コンビニに魔法少女がくるんだが() 作:TSしか書かないマン
なんて事のない普通の毎日。
けたたましいアラームで目を覚まし、まだボケる目を擦りながら通勤。
電車から降り、少し歩けばいつもの会社。
いつもならそこには見知った会社があるはずだった。
その日は違った。
目の前には半壊したビル。
しかも、激臭がする緑色の血が一面にまき散らされている。
そして、そこには……。
「ご、ごめんなさーい!!!」
可愛いらしいピンク色の衣装を身にまとった、一人の魔法少女がそんな事を叫びながら走り去っていく。
どうやら会社は、魔法少女と魔獣の戦闘に巻き込まれてご臨終なさったようだ。
特に仕事にやる気がある訳でもなく、惰性で日々を過ごしていた男。
しかし、朝通勤すると会社が魔法少女にぶっ壊されていた。
「これって会社がないから帰ってもいいのかなぁ」
取り合えず帰って連絡を待つことにしよう。
このまま行ってもデスクも何にもないんだし。
心の中でそう頷いた俺は、クルリと踵を返して家に帰ることにした。
こうして会社が半壊したわけなんだが、後に明日から会社に来なくていいと連絡が来た。
小さい会社だったから、そりゃオフィスがぶっ潰されればキツイわな。
それが俺が抱いた感想だった。
まぁ何はともあれ、そういう訳で無事に魔法少女のおかげで無職デビューしたわけである。
▽▲▽▲
魔法を操り、魔獣と戦う少女。
彼女たちは悪と戦うために、可愛らしい
ステッキを振れば魔法が飛び出し、痛みにもがく人々は癒し、悪には容赦なく炎を浴びせかける。
しかしながら彼女たちは衣装に包まれることによって、その正体を隠す。
彼女たちは賞賛を求めず、ただ人々を助けるためだけに活動する。
そして、市民は彼女たちの活躍に涙し、感謝する。
魔法少女たちは今日も、人々のために戦うのである。
──魔法少女についてざっと調べたんだが、こんなところなんだろうか。
「いや、それにしても魔法少女に会社をぶっ潰されるとはなぁ」
会社がつぶれて稼ぎ口がなくなってしまった俺は、コンビニでバイトをしていた。
まさか正規雇用から非正規雇用に落ちるとは。
予想だにしない落ち方ではあったが、転職活動もせずにいきなり会社がぶっ潰れてしまったんだからこうするしかないんだが。
しかも、会社がぶっ潰れた理由が魔法少女という。
いやまぁ、別に魔法少女を憎んでるとかそんな感情はないよ?
会社に愛着があったわけじゃないし、やる気があったわけでもない。
それでも正義の魔法少女に会社をぶっ潰されたというのには、なんとも形容しずらい苦い感情という物がある訳で。
ま、この事は考えててもしょうがないと割り切った俺は、コンビニで働くことにしたのだが、こっちはこっちで気がかりな点があったのだ。
バイトの応募事項に、『強烈な匂いに耐えられる人』だなんてあったのだ。
強烈な匂いって、ホームレスとかの事なのだろうか。
何日も洗ってない人の匂いってきついらしいし、耐えられない人もいるのかもしれないな。
でもまぁ、そのくらいの匂いなら大丈夫だろ──。
そう思って応募したのだが、実際にそれに遭遇してみると、想像のはるか上をいくものだった。
それは黒髪の、少女だった。
黒金色の髪が腰まで伸びた12か13くらいに見える女の子が入店音と共に入って来た。
えっと、あー、うん、第一印象はすごく可愛いという感じ。
少女なのにどこか神秘的な雰囲気があって、しかし小動物的な可愛さがある。
たぶんどんな人間が見ても、まず最初に「可愛い」と口を揃えるだろう。
でも、それでも、だ。
臭い、圧倒的に臭い、鼻がもげそうなくらい臭い。
ヴォエッ、と思わず顔をしかめてしまうくらい臭い。
これ何の臭いだ?
マジで風呂入ってない人間の臭いとか、ワキガとかそんな物とは比にならないレベルの激臭だ。
一体全体、なにをしてたらこんな小さな少女からこんな臭いが放たれるのだろうか。
俺は店内に充満する臭いに、ただただ呆気にとられることしかできなかった。
「これお願いします」
呆気に取られていると、いつの間にかその女の子はカウンターの前にいた。
正気に戻った俺は、自分がコンビニ店員だったことを思い出し、すぐにカウンターの上に置かれた商品を読み取ろうとする。
商品は……総菜弁当に、ビールに、あと追加でタバコ。
はぁ、こいつ未成年じゃないのか!?
「えっと、身分証をお願いします」
念のために訊いたのだが、少女はムスッとした顔をし、懐から財布を取り出した。
「はい、これ……私ってそんなに子供っぽく見えるのかな」
そんな風に嫌味っぽくいいながらこちらを睨みつける少女。
差し出されたのは、運転免許証だったのだが……確かに目の前の少女は成人してた。
「……えっと、お会計は1623円です」
「はい、これ」
女は金を取り出し、トレーに置いた。
会計が終わると、女はそのまま買ったものを手に去っていった。
「えーっと、こりゃあれだな、明日から鼻栓必須だな」
あの強烈な臭いをどうにかしなければならない。
マジでヤバいあの臭いはできればもう嗅ぎたくないのだ。
ふぅ、とため息をつき俺は明日から鼻栓を持ってくることを決意したのだった。
いや、でもそれにしてもあの臭いはなんなんだろうか……?