クズ男に初恋を弄ばれたギャルは、誠なるハイスペック合法ショタに慰められる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
「ただいまー。」
私がそう言いながら玄関のドアを開けると、奥からパタパタとお母さんが駆け寄ってくる。
「あらあら、お帰りなさい。今日は学校はどうだった?」
「うん、楽しかったわ。・・・あのさ、お母さん。」
「ん?どうしたの?」
「お母さんってさ、和食って得意?」
私がそう聞くと、お母さんはニコニコ笑いながら答えてくれる。
「えぇ、勿論よ。昔、お父さんの御実家に挨拶に伺ったときに、お義母さんに叩き込まれたわ〜。初めて私が作った和食を食べてくれたときのお父さんの喜ぶ顔、可愛かったのよ〜。」
そう思い出に浸るお母さんに、私は苦笑いをしてしまう。お母さんは、偏見かもしれないけどアメリカ人という事もあって、ストレートな愛情表現を好むタイプだ。だから、お母さんの好き好き攻撃にお父さんがタジタジになるのは、我が家の恒例行事とも言えるわね。
そう考えている間に、私とお母さんはエプロンを着てからキッチンに立って料理を始めようとする。
そして、私は今日買ったばかりの綺麗な木目が目に入るお弁当を取り出す。
しかし、そのお弁当を見てお母さんは首を傾げたわ。まぁ、予想できてた展開だけど。
「綾香?いつものお弁当箱は、使わないの?健治君のお弁当、まだ買ってから間も無いと思うんだけど・・・?」
「・・・あぁ。あれ、捨てる事にしたわ。」
その言葉に、お母さんは特に驚きもしなかった。まるで、健治と私の間に
「・・・そう。」
「驚かないのね・・・。」
「えぇ。あの日、貴方が帰って来た時に何となく嫌な感じはしていたの。普段は健治君と会ったら幸せそうにしている貴方が、やつれた顔をしていたんだもの・・・。喧嘩でもしたんじゃないかって、心配になったわ・・・。けど、今は御料理の時間だし、無理に話さなくても良いわよ。」
そのお母さんの態度に、私はあの綺麗な黒髪と赤い瞳を持つ男の子の姿を重ね合わせてしまう。彼も、無理に話さなくて良いって、気を遣ってくれてたっけ・・・。
「それじゃあ、クッキングを始めましょうか!どんな和食を作りたいの?」
「なるべく、脂っこく無くて口当たりの軽いものが良いわ。」
「サッパリした物ね。とりあえず、ひじき煮から作ってみましょう。念の為に、油揚げの油抜きも忘れずにね。」
そう言うと、お母さんは丁寧に和食を教えてくれる。そうして、数十分後には私の目の前には彩り豊かな和風なお弁当が出来上がっていた。
「凄いわ綾香!初めてでここまで出来ちゃうなんて、流石私の子ね~。」
そう言うと、お母さんは私の頭を撫でてくれる。因みにお母さんは私よりも背が小さい為、お母さんに撫でて貰ってるというよりも世話焼きの妹に撫でられている気分になる。
「あ、ありがとう・・・。お弁当に詰め込むのは明日にするわ。タッパー借りても良い?」
「えぇ。折角美味しく作ったんだから、ちゃんと保存しておかないとね。夜ご飯はお母さんが作るから、お部屋で休んでなさい。」
お母さんの言葉に頷くと、私はシャワーを浴びてリラックスする。そして、モコモコのパジャマに着替えるとベッドにダイブして目を閉じる。そんな私の頭に思い浮かぶのは、時雨君の顔ばかりだ。
艶やかな黒髪に、赤い瞳。クールで落ち着いてるけど、心の内に秘められた優しさや年相応の表情に、私の心は完全にやられていたわ。
(まだ、出会って2日しか経ってないのに・・・。私って、案外チョロいのかしら・・・。)
その考えに、私はブンブンと首を振る。こんな考えじゃ健治と同じ穴の
それ以前に、彼は旧華族の御令息。きっと、お見合い結婚なるものもするだろうし私が特別な感情を抱いては、きっと彼の将来を滅茶苦茶にしてしまうだろう。
(あー!もう、やめよやめ!!・・・そろそろ、お父さんと咲も帰って来てる頃かしら・・・。はぁ・・・憂鬱だわ。)
そう考えていると咲が帰って来て、次いでお父さんも帰って来てしまった。その声を聴くと、私はフラフラと2階から階段を下りて食卓に着く。
今日のメニューは和食という事も有り、お父さんは上機嫌だ。そんなお父さんに真実を言うのは気が引けるが、私は何とかして言い出すべきタイミングを計ろうとする。
すると、運良く咲がいつも通り話題を振ってくれたの。
「そういえば、今日のお弁当は豆腐ハンバーグだったっけ?健治お兄ちゃん、喜んでくれた?」
私はその言葉に胸がズキっと痛むが、何とか堪えて声を絞り出す。
「あのさ・・・。落ち着いて聞いて欲しいんだけど・・・。」
その言葉に、お父さんも首を傾げたわ。
「どうした?豆腐ハンバーグは健治君の好物だったじゃないか?もしかして、不評だったのか?」
その二人の言葉に、私はこの事を伝えるべきか迷うけど勇気を出して伝える事にしたわ。
「健治とは・・・。昨日別れたわ・・・。」
私がそういった瞬間、食卓が静まり返った。咲に至っては、御箸からひじき煮をポロポロ溢して唖然としている。まぁ、無理も無いわよね。10年以上の付き合いの幼馴染と別れたなんて知ったら。
「は・・・?え・・・?わ、別れた?」
「ど、どういうことだい?健治君とは、この前まで仲が良かったじゃないか。」
「綾香・・・。ゆっくりでいいから、説明してくれる?」
お母さんのその言葉に背中を押されたかのように、私は話し始める。喫茶店に呼び出されて、健治に浮気されていたことを告げられたこと。それを分かったうえで、付き合い続けて欲しいと言われた事を。さすがに、「別れたくなかったら、ヤらせて欲しい」と言われた事に関しては伏せたけど・・・。私だって、口にしたくは無かったし・・・。
その言葉に対する家族の反応は、まちまちだった。咲はものすごく憤慨してたし、お父さんとお母さんは難しい顔をしていた。
「何それ!あいつ信じらんない!!浮気を容認して、付き合い続けて欲しいとかどんな神経してんのよ!!うわぁ・・・。あいつの事を、健治お兄ちゃんって呼んでた数分前の自分をぶん殴りたいわ!!」
「にわかには信じがたいけど、綾香が嘘を付いてるようには見えないわね・・・。」
お母さんに続いて、お父さんも静かに溜息を吐く。
「それが本当なら、健治君に圧倒的な非があるね。・・・近藤さんの御宅とは、今度話し合いの場を設けた方が良いだろうね。これからの付き合いもあるし。」
そのとき、お母さんがとある疑問を投げかける。そんなお母さんの疑問に、咲が興味津々な様子で目を瞬かせる。
「それで、綾香?その話には続きがあるんでしょう?話せる範囲で良いから、教えてくれないかしら?」
「え?この話に続きがあるの?」
「えぇ。だって、さっきまで綾香とお弁当を作ってたから。そんな酷い別れ方をしたのに、お弁当を作り続けるなんておかしいと思って。」
「そうなの!?まぁ、確かに変か・・・。お姉ちゃん!全部話してもらうよ!!」
咲も興味津々で食らい付いてくる為、逃げられないと悟った私は渋々ながら続きを話し始める。
「実はあのあと、力無くお店を出たんだけど・・・。そのときは足取りもおぼつかなかったから、路地裏みたいなところに入っちゃったの。そこで、人にぶつかっちゃったんだけど物凄いガラの悪い人達で・・・。」
そう言うと、お父さんが心配そうに声を掛けてくれたけど、私はそんなお父さんの言葉にゆっくりと首を振ることになる
「何!?大丈夫だったのか!?何もされていないだろうね!!」
「大丈夫よ。とある人が助けてくれたから・・・。」
「とある人?パトロールに来ていたお巡りさんか?」
「いいえ、違うわ。私を助けてくれたのは、学校の生徒会長なの。」
その言葉に、お父さん達は驚いた顔に成る。私の家族は、体育祭や文化祭などの学校行事などのイベントがあるときは必ずと言って良いほど駆けつけてくれる。それ故に、時雨君の事も見たことはあるのだ。だからこそ、驚いているのだろう。
「生徒会長・・・?え!?お姉ちゃんの学校の今の生徒会長って、もの凄い背の小さいあの人だよね!名前、何だっけ・・・。」
「たしか、水無月時雨という子じゃなかったかしら?日本有数の大企業の御令息の・・・。」
「そうそう!水無月家の人じゃん!!え!?そんな凄い人に、お姉ちゃん助けてもらったの!?」
しかし、お父さんは少しだけ疑問が残るようだ。
「けれども・・・。こう言っては何だが、あの水無月君という子は何と言うかその・・・。高校生にしては、背が小さい様に思えたんだが、どうやって助けてくれたんだい?通報でもしてくれたのかな?」
お父さんがそう思うのも無理は無いだろう。現に私も、彼が助けに来てくれたときには彼の実力を疑っていたから。けれども、その認識が誤っている事を私は説明する。
「通報なんかじゃないわ!彼は、もの凄い実戦型の格闘技術の天才なのよ!!」
「ど、どういうこと?あの小さな生徒会長が、チンピラと互角に渡り合ったの!?」
そう驚く咲に、私は身振り手振りで説明してあげる。
「互角とかいう次元じゃ無いわ!一方的だったの!!こう・・・。まずは大男の金的に掌底を当てて、そのあと拳のラッシュを涼しい顔で避けたかと思ったら、おもむろに腕を掴んで大男の肘と肩の関節を外しちゃったのよ!!その後は、後頭部を踏みつけてノックアウトしちゃったわ!!」
「やっば!なにそれ、超クールじゃん!!小さいのに、大男を倒しちゃうなんて漫画の世界じゃん!!」
そう興奮する咲を横目に、お父さんが質問を投げかけてくる。
「それで・・・。助かったのは良かったんだが、その後はどうしたんだい?」
「その後は・・・。一旦、コンビニまでエスコートしてくれて抹茶オレを奢ってくれたわ。しかも、コンビニに行く間も車道側を歩いてくれたり、優しい気遣いをしてくれたの。」
「そうか。優しそうな子で良かったね。」
そのお父さんの言葉に、私は頷くわ。そう話している間にも、私の胸のドキドキは止まらない。あの時の興奮が蘇ってきたみたい。
「それだけじゃないわ。彼は、とても知的な雰囲気を
その言葉に、お母さんも目を閉じながら感心してくれる。
「過去を変える事は出来ないけど、これから過去を作る事は出来る・・・か・・・。たしかに、言われてみれば当たり前の事なのだけれど物凄く心に響く言葉ね・・・。きっと、その子はとても聡明な子なのね。」
「えぇ!」
私はそう言いながら、台所に置いてある彼のお弁当を見る。
(明日のお弁当、喜んでくれるかしら・・・。)
そう考えながら、私は胸を躍らせたのだった。
今日はここまでです。明日また投稿します。