クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
私達が綾香さんと4人で缶詰めになって早数時間。私達は、御互いに勉強会をしています。
そもそも、今回の特例措置は綾香さんが健治さんに鉢合わせて口論にならないようにしただけの話。学生である以上、我々の本業が勉学に励む事である事に変わりはありません。
そして、自慢にはなってしまいますが我々生徒会メンバーは成績において座学、そして体育共に上位3名に位置している成績優秀者で構成されている為、実質教室で講義を受けなくとも、そこまで
そして、勉強会を始めてから我々と綾香さんの間に大きな変化が訪れました。それは何かというと・・・。
「ねぇねぇ、海人君。これ、どうやって解いたら良いの?」
「あぁ、イオン化傾向か。これはだな・・・。」
綾香さんが、私達に対して敬語を使わなくなったという事です。まぁ、私に対しては身長差の影響もあったのか、最初から砕けた口調で話してくださいましたが・・・。そんな変化に、海人も弥生も嬉しそうにしており、今では御互いに下の名前で呼び合う仲にまで発展しています。
我々は生徒の模範となる為に、文武両道を心掛けて日々の学生生活を過ごしています。そして、生徒会という立場や名家の令嬢や令息である事から、生徒達からはそれなりに慕われていると自負しているつもりです。
ですが、慕われているからこその弊害もあったりします。それは、生徒達との間に壁が出来ているという事です。私達の事を完全無欠の人間と思っているのかは分かりませんが、所々距離を感じる事は多々御座います。
中学高校と一貫して進学してきましたが、我々3人は未だに学園の生徒達と真に打ち解けたとは言えません。
そんな中、私達に対して友達の様に接してくれる綾香さんに私達の心は自然と溶けていきます。
しかし、それ故に気になってしまうのです・・・。
(何故、健治さんは彼女を裏切ったのでしょうか・・・?確かに、他者と距離を詰めすぎる事は、時に揉め事を引き起こす事もございます。ですが、彼女はしっかりと線引きをしながらも親しく話し掛けてくださる。・・・ここまで、魅力的な女性を何故・・・?)
そのとき、私の目の前に海色の瞳が映ります。綾香さんが私の顔を覗き込んでいました。
「時雨君、大丈夫?さっきから、ボーっとしてるわよ?」
その言葉に、私はハッとします。いけませんね、生徒の模範に成るべき生徒会長が呆けてしまうなど・・・。しかし、そんな私に更なる悲劇が襲い掛かります。私のお腹から、キュルルルと腹の虫が鳴ってしまったのです。あまりのはしたなさに、私は顔に熱が昇っていくのが分かります。
時計を見ると、時刻は12:10を指し示していました。あまりに集中していたせいか、時間が過ぎるのを忘れていたようです。
「そろそろ昼飯の時間だな、どうする?ここで食っちまうか?」
「せやねぇ~。綾香ちゃんも、健治君に鉢合わせてまうかもしれんしなぁ~。」
「だ、大丈夫よ。多分アイツ、新しく出来た彼女と食べるだろうし・・・。」
そう話す三者三様に、私はある提案をします。
「では、植物園で
「確かにな、それで良いか?綾香。」
「え、えぇ・・・。」
綾香さんの了承を得ると、私達はなるべく人通りの少ない場所を通って植物園に向かいます。そうしてしばらく歩くと、園芸部が使用している植物園が見えてきました。
ここを管理している生徒指導の先生は、花がとてもお好きなようで一般の生徒にも温室を開放してくれています。しかし、ほとんどの生徒は屋上や食堂、教室で食べたりするので、あまりここを使用している生徒は少ないようです。綾香さんも、始めて来られたようで感嘆されていらっしゃいます。
「わぁ・・・、綺麗な場所ね。植物園があるのは知ってたけど、まさか解放されているとは知らなかったわ。」
「そやねん。ホンマに良いお昼御飯スポットやのに、皆全然利用せぇへんからな~。まぁ、隠れ家的な感じやね。」
「そろそろ食おうぜ、腹が減ってしょうがねぇよ。」
海人のその言葉に、私達はベンチに座って
「参りましたね・・・。」
「どうした?」
「昼餉を忘れました・・・。昨日の事が頭から離れず、失念してしまいました・・・。」
そう俯く間にも、私の腹の虫は鳴り続けます。そんなとき、救世主が現れました。
「・・・あ、あの。私が作ったやつで良かったら食べない?」
「はい?」
「いや!その・・・実は昨日お弁当作ったんだけど、習慣の所為か健治の分まで間違えて作っちゃったの。で、なんやかんや持ってきちゃって・・・。」
「よろしいのですか?」
「え、えぇ・・・。お口に合うかは分からないけど・・・。」
そう言いながら差し出してくれた弁当の中身は、ハンバーグという奴でしょうか?生憎私はそこまで食べたことはありませんが・・・。
「では、いただきますね。」
そう言いながら、私は少し心配になります。そもそも私は、味の濃いものや脂分が多いものが苦手で洋食関係は片手で数えるくらいしか食べた事が無いからです。もしも仮に彼女の料理が口に合わずに、傷つけてしまったら?
海人と弥生も、私の好みを把握している事もあってか固唾を飲んで見守っているようです。
そんな考えが頭を過ぎりますが、このまま何もしないのも失礼だと考えた私は口にハンバーグを運びました。しかし、次の瞬間私は目を見開く事に成ります。何故なら、口に運んだハンバーグは重いどころか軽い口当たりだったからです。
「美味しいです・・・。後味も全くしつこくないですし、サッパリしている・・・。」
「え!?マジで!?お前が洋食を褒めちぎるなんて・・・。」
「はい。油が口内を浸す様子もないですし、サラサラ食べる事ができてしまいます。大葉で包まれていますし、普通のハンバーグではない・・・?」
私がそう言うと、綾香さんは種明かしをしてくださいました。
「そうなの。健治は、テニスプレイヤーだったからタンパク質が多めの奴を作らないと駄目だったし・・・。」
「なるほど、話を聞く限り豆腐ハンバーグやね。これは、洋食が苦手な時雨君でもモリモリ食べれてまうんやない?」
弥生のその言葉に、綾香さんは目を丸くして驚いています。
「え?もしかして・・・、時雨君って洋食とか駄目なタイプの人だった・・・?」
「駄目・・・という訳ではありませんが、味が濃いものを食べると少しばかり気分が・・・。ですが、このハンバーグはサラサラ食べる事ができてしまいますね。」
私が笑顔で言うと、綾香さんは更に嬉しそうな顔に成ってくれます。
「良かったわ・・・、食材が無駄に成らなくて・・・。」
「それにしても、なんか新鮮やな。ウチ等3人以外の誰かと一緒に御昼ご飯食べんの。」
その言葉に、綾香さんは目を見開いて驚きますが私達は頭を縦に振ります。
「え?そうなの?てっきり、大勢の子達に囲まれて食べてるものかと・・・。」
「いやー。そうでもないぜ?皆なんでか知らねぇけど、俺達が飯に誘っても離れてくんだよ。放課後のカラオケとかには誘ってくれんのにな。」
海人の言葉に私も頷きます。
「恐らくは、私達と居る事で色々緊張してしまうのでしょう。カラオケなどの遊戯場では、周囲の雰囲気も相まって肩の力を抜く事も出来ますが、静かな昼餉の場ではそうもいきませんから。」
「あー、そういう事か。もっと気楽にしてくれても、良いんだけどな。」
そうこう話していると、昼休み終了のチャイムが鳴り響きます。その音に、私達は重い腰を上げて生徒会室へと向かいますがその時に綾香さんが声を掛けてくださいました。
「・・・ねぇ、時雨君。今日、放課後に時間ある?」
「何故ですか?」
その言葉に、綾香さんは口籠りながらとある提案をしてくださいました。
「その・・・、貴方にこれからお弁当を作ってあげたくて、貴方用のお弁当箱を買ってあげたいの・・・。ほら!今日うっかり作っちゃったみたいに、多分これからも2人分作っちゃうこともあるだろうし・・・。けど、健治との思い出の品はなるべく捨てたいの。過去は断ち切らないといけないから。」
「私に・・・。昼餉を?」
「え、えぇ!健治用のお弁当箱で、貴方に出してあげるのも何か違うし・・・。」
その言葉に、私は思い悩みます。彼女の御厚意は嬉しいのですが生徒会長という立場上、放課後の業務を疎かにする訳にはいかない。そう考えた私は、なるべく傷つけないように遠慮しようとしたのですが、私の背後から海人が急に口を塞いできました。
「申し訳ありませんが・・・ムグゥッ!?」
「うんうん!良い考えだな!そんなクソ男用の弁当なんて捨てて、時雨専用の弁当でも買っちまいな!!」
「良かったやん、時雨君!こんなに可愛えぇ子が、毎日お弁当作ってくれるんやからな!ほな、今日の仕事はウチ等に任せてお買い物行ってき~。」
その言葉に、私は頭を振ろうとしましたが綾香さんの期待に満ちた瞳には何も言えず・・・。
「分かりました。お供させて頂きます・・・。」
その提案を了承する他無いのでした。