クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
今日も学校が終わり、私達4人は私の家で引き続き勉強会をしようという話になったのだが・・・。
残念ながら、その計画は白紙になってしまったのだ。何故なら、御母さんの学生時代の友達が家に遊びに来ていると、御母さんから私にメールが来たからだ。
流石にそんな中、二階の自室で騒ぎながら勉強する事は
「どうする?今日の勉強会、生徒会室でやるかー?」
「え~、なんか息が詰まりそうで嫌やわぁ~。」
「ですが、そうこう話している間にも刻一刻と時間は過ぎていきますからね。早急に勉強会の会場を決めなくては。」
そう頭を唸らせる彼等に、私は御母さんの件を頭を下げて謝罪をするが、彼等は気にしていないように笑って許してくれたわ。
「・・・ごめんなさい。もっと早く知らせておけばよかったわ・・・。」
「いやいや、綾香ちゃんが気にする事やないよ~。こればっかりは、しゃぁないわー。」
そう話していると、海人君がポツリと何気なく呟いたわ。
「時雨の家とかはどうだ・・・?」
「私の家ですか?」
「おぅ、そもそも結構広いしさ。なにより、風通しとかも良いから快適に勉強できるはずだぜ。」
その言葉に弥生ちゃんは大きく頷きながら同意していたが、その隣で私は大いにガチガチに固まってしまったわ。
「お、えぇやんか!ウチも久しぶりに、雫さんと翡翠さんに会いたいわぁ~。」
「え゛・・・?ま、待って。それってもしかして、決定事項だったりする感じ?」
「え?綾香ちゃんは嫌やったりする?こう言うのも何やけど、時雨君の家は快適やで~。それに、雫さん・・・。時雨君の御母さんが勉強の間に出してくれる御菓子が、これまた絶品やねんなぁ~。」
そう言いながら恍惚とした表情になる弥生ちゃんを見ながら、私はその御菓子を想像して思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
そんな私を見た弥生ちゃんと海人君は、ニヤニヤしながら判決を下す裁判官の様に声を上げて帰りの用意をする。
「よしっ!!じゃあ、今日は時雨ん家で勉強会って事で!!」
「よし!!張り切っていこうなぁ~!!」
「張り切り過ぎて、燃え尽きない様にしてくださいね・・・。」
そう言い合いながら、私達は荷物を纏めて生徒会室を出て時雨君の自宅に向かって・・・。はおらずに、私達・・・というよりも、私は洋菓子専門店のショーケースと睨めっこをしており、そんな私の後ろでは時雨君達が苦笑いをしていたわ。
「なんつーか・・・。物凄ぇ、デジャブ感があるよな。この光景。」
「この前に綾香ちゃんの家に行ったときと、立場逆転しとるなぁ〜。」
「あの・・・。そこまで、真剣に選ばれずとも宜しいですよ?」
「そういう訳にもいかないわよ!!こう言ったらなんだけど、大企業の社長さんと社長夫人さんに会いに行くわけなんだし、それなりの物を見繕わないと・・・。」
そんな私を苦笑いしながら見つつ、時雨君は私の隣にしゃがみ込んで時雨君のお母さんが好みそうなものを、一緒に見繕ってくれたわ。
そうして私は御会計を済ませて、時雨君の家に向かったのだけれど・・・。
「こちらが我が家に成ります。・・・綾香さん?」
「・・・あ、え・・・?こ、此処から敷地内・・・?」
「いえ、正確には先程小さな祠がありましたでしょう?あの祠がある、森林の入口からが敷地内です・・・。もしかして、何かしか不手際が御座いましたでしょうか?」
「い、いや・・・。大きすぎて・・・。」
私の目の前にあるのは、和風建築の巨大な閉ざされた門だった。それこそ、よく学園アニメとかで出てくる御金持ちキャラの豪邸の様な大きさの門に、私は思わず口を半開きにしてしまう。そんな私に、弥生ちゃんと海人君は苦笑いをしている。
「まぁ・・・初見じゃあ驚くのも無理ないよな。」
「せやね。ウチ等のお家も大概大きいけど、時雨君の家は大きさに加えて厳かな迫力があるもんなぁ・・・。」
そんな私を他所に時雨君が扉横にあるチャイム・・・というより、吊るされた鈴の様なものをチリンチリンと鳴らすと、目の前に有る厳かな門がギィィィという音と共に開門し始める。そして、門が開くと同時に入って来た光景に、私は卒倒しそうになってしまった。何故なら・・・・そこに居たのは、五十人は超えるであろう、着物を着た恰幅の良い強面の男性達だったからだ。
そんな彼等は、まるでヤクザ映画の組長の出所祝いのワンシーンかの様に道を開けるようにして整列している。というか、よくよく見たら男性達の身体や顔には傷跡の様なものがいっぱい有ったし・・・。というか、日本刀とか携帯してたら本当にその筋の人にしか見えないわ・・・。
そうして、そんな彼等の前を時雨君達は何の気無しにスタスタと歩こうとする。そんな彼等が男性達の前を通ると、男性達は彼等が通り過ぎたそばから一斉に野太い声で御辞儀をし始めた。
「「押忍!御帰りなさいませ!若様!」」
そんな男の人達の声量は大地を震わせ、私の目の前の木に止まっていた雀さん達が驚いて一斉に飛び去ってしまう程だった。そして時雨君達は、そんな彼等の声量に怯む事無く、彼等に会釈しながら堂々とその間を通り抜けていく。
そして私はというと、時雨君達の後ろにピッタリとくっつきながら産まれたての子鹿の様な足取りで進んでいく他無かった。
「若様!!御勤め御苦労様です!!」
「御苦労様です!!」
「御苦労様です!!」
「神宮寺の若旦那様に、如月譲様も御勤め御苦労様です!!」
「そちらにおわせられる方は、噂の桐野譲様で御座いますね!!水無月の姐さんが、御座敷で御待ちです!!」
「御気を付けて行ってらっしゃいませ!!」
そんな彼等からの熱烈な歓迎を受けた私は、時雨君の御屋敷に入る頃には疲労困憊の状態だった。肉体的に疲れたというより、緊張の糸が一気に切れてしまったのだ。そして、そんな私に時雨君達は手を差し伸べてくれる。
「大丈夫だったか?」
「時雨君の護衛の人達、ホンマにヤーさんにしか見えへんもんなぁ。海人君とこの護衛の人達は、まんまマフィアにしか見えへんけど。」
「うっせ。」
「はぁ・・・。一般の方々に対する、挨拶の仕方を再教育しなければならないようですね・・・。まぁ、仕方が無いでしょう。彼等の殆どが異国の紛争地帯で、数多の死線を潜り抜けてきた元傭兵の方々なのですから。」
そんな『元傭兵』という衝撃発言さえも聞き流してしまう程に疲弊した私は弥生ちゃんに肩を貸されながら、とある襖の前に立つ事に成った。そんな襖の向こうには、かすかに人の気配がする。
(もしかして・・・。この部屋に、時雨君の御母様が?)
そんな中、時雨君達が木の床に正座をし始めたので、私もそれに
「母上、時雨です。ただいま帰りました。御約束通り、綾香さんを連れて参りました。入室しても宜しいでしょうか?」
「・・・入りなさい。海人君と弥生さんも居るのでしょう?」
「失礼いたします・・・。」
そう言いながら、時雨君が開けた襖の先にある和室には水色の着物を着た一人の女性が正座していたわ。そんな女性の見た目は、黒曜石の様な艶やかな黒髪に、真紅の瞳をした綺麗な女性だった。まさに、時雨君を女体化させて背を少し高くしたような人だ。口元には気品の有る笑みを浮かべていて、その美しさに飲み込まれてしまいそうになる。
そんな女の人に、海人君と弥生ちゃんは軽い口調で挨拶を済ませてしまう。
「雫さーん、久しぶりー。」
「御無沙汰しとります~。最近来れへんくって、申し訳ありませんでした~。」
「久しぶりですね、二人とも。しばらく見ない間に、大きくなりましたね。」
そんな彼等にも優雅に挨拶をする女性に、思わず私はボーっとしてしまう。
(女神様が本当にいるとしたら、こんな感じなのかしら・・・?)
そう私が呆けていると、隣から視線を感じたわ。その方向に目線を遣ると、ニヤニヤしながら弥生ちゃんと海人君が私の方を見てきていた。
「どないしたん?はよぅ、挨拶せぇへんと~。」
「もしかして、雫さんの美貌に見惚れてたとかか~?」
そんな彼等の言葉に私が慌てて弁明しようとすると、雫さんと呼ばれた時雨君のお母様は私に挨拶をしてきてくれたわ。そして、そんな彼女の丁寧な挨拶に私は反射的に頭を下げながら御菓子を渡そうとする。
「初めまして、桐野綾香さんですね。私の名は、水無月雫と申します。以後とも良しなに。」
「ははは、初めまして!!わ、私は・・・。」
そのとき私の脳内は、様々な思いが交差していた。大企業である水無月グループの社長御夫人さんと対面しているという事。そして、そんな様子を時雨君達が黙って見ているという事実に私はパニックになってしまい、とんでもないことを口走ってしまっていた。
「し、時雨君とお付き合いさせて頂いています、桐野綾香と申します!!」
その瞬間、隣に居た時雨君が私の発言のインパクトに驚いたのか木造の柱に頭をゴンとぶつけてしまっていた。そんな彼に構う事無く、雫さんは私に質問を投げかけてくるが、私はパニックから抜け出せずに余計な事を口走ってしまう。
「左様ですか。それは真剣なお付き合いで?」
「え?あ、はい!!」
「そう・・・。遂に時雨にも、春が来たのかしらねぇ。」
「母上・・・!綾香さんは錯乱して口走っておられるだけに過ぎません!あまり、揶揄わないであげてください!」
そう雫さんに叫ぶ時雨君の言葉にだいぶ冷静に成った私は咳払いをすると、改めて目の前に居る雫さんに挨拶をする。
「んんっ。は、初めまして。水無月君と御友達として御付き合いをさせて頂いています、桐野綾香です。よろしくお願いします。こちらは、心ばかりの品物です。御収めください。」
そう言って私が差し出した洋菓子を、雫さんは嬉しそうな顔で受け取ってくれたわ。
「まぁまぁ。御心遣いを有難う御座います。フフッ、先程は揶揄ってしまい申し訳ありませんでしたね。改めて自己紹介を・・・。私の名は、水無月雫・・・。時雨の母です、宜しく御願い致しますね。先日は、時雨達がそちらの御自宅で夕餉を御相伴に預からせて頂いたようで。」
「いえいえ!私の御母さん達が、勝手にした事ですから!!」
「それでも、何か御礼をしなくてはこちらの気が済みません・・・。そうですね。綾香さんで宜しければ、今宵は我が家で夕餉を食べていかれませんか?」
「え、えぇ!?い、良いんですか!?」
「えぇ。折角、時雨や海人君や弥生ちゃんに親しい友が出来たのですから、心して御持て成しをしたいのです。・・・勿論、綾香さんが御迷惑でなければの話ですが・・・。」
「い、いえ・・・!では・・・お言葉に甘えさせていただきます。」
「委細承知致しました。では、腕によりをかけて作らせて頂きますね。お食事の用意が出来ましたらお呼びいたしますので、その
その言葉に時雨君は頷くと、私達を部屋に案内してくれる。・・・とはいえ、時雨君の御部屋までの行き方を知らないのは私だけなんだけど・・・。
「分かりました、母上。では、綾香さんこちらです。」
その時雨君の言葉と共に、私達は雫さんのいる部屋を出て縁側を歩き始める。そして歩いている途中に、私は何気無しに時雨君の御家の庭園を見てみる。するとそこには、綺麗な
「ねぇねぇ、あの御花は何て言うの?」
「あぁ。あれは、紫陽花の一種の
「へぇ~、物凄い綺麗ね。海人君が、落ち着いて勉強できる場所って言ったのも納得よ。車の騒音とかも聞こえないし、マイナスイオンで満たされてる感じがするわ。」
その言葉に海人君はドヤ顔をしながら胸を張り、弥生ちゃんに呆れられていたわ。
「だろ?さっすがは俺だぜ!」
「いや・・・。何で海人君がドヤ顔しとんの・・・?」
そんな二人の夫婦漫才の様な応酬に、私と時雨君は揃って苦笑いをする事に成る。そうして、私達は時雨君の自室に着いたのだが・・・。そこは、何と言うか・・・ある意味想像通りの御部屋だった。
時雨君の御部屋は床一面が畳で敷き詰められており、中央には巨大な木造で出来た机・・・。それも、普通の机なんかじゃないのは一目見ただけで分かったわ。
よく某動画配信サイトの人達が『高級旅館に泊まってみた!!』みたいなサムネイルを出して動画をアップしているのを見るけど、時雨君の自室はまさに高級旅館の内装そのものだった。
(う、うわぁ・・・。見ただけで分かるわ。この机って、十万以上の御値段とかしそうだわ・・・。)
後から時雨君の女中さんに聞いた話だと、この家の家具は
(ふわぁ・・・。この机自体からも、物凄く良い匂いがするわ。)
そう私が時雨君の自室から漂っている上品な香りに恍惚としていると、時雨君が心配そうな眼差しで私の腕を優しく突いてきたわ。
「綾香さん・・・。大丈夫ですか?」
「え、えぇ。大丈夫よ。少し、木材の匂いが心地よくって・・・。」
そう顔に熱を昇らせながら言う私にフォローしてくれるかのように、海人君と弥生ちゃんも同意してくれたわ。
「あー、分かるわー。時雨君の御家って、木造建築やから木のえぇ匂いがするんよなー。」
「確かにな。俺と弥生の家と違って、木造建築由来の良い匂いがするよなぁ・・・。俺も大人になったら、木造住宅に住もうかなぁ~。」
そう言う海人君に対して悪戯心が少し湧いた私は、海人君に対して特大の爆弾発言をすると、彼は一口飲んだ御茶で
「・・・その木造建築には、当然弥生ちゃんも居るのよね?」
「ゲホッ!ゴホォッ!!・・・い、いきなり何言いだすんだよ!!俺は大人に成ったらって言っただけでな!!」
しかし、そんな状態の海人君を弥生ちゃんが見過ごすはずもない。弥生ちゃんから発せられた甘い囁きが、海人君を更に混乱の渦に陥れていくわ。
「えぇ~、酷いなぁ。海人君はウチと一緒に暮らすイチャラブ新婚生活とか想像せぇへんの?それとも・・・ウチ、海人君と結婚する事無くフラれてまうんかなぁ~。オーイオイオイ・・・。」
そう冗談めかして嘘泣きをする弥生ちゃんだったが、今の混乱している海人君に対しては効果が抜群だったのか、海人君は慌てて弁明を開始していたわ。
「い、いや!そういう訳じゃねぇよ!!ちゃんと、御前との結婚生活も見据えて・・・ハッ!!」
そう言いながら正気に戻った海人君だったが、時すでに遅し。弥生ちゃんは嘘泣きを止めていて、海人君の方をニマニマしながら見つめていたわ。
「いやいやー。まさか此処まで愛されてると改めて確認すると、こそばゆいなぁ~。」
「此度は見事に弥生と綾香さんに、してやられましたね。海人。」
そう生温かい眼差しを向ける時雨君や私達の目線に耐えられなくなったのか、海人君は机に突っ伏してしまったわ。正直言って、海人君のこういった顔を見るのは新鮮だから少し面白いわね・・・。
そうして、数分後。弥生ちゃんに抱きしめられて、元気を取り戻した海人君を確認した時雨君は、改めて勉強会の開始を宣言する。
「では、改めまして勉強会を始めましょう!!目標は依然として全科目、赤点無しの平均点以上です!!」
「よっしゃー!やるぞぉ!」
海人君のその言葉に、私達は勉強を開始する。そんな私達が居る和室には、私達を応援するかの様に優しくて爽やかな風が吹き流れたのだった。