クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
学校が終わった放課後。私と綾香さんは、綾香さんの自宅へ向かっていました。そして、そんな後ろには弥生と海人も居るのですが・・・。
「あの・・・御二人とも、どうしてそんなに生暖かい眼差しで見てくるのですか?」
「ん~?何でもあらへんよ~。」
「そうそう、俺らの事は置物と思ってくれていいからな。」
弥生と海人は、何故か私達の方を見ながら生暖かい眼差しを送ってきます。そんな二人を訝しげに見ていると、綾香さんが何かに気付いた様に話し掛けてきます。
「ねぇ、皆。このポスターって・・・もしかして、今度の神様の怒りを鎮める御祭りのやつかしら?」
綾香さんが指を指した電柱には、今度行われる祭事の広告が貼られていました。どうやら、母上が関係処に声を掛けてくださったようですね。
「おっ、そうだな。2週間後か・・・。神楽舞の準備は大丈夫なのか?」
「はい。日舞の稽古も欠かしていませんし、神楽舞も日舞を踏襲したものですから。」
「さよか~。時雨君の神楽舞、楽しみやなぁ~。」
「どうせなら、神社に行ってみようぜ!神崎さんにも会いてぇし!!」
その海人の言葉に、綾香さんは首を傾げられました。
「神崎さん?それって誰の事?」
「神崎さんは、今度の御祭りが行われる神社の女性神主さんや。地元じゃ、知らへん人はおらんで~。」
「神事や祭り事に関しては、誰よりも熱心に取り組まれる尊敬すべき方ですね。海人の言う通り、挨拶に伺いましょうか。綾香さんの事も、紹介したいので。」
私の言葉に三人が頷いた事を確認すると、私達は神社の方へ向かいます。そして、その神社の石段前に辿り着くと綾香さんは大きく口を開けてらっしゃいました。
「ねぇ、ここって・・・。何段あるの?」
そう呟く綾香さんの眼の前には、100段以上の石段が
「120段ほどでしょうか?これでも、少ない方でしょうね。」
「だな、長い所だと3000段以上あったりするもんな。」
「綾香ちゃん大丈夫?おんぶしたろか?」
「だ、大丈夫・・・だと思う。」
そう顔を引き攣らせながら笑う綾香さんに苦笑しながら、私達は石段を登り始めたのでした。
そうして、数分後。私達は階段を上り続け、境内がようやく見える所まで到達いたしました。そんな私達3人は、息を切らしている綾香さんを介抱していました。
「綾香~、無事か?」
「お疲れさんやね。御水飲みぃ?」
「あ、ありがとう・・・。」
そうして喉を鳴らしながら水を飲む綾香さんが、歩ける状態に成った事を確認すると私達は境内の中に入ります。そして、そこでは鉢巻を舞いた大工さん達が屋台の組み立てをしていらしゃいました。
そんな中、敷地内の中心に立っている神主服を着た白髪の女性が、声を張り上げて指示を出していました。そんな彼女の指示に、大工さん達は声を張り上げて応じます。
「良いか!この地に厄災が降り掛からぬ様に、此度の祭事は厳粛に行わなくてはならぬ!!なにより、水無月家の方々が主催の祭事だ!!屋台同士の間隔は、キッチリ二尺*1!!僅かな狂いも許さぬぞ!はみ出した分は、隣の屋台が蹴り飛ばしても宜しい!!」
「承知!!」
そんな緊迫した現場に似つかわしくない声で、海人が白髪の女性・・・神崎伊織さんに声を掛けます。
「神崎さーん。」
「神宮寺家の跡取り息子か。おや、隣には如月家と水無月家の御子も。手伝いに来てくれたのか?」
「うんにゃ。冷やかしに来ただけやでー。」
その言葉に眉を寄せながらも、神崎さんは私の隣に立っている綾香さんに目を向け興味を示されました。
「全く!猫の手も借りたいと言うのに・・・!おや?そこの金髪の女性は?」
「神崎さん、紹介いたします。私達三人の友である、桐野綾香と言う女性です。」
「は、初めまして!桐野綾香です!!水無月君達には御世話になってます!」
綾香さんのその挨拶に、神崎さんは目を見開くと綺麗なお辞儀で綾香さんに挨拶をしてくれました。
「これはこれは。ようこそ、我が神域へ。私はこの神社の神主を務めております、神崎伊織と申す者です。以後とも良しなに。」
「は、はい!宜しくお願い致します!!」
「なるほど、噂通りの見た目によらず礼儀正しいお嬢さんだ。古賀さんが仰られていた通りのね。」
「古賀さん・・・って?」
そう首を傾げる綾香さんに、私はこっそりと耳打ちを致します。
「『泡沫ノ夢』のマスターさんの、本名ですよ。」
「あ、そうなのね。・・・それにしても、女性の神主さんって新鮮かも。」
「そうですね。ですが、最近は女性神主さんも増えてきていますからね。」
そう私達が話していると、弥生が神崎さんに頼みごとをしていました。
「神崎さん。折角やから綾香ちゃんに、この神社の神さんの事を教えたってくれへん?最近、時雨君の影響でスピリチュアルな事にハマってもうてるらしいねん。」
「ふむ・・・良いでしょう。構いませんかね?お嬢さん。」
「は、はい!御願い致します!!」
そう綾香さんが頭を下げると、神崎さんは咳払いをした後にこの地に祀られておられる神について話してくださいます。
「まず最初にお伝えしますと、この社に祀られておられる神は天津神や国津神の類ではございません。この地に眠るは神代に居られた神ではなく、神代以降・・・。つまり、神武天皇が生まれて以降に祀られた神とされております。」
「えっと・・・。それって、何時代なんですか?」
「物の本によると、紀元前711年ですね。現在が2025年でありますが故、今から約2736年前が神武天皇が生を受けた年になりますね。」
その年数に綾香さんは倒れそうになりますが、そんな彼女を私は何とか支えます。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫・・・。少しスケールが大きすぎて・・・、2736年・・・。想像がつかないけど、ここに祀られている神様は、神武天皇さんが生まれて以降に祀られた神様って事?でも、普通の人間が神様に成るなんて事があるの?」
「あー、例えるならあれだよ。死後に怨霊から学問の神様に成った菅原道真公とか、怨霊として神社に祀られてる平将門とかも居るだろ。それと同じだよ。要は祟りを引き起こした結果、それを鎮める為に神様として祀り上げられてるってわけ。そういった類の神様等は、人神っていうカテゴリーに分類されるんだよ。」
その海人の解説に納得がいったような綾香さんは、更に質問を投げかけてきます。
「あ・・・、成程。じゃあ・・・ここに祀られてる神様も、有名どころの戦国武将だったりするの?」
そんな彼女の質問に、神崎さんを含めた私達は顔を見合わせてしまいます。そんな私達の様子に、綾香さんが疑問を浮かべた表情をされてきます。
「あ、あれ?もしかして、変な質問しちゃった?」
そう不安げな表情をする彼女に、神崎さんは困ったように笑いながら説明を続けてくださいます。
「それがですね・・・。この神社に祀られてる人神様の素性は、今の今まで詳しくは分かっていないのです。ただ言い伝えられているのは、遥か昔この地に賊が現れたそうでしてな。その賊の数は
「ぴ、ピンチじゃないですか!?」
「えぇ。その賊達は白昼堂々と、この地で平和に暮らしていた民達に襲い掛かろうとしました。しかし、そんな賊共の目論見は徒労に終わりました。その村には、一人の名も無き旅人が宿泊していたそうです。しかし、その旅人は実は非類なき豪傑でありました。その旅人は、村の男衆を殺し女衆を手籠めにしようとした賊共を拳一つで皆殺しにしてしまったとの事です。」
「拳一つ!?素手で、ボコボコにしちゃったって事ですか!?」
「左様です・・・。ですが、いくら豪傑と言えども大勢の賊共相手に無傷でいれる訳もなく・・・。賊共を全て撲殺し終えた後に、立ったまま死んでいたそうです。そして、その村の住民達は彼に敬意と感謝を示し、彼を神として崇め奉ったそうです。」
その神崎さんが説明をし終えると、綾香さんは納得した様に大きく頷かれました。
「な、成程・・・。それが、この神社の成り立ちって事なんですね。でも、それだけ強いって事は・・・。その神様が怒ったら大変な事に成っちゃうわよね。『泡沫ノ夢』のマスターも言ってたけど、怒りが収まらなくって自分に無礼な事をした男以外の人達も呪い殺しちゃうくらいの神様だし・・・。」
「せやね。やからこそ、ちゃんと祀っとかへんとあかんねん。」
その言葉に、神崎さんもにこやかに頷かれます。
「何はともあれ、此度の祭事が無事に終わる様に真摯に準備を追えなくてはなりませんからね。」
そうして暫く神崎さんと話をした後に、私達は祭事の際に出される屋台料理の味見をさせて貰って後に綾香さんのご自宅へと向かったのでした。