂鬱だとぼやいていましたね。
「何と言いますか・・・。世の女性は大変ですね。」
「そうなのよ!スッピンとかで、学校とか行きたくないし・・・。まぁ、私もナチュラルメイクで済ませてるけど。時雨君は、化粧とかはしない?御肌とか綺麗だけど。」
「そうですね・・・。化粧というより、香水を付けたりはしますね。会食に向かう際などは、香水の香りが強く成り過ぎないように薄く付けたりはしていますが。」
「香水!?どんなの使ってるの!?」
「私の場合、
「風信子ねぇ。確かに、優しい香りよね。私は、ピーチとかのフルーティーな香水とかを付けてるわね。・・・それにしても、天然香料かぁ。やっぱり高いの?」
「そうですね、ゼロが四つほど。」
その言葉に、綾香さんが口を大きく開けたまま呆けてしまわれました。そんな彼女に私は、苦笑いをしながら話かけます。
「宜しければ、幾つか御譲り致しましょうか?」
その言葉に綾香さんは目を見開いたかと思うと、大きく両手と顔を振り始めました。その勢いは、思わず首が取れてしまうのではないかと心配してしまう程です。
「いやいやいや!流石に申し訳ないわよ!一瓶、数万のヤツでしょ!?」
「大丈夫です。水無月グループの化粧品会社が開発している、新製品の物なので試供品として、御譲りしたいと思っていまして・・・。顧客の意見も聞きたいと、父上も仰っていたので。」
「そ、そう・・・?じゃあ、少し頂くわ。ありがとうね。・・・そういえば、神様の祠の件はどうなったの?」
「その件でしたら、父上と母上に話したところ2週間後に祭事を執り行うそうです。」
その言葉に相槌を打ったかと思うと、綾香さんは何かを思い出したかのように話し始めます。そしてその眼差しには、好奇心が孕んでいました。
「そう・・・。そういえば・・・この前、神楽舞を踊るって言ってたじゃない。服装って、巫女さんみたいな奴?」
「そうですね。まぁ、巫女服を着る前に
「へぇ~。取り敢えず、楽しみにしてるわね!」
そう話しながら、私達は校門前に到着します。すると、私の隣を見た警備員さんが驚いた顔をしながら話し掛けてきます。
「おや、生徒会長君じゃないか。おはよう。隣に居る子は、確か桐野綾香という子だったかな。」
「はい。偶然通学路でお会いしたので、共に登校してきました。」
「そういう事か。それじゃあ、学生証を見せてもらえるかな?」
その言葉に、私と綾香さんは学生証を財布から取り出して警備員さんに見せると、彼は快く校門を開けてくださいました。そうして、私達は静かに生徒会室へと向かいます。
「何と言うか、悪い事してる気分ね。こんな時間に学校に入るなんて。」
「そうですね。私も生徒会長に任命された当初、暗い校内を歩いているときには緊張したものです。」
「確かに。でも、ちょっと背徳感はあるわね。・・・それに、お化けとかも出たりして。」
そう悪戯っぽく笑う彼女に、私は思わず苦笑いをしてしまいます。
「そうですね。ですが、嘘か真かは存じ上げませんが怪奇の類を見たという噂は耳にした事がありますね。」
「・・・え?冗談でしょ?」
「あくまで、風の噂程度ですがね。話によると、この土地は江戸の後期から明治の前期に掛けて、反政府軍の処刑場として使われていたとかなんとか・・・。」
私がそう言うと、綾香さんの顔が青く染まり始めます。もしかすると、綾香さんはこういった怪談の類に弱いのでしょうか?
「その反政府軍の亡霊が、夜の校舎には現れると守衛さんが仰っていましたね。」
その言葉に綾香さんの喉からヒュッという音が鳴り、彼女はぎごちない笑みを浮かべながら口を開きます。
「こ、この話。もう止めない?」
「ふむ。そうですね、怪談話は一種の降霊術とも言いますし。」
「え・・・?そうなの?」
「はい。百物語の様に
「よく漫画で見る蝋燭の奴って、降霊術だったのね・・・。」
そう話しながら生徒会室に入ると、そこには既に海人と弥生がいらっしゃいました。そんな二人は、今日も笑顔で挨拶をしてきます。
「おいーっす、時雨ー。あれ?綾香も居るじゃん。」
「ほんまやん。綾香ちゃんどないしたん?早起きさんやねー。」
そんな二人の問いに、綾香さんは苦笑いしながら答えます。
「そうなの。この前、時雨君が早起きしてるって知ったから・・・。」
「ほーん?で、何で時雨と登校したいって思ったんだ?」
「え?あ。そ、それは・・・。いつも通りに起きたら、健治に絡まれちゃうかもしれないし・・・。」
そう話す綾香さんは頬を赤くされており、そんな綾香さんを海人と弥生は温かく見守るような眼差しで見ていらっしゃいます。
「ふーん。まぁ、そういう事にしといてやるか。」
「せや。折角、
そんな弥生の言葉に、綾香さんは驚いた表情を浮かべました。それもそうでしょう、いきなり生徒会の仕事を体験する事を提案されれば、誰であろうと綾香さんと同じ反応になるのは至極当然です。
そして綾香さんは当然の如く、大いに戸惑っていらっしゃいました。
「え・・・えぇ!?わ、私が生徒会の仕事を!?だ、大丈夫なのそれって!?」
「えー?一般生徒が生徒会の仕事をしてはいけないって校則は無ぇんだし、別に良くね?」
「海人・・・。また貴方は、そんな屁理屈を・・・。」
「まぁまぁ、学校の予算案とか以外の書類整理とかやったらやっても良いんちゃう?どや?やってみぃへん?」
そう訊く弥生に、綾香さんは頭を悩ませて私の方を恐る恐ると見てきました。そんな彼女の顔は、「自分がやっても大丈夫なのか?」と問うてきているようでした。そんな彼女に、私は苦笑すると首を縦に振ります。
「そうですね。綾香さんがしたいのであれば。但し、弥生が言ったように予算案などの書類には触らないでください。・・・そうですね、そこのファイル整理をお願いしますか?」
「分かったわ!任せてちょうだい!!」
そう言うと、彼女は満面の笑みを浮かべながら作業に取り掛かってくれます。その様子は、言い得て妙ですが忠義を果たそうとする大型犬の様に思えるものでした。
そうして、私達はパソコンに向かい合いながら作業に取り掛かります。そんな中、何気ないような話し方で海人が話し始めます。
「そういやさ、お前ら知ってるか?常世通りの件。」
「・・・知っとうよ。祠が、壊されとったんやってな。時雨君と綾香ちゃんは知っとった?」
その言葉に、私と綾香さんは顔を見合わせた後に頷きます。
「えぇ、知ってるわ。泡沫ノ夢のマスターから、話は聞いてたから。」
「私も、マスターから御話しは伺いました。この件に関しては父上と母上も把握しており、近い内に祭事を執り行う事が決まりました。」
「おっ!てことは、お前の巫女服姿が見れるって事だな!!」
そう笑みを浮かべる海人の姿に、私は思わず眉を寄せてしまいます。
「海人・・・。厳粛な祭事なのですから、浮ついた気持ちや邪な感情は抑えてください。」
「いやいや!だって、お前の巫女服姿に合ってるもん!なぁ、弥生!!」
「あー、せやね。巫女服着た時雨君、ホンマに女の子にしか見えへんもんなぁ。綾香ちゃんも、写真見てみる~?」
そんな弥生の言葉に、綾香さんは好奇心旺盛な瞳をしながら身を乗り出して弥生の携帯を覗き見ます。そんな彼女は、写真を見ると驚いた声で歓声を上げます
「嘘・・・。滅茶苦茶、可愛いんだけど・・・!え?時雨君って、本当に男よね?漫画でよくある様な、性別を偽って入学してるとかじゃないわよね?」
「違います。そのような事をすれば、有印公文書偽造罪になってしまいますよ。」
「それもそっか・・・。」
そう呟く綾香さんに、弥生はニコニコしながら特大の爆弾を落としました。そして、その爆弾発言に海人は大慌てする事に成ります。
「それにな~。あんまりにも可愛いもんやから、初めて巫女服姿の時雨君を見たときに海人君が時雨君に告白してもうてんな。」
「弥生!?」
「あぁ、ありましたね。そんな事も・・・。」
「待て待て待て!というか、4歳くらいのときだろ!?10年以上前の事で、揶揄うなよぉ・・・。」
そうこう話していると、授業開始10分前の時間になり私達は一旦それぞれの教室へと向かいます。そうして中に入り、各々の席に着くと先生が御越しになられ朝礼が始まりました。そんな中、先生が口を開きます。
「えー、皆おはよう。挨拶終わり早々にお知らせだ。良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」
先生の言葉に、クラスの陽気な部類の生徒が「悪い知らせの方から聞きたい」と声を上げます。すると、先生は不敵な笑みを浮かべると話し始めます。
「悪い知らせからだな。・・・明日から、テスト期間の1週間前に入る。出題科目は、国数英理社の5教科だ。科目数も少ないし、1日で終わる予定だ。夏休みを楽しく過ごす為にも、しっかり勉強しろよ。」
その言葉に、生徒の皆さん方から落胆の声が上がりました。しかし、次の先生の言葉で教室中が歓声の渦に巻き込まれます。
「良い知らせの方はな、今日は席替えを行う。教卓に置いてある箱からクジを引けー。席が不服だったら、仲の良い奴等同士で交換しても良いからなー。」
その言葉が終わるな否や、生徒達は我先にへと教卓の方に集います。そんな彼等・・・特に男子生徒達は、目を血走らせながらクジを引いています。
「頼む頼む頼む、桐野と隣の席!」
「神よ!俺に味方をしてくれ!!ギャルの隣に成りたいんだぁ!!」
「勝つのは俺だぁ!!」
そんな彼等の様子を、女子生徒さん達は呆れながら見ています。いや・・・数人の女子生徒の方々も
「水無月様の隣、水無月様の隣・・・。」
「男の娘ショタ、男の娘ショタ・・・。」
そう話題に出されている私達はというと、未だに席から立ち上がれずいます。そして、綾香さんから私の携帯端末に文が送られてきます。
『ど、どうするの?私達も行く?』
『いえ。今の状態であそこに向かえば、クジを引けるものも引けませんからね。落ち着いてから向かいましょう。』
『オッケー。』
そうして、生徒の皆さんがクジを引き終わりあとは私達二人のみになります。そんな私達を、生徒の皆さんは固唾を飲んで見守っています。どうやら彼等は、私と綾香さんが引いてから一斉ににクジに書かれた番号を御覧になるそうです。
「ふぅ・・・。じゃあ、私から引くわね。」
「どうぞ・・・。」
その言葉と共に綾香さんがクジを引き、それに続くように私も箱からクジを引きます。そうして、私達が席に着くと先生が声を上げます。
「全員引いたな。よし、一斉にオープンしろ。」
その言葉に、私達を含めたクラスの全員が紙を開きます。そうして、紙を開いた私の番号は・・・。
(3番ですか・・・。となると、私の隣は8番の方となりますね・・・。)
そう思いながら黒板に書かれた3番の席に向かうと、隣に来られたのは綾香さんでした。
「え!?時雨君、3番だったの!?」
「私の隣という事は、綾香さんは8番だったという事ですね。」
「これが本当の、残り物には福があるってやつかしら?」
私達がそう笑い合っていると、教室中から
「ぎゃぁぁぁ!」
「うぐぅぉぉ!て、天は俺を見放したのかぁ・・・!」
「ちくしょぉ・・・。綾香さんの隣が良かったぁ・・・。」
「あぁ・・・、水無月様ぁ・・・。」
「ぎゃ、逆に考えろ!あの二人が隣になったという事は、これから濃厚で濃密なおねショタが見放題になるって事なんだぞ!!」
「た、確かに!」
「ウヒヒ!・・・夏コミに向けた同人ネタが、どんどん湧いてくるわ!!最近は水無月様×神宮寺様のBLばっかり書いてたから、たまには水無月様×桐野さんのおねショタでも書いてみようかしら・・・。」
そんな彼等を見ながら先生は溜息をつくと、試験について再び告知し始めてくださいます。
「浮かれすぎんなよ、テスト期間が始まりつつあんのを忘れんな。絶対、全員赤点は取るなよー。テスト問題作り直すの面倒臭いからなー。」
そう言葉を終えると、先生は教室から出て行かれます。そして、生徒達はテストについて色々と会話を交わし合っておりました。中には、顔を蒼白にして嘆いている方もいらっしゃました。
そんな中、隣に居る綾香さんが話しかけてきます。
「時雨君、テストの方は大丈夫?・・・多分、聞くまでも無いだろうけど。」
「はい、日々の復習は欠かしておりませんので。綾香さんは如何ですか?」
「私も復習は欠かしてないから、大丈夫だとは思うんだけど・・・。というか、私の場合は健治に教えながらやってたし・・・。」
「なるほど。では、赤点を取る事は無さそうですね。」
私がそう申し上げると、彼女は何かを躊躇う様に目線を泳がせます。そんな彼女の言葉を待っていると、綾香さんは頬を染めながら提案をしてくださいました。
「あ、あのさ・・・。今日の放課後時間ある?」
「え?一応・・・。生徒会の仕事も、急務なものはありませんし・・・。」
「じゃ、じゃあさ・・・私の家に来ない?その・・・。この前の事を話したら、お父さん達が貴方に会いたがってて・・・。」
その言葉を聞いて私は少し思案しますが、特に断る理由もございませんので頷く事に致します。
「分かりました。では、本日の放課後に宜しくお願い致しますね。」
私がそう申し上げると、彼女は大輪の花の様な笑みを浮かべて頷いて下さったのでした。
因みに後から判明した事なのですが、私達がこの日の放課後に教室から出て行った後にクラスの皆さんは『勉強中に起こる、おねショタのシチュエーション』とやらについて話し合っていたそうです。おねショタとは何なのでしょうね・・・?
A組には、おねショタ好きの生徒が多いらしいです。
なお、この後スマホで「おねショタとは何か」と検索を掛けた時雨君でしたが、いまいち理解が追い付かなかったようです。