クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
(今話は、自殺に関する内容が含まれます。タグには残酷な描写を付けていますが、よろしくお願いします。)
生徒会室で昨日の健治の有様を聞いた私達は、いつも通りに教室に向かい授業を受けていた。とはいえども、殆どの授業がテスト前の為の自習時間であり、私を含めたクラスメイト達は思い思いに勉強していたり雑談していたりしていたわ。
そして、時雨君はと言うと・・・クラスメイトの皆に頼まれて、テストに出やすい問題の解答解説を行っていたわ。その姿は
「はい、では微分方程式の概要は理解できましたか?此処までで、何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
その質問に、クラスの俗に言うチャラっぽい子が質問を投げかける。けれども、時雨君は嫌な顔を一つせずにその子の質問に対して答えてあげている。
「ハイ!!水無月せんせー!此処のポイントが解かんないでーす!!」
「承知致しました。その
そんなチャラっぽい子も、時雨君の説明に相槌を打つ際の口調は軽々しいものの、真剣な表情で解説を聞いて必死にメモをしていたわ。
そんな彼の教え方は、先日私の家で教えてくれたときと同じ様に、とても分かり易いものだった・・・。とはいえ、教室の後ろで生徒達の様子を監視している先生が御株を奪われて*1、悲しそうにしているのが気になるけど・・・。
ウチのクラスの子達はなんと言うか、結構真面目な子達が多いのよね。俗に言うさっきのチャラっぽい・・・俗に言う陽キャ?にカテゴライズされる子達も、基本的には真面目だし、何ならクラスの大人しい子達とも丁度良い距離感で仲良く遊んでいる。
だから、誰も今の時雨君の授業の最中に騒いだり、他の人を邪魔したりするような事は一切しない。そんな子達だからこそ、時雨君も根気強く授業をしてくれる。
かく言う私も、生徒の皆と同じ様にノートと鉛筆を持って時雨君の解説に耳を傾ける。時雨君の話し方って、速過ぎず遅過ぎ無いから聴きやすい事この上ないのよね。あと・・・単純に言うなら・・・。
(やっぱり、声が良いわよね・・・。)
何度も言うようだけど、声が抜群に良すぎるわ。一時期流行った、ASMR動画あるじゃない。あれを聞いている気分よ。・・・あとから弥生ちゃんに聞いてみたら、時雨君を含めた水無月家の家系の人達は『1/fゆらぎ*2』っていう声質の持ち主という事らしい。
そんな中、時雨君は一通り教え終えると持っていたチョークを置いて教室の扉に向かって行ったわ。
「少し、
そう言って教室の扉を開けて出て行った彼の後姿を見届けた皆は、一息を付き始める。そんな彼等は、さっき時雨君が教えていた箇所を復習したり、のびのびと気分転換に雑談していたりしていた。そして私は、時雨君の教えてくれた事を復習しようとしていたのだが・・・。クラスのギャルグループの、数人の友達に捕まってしまった。そんな彼女達は、興味津々という表情で色々と聞いてきたわ。主に、時雨君との事に関して。
「それでそれで!?どうなのよ綾香!?」
「ど、どうって何が?」
「とぼけないでよ!!水無月様との関係に決まってるじゃない!最近よく一緒に居るし・・・。それに、噂ではあんたと健治が別れたって噂も立ってるくらいなのよ・・・。」
その言葉に私は、頭が真っ白になった。いや・・・別に健治と別れてショックだった訳じゃ無くて、女子グループの噂の広がり具合の速さに舌を巻いてしまった驚き故に、頭が真っ白になってしまったのだった。
「そ、そうなのね・・・。ハハ・・・。」
「で?どうなのよ?健治とは別れたの?」
そう訊いてくる彼女達の目線が、一斉に私に向かって降り注がれたわ。そんな彼女達の目線に耐えれるはずもなく、私は呆気なく話してしまった。
「・・・別れたわ。健治が、テニス部のマネージャーと浮気してるって・・・。」
そう告白した私に対して皆は、同情の眼差しを向けてくれたわ。そんな中、一人の友達が発した言葉に疑問符を浮かべる事になってしまったわ。
「けど、私達としては健治と別れてくれて良かったと思ってるわよ。」
「え?ど、どうして?」
そう質問をする私に、ギャルグループの皆は御互いに顔を見合わせると、私に向かって言いにくそうに話してくれた。健治の裏の顔と悪行を。
「あのさ・・・。健治が十股してるって噂、知ってる?」
その言葉に、私は柄にも無くポカンと口を開けてしまったわ。そんな私に、友達は更に情報を話してくれたわ。
「ごめんね。ウチ等も、話すべきか迷ってたんだ。けど・・・女子のネットワーク情報によるとね、テニス部のマネージャーだけじゃなくて、不特定多数の女の子達と浮気してるんだって・・・。何なら、休日に・・・その、ラブホに入って行ったっていう噂も立ってるらしくて・・・。というか、健治の奴が女の子達を誘惑したみたいな噂も立ってるけど。」
そんな友達の話を聞いた私は、もう呆れに呆れたわ。そして、大きな溜息を吐いた私に対して友達達は同情の目を向けてきてくれたけど、私は最早怒りや悲しみを通り越して、虚無に成ってしまったわ。
「ごめんなさい・・・。もう一回、言って貰える?」
「いや・・・だからさ。健治の奴、中学の頃から女をとっかえひっかえしてたのよ。・・・けど、幸せそうな綾香を見てたら言い出せなくって・・・。本当にごめん!!もっと早く言えば良かった!!」
「あ・・・。いや、皆が謝る事じゃなくって・・・。・・・はぁ~。なんというか、自分自身がとんでもなく間抜けに思えてくるわ。中学時代から、二股どころか十股はされてたって事でしょ?」
「う、うん・・・。ごめんね・・・、ウチ等も知ったのは綾香と健治がカップルコンテストで優勝した直後くらいだったんだ。そのときのアンタが、幸せそうでさ・・・。言い出しにくかったんだ。言い訳に聞こえちゃうかもしれないけど、本当にごめん・・・。」
「しかも最悪なのがさ・・・。これも噂に過ぎないんだろうけど、彼氏持ちの彼女も寝とってたらしいよ。」
「それ・・・本当?」
私がそう聞き返すと、ギャルグループの皆は深刻そうな顔をして話し始めたわ。その内容は、思った以上に深刻で気分が沈むような話だった。
「なんでもね。健治の親は大企業の
「確かに・・・。時雨君と登校してきたときに、そんな事も言われてたわね・・・。」
「うん。でも、こっからが胸糞なんだけどね・・・。別れさせられたカップルの内の、1組の彼氏彼女の両方が自殺しちゃったって噂よ・・・。」
それを聞いた途端、私の頭の中は真っ白になってしまった。私が健治に盲目的になっていた頃に、そんな悲劇が裏で起こっていたなんて・・・。私が、もっと早くに健治の浮気に気づいていれば、こんな事には・・・。
そう項垂れる私を見たギャルグループの子達は、慌てて私の肩に手を置いて支えてくれたわ。
「ちょっと!幾ら何でも、話しすぎよ!綾香がぶっ倒れそうになったじゃない!」
「ご、ごめんて。綾香、大丈夫?」
そう声を掛けてくれた彼女達に、私は辛うじて声を絞り出した。
「え、えぇ・・・。」
そんな私を見た1人の友達が、自殺の件を話してしまった子を軽く小突きながら、私に慰めの言葉を掛けてくれる。
「綾香。今の話はショックだっただろうけど、気にしたらダメよ。カップルが破局したのも、そのカップルが自殺したかもしれない噂も、悪いのはアンタじゃなくて健治なんだからね。」
「えぇ・・・。そう、よね・・・。」
そう私達が話していると、私達女子グループの周囲に漂っていた陰鬱な空気を吹き飛ばす様な声が響いたわ。クラスのチャラい部類の男子達を先頭に、男子グループが私たちのグループに話し掛けてきたの。
「おーい。お前等、何話してんの?」
「女子ばっかで話しててずりぃぞ!俺等も恋バナに混ぜやがれ!!」
そう冗談交じりにやいのやいの行ってくる男子に、女子グループの皆も冗談めかして言い合いを始める。
「はぁ?恋バナは女の特権なんですぅ。」
「そうよそうよ!アンタ等男子は、下ネタトークにでも華を咲かせてなさいよ!」
御互いに交わしている言葉自体は刺々しいものだけれど、御互いが不快にならないギリギリを責めている言葉の応酬と言ったところかしら・・・。そんな
「で?結局、何を話してたんだ?」
そう訊く彼等に、女子グループの一人が大袈裟に『やれやれ』と首を振った後に話し始めたわ。
「近藤健治の悪行についてよ。綾香にも知らせておくべきなんじゃないかって。」
「うわっ!よりによって、その話題かよ!!俺も噂としてしか聞いてないんだけど・・・健治の奴、女の子にクスリ盛って、ホテルに連れ込んだって噂もあるらしいぜ。」
「ってか、何で問題にならないんだよ!!やっぱり、健治の親と学校が揉み消してんのか!?」
そう健治の悪行に対する罵詈雑言が飛び交っていった教室だったが、一人の生徒の何気ない発言に教室中が静まり返ったわ。
「そういやさ、綾香と水無月様はどうやって知り合ったんだ?二人とも、あんまり接点なかったじゃん。」
「確かに!!滅茶苦茶気になる!!」
そう言いながらも、彼等は私に向けて好奇心を孕んだ視線を向けてきた。そんな彼等の圧に逃げ場がない事を悟った私は、観念してあの日の夜の事を話し始めたわ。そんな私が話した内容に、教室の皆は咲と同じ様な反応をしていた。
「やべぇ!超パネェよ!!」
「確かに水無月様って、運動神経抜群だけど格闘技も強かったの!?」
「そういえば俺、水無月様がMMAの無差別級の世界大会で優勝し続けてるって噂を聞いた事あるぜ!!」
「キャー!!まさに御姫様を護る、ショタ騎士様だわ!!」
そんな彼等の様子をぼんやりと眺めていた私だったけど、とある言葉で私の顔には一気に熱が昇ってしまう事に成る。
「そっかそっか~。それで、綾香は
「ひゃい!?は、は、ハート!?」
「あれ?アハハ!桐野さん慌てすぎっしょ!!可愛いー!」
そう言いながらクラスの皆は笑ってくるけど、その笑顔に含まれているのは嘲笑とかそういった類の物じゃなくて、温かな眼差しの様なものだった。そんな彼等に私は必死に弁明しようとする。
「そ、そんなんじゃ・・・。いや、けど・・・。」
そんな私に、ギャルグループの一人が私の肩に腕を回しながら話し掛けてきてくれる。
「まぁまぁ、綾香が別に水無月様に惚れて無くても問題無いけどねー。」
「そうそう。私達全員で、勝手に外堀埋めていくから。」
「え・・・?私達って・・・?」
嫌な予感を覚えながら恐る恐る質問をする私だったが、そんな私の嫌な予感は的中してしまった。なんと、クラス皆・・・。というより全員が、その場で挙手をしたのだ。
「「「私達と・・・。」」」
「「「俺達で。」」」
「いやいやいや!!何を勝手に外堀埋めようとしてきてるの!?時雨君の了承も無しに!!」
そんな私に向かって、大袈裟な仕草で皆は訳を説明してくれる。
「何言ってんだ!!別れたとはいえ、あの健治が簡単に御前ほどの女を諦めるとは思えねぇ!!」
「そうよ!もしも健治の奴が言い寄って来たときの為に、ガードは作っておかなきゃいけないのよ!!」
「そうそう!水無月様ほどの権力者が居りゃあ、健治もそうそう手を出したりは出来ねぇだろうしな!!なんなら、如月様と神宮寺様も後ろ盾に成ってくれるかもしれねぇし!!」
「確かに!三大大企業の御令嬢と御令息に囲まれてたなら安全ね!!」
「よしっ!お前らぁ!俺達はおねショタを信じる民だ!!濃厚で甘々なおねショタを見る為に、俺達も奮起しようではないか!!今こそ立ち上がる時だぁ!!」
「「「ウォォォォォ!!おねショタは
そう
「皆さん、申し訳ありません。厠が長引いてしまい・・・。綾香さん・・・。この有様は、一体どういう・・・?」
「ごめんなさい、私も分からないわ・・・。」
そうして数分後・・・。大騒ぎしていた彼等は当然だけど、トイレから帰って来た時雨君に『他のクラスは授業中なのですから、静かにしてください。』と怒られていた。
けれども、そんな彼等は何処か清々しい表情をしていたわ・・・。
因みにこの日以降A組では、「おねショタカップル成立大作戦」という何とも頭の悪そうな名前の会合が開かれる様に成ったとか何とか・・・。