クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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綾香視点です

時雨君の巫女服

【挿絵表示】



神楽舞

デパートで水着を買って、時雨君の別荘に遊びに行く準備をした次の日・・・。私は家族の皆と一緒に、神崎さんが居る神社に向かっていたわ。何故かって言うと・・・。

 

 

「いよいよ、今日なのね!時雨君の神楽舞!」

 

 

「神楽舞ってあれだよね!漫画とかで、巫女さんが踊るってやつ!あれ?でも、時雨お兄ちゃんって男だよね?男なのに、巫女さんの服着て踊って良いのかな?」

 

 

「ふむ・・・。日本古来から、女装には魔除けの意味も込められているからね。そう言った意味合いもあるんじゃないのかな?」

 

 

そう、今日は水無月家の皆さんが執り行う御祭りの日なのだ!とは言っても、怒ってる神様の怒りを鎮める為のものだから、あまりはしゃいだりとかは出来なさそうだけど・・・。そうこう話しながら石段を登りきると、私達家族の目の前に物凄い光景が広がっていたわ。そこは、何百人を超える程の沢山の人達で溢れかえっていたの!!

 

 

「うへぇ・・・。物凄い人の数だよ。」

 

 

「咲、(はぐ)れちゃ駄目よ。」

 

 

「子供扱いしないでよ!!」

 

 

そう話していると、私達家族の前方から声が掛かったの。その聞き覚えのある声に目を向けると、そこに居たのは雫さんと翡翠さんだったわ。

 

 

「綾香さん、お久しぶりですね。」

 

 

「あ、翡翠さんに雫さん!お久しぶりです!」

 

 

「今日は、時雨の神楽舞を見に来てくれてありがとう。・・・ところで、そちらの方々は綾香さんの御家族かな?」

 

 

翡翠さんの言葉に頷くと、私は御二人に両親と妹を紹介する。そうすると、御二人は私の家族に礼儀正しく礼をしてくださったわ。

 

 

「御初に御目に掛かります、時雨の母の水無月雫と申します。」

 

 

「同じく、時雨の父の水無月翡翠と申します。先日は、息子がそちらの御宅で御馳走に成ったとか・・・。御挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。」

 

 

そんな御二人の言葉に、今度はうちの両親が慌てて首を振る事になる。・・・なんというか、謙遜しあい合戦ね。

 

 

「いえいえ!こちらこそ、真っ先にお伺いしべきでした!・・・初めまして、綾香の母の桐野クレアです。」

 

 

「父の、桐野晴斗です。娘が色々御世話になったようで・・・。」

 

 

「妹の、桐野咲です!!えっと・・・、香水使わせていただきました!今度、御小遣い貯めて買いますね!!」

 

 

そんな咲の言葉に雫さんはクスリと笑うと、咲に向かって頭を下げてくれたわ。

 

 

「フフッ、有り難う御座います。ですが、無理のない範囲で御願いしますね?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

そんな咲の言葉に翡翠さんも微笑まれると、私達家族を連れて神楽舞の観覧席まで案内をしてくれたわ。

 

 

「さて・・・。こちらが、神楽舞の観覧席になります。御迷惑でなければ、最前列で我が息子の勇姿を見届けてやってくれませんか?どうやら、桐野さん達に恥ずかしくない舞を見せると張り切っていたようですので。」

 

 

そうにこやかに微笑む翡翠さんに、私達家族も思わず綻んでしまう。すると、雫さんが私に向かって声を掛けてきてくれたわ。

 

 

「綾香さん、時雨なら社の裏の小屋で化粧をしているはずです。海人君や弥生ちゃんも居る筈ですから、見に行かれませんか?」

 

 

「あ、はい!!お、御願いします!!」

 

 

そう言うと、私は雫さんの案内のもとで御社の裏にある小屋まで案内をされる。するとそこには、海人君と弥生ちゃんが居たわ。

 

 

「おっす、来たな。」

 

 

「やっほほーい。待ってたで~。」

 

 

「二人とも、御待たせ!時雨君は?さっき、化粧室に居るって聞いたんだけど・・・。」

 

 

「あぁ、さっき池で禊が終わったところらしくてな。今は、化粧して貰ってるよ。ほら、あそこのカーテンの奥。」

 

 

その海人君の言葉を聞いた私は、カーテンの方に目を向ける。すると、その向こうには二人の人影が薄く見えてきた。きっと、椅子に座ってるのが時雨君かしら?時雨君に御化粧してる人は・・・、多分シルエットからして神崎さん?

 

 

私がそう考えていると、弥生ちゃんがカーテンの向こうに居るであろう神崎さんに声を掛けたわ。

 

 

「神崎さーん。時雨の化粧終わりましたかー?」

 

 

「えぇ、終わりましたよ。」

 

 

「ほな、ウチ等は席に向かっときますね~。」

 

 

その言葉に、私達三人は祭事が行われる御社の前に集まる事になる。そんな御社の前には、何百人をも超える人達が集まっていたわ。中には、観光で来たのかもしれない外国人の人達も何人か居るっぽい。

 

 

そうして席に向かうと、既に私の家族と時雨君の御両親がいらっしゃったわ。・・・というか、あれ?もしかして、時雨君の御家族の御隣に居る人達って・・・。

 

 

「あの、弥生ちゃん。雫さんの御隣に居らっしゃる方って・・・。」

 

 

「ん?ウチの御母さんと、御父さんやで。その御隣に居んのが、海人君の御父さんと御母さんや。まぁ、挨拶はまた今度にしぃ?そろそろ始まってまうからな。」

 

 

「え、えぇ・・・。」

 

 

その弥生ちゃんの言葉に、私は雫さん達が確保してくれていた御席に座る事になる。そうして祭事が始まったのだけれど、どうやら直ぐには時雨君は踊らないらしかった。

 

 

私も後から時雨君に教えて貰ったのだけれど、初めに祭場や供物を清める『修祓(しゅばつ)』。その次に、神様を御招きする『降神』。神様に御酒や御米を御供えして心を静めて貰う『献饌(けんせん)』。神職さんが、祝詞を読み上げて神様に許しを御願いする『祝詞奏上』。巫女さん達による『神楽奉奏』。参列者の人達が玉串というのを捧げて礼拝する『玉串奉奠(たまぐしほうてん)』。御供え物を下げて感謝をする『撤饌(てっせん)』。神様を元居た御蔵っていう所に御送りする『昇神』。最後に、神様と人が御食事をする『直会(なおらい)』というのをして終わるみたい。

 

 

つまりは、時雨君の出番は神楽奉奏が行われるときという事だ。

 

 

あと、本来は地鎮祭とかでの厳粛な祭事では屋台は出ないらしいのだけど、神主の神崎さん曰く『こうでもしなければ、社に来てくれる方々が少なくなってしまうので・・・。』とぼやいていらっしゃったわ。やっぱり、色々大人の事情っていうのがあるのね・・・。

 

 

そうこう考えてながら祭事を見ていると『祝詞奏上』が終わって、遂に時雨君の神楽舞が始まる『神楽奉奏』が始まろうとしていたわ。そして、目の前に数人の巫女さんが現れた。

 

 

そんな中、時雨君はそんな巫女さん達の真ん中で立っていたわ。そして、そんな彼を見た私は思わず言葉を失ってしまったの。

 

 

(嘘・・・あれが、時雨君?)

 

 

厳かな和楽器の音と共に佇む時雨君の御顔は、とても綺麗なものだったわ。小さな身体と女の子の様な御顔も相まって巫女服は物凄く似合っていたし、チーク・・・和名では頬紅っていうのかしら?頬紅を付けているからか、ほっぺが桃色に薄く染まっていて、唇も桃色の口紅を付けているせいか本当に可愛い女の子・・・。いや、妖精さんにしか見えなかったわ。

 

 

(本当に綺麗だわ・・・。海人君が、女の子と間違えて告白しちゃうのも無理ないかも・・・。)

 

 

そう私が考えている中でも、時雨君は優雅に舞い続けている。けれども・・・そんな彼の表情は、どこか悲しげな顔をしていたわ。・・・やっぱり、信仰深い彼の事だから祠が壊された事が悲しいのかしら・・・?不謹慎かもしれないけど、そんな物憂い気な顔が何処か綺麗に見えてしまったわ・・・。

 

 

けれども、時雨君の悲しい顔はやっぱり見たくない・・・。そう思った私は、声を上げずに口だけを動かして時雨君にエールを送ろうとしたわ。

 

 

『が・ん・ば・っ・て。』

 

 

そのときタイミングが良かったのか分からないけど、時雨君が私の方を振り向いたかと思うと目を大きく見開いたの。すると、悲しげな表情は少しだけ収まって穏やかな笑みを浮かべながら踊り続けていたわ。・・・私の言葉が届いていたかどうかは、分からないけれど・・・。

 

 

シャラン・・・、シャラン・・・と軽やかな鈴の音が境内に鳴り続ける。そんな鈴の音が鳴り響く度に、神社の空気がだんだん晴れやかに成っていくのを肌で感じるわ・・・。

 

 

そうして神楽奉奏が終わるまで、時雨君は舞い続けていた。神様の怒りを鎮める為に・・・優雅に、優しい笑顔を浮かべながら・・・。そして、私はそんな時雨君の姿を一時も見逃さないように見つめ続けていたのだった。

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