クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
今話で、時雨君に大きな変化が・・・?
『う・・・ん?こ・・・こは?私はたしか、父上に背負い投げをされて・・・?』
私の意識が覚醒していくと、そこは雲海が広がる天の上でした。そういえば、此処は私が夢の中で良く訪れる場ですね。・・・とはいえ、夢から覚めると一部始終を忘れてしまうのですが。
そう思いながら私が歩いていると、目の前には三人・・・。いえ、三柱の神々が鎮守しておられました。
(この幻想的な景色に、神々しい雰囲気を醸し出された方々・・・。まさか、この御三方は・・・。造化三神*1である
そんな彼等は、私の方を振り向くと何かを訴えかけるかのように口を開かれます。そんな彼等の目線に目を遣ると、そこには破壊された常世通りの祠が映し出されていました。
(こちらの三柱の方々も、此度の祠の件を憂いていらっしゃるのでしょうか・・・?それもそうでしょうね。元を辿れば、この方々が居なければ私達人間は生まれなかった。つまりは、この方々にとって我々人の子は我が子同然のようなもの。そんな我が子に、
そう考えると、私は彼等三柱の方を向き直ります。そんな彼等は、口を一文字に引き締めて怒りや悲しみに耐えるかの様な表情をしていらっしゃいました。そんな彼等の目を見据えながら、私は三柱の神々に向かって言明をする事にします。
『・・・貴方々が、我々に対して怒りや悲しみの感情を抱くのは至極当然の様に思えます・・・。ですが・・・今一度、挽回の機会を御与えくださいませ・・・。』
私がそう頭を下げ続けていると、一人の神が口を開かれます。それと同時に、三柱の中でも特に強い神通力の気が中てられます。この感覚からして、原初の神である
そう考えていると、私の頭の中に清らかでありつつも威厳のある声が響いてきました。
『我等としても、
その言葉が終わると同時に、私の意識は再び闇へと溶けていったのでした・・・。続いて、私の耳に天女の様な綺麗な声が響き渡ります。
「・・・て。・・・雨君、起きて!」
「ん・・・。綾香さん・・・?」
そう呻き声を上げる私の後頭部には、なにやら柔い物が当たっていました。そんな私の瞳には、綾香さんの美しい碧眼が映りこんでいました。
「良かった!気が付いたのね!!もう・・・心配したのよ?」
「綾香さん・・・。先程まで道場に居たはずですが・・・。何故、私は自室に・・・?」
「え?あぁ・・・、覚えてる?時雨君が、時雨君の御父さんに投げ飛ばされたのは。そのあと女中さんと弥生ちゃんが、気絶した時雨君と海人君を御風呂に連れて行ったのよ。けど、二人とも
「左様ですか・・・。それにしても、この体勢は?」
私の言葉に、綾香さんは頬を染められたかと思うとおずおずと話され始めました。
「そ、その・・・。弥生ちゃんから、膝枕をしてあげる様に言われたの。そ、それで・・・どうだったかしら?も、もしかして、余計な御世話だった?」
「いえ、熟睡する事が出来ました。」
「本当に?なんか、難しい御顔しながら寝てたわよ?」
彼女のその言葉に、私は幻想的な夢を見ていた事を思い出します。思い出そうとしていますが・・・、何故か全く思い出す事が出来ませんね・・・。
「・・・思い出せません。」
「フフッ、あるあるよねー。起きた瞬間は夢の内容を覚えているのに、次の瞬間には全部忘れちゃうの。」
そう
(・・・っ!?ゆ、湯冷めするならいざ知らず。何故、体が熱くなっているのですか!?い、いけません!このような腑抜けた表情を彼女に見られては・・・!!)
「時雨君、大丈夫?御顔が赤いわよ?もしかして、御熱が残ってるの?」
「い、いえ!な、何でも御座いません!!」
そんな私に綾香さんは不思議そうな顔をしていらっしゃいましたが、私の内心はそれどころではありませんでした。何故、全身が湯冷めどころか熱くなっているのか。彼女に髪を梳かれただけで、心拍数が向上したのか。
そう混乱している中、私は以前の海人の言葉を思い出してしまいます。
『お前も、誰かれ構わず平等に接するんじゃなくて唯一無二の女を好きに成れ。』
その言葉が頭の中を支配してしまうと、私の頭の中は混乱の渦に巻き込まれてしまいます。
(・・・っ!何故、あの言葉が浮かんでしまうのですか!!そもそも、綾香さんは一見すると吹っ切れているように見えても、未だに健治さんに未練を持っているかもしれないというのに!!・・・そもそも、私の様な小さい体躯の男ではなく、もっと相応しい方が・・・!)
そう思いながらも、私は自分以外の男性と綾香さんが手を繋いで逢引きに向かおうとする情景を、想像してしまいます。そんな情景を想像してしまった私は、心の中に負の感情が募っていく感覚に陥りますが、頭を振って邪な思いを捨て去ります。
(・・・何を、
そう思いながらも、私の視線の先には綾香さんの
「若様、桐野譲様。御食事の準備が整いました、茶の間まで御越しになられてくださいませ。」
「しょ、承知いたしました!・・・綾香さん、向かいましょう。」
「え、えぇ!!」
そうして、私達が茶の間に入ると既に父上や母上を始めとした親族の方々。そして、海人と弥生が座ってらっしゃいました。そんな彼等は、綾香さんと私の方を見ると溌溂とした表情で手を振ってきてくださいます。
「綾香ちゃーん、こっちやでー。」
「早く席に就けよ、飯が冷めちまうぜー!」
そんな彼等の様子に苦笑しながら歩を進めていると、親戚の方々も綾香さんの方を見ながら思い思いに話し始めます。
「見てごらんよ、あの子が時雨ちゃんの御友達らしいよ。」
「聞いたところによると、一般家庭の出だとか何とか・・・。」
「交友関係に、一般だの名家だの関係あるもんかね。見てごらんよ、仲良さげに手まで繋いでるじゃないか。」
「ワシ等にも、あんな時期があったのぉ。なぁ、婆さんや。」
「そうですねぇ・・・。見ていて微笑ましいですねぇ。」
そんな彼等の様子に少しばかり居心地の悪さを感じたのか、綾香さんは指定された席に着くと見事に縮こまってしまわれました。そんな彼女の掌を、私はそっと握ります。
「綾香さん、大丈夫ですよ。」
「・・・えぇ、ありがとう。ちょっと緊張しちゃって・・・。」
そう話す私達の方を見ながら、海人が冗談をめかして話し掛けてきます。しかし、そんな彼の言葉を聞いた瞬間、私は慌てて綾香さんの手を放してしまいました。
「おいお~い、仲良く手なんか繋ぎやがってよぉ。親戚の前でそんなにいちゃついたら、親戚の人達に綾香を婚約者か何かと勘違いされちまうんじゃねぇの?」
「・・・っ!?も、申し訳ありません、綾香さん!!」
「い、いえ!だ、大丈夫よ!!」
そんな中、弥生と海人の方を見遣ると彼等は悪戯が成功した子供の様な笑みを向けてきました。そんな彼等に、私は苦虫を噛み潰したような顔に成ってしまいます。
「そ、そういえば・・・。この目の前に置いてる食材って・・・?野菜と一緒に、物凄く高そうな御肉もあるんだけど・・・。」
「松阪牛ですね。木具膳に乗せられた野菜と共に小鍋で、すき焼きにして食べてください。」
「まっ・・・!?松阪・・・牛ですって?私、食べた事無いわよ・・・。御母さん達ですら、結婚記念日に一度だけ食べに行った事がある程度なのに・・・。」
そう愕然とする綾香さんに、弥生と海人が苦笑いをしながら話しかけてきます。
「いやいや。流石に俺等も、毎日食ってる訳じゃねぇよ。」
「雫さん、張り切って準備したんやろうなぁ。ホンマに、ありがたいこっちゃやで。」
そうこう話していると、母上と隣り合って並んでいる父上が厳かに口を開きました。そんな父上の言葉に、私達や茶の間に居た親戚の方々は目を向ける事に成ります。
「さて・・・。今宵も、誰一人欠ける事無く卓に就けた事を心から嬉しく思う。いつもならこのまま、食事を始めるところなのだが・・・。今日は皆に紹介したい子が居るんだ。とはいえ・・・紹介をする子は皆、予想が付いているだろうけど・・・。」
そう話す父上の目線は、綾香さんの方へと向いておられました。そんな父上や興を持ったであろう親戚の方々に目を向けられた彼女が委縮すると、私は自然と彼女の手を握ってしまいます。
「綾香さん・・・、大丈夫ですか?」
「え、えぇ・・・。緊張するけど、やり切って見せるわ!」
そう断固とした表情で仰られると、綾香さんは震える足を抑えながらなんとか立ち上がって深呼吸をされると、目の前に居られる親戚の方々の目を見据えられました。
「ふぅ~・・・。は、初めまして!桐野綾香です!!きょ、今日は御呼ばれして御食事をいただく・・・、じゃなかった!御相伴させていただく事に成りました!!よ、宜しくお願い致します!!」
そう彼女が深く頭を下げられると、しばしの沈黙の後に茶の間に居られる親戚の皆さんから拍手が送られる事に成りました。
「いいぞぉ!姉ちゃん!!」
「気合の入った、良い挨拶じゃあねぇか!!」
「お!?時雨ちゃんにも、遂に春が来たかぁ!?」
「
そう豪快に笑う叔父様方や、微笑ましい顔を浮かべる
「御父様、御母様!御覧になって下さい!!月夜に光り輝く金糸の様な髪をしてらっしゃいます!!」
「瞳の色が、秋晴れの空よりも澄んだ青色をしています!!御父様、御母様!
「
そんな彼等の温かな言葉と、改めて注目されているという実感に恥ずかしさを感じたのか、綾香さんは縮こまって座ってしまわれました。
そんな彼女を見ると、父上は改めて場を締める様に話し始められました。
「さて、紹介も終わった事だし夕餉にしようか。」
父上のその言葉に、私達は目を閉じて両手を合わせ始めます。そんな私の隣で、綾香さんも目を閉じて手を合わされたようです。
「いただきます。」
静寂が響く中、その声が茶の間に響くと箸が肉や野菜を掴む音が聞こえてきました。そんな音に綾香さんも目を開けて、食事を始められました。
「き、緊張したわ・・・。食事の挨拶だけでも、ガチガチに成っちゃった。」
「アハハ、分かるわー。ウチ等も、未だに緊張してまうもん。」
「まぁ、水無月家の人達は信仰深いからな。食に対する感謝の念とかも、そこいらの家庭より一段と高いんだろうな。」
そう話す御三方に私は苦笑いをしながらも、彼等に食事をする様に促します。
「そうですね・・・。それよりも、早く食べなければ折角の御肉の味が落ちてしまいますよ。」
私のその言葉に我に返ったのか、三人は美しい木目が走った木箱から野菜と肉を取り出し、鍋で焼き始めます。そんな彼等の笑顔を見ながら、私も肉に箸を伸ばしたのでした。
因みに、時雨君と海人君のすき焼きは関東風の味付けであり、濃い味付けを好む綾香ちゃんと関西出身の綾香ちゃんは関西風の味付けだったとの事です。