空想少女のヒーローアカデミア   作:いぬはいぬ

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体育祭 騎馬戦

 騎馬戦。第二種目の説明を行うミッドナイト先生曰く、2~4人のチームで騎馬を組むそうです。そして障害物競走の順位によって点数が与えられます。

 

「与えられるP(ポイント)は下から5ずつ! ただし1位に与えられるPは──1000万!!!」

 

 バカの数字ですね。

 

「上を行く者にはさらなる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ、これぞPlus Ultra!」

 

 その言葉と共に皆さんの視線が一斉にいずくんに注がれます。当人は目を見開いて冷や汗を流していました。不憫ですねぇ。

 騎馬戦の制限時間は15分。チームメンバーの合計Pが書かれたハチマキを騎手が装着し、それを奪い合うそうです。そしてハチマキを奪われたり騎馬が崩れても退場はなし、と。〝個性〟は当然ありですが悪質な崩し目的での攻撃はアウト、これはどの程度までならセーフでしょうか。

 

「それじゃこれより15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

 ミッドナイト先生の宣言と共に皆さん一斉に行動を開始しました。人気なのは爆豪さんと轟さん、いずくんは避けられて見事に孤立しています。不憫です。

 さて、私も行きましょうか。

 

「見事に避けられてますね、いずくん」

「ゆめちゃん……! 組んでくれるの!?」

「要るなら。要らないなら他行きます」

 

 いずくんに声をかけると先ほどまでの絶望した表情から一変し、涙すら浮かべています。こういう時、卑怯な言い回しになってしまうのは私のダメなところです。

 

「要る要る! ゆめちゃんがいれば勝機もあるよ……! 本当にありがとう!」

 

 はい。まぁ、断られるとは思っていませんでしたが。いずくんに真っ直ぐにお礼を言われて、なんとなく気まずくて目線を逸らしてしまいました。迫真の勢いでそこまで言われるとちょっと困ります。……これは頑張らないといけませんね。

 さて、これでも一応騎馬は組めるのですが、やはりあと2人欲しいです。現状だと光の足場で15分耐久をすることになりますが、それは色々と厳しいので。私のせいでいずくんが負ける、なんてことがあっては駄目です、絶対に。

 

「デクくん、夢望ちゃん、組も!」

 

 そんな事を考えているところにやってきたのが麗日さん。ほら、こうやってちゃんと素直に言えるのが麗日さんの良いところで、私と彼女の差です。

 

「麗日さん! い、いいの!? 多分僕たち、1000万ゆえに超狙われるけど……」

「ガン逃げしたら勝つじゃん! それに、仲良い人とやった方がいい!」

 

 麗日さんの笑顔が眩しいです。人としても女子としても負けているのを感じます。ええ、私がアレなのは私自身が一番よく分かってますよ。

 いずくんは麗日さんの言葉に変な顔になり、麗日さんに不細工なんて言われていました。失礼ですが、そう言われても仕方のない表情だったと思います。

 

「実は僕も組みたかったんだ、ありがとう! チームを組むならなるべく意思疎通がスムーズな方が望ましいから。それにゆめちゃんと麗日さんにもう1人で、一つ策を考えてたんだ」

 

 そう言っていずくんが視線を向けた先に居たのは飯田さん。ふむ、まぁ妥当な人選ですね。

 3人で飯田さんに近づいて行こうとして、不意に声をかけられました。

 

「私と組みましょ、1位の人!!!」

「わぁあ近、誰!?」

 

 突然現れた女子生徒はキスでもするんじゃないかというような近さまでいずくんに近づいてきました。誰ですかコイツ本当に。

 ああ、いえ、この人見覚えがあります。障害物競走で企業がどうとか叫んでた変人です。

 

「私はサポート科の発目明! あなたの事は知りませんが、立場利用させてください!」

「あ、あけすけ……!」

 

 初対面でいきなり失礼発言をブチかました発目さんはベイビーがどうだの企業がどうだのと一方的に捲し立て、トランクからいくつもの道具を取り出していきます。ベイビーとはどうやらサポートアイテムのことのようです。

 まぁ理解はできますよ、自分で作った作品は大切ですよね。しかし今は彼女のトークを聞いている場合ではないです、いずくんも普通に食いついてますけど。

 

「緑谷さん」

「あ、あのえっと、ごめんなさい。最後の1人はもう決めてて……」

「む。そういう事であれば仕方がありませんね。それでは!」

 

 先ほどまでの押しの強さが嘘のようにあっさりと引き下がりました。なんだったんでしょうか。

 気を取り直して飯田さんの下まで行くと、周りに居るのが轟さんに八百万さん、上鳴さんの3人。これは既に決まってそうですね、上手く引き抜けると良いのですが。

 いずくんが飯田さんに声をかけ、少し離れてもらって交渉開始です。私は見てるだけですがね。

 あー、頭痛い。

 

「飯田くんを先頭に僕と麗日さんで馬を作る。騎手はゆめちゃんにやって貰って防御に専念。麗日さんの〝個性〟で軽くして、飯田くんの機動力とゆめちゃんの防御力で逃げ切りを狙う! っていう作戦なんだけど」

 

 このメンバーなら必然的に作戦はこうなります。後は乗ってくれるかどうかですが。

 

「…………。さすがだ、緑谷くん。だが──すまない、断る」

「えっ」

 

 いずくんと麗日さんが揃って驚きの声を上げます。ダメですかぁ。

 

「入試の時から君には負けてばかり。素晴らしい友人だが、だからこそ……君に付いて行くだけでは未熟者のままだ。君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない。──俺は君に挑戦する!」

 

 宣言と共に背を向け、轟さんたちの下に飯田さんは戻っていきました。麗日さんは戸惑ったように視線を彷徨わせています。

 挑戦する、ですか。どんな覚悟で、どんな思いで飯田さんはそう言ったのでしょうか。こういうのは、私にはよく分かりません。

 しかし困りましたね、さっきの人を断ったのが裏目に出ました。順番が違えば……いえ、そんな事を考えても不毛ですね。

 

「どうします?」

「今、考えてる」

 

 真剣な表情でいずくんはしばし周囲を見渡し、候補が見つかったのか歩き出します。その先に居たのは、常闇さんでした。

 

 

 

 15分の交渉タイムが終了し、ブザーが鳴り響きます。

 

『さあ起きろイレイザー! 15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!!』

『……なかなか、面白ぇ組が揃ったな』

『さぁ上げてけ鬨の声!! 血で血を洗う雄英の合戦が今! 狼煙を上げる!!!』

 

 私たちの持ち点は1000万と490、実に頭の悪い数字です。騎馬は常闇さんを先頭にいずくんが右後ろ、麗日さんが左後ろ、そして私が騎手。責任重大ですねぇ全く。

 他の皆さんも各自騎馬を組み、開始の合図を待っています。凄い見られてて嫌になります、明らかに私たち狙いです。そして頭に巻いてるハチマキの感覚もすごく嫌です、なんなら視線よりハチマキの方が嫌まであります。

 

『よぉーし、組み終わったな!? 準備はいいかなんて聞かねえぞ!! 行くぜ! 残虐バトルロワイヤル、スタート!!!』

 

 スタートと同時、いきなり突っ込んできたのが葉隠さんチームと障害物競走でロボに潰されてたB組の人、鉄哲さんチームの2組。

 

「実質それの争奪戦だ!!!」

「はっはっは! 泡沫ちゃん、いっただくよー!」

 

 しかし、まっすぐ向かってくるとは舐められたものです。それに葉隠さんは上半身裸にさっきの人のサポートアイテムを付けてるのはどうなんですかね。脱ぐ必要ありました? 

 

「いきなりか。追われし者の宿命(さだめ)、選択しろ緑谷!」

「もちろん、逃げの一手!」

 

 いずくんの指示で動き出そうとした直後、私たちの足元の地面がぬかるみ、どんどんと騎馬の足が沈んでいきます。

 B組の人の〝個性〟ですね。このルールで地面を崩せるのはかなり強いです、めんどうな。

 

「何これ!?」

「沈んでる、あの人の〝個性〟か! フォーメーションB!」

「はぁ、仕方がないですね」

 

 いきなり奥の手を使うことになるとは。箒を描いて左手で持ちつつ、いずくんと麗日さんの間と常闇さんの右脇に通します。両足を箒に乗せ騎馬を解除、全員で箒に掴まります。

 

「しっかり掴んでくださいね」

「ああ!」

「大丈夫!」

 

 では行きます。沈んだ3人の足を引き抜いてそのまま上昇、鉄哲チームの頭上を越えていきます。あ、これバランス難しい! ぶっつけ本番でやるのはやっぱり無茶でした、麗日さんだけ重量そのままなので凄い偏りますこれ。

 

「飛んだ!? 追え!」

 

 反転して追ってきますが、距離は離せました。着地だけ狩られないように気を付けないといけません。

 

「わっわっ落ちる!」

「頑張って! 常闇くん!」

「分かっている!」

 

 下から伸びてきた耳郎さんのイヤホンジャックと葉隠さんのサポートアイテムの投網を黒影(ダークシャドウ)が弾きます。これは有能ですね。

 

「いいぞ黒影(ダークシャドウ)。常に俺たちの死角を見張れ」

「アイヨ!」

 

 黒影(ダークシャドウ)、常闇さんの〝個性〟ですが、驚くべきことに独立した自我があります。自我のある〝個性〟なんて初めて聞きましたが、色々あるんですねぇ。

 それはさておき、麗日さんが辛そうですし、いつ崩れるか分かったものじゃないのでさっさと降ります。

 

「降りますよ」

「うん! 常闇くん、着地カバーして!」

 

 高度を下げて降りようとしたその時、やかましい爆発音と共に1人突っ込んできます。ほらやっぱり来ました、爆豪さんです。

 

「隙だらけなんだよクソナードが!!」

「かっちゃん!?」

 

 右後ろ(いずくん)側から襲い掛かろうとした爆豪さんですが、向こうの間合いに入る直前に黒影(ダークシャドウ)が割り込みます。爆発をもろに食らっていましたが、事前に聞いた話では物理攻撃は問題ないそうです。一つ致命的な弱点があるのを除けば非常に優秀な盾ですね。

 

「なんだコイツ……!?」

 

 驚いている間に爆豪さんの身体にテープが巻き付き、騎馬へと回収されていきました。黒影(ダークシャドウ)は爆豪さんとは相性が悪いので可能な限り私の方で対応したいところです。

 そうしてどうにか着地。ですがこのもたつき具合は如何ともしがたいですね。そう何度も同じ手は使えません、おそらく次は狩られます。

 

「よし! ゆめちゃんの隙をカバーしてかっちゃんすら凌げる全方位中距離防御、凄いよ常闇くん!」 

「選んだのはおまえだ」

 

 しかし爆豪さんのあれはいいんでしょうか。思いっきり騎馬から離れてましたけど。

 

『おーっと爆豪! 狡猾に着地を狙うも阻まれる!! しかし騎馬から離れていいのかアレ!?』

「テクニカルなのでオッケー! 地面に足ついてたらダメだったけど!」

 

 いいらしいです。たまには役に立ちますね、あのうるさい実況。最悪の場合私だけ浮いて逃げましょうか、常闇さんに回収してもらえば多分セーフでしょう。

 

『さーまだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦! 各所でハチマキ奪い合い!! 1000万を狙わず2位から4位狙いも悪くねぇ!!』

 

 おや、4位まではセーフですか。一応頭に入れておきましょう。さて、しつこく追ってくる鉄哲チームをどうにかしなければ。

 

「アハハハ! 奪い合い……? 違うぜこれは、一方的な略奪よお!!!」

 

 なんか増えた……。複製椀の被膜で背中を覆った障子さんが単騎で突っ込んできます。そう、単騎です。騎馬戦とは……?

 

「障子くん!? あれ、1人……!? 騎馬戦だよ!?」

「次から次へと、めんどうですね全く」

 

 障子さんと鉄哲チームの進路を阻むように光の足場を2枚描きます。普段使いのより面積が広いのでその分持続時間を捨てます。10秒も持てば十分です。

 

「ああ!? こんな壁で俺たちを止められると思うなよ! ──ッ、硬ぇ!」

 

 右腕を金属のように変えた鉄哲さんが正面から殴り壊そうとしますが、その程度で壊れるほど脆くはありません。そのまま足を止めるといいですよ。

 右側から回り込もうとした障子さんを避けるように左側に逃走し、鉄哲チームが来れないようもう1枚。障子さんの背中から飛んできた峰田さんの髪の毛? と異様に長い舌をさらに追加で描いた足場で防ぎます。今の蛙吹さんでしょうどう考えても。

 

「峰田くんに蛙吹さん!? それアリィ!?」

「アリよ!」

 

 アリらしいです。この競技はむしろ何がダメなんですかねこれ。

 梅雨ちゃんと呼んで、といずくんの叫びを流しつつ相変わらず名前呼びに拘る蛙吹さん。それはさておき、小柄とはいえ2人背中に乗せてあの速度とは。障子さんの身体能力も中々ですね。

 

『峰田チーム、圧倒的体格差を利用しまるで戦車だぜ! だが泡沫チームの防御力には一歩及ばないかぁ!?』

「あ!? この野郎、返しやがれ!」

 

 鉄哲さんの叫び声。どうやら上手くやってくれたようですね。私の光の足場で相手の動きを止め、その隙に常闇さんの黒影(ダークシャドウ)でハチマキを奪う。万が一1000万を奪われた時の保険です。

 黒影(ダークシャドウ)から695点のハチマキを回収し、首に巻きます。……あー、これすごい嫌です、ちくちくします。早く終わって欲しい、切実に。これだから肌に合わない物は付けたくないんですよ。

 

「泡沫、どうかしたのか?」

「なんでもないです。それより、隙があればどんどんお願いしますね」

「ああ」

 

 怪訝そうな表情の常闇さん。私は気にしないでいいので周囲の警戒をしてください。

 逃走を続けつつ、光の足場と黒影(ダークシャドウ)で近寄ってくる相手をあしらい続けて7分。ここで実況が大型モニターに各騎馬の現在持ち点を表示しました。

 

『騎馬戦開始から7分経過!! それではここらへんで、現在の順位を見てみよう!』

 

 ちらりとモニターを確認すると私たちと轟チーム、そしてB組の4チーム以外は0Pでした。他はともかく、爆豪さんがやられるとは驚きです。

 

『……あら!? ちょっと待てよコレ! A組、泡沫チーム以外パッとしてねえ。てか爆豪、あれ……!? いつの間にハチマキ失ったんだおまえ!!』

 

 実況も驚いているようです。当の爆豪さんはB組の金髪の人と睨み合っていました。名前は知りませんが、そのまま爆豪さんを止めててくれるとありがたいです。

 このまま楽に終われれば理想的でしたが、残念ながらそう上手くはいかないようです。

 

「そろそろ奪るぞ」

 

 残り時間も半分で、轟チームが私たちの前に立ちはだかります。

 

「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが……随分買われたな、緑谷」

「2人とも足止めないでね! ゆめちゃん!」

「分かってますよ。──()()()()

 

 返事と共に足場による全周防御を張った直後。周囲に居た他のチームがまとめて上鳴さんの放電をまともに食らい、そのまま轟さんに足元を氷漬けにされて拘束されました。今ので4チーム落ちましたね、邪魔なのが減るのは良いことです。

 さて、私たちは足場で防御しているので無傷です。放電にせよ氷結にせよ、それでは私の防御は抜けません。タイマンを仕掛けてきたのは下策に思えますが。

 

「来るよ! 事前の作戦通りに!」

「ああ、牽制する!」

 

 黒影(ダークシャドウ)で八百万さん側から攻撃を仕掛けます。創造で作り出した鉄板を軽く弾いたついでにハチマキ一本奪って、轟さんの反撃で黒影(ダークシャドウ)が少し凍らされましたがすぐに剥がれ落ちました。

 またハチマキを受け取って首に巻きます。──ああやだやだ、早く終わりませんかね。さっきから首のハチマキが気になって仕方ないです。

 

「はぁ、残り時間半分。頑張りましょうかね」

 

 私の愚痴はさておき、光の足場を壁にして飯田さんの前進を阻みつつ、常に轟さんの左側に回り込む。それがいずくんが考えた轟チーム対策です。放電がくれば私が防ぎ、常闇さんは黒影(ダークシャドウ)を一度引っ込めてエネルギーを回復。隙があれば実質ノーリスクの黒影(ダークシャドウ)でハチマキを奪いに行きます。

 いずくんの策は上手くいったようで、追加のハチマキこそ奪えていませんが向こうも攻め手がないようです。氷結で狭められたフィールドでひたすらに睨み合いが続いています。

 

「キープ!」

 

 いずくんの掛け声と共に距離を保ちつつ再び轟さんの左側に。散発的な放電を繰り返しながら距離を詰めようとしているようですが、そろそろ上鳴さんも限界でしょう。

 ……虚無です。この睨み合いが始まって何分が経過したでしょうか。爆豪さんも向こうで遊んでいるのか来る気配がありませんね、邪魔なので来ないでいいですけど。

 

『残り時間1分! 1000万奪取を狙った轟チームだが、泡沫チームのガードが固い!!! このまま時間切れかぁ!?』

『〝個性〟の相性もあるが、それ以上に緑谷の指示が的確だな。事前にきっちり作戦を考えてきたんだろう』

 

 残り1分ですか。いずくんの評価も上がって結構なことです。このまま終わりたいものですね。あー、頭痛い。

 右手で額を押さえながら轟さんたちを見ると、何やらこそこそと話し合っています。まだ何かするつもりでしょうか? 轟さんは迂闊に氷結を使えませんし、上鳴さんは既に半ば機能不全、飯田さんは加速に時間と距離が必要な以上見てから防御しても間に合います。となると切り札は八百万さんでしょうか。

 そうこう考えている間に飯田さんが若干姿勢を下げ、

 

「レシプロバースト!!」

「キー──ッ!?」

 

 私が足場を正面に展開したときには、既に彼らは私たちの後ろへと走り去っていました。

 

「──は?」

 

 やられた!? 1000万のハチマキを奪われました。あんな一瞬で加速できる技があったとは、やらかしました。うわ、最悪です、私のバカ! こんなしょうもないミスをやらかすとは!

 

『な、何が起こった!? 飯田、とんでもない超加速で1000万を奪取! 逆転!! 轟チームが逆転だ──!!! そして残り時間があと8秒!』

「言ったろ、緑谷くん。君に挑戦すると!」

 

 ライン際まで逃走し、飯田さんは好戦的な笑みを浮かべながらそう言います。

 

「ッ、やられた! 順位は!?」

 

 いずくんの言葉につられて巨大モニターに視線を向け、じゃないです。だから油断をするなと!

 動かない轟さんと、ここに来て爆発音と共に突っ込んできた爆豪さん。そして、

 

『タイムアーップ!!! カウントしそびれちまったが、騎馬戦終了──!』

 

 時間切れです。あーマジで最悪です、うわ、これで落ちてたら私どうやって謝ればいいんですか。肝心な時ですら役に立たないどころか迷惑をかけるとか本当に私はどうしようもないですね。

 騎馬から降りて恐る恐るモニターに視線を向けると、上から轟チーム、爆豪チーム、泡沫チーム、心操チームと書かれています。……これはギリ許されたということでいいですか? ダメですよね。常闇さんがいなかったら普通に負けてました。本当にありがとうございますごめんなさい。

 

「……ごめんなさい。私のミスです」

「そんな、ゆめちゃんのせいじゃないよ! 僕も飯田くんのあれは予想できてなかったし……」

「ああ。責任があるとすれば、それは俺たちチーム全員の責だ」

「そうだよ! 次頑張ろ、ね!」

 

 揃って励ましてくれます。その優しさが心苦しいです。あぁ……あそこで油断しなければ。飯田さんのことを舐めていました、本当に私のバカ。

 

『1位轟チーム、2位爆豪チーム、3位泡沫チーム、4位心操チーム、以上4組が最終種目へ進出だ──!!! さーてそれじゃあ、1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ! じゃあな!!』

 

 そう言って相澤先生を飯に誘いつつ退席したマイク先生。競技が終わって空気も緩み、皆さんも各々動き始めます。麗日さんは飯田さんに絡みに行きました。

 しかし本当にうるさいですね。音が嫌に刺さります。

 

「はぁー、ほんと最悪で……ッ!?」

「ゆめちゃん……?」

 

 頭痛い! あこれやばい方の頭痛です!

 ズキズキとした強い痛み。たまらずに頭を押さえながら蹲ると、いずくんもしゃがみ込んで顔を覗き込んできました。

 

「ゆめちゃん? 大丈夫──!?」

「だ、め……」

 

 前兆もなくなんで急に……! あぁ気持ち悪い、吐きそう……。

 視界が明滅して、いずくんの声に反応する余裕もありません。ああうるさい、痛い、本当にこの体は──! 

 急にいずくんの手が回されて抱き抱えられました。そしてそのまま運ばれていきます。

 どこでも、いいので──静かなところへ……。ごめん、なさい……。

 

 

 




お久しぶりです。
これでいいのかと思いつつ進まないので投稿します。実際に書いてみると体育祭編で止まる理由がなんとなく分かります。
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