クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
「ふざけないで!」
そんな大声が私・・・、
(全く・・・。静かな雰囲気を気に入って来ているというのに・・・。痴情の
そんな私はなるべく女性の声から聴覚を遮断して、近年見る事の無くなった蓄音機から流れる音楽に集中しようとしましたが、女性は恐らく彼氏であろう人に静かに追及の声を上げます。
「説明してよ・・・。私以外の女の子と付き合ってたって・・・、どういう意味?」
「ち、違うんだよ。
私はその声に、柄にも無く聞き耳を立ててしまいます。
(綾香・・・。どこかで聞いた名のような・・・。)
私がそう考えていると、今度は綾香と呼ばれた女性が怒りに声を震わせながら静かに声を上げます。
「話なら聞いたわよ・・・。私以外の女の子と付き合ってたって。それに、中学時代から付き合ってたって・・・。二股掛けてたって事?何とか言いなさいよ!健治!!」
綾香という女性が放った「健治」という名前に、私は割れた硝子の破片が再び引っ付く様な錯覚に陥ります。何故なら、両者の名前はよく聞いた物だからでした。
(綾香さんという方と、健治さんという方・・・。私の記憶違いでなければ、我が校の有名な幼馴染かつ恋人・・・。桐野綾香さんと、近藤健治さんではないですか・・・。しかし、摩訶不思議ですね。彼らは、昨年の文化祭で行われたカップルコンテストで優勝していたはずですが・・・。健治という方は、たしかテニス部の次期キャプテン候補の方でしたか・・・。彼とは数年前に、手合わせをした記憶がありますね・・・。)
私がそう考えている間にも、彼らの口論は白熱していきます。
「ご、ごめん・・・。実は、中学時代にテニス部のマネージャーに告白されて・・・。」
「何それ・・・!中学時代から、ずっと二股してたって事!?」
「お、落ち着けって!店の中だぞ!」
「あんたが、いきなり浮気してたって言うからでしょ!!」
成程・・・。確かに我が校は中高一貫ですからね・・・。中学からの交友関係が、高校に引き継がれるなど珍しい事ではありませんが・・・。
(しかし、いい加減に耳障りに成ってきましたね。そろそろ帰りましょうか・・・。)
私が彼らに気付かれないように、そっと席を立とうと瞬間の事でした。健治さんが綾香さんにとんでもない事を仰られ始めたのです。
「お、お前も悪いんだぞ!綾香!!」
「・・・は?」
「お前が、いつまで経ってもヤらせてくれないからじゃねぇか!!」
その瞬間、私は心の中で唖然とした後に大きく溜息を吐きます。確かに、綾香さんは同年代の女子と比べても豊満な体付きをしています。男子生徒達の
(ヤらせる・・・。というのは、恐らく情事の事でしょうか・・・。まさか、肉体関係を迫る為だけに綾香さんと付き合っていたのでしょうか・・・。全く・・・反吐が出ますね。)
「て、テニス部のマネージャーは直ぐにヤらせてくれたんだよ!そもそも、高校生なら女とヤりたいのは当たり前だし、何が悪いんだよ!!」
その言葉に、綾香さんの声が震えます。
「なによそれ・・・。最初から、体目的だったの・・・?」
「う・・・。そういう訳じゃねぇけど・・・。お、お前も別れたくなかったら一回で良いからヤらせてくれよ!そうだ!なんなら、テニス部のマネージャーも交えて三人で楽しもうぜ!そっちの方が楽し・・・。」
次の瞬間、バシャッという音が店内に響き渡りました。綾香さんが健治さんに飲み物を掛けたのです。そして、彼女は絞り出すように叫びます。
「消えて・・・。」
「・・・え?」
「私の目の前から消えて!!今すぐに!!」
そんな綾香さんの声が店内に響き渡ると、健治さんは戸惑いながら言葉を発そうとしますが恐る恐る周囲を見渡します。恐らく、綾香さんに水を掛けられて幾分か冷静になったのでしょう。そんな彼には、私を含めた全ての客から冷ややかな目線が向けられていました。
中には、携帯で写真を撮っている方までいらっしゃいました。そんな彼は、気まずそうに鞄をもって立ち去りました。綾香さんに一言だけ言い残して。
「・・・また、明日話そうぜ。」
それだけ仰られると、彼は喫茶店から出て行きました。そして、残された綾香さんもしばらく俯いていたかと思うと、ふらふらとした足取りで会計を済ませて店から出て行きました。
私は、そんな彼女を放っておけなくて店を出ようと会計を済まそうとします。そんな私に、喫茶店のマスターが話しかけてきました。私は、この喫茶店の常連であるが故にマスターとも仲が良いのです。
「時雨君、追いかけるのかい?」
「はい。放っておけませんし。それに、あぁいった自暴自棄になった子は何をしでかすか分かりませんから。」
「・・・彼女の制服、君と同じ高校の物だろう?放っておけないのは、生徒会長としての責任感からかな?」
「どういう意味ですか?」
「深い意味は無いよ。さぁ、行っておいで。夜も遅いし、彼女が危ない目に合っていなければいいけど。」
そう仰られながらも意味深にウインクをするマスターに料金を払い礼を申し上げると、私は店の中から飛び出しました。
私が店を出て数分後。私は、町を早歩きで進みます。幸いだったのは、ここら辺は道がそこまで分岐していない為か綾香さんの進んでいった方向がそれなりに絞れるという点です。それでも所々分岐はしているので、私は道行く人々に綾香さんを見たか聞いて回りました。
そして数分後、綾香さんの目撃情報を頼りにしながら進んでいると最悪な状況・・・。とはいえ、この時間帯から予想はしていましたが3人のガラの悪い方々に絡まれている彼女を見つけました。
(見たところ・・・。堅気ではありませんね。不良か、愚連隊といったところでしょうか。それにしても・・・。)
離れた場所から観察していましたが、綾香さんは逃げようとも助けを呼ぼうともしません。恐らく、先の事柄がショックに成っていて自暴自棄になっているのでしょうか?
そして、ガラの悪い方が綾香さんの腕を掴みましたが彼女は嫌がる様子も見せません。
(マズいですね・・・。参らなければ・・・。)
そう考えると、私は綾香さんの方へ向かいました。
「桐野さん、何をしているのですか?まだ警察の方々から補導される時間帯ではありませんが、夜道は危険ですよ。」
私がそう声を掛けると、綾香さんはこちらをゆっくり振り向きます。その眼を見た私は、溜息を吐いてしまいました。彼女はアメリカ人のハーフであり、それを裏付けるような金髪碧眼の持ち主です。そして、いつも学校でも明るく笑い天真爛漫を具現化したような方・・・。しかし、今の彼女の目は虚ろで心の無い人形のようでした。
「・・・生徒会長君?」
「桐野さん。我が校はそこまで校則には厳しくないですが、夜間の不純異性交遊は厳禁です。即刻、帰宅してください。」
しかし、私の忠告にも綾香さんは虚ろな声で返します。
「いいよ・・・。生徒会長君こそ危なくない・・・?そんな小さい体で・・・、
彼女の仰られる通り、私の体は平均的な高校2年生の身長からすれば150cmと小さい部類です。ましてや、アメリカ人とのハーフでもあり身長170cmを超える彼女からすればそう見えてしまうでしょう。
しかし、幾ら体躯が小さかろうと私は生徒会長。学内の生徒が危険な目に遭っているというのに、見過ごす事など・・・。ましてや、逃げ出す事などは許されないのです。
「桐野さん。最後通告です。彼等から離れなさい。そして、即刻家に帰りなさい。」
私がそう申し上げたところで、ガラの悪い方々が唾を吐きながら話し掛けてきます。
「なんだぁ?チビ助。この女の弟か?」
「この女は、今から俺らと遊ぶんだよ!殺されたくねぇなら、さっさと失せろ!!」
そんな中、一人の巨躯な男が私を見ながら反吐の出る言葉を吐いてきます。
「というか、よくよく見たらこいつも可愛い顔してんじゃねぇか。どうだチビ助?お前も一緒に遊ぼうぜ、俺達が気持ち良いこと教えてやるからよぉ。」
「ギャハハハ!お前、ショタコンかよ!」
その犬も食わぬ様な会話に、私は大きく溜息を吐いて宣言します。
「結構です。貴方の様な下劣な男から学ぶ事など、何一つとしてございません。」
そして、私はある提案をいたします。この手の輩は、言葉で申し上げても理解しないような低脳の集まりなので体に教えた方が効果的ですからね。
「しかし、このままあなた方が黙って引き下がるとも思いません。そこで、少し条件を付けましょう。」
「条件?」
そう怪訝そうに眉を
「私を見事叩きのめし、地を這わす事ができたならあなたの
その言葉に、私に下賤な目を向けてきた大男は嫌らしい笑みを浮かべながら近づいてきます。
「ほざいたなガキが。女の目の前で、格好付ける度胸だけは認めてやるよ。俺はな、お前みたいな自尊心の高いガキを跪かせるのが得意・・・カヒュッ!」
そう彼が言葉を発した瞬間に、私は動いています。瞬時のうちに距離を詰め、男の金的に掌底を当てると彼は絶叫を上げて地に伏して悶えます。
「あぎゃぁぁぁ!!」
「果し合いの最中に御託を並べるなど、愚の骨頂・・・。女性を性の捌け口にしようとする、そんな汚らわしいものは潰すに限ります。」
私がそう申し上げると、大男は金的を抑えながら立ち上がり叫びながら突進してきました。
「餓鬼がぁぁ!ぶっ殺す!」
・・・やはりこういった直情的な愚か者は、扱いやすいですね。ほら、馬鹿の一つ覚えのように拳を叩き込んできますが、私には当たりません
「くそがぁ!ちょこまか逃げんな!」
「逃げる?人聞きの悪い事を、仰らないで頂きたい。この通り私は、上半身のみを動かして貴方の拳を避けているだけですよ。足は動かさずに。」
「ざっけんなぁ!」
そう唾を吐きかけながらも、彼は私に当てようと躍起になっていますが・・・。
(愚かですね・・・。明鏡止水*2の如き心を持てば、相手の目線や体軸。果ては呼吸の頻度から攻撃の先読みはできるものなのですが・・・。それに、そのような単調な動きでは自ら肘部と肩部の関節を外してくれと申し上げているようなものですよ。)
私はそう思いながら、大男の腕を掴みます。
(突きの威力を・・・利子を付けて、返させていただきます!)
そうして私が大男の突きの威力を返すように腕を捻ると、ゴリゴキュッ!という音が響きました。どうやら、彼の肘部と肩部の関節が綺麗に外れたようですね。その激痛から彼は膝を着き降伏しようとしますが、私はそんなに甘くはありません。
「男として生まれたなら・・・勝負から逃げてはなりません。もう一度、
そう申し上げながら、後頭部を踏みつけると大男は気を失いました。そして、私は残りの2人に忠告します。
「今宵目にした事は、忘れなさい。分かりましたか?」
私が他の2人に目を向けると彼らは壊れた人形のように頷き、大男を抱えて蜘蛛の子を散らすように逃げて行きました。そんな中、綾香さんが恐る恐る声を掛けてきました。
「生徒・・・会長・・・君?」
「ご無事でしたか?桐野さん。」
「え・・・えぇ。」
「取り敢えず、街灯の多い場所まで向かいましょう。また、あのような輩が現れては厄介ですので。」
「わ、分かったわ・・・。」
そして、しばらく歩いて数分・・・。私と綾香さんは、人通りの多いコンビニ前のベンチまで来ていました。ここまで来たら、安全でしょう。丁度私達の立っている場所は、防犯カメラから見える場所ですので。そして、私はコンビニで買った抹茶オレを彼女に差し出します。
「どうぞ、温まりますよ。」
「あ、ありがとう・・・。あ、あの・・・。さっきはありがとう。その・・・見た目以上に、強いのね・・・。」
「そう思われるのも無理はないでしょう、この様な体躯ですからね。」
私がそう申し上げると、綾香さんは申し訳なさそうな顔に成ります。恐らく、身長の件で私が傷ついたと思っているのでしょう。
「ご、ごめ・・・。そんなつもりじゃ・・・。」
「気にしないでください。私が小さいのは事実ですし、奇異の目で見られるのには慣れています。」
「そ、そう・・・。あの・・・。何であそこに居たの?」
その問いに私は、少し言葉に詰まります。綾香さんの事が心配になったからとはいえ、自身がしていた行いは付きまといのようなものなのですから。ですが、嘘は貫き通せるものでも無いので正直に話します。
「申し訳ありません、気分を害されたなら謝らせて欲しいのですが・・・。私もあの喫茶店に居たんです。」
その言葉に、綾香さんの瞳孔が揺れ動きます。
「そっか・・・。じゃあ、私と健治の言い合いも・・・聞こえてた?」
「申し訳ありません、不躾でした。」
「いいわよ・・・。というか、多分あのお店のお客さん全員に聞かれたただろうから・・・。」
「お気遣いいただき、有り難う御座います・・・。」
私がそう申し上げると暫くの間沈黙が流れますが、綾香さんは恐る恐る口を開きます。
「聞かないんだ・・・。何があったのか。」
「はい。話す事で楽になる事もありますが、悲しみがぶり返す事もありますから。今のあなたは、後者でしょうからね。」
「うん・・・。でもさ、ちょっとだけ聞いてくれる?多分話したら泣いちゃうかもしれないけど・・・。その時は慰めて欲しいわ。」
そう力無く笑う綾香さんは、ポツリポツリと話し始めます。
「私と健治は、幼馴染だったのよ。私はアメリカ人と日本人のハーフでね、4歳までアメリカに居たんだけどパパの仕事の都合で日本に来たの。それで、幼稚園に通ってたんだけど日本人離れした見た目だから当然虐められたわ。『金色お化け』とかそんな言葉を言われてね・・・、そんな私を助けてくれたのが健治だったの・・・。」
「それが、御二人の出会いだったのですね。」
「えぇ・・・。あの頃の幼い私にとっては、健治はヒーローだったわ。彼は、幼稚園の頃から誰よりも背も高くて、力も強い子だったの・・・。虐めから守ってくれたそんな彼に、私は当然惹かれたわ。最初は友愛だったけど、中学に上がる頃にはそれは男女間の愛情に成ってた。」
「それで、御二人は男女の仲になったと?」
「正確に言うと健治が中学の頃に、学内対抗のテニスの大会で優勝を逃してね・・・。そのときに、慰めの言葉を掛けて告白したの。『あなたが辛いときは、私が傍で支えてあげる』って・・・。今思えば、クサい台詞よね・・・。」
「私はそうは思いませんよ。」
その言葉を私は否定します。告白というものは、一歩間違えれば今までの関係を大きく変えてしまうものです。良い方にも悪い方にも。
「女性が好いた男性に対して、愛を伝えるなどとても勇気のいる事だと思います。それをやり遂げたあなたは、凄い方だと思いますよ。」
私のその言葉に、綾香さんはくすっと笑います。
「なぁに?もしかして、未だに告白は男がするものだと思ってるタイプ?」
「はい。これでも、古い考えの人間なので。」
「フフッ・・・、変なの。まぁ、そんな告白も無駄だったけど・・・。まさか、告白していたときから既に二股を掛けられてたなんて・・・。本当に馬鹿らしいわ・・・。あの日、彼の為に頑張って作ったお弁当も・・・。海に行って遊んだ思い出も・・・。カップルコンテストで優勝して、お互いに喜んだ思い出も・・・。彼にとっては、取るに足らないものだったのね・・・。」
そう涙を流す綾香さんに、私は布切れを渡します。そんな私に驚いた顔をすると、彼女は小さく笑って受け取ってくれました。
「ありがとう・・・。優しいのね。」
「優しいというより・・・。貴方が悲しい顔をしていると、私も悲しくなってしまいますから・・・。」
私がそう申し上げると、綾香さんは驚いた顔をしながら笑ってくれました。その耳は朱に染まっていますが、私はそれには気付かないふりをします。突っ込むのも野暮ですから。
「そんな恥ずかしい言葉を、さらっと言っちゃうなんて。あなたって、可愛い顔してプレイボーイね。」
「そんな、遊び人の様に仰らないでください。これでも、一途なんですよ?」
私は少しその言葉にムッとしますが、彼女が更にコロコロ笑うので良しとしましょう。そうして彼女は落ち着いたのか、ベンチから立ち上がります。
「ありがとう。貴方と話したおかげで、少し元気が出てきたわ。」
「それは何よりです。」
そのとき、彼女は恐る恐る私に問いかけてこられました。
「あの・・・。もしかして、帰る方向こっち?」
「そうですが・・・。共に帰路につきましょうか?」
私がそう申し上げると、綾香さんは困ったように笑いながら仰られました。
「御願いできるかしら・・・。その・・・、さっきみたいな人達がいたら怖いから・・・。一緒に帰ってくれる?」
そう微かに震える彼女を見ると、私は肯定の意を示すかのように頷き冗談を飛ばします。
「分かりました。エスコートさせて頂きますね。」
「御願いできる?可愛い
「
そう言いながら笑い合うと、私達は帰路につきました。
そして、数分後。私は彼女の住んでいる家に着きました。そこは、ごく標準的な一軒家でしたが何処か温かみがありました。
「そういえば、門限は大丈夫なのですか?」
「大丈夫よ。まだ、7時だし・・・。お父さんとお母さんも、まだ連絡を寄こして無いから怒って無いと思うわ。」
「そうですか。」
「じゃあ・・・。また明日、学校でね?」
そう家に入ろうとする彼女に、私は声を掛けます。
「あの、綾香さん。」
「どうしたの?」
「あの・・・。月並みな、慰めの言葉かもしれませんが・・・。」
私はこの言葉を申し上げるべきか悩みますが、綾香さんは私の言葉を待ってくれています。
「私達は、過去を変える事は出来ません。ですが、これから過去を作る事は出来ます。今は、好いた人に別れを告げられて御辛い時期かもしれませんが、どうか元気を出してください。そして、今の哀しみを上書きできるほどの過去を作っていってください。きっと、あなたなら素晴らしい殿方を見つけられますから。」
私がそう申し上げると、彼女はクスリと笑ってくれます。
「ありがとう。じゃあ・・・また明日ね。」
「はい、また明日。」
そうして私は電話で呼んだ迎えの車に乗って、今度こそ帰路についたのでした。
次回は綾香視点です