クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
綾香さんが、近藤さんに絡まれた日の放課後。私は、綾香さんと共に大型商業施設に来ていました。
「あの、本当に無理をなさっていませんか?なにも、わざわざ買わなくとも・・・。」
その私の言葉に、綾香さんはあっけらかんとした表情で答えてくれます。
「私がしたいだけだから、気にしないで。それに、時雨君も健治の使ってたお弁当箱使うなんて気持ち悪いでしょ?それに、今日のお礼もしたいのよ。」
「だとしても・・・。迷惑とは思っていませんが、本当に毎日私に
「当たり前よ!あの日・・・貴方が来てくれなかったら、私は確実にあの3人組の慰み者に成ってたわ。いいえ・・・もしかしたら、3人だけじゃないのかもしれなかった・・・。もう、一生家にも帰れずに彼等に
そう涙ぐむ彼女の手は震えており、先日の記憶を思い出して恐怖している様でした。私はそんな彼女の掌を握り安心させようとすると、彼女は恐怖に
「ありがとう・・・。それにしても貴方の手って、意外に硬いのね。」
そう言いながら、彼女は私の掌を握ってきます。確かに、私の手は同年代の男子に比べて角ばっており硬いとはよく言われます。何よりこの外見ですし、彼女が驚くのも無理はないでしょう。
「毎日
「その・・・。私を襲った暴漢を倒したときも言ってたけど、巻藁って何?」
「巻藁というのは、特定の部位に繰り返し打撃や圧力を加えることで、その部位の筋肉や骨。関節などを強化し、打撃や衝撃に対する耐性を高めることを目的とする物ですね。」
「サンドバッグとは何が違うの?」
そう聞いてくる彼女に、私は少し考え込んでしまいます。私が修めている武術は日本拳法と合気道のみであり、ボクシングなどの西洋武術とは無縁であるからです。
「私は西洋武術を修めている訳では無いので、詳しいことは答えかねますが・・・。巻藁は型の正確性や、ある一点に対する威力。精神修養の為の道具であるのに対して、サンドバッグは
「なるほど。用途は似たものかと思ったけど、やっぱり違うのね。」
そうこう話していると、大型商業施設の雑貨屋に到着します。そして、お弁当箱が陳列されている棚に行くと綾香さんは、お弁当箱を見比べながら
「これとかどうかしら?」
そう言って彼女が差し出してきたのは、水色を基盤とした色合いに色とりどりの
「せっかく選んでいただいたところ、申し訳ないのですが・・・。
「あ、そっか。たしかに、あんまり時雨君のイメージに合わないわね・・・。時雨君は、どんなのが良いかしら?」
「私は・・・。」
そう言いながら陳列されているお弁当箱を見始めると、棚の隅に私好みのお弁当箱がありました。
「これなどは、如何でしょうか?」
そう言いながら私が差し出したのは、木目が美しい木材で出来たお弁当箱でした。そのお弁当箱を見て、綾香さんは目を輝かせます。
「木材で出来たお弁当!なるほど、確かにこれなら時雨君が好きな和食にも合いそうね!!」
「申し訳ありません。貴方の意見を
「いいのいいの!
そう笑いながら私を慰めてくれる彼女の優しさに、私は心が温かくなります。やはり、こういった天真爛漫なところが彼女の魅力なのでしょうね。
そして、幸いお値段はそこまで高くなかった事もあり彼女は全額負担をしてくださいました。一応私も、お金を出させてほしいとは申し上げましたが、「それじゃあ御礼に成らないわ。」という言葉に負かされてしまい、結局彼女にお金を出させてしまいました。
そうして、お会計を済ませてお店の外に出ると彼女は色々私に質問を投げかけてきました。
「それにしても・・・時雨君は、何でそんな風な話し方なの?」
「そんな風・・・とは?」
私が首を傾げると、彼女は口籠りながら指摘してくださいました。
「その・・・。時代劇っぽい話し方。」
その言葉に、私は合点がいったように手を叩きます。たしかに、この様な話し方は今では聞きなれないでしょうからね。
「これは、親戚の方々の影響ですね。なにしろ、私の家には御高齢の親戚の方々も住まわれておりますから。その方々の話し方が、私に移ってしまったのでしょうね。御不快でしたか?」
「いいえ。
そう冗談交じりに仰る彼女に、私は興を添えられました。たしか、彼女の母にあたる方がアメリカ人である事は校内では有名であったからです。
「母君は、この様な話し方を好まれるのですか?」
「えぇ!とにかく、日本の文化が大好きでね。休日には、わざわざ京都にまで出向いて日本文化を楽しんでいるのよ。たしか、去年だけで20回は行ってるんじゃないかしら?」
「左様ですか。ですが、それだけ日本を愛されているという事は嬉しい事ですね。」
「えぇ!一度会わせてあげたいわ!お母さんの反応も気になるし!」
そう言いながら大型商業施設を出た私達は、雑談を楽しみながら帰路に就こうとしました。そのとき、急に綾香さんの歩くスピードが速くなっていきました。
「どうなさったのですか?」
私がそう聞いても、彼女は歩くスピードをどんどん速めていきます。不思議に思った私が、辛うじて彼女の視線の先を追うと遠目に健治さんとテニス部のマネージャーさんが歩いていらっしゃいました。
(はぁ・・・、なんと間の悪い・・・。何故よりによって、今なのですか・・・。)
そうして、彼女に引っ張られるまま歩くといつの間にか神社に着いていました。私は、彼女を石段に座らせて背中を
そんな私が彼女の背を擦ると、彼女の背中は小さく震えていました。
そんな彼女の様子に、私はどうしようもない怒りが溢れてきます。
(何故、彼女を苦しめた元凶が幸福を
私の家系は、代々神道系で祭事の際や会社の有事の際には神頼みをしてきており、私もそれなりには神に対する信仰を持ち合わせ、日々の感謝を告げてきたつもりです。
しかし、今回ばかりは神を怨みました。もしも現在、彼女に関与しておられる神が居らっしゃるのでしたら、それは神の
しばらくすると、彼女はようやく落ち着きを取り戻したのか顔を上げてくれます。しかし、その顔には疲れが宿っていました。
「ごめんなさい・・・。本当に泣いてばかりね、私・・・。」
「大丈夫ですよ。哀しみが許容量を超えると、涙が出るのは至極当然の事ですから。因みに豆知識なのですが、この国には
「じゃあ・・・。私の悲しみが今収まったのも、その神様のおかげって事・・・?・・・普段は神様なんか信じないけど、今日から少しだけでも感謝の言葉を伝えてみようかしら・・・。」
私の言葉に微笑んでくれた彼女に、私も深く同意します。
「それが宜しいかと思われますよ?神様は基本的に、地域や家柄の繁栄などに御力添えをしてくださいますが、個人的な願いは聞き入れてくれません。ですが、信仰深くしていると稀に叶えてくださる事も有るとか無いとか・・・。」
「え?神様って、何でも叶えてくれるものじゃないの?」
「はい、その通りです。この日の本には、数多の人智を超えた聖なる方々がいらっしゃいます。天上に位置する
私のその例え話に、彼女は納得してくださったようです。
「た、確かに・・・。」
「ですが、信仰深くしてくれている人の子には、御小遣いをあげたくなるのも神の心情とも言われていますがね。」
「ふふっ・・・。なんか、孫に会うのを喜ぶおじいちゃんとおばあちゃんみたいね。そう考えたら、神様って結構身近に感じるわ。」
「八百万の神々とも言いますからね。存外、何処にでもいらっしゃるものなのですよ。西洋では、アニミズムと呼ばれるのでしたっけ?」
私がそう申し上げると、彼女は境内の方を振り向かれます。その瞬間、境内から柔らかな風が吹いて私達の髪をなびかせました。その風は、まるで哀しみに暮れる彼女を慰めている様です。
「お参りしていきますか?」
「えぇ、そうするわ。」
「参道の正中は通らないように気を付けてくださいね。神様の通り道ですので、端を歩きましょう。」
「えぇ!?今まで、真ん中を歩いてたわ・・・。」
そう大袈裟にショックを受ける彼女に、つい笑みがこぼれてしまいます。
「では、今日はその謝罪も兼ねて参拝致しましょうか。」
そう言うと私達は鳥居で一礼してから、参道の中央を通らないように気を付けながら歩を進めます。次に、
そう話していると、私達は拝殿に到着します。そして、お財布から5円玉を取り出して賽銭箱に投げ入れます。そうして木々の静かな喧騒が耳に入る中、私は願いを込めます。その願いは勿論・・・。
(綾香さんに、幸せな出会いを与えてあげてください。そして、二度と裏切る事の無い素敵な殿方と引き合わせてあげてください・・・。)
そう願い終わると、私は顔を上げます。ふと隣を見ると、綾香さんは
そうして、数秒が経つとようやく彼女は顔を上げてくださいました。その顔は、とても晴れ晴れとしています。ふと、私は悪戯心が沸いて彼女の願いを聞いてみる事にしました。
「綾香さん。何を、願われたのですか?」
私がそう聞くと、彼女は少し考えた後にニコリと笑います。
「ふふっ、内緒。人に教えたら、叶わなくなっちゃいそうでしょ?」
その茶目っ気のある表情に、私の顔にも自然に笑みが浮かび上がります。
「そうですね。・・・では、今日も帰りましょうか?」
「えぇ。帰りましょう。」
そう話しながらも歩き続けて彼女の家の前に着くと、彼女がこの様な事を仰ってきました。
「ねぇ、時雨君。私、家族に話そうと思うわ。健治と別れた事。」
その言葉に、私は目を大きく広げますが彼女は話し続けます。
「今までは幼馴染だったから家族ぐるみの付き合いもあったけど・・・。多分、これからはそんな事言ってられないだろうし。」
そう語る彼女の目は、決意に満ち溢れていました。そんな彼女の目を見た私には、彼女の考えを否定する事は出来ませんでした。
「分かりました。健闘を祈っておりますね。」
私がそう言うと、彼女は明るい笑顔を見せてくれます。
「えぇ!応援してて!!それじゃあ、明日のお弁当も楽しみにしてて!また明日!!」
そう言うと、彼女は手を振りながら家の中に入っていかれました。それを見届けた私も帰路に就きます。
(健闘を祈っておりますよ・・・!綾香さん!)
次回は綾香視点です。