クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
今度の御祭りが開催される神社を訪れた後、私達は何故か高級そうな和菓子屋さんに居た。そして、私の目の前ではあれよあれよと高そうな和菓子を時雨君達が吟味している。
「やっぱ、水饅頭が一番じゃね?食いやすいし。」
「それは、海人が好きなだけでしょう?それ以前に、腐りやすいじゃないですか。」
「ほな、ヒヨコカステラはどやろ?可愛ぇし、長持ちしそうやで。」
「もう、いっそのこと各々が渡したい物を全て買えばいいのでは?ただし、保存の効く物で。」
そんな彼等に私は恐る恐る声を掛けてみる。
「あ、あのさ・・・。そんなに、必死に吟味しなくてもよくない?」
そんな私の言葉に、時雨君は振り向いたかと思うと首を振ってしまう。
「いえ。折角、綾香さんの御家族に会いに行くのですから、手土産の一つくらい買わなくてどうするのですか?」
「そうそう。第一印象は大事だからな。」
そう言う彼等に何も言えずに、店内でボーっとしているとあっという間に彼等は和菓子を決めてしまい御会計を済ませてしまう。
一瞬、会計をするレジから『お会計一万八千円になります。』とかいう、目が回りそうな数字が聞こえてきたけど気のせいでしょうね・・・。そう・・・信じたいわ。
そうして和菓子屋さんを出てしばらくした後、私は遂に我が家の前に到着してしまった。そんな私は恐る恐る鍵を開けて、まるで泥棒にでもなったのではないかと錯覚するくらいに、そっとドアを開ける。ぶっちゃけ言うと、もの凄い緊張している。
私は友達の数は多いほうだし、放課後にカラオケに誘われたりしたりして人間関係は良好な方だと思う。しかし、自宅に学校の友達を招き入れた事は殆ど無い!というか、健治しか招き入れた事が無い!!
そんな私が、まさか日本三大企業の令嬢と令息を招き入れるなんて・・・。人生ってどうなるか分からないわね。
「た、ただいまー。」
私がそう言うと、奥からは咲がアイスを舐めながら歩いてきた。そんな彼女は、相変わらずだらしない格好でオーバーサイズの白シャツに、ズボンを穿かないというもの凄い大胆な格好でアイスを咥えながらやって来た。しかし次の瞬間、咲は咥えていたアイスを落としてしまった。
「お姉ちゃん、おかえりー。お母さん、町内会のママ友と御茶会行ってくる・・・って。・・・へ?その人達、誰なの?」
そうあんぐりと口を開いている咲に、弥生ちゃんがゆっくりと話し掛ける。
「こんにちは~。綾香ちゃんの、妹さんかな~?初めまして。ウチ、綾香ちゃんの御友達の如月弥生って言います~。よろしゅうね~。」
そんな弥生ちゃんに続いて、海人君と時雨君もぼんやりとしている咲に自己紹介を始めていく。
「神宮寺海人だ、宜しくなー。」
「水無月時雨と申します。以後とも良しなに。」
そう自己紹介が終わると、漸く意識を取り戻した咲が大声で絶叫し始めたわ。そんな先に私は、大慌てでストップを掛ける。
「え・・・うぇぇ!?な、何で日本三大企業の令嬢さんと令息さん達が
「違うわよ!テスト勉強を、家でする事になったの!!」
そんな私達の様子に時雨君が苦笑したかと思うと、咲に近づいて件の高級和菓子を手渡しをしたわ。
「初めまして、桐野咲さんですね。本日は急に約束も無しに、お伺いして申し訳ありませんでした。こちらは、心ばかりの品ですが、お受け取りくださいませ。」
「え。あ、有り難う御座います。あ、あの・・・。水無月時雨さん・・・ですか?」
「はい。いかにも。」
「あ、あの!先日の一件をお姉ちゃんから聞きました!暴漢から、お姉ちゃんを助けていただいたみたいで・・・。」
「いえ、当然の事をしたまでですから。」
「そんなそんな!お父さんとお母さんも、お姉ちゃんを助けてくれた事に関して御礼を言いたいみたいで・・・。」
そう楽しそうに話す咲と時雨君の様子を見ていると、私は段々とモヤモヤした気分に成ってきた。そして、そんな私の感情など露知らず、咲は時雨君の頭に手を掲げたのだ。
「それにしても、時雨さんって物凄い顔が良いですよね。可愛い系男子みたいな?」
そう言って時雨君の頭に手を乗せようとする咲を見て、私は思わず時雨君の肩に手を置いて自分の方に引き寄せてしまった。
「咲!あんまり、ベタベタ触らないでよ!時雨君が、ビックリしちゃうでしょ!?」
「え?あ~・・・すみません。」
そう謝る咲に時雨君は苦笑いしたあと、私に質問してくる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。それより、何処で勉強しましょうか?」
「あ、じゃあ私の部屋でしましょ?弥生ちゃんと海人君もそれでいい?」
私がそう聞くと、海人君と弥生ちゃんも大きく頷いて了承してくれた。
「ええよ~。夏休みにゆっくりできるよう頑張ろな~。」
「赤点無しでパスしたら、どっか遊びに行こうぜ!!」
「ええな!海とか4人で行ってみぃひん?確か、時雨君の別荘が海に面してたと思うし。」
その弥生ちゃんの言葉に、時雨君は苦笑しながら頷いたわ。
「良いですね。まぁ、捕らぬ狸の皮算用に成らないように、勉強の方を頑張りましょうか。」
「そうね・・・。三人共、先に私の部屋に行ってて。御菓子とかジュース持って行くから。」
「オッケー。先行ってるぜ。」
そう言いながら二階に上がる時雨君達を見届けると、咲が耳打ちをしながら話し掛けてきた。
「旧華族の人達だからって、どんな人かと身構えてたけど普通の感じだったね。」
「えぇ。三人共、物凄く良い人達なのよ。お金持ちだからって決して人を見下したりしないし、それどころか他人の心を思いやる心を持った、もの凄く優しい人達なの。」
「そうだね。はぁ・・・本当に、良い人そうだよねぇ。そういえば、時雨さんってフリーなのかなー。優しそうだし、私もあんな彼氏欲しいなぁー。」
その瞬間、リビングに大声が響いた。そして、その大声を出したのが自分自身だという事に気付くのに私は少し時間が掛かってしまった。
「それは駄目!!」
「うわっ!急に大声出さないでよ!!・・・ってか、お姉ちゃん滅茶苦茶必死だね。私、別に時雨さんみたいな彼氏が欲しいって言っただけで、時雨さんが良いとか一言も言ってなんだけど・・・。」
そう呆れながら呟く咲に、私は何も言えなくなってしまう。そして、咲はそんな私を見ながら呆れた表情から段々とニヤニヤとした表情に変わっていく。
「成程成程~。ウチのお姉ちゃんは、見事に時雨さんに惚れちゃったのか~。まぁ、元カレに酷いフラれ方して立て続けに暴漢に襲われそうになってたところを、王子様みたいに助けてくれたんだもんね~。そりゃあ、ハートを撃ち抜かれて惚れちゃうのも無理は無いか~。」
そんな咲の言葉に、私は顔に熱が溜まる感覚に陥ってしまう。こういうのを、語るに落ちるって言うのかしら・・・
「んなっ!べ、別に私は時雨君に惚れたわけじゃぁ・・・。そ、それに、時雨君はきっとお見合い結婚とかするでしょうし・・・。」
「そのお見合い結婚するのかどうかってさ、時雨さん本人に聞いたの?」
「聞いてない・・・けど。」
「じゃあさ、お姉ちゃんにもチャンスはあるって事じゃないの?」
その言葉に、私は先日『泡沫ノ夢』で出会った奥さんの言葉を思い出す。たしかあの人も、私の事を『どこへだって飛び立てる鳥』って言ってくれたっけ・・・。
「まぁ、私としてはあんなクソ野郎の事は忘れて、時雨さんみたいな誠実そうな人と付き合った方が良いと思うけどね。言い方は悪いけど、早めに唾は付けといた方が良いんじゃない?じゃ、私はリビングでゴロゴロしてるから御菓子とジュース持っていきなよー。」
そう言うと、咲は冷凍庫からチョコアイスを取り出してリビングに行ってしまった。それにしても、アイス食べ過ぎじゃない?お腹壊さないか心配だわ・・・。
そう考えながら自室に入ると、既に時雨君達は勉強の準備を始めていたわ。
「お待たせ〜・・・。ジュースとお菓子持ってきたわよ。」
私がそう言うと、彼等は嬉しそうな顔をしてくれた。そんな彼等の笑顔に、私の心も温かくなってくる。
「お気遣い、ありがとうございます。先に準備だけさせていただきましたよ。」
「お!ジュース持って来てくれたのか?サンキュー!」
「わぁ、ありがとさん~。くぅ~!キンキンに冷えとるなぁ~!!」
そう言いながらジュースを飲む三人に、思わず私は微笑んでしまう。そんな中、少し蒸し暑い風が窓から入りつつも私達のテスト勉強・・・。というより、私一人に対する成績上位三名による家庭教師が始まったのだった。
そう、始まったのだけれど・・・。先程から、私の視界の端には艶やかな黒髪がチラチラと映っている。そして、そんな黒髪がサラサラと揺れるたびに
(良い匂い・・・。優しい香りがするわ。それにしても、やっぱり御顔が綺麗よね・・・。)
そう考えていると、時雨君が私の方を見上げて首を傾げる。座高の差もあってか、時雨君が私を見上げると上目遣いの様な姿勢になってしまうのだ。そんな彼を見た私は、彼の
「綾香さん?集中力が無くなっていますよ?」
その声に私はハッとして、続けて勉強を再開するがどうしても耳元で響く彼の甘い声に脳が蕩けてしまいそうになる。
「はひっ!?え!?あ!だ、大丈夫よ!!じゃ、じゃあ次はここを教えてもらえる!?」
「分かりました。小休止が必要なら、いつでもお申し付けくださいね。ここの問題の解き方はですね・・・。」
そうして数時間が経った頃、
「なんか、初めてな気がするわ。誰かに教えて貰う、テスト勉強は。」
「そうなん?」
そう訊いてくる弥生ちゃんに、私は半ば愚痴のように話し始める。
「そうよ!健治と勉強してた時は、あれが分からないだの、これが分からないだの・・・。そこさっき、説明したわよね!?って突っ込みたくなるくらいの質問のオンパレードだったわ!!しかも、今思えば私が密着して教えているときに、私の制服の胸元とかジロジロ見てきた感じもするし・・・。」
「うわっ!気色悪ぃ!!やっぱ、あいつ
「百年の恋も冷めるのは直ぐと言うのは、本当のようですね・・・。」
そう同情してくれる三人に、私はまるで
「はぁ・・・。健治に使った時間を返して欲しいわね。」
「まぁまぁ。そんな嫌な思い出が無くなるくらいに、これから楽しい思いで作っていったらえぇやん。せや、捕らぬ狸の皮算用やけど、今の内に夏休みの過ごし方とか考えへん?」
その弥生ちゃんの言葉に、私達は各々が夏休みにしたい事を語り始める。
「良いですね。取り敢えず、夏休みの課題は初日の内に終わらせておきましょうか。」
「いきなり宿題の話かよ!!まぁ、先に終わらせた方が良いよな・・・。」
「さっきも言うたように、時雨君の別荘に4人で行って海を楽しむのもありやなぁ。プライベートビーチやから、ナンパされる心配とかも無いし。綾香ちゃんは可愛えぇからナンパされへんか、お姉さん心配やからなぁ〜。」
そう冗談めかす弥生ちゃんに、私は苦笑しながらも頷く。現に去年の夏休みは海に行ったときに、結構な頻度でナンパされたものだったからだ
「確かに、ナンパされる心配が無いのは大きいわよね。」
しかし、次の海人君の言葉に私は固まってしまう。
「夜はバーベキューするだろ?その後は、裏山に行って肝試ししようぜ!!」
「え!?き、肝試し・・・?」
「どうした?もしかして、肝試しとかは苦手な感じか?」
「い、いや・・・。大丈夫よ・・・。」
そんな私の様子に、海人君と弥生ちゃんは何かを察したのか悪戯を思いついた表情になり、どんどんとスケジュールを組み立ててしまう。
「じゃあ、肝試しは俺と弥生ペア。時雨と綾香ペアで行くかー。」
「おぉ、えぇなー。」
「え・・・。ちょっとそれは・・・。」
その言葉に私が待ったをかけようとした瞬間、休憩時間の終了を知らせるタイマーの音が無慈悲にも鳴ってしまったのだった。