空想少女のヒーローアカデミア   作:いぬはいぬ

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入学初日

 結局、春休み中はずっといずくんの家に居ました。引子おばさんには相当な迷惑をかけたことでしょう。何かお礼を考えねばなりません。

 とりあえずそれは脇に置くとして。入学が目前に迫り、これ以上は流石にまずいと私は半ば強引に家に戻りました。最後までいずくんは渋っていましたが、そんなに信用できませんか。まぁ、できないでしょうね。私が逆の立場なら絶対信じないですし。

 それもさておき、とうとう今日から雄英へと通うことになります。めんどうです。

 

「さて、これで大丈夫でしょうか」

 

 準備も終わり、後は行くだけ。駅でいずくんと待ち合わせる予定ですが、今回は流石に混んでませんよね。毎日満員電車で通学とか言われたら死にますよ私。

 しかし、制服というものはやはり好きではありません。中学時代のセーラーに比べればかなり上等ですが、それでも息苦しいですし着心地がいいとは言えません。

 

「んー……」

 

 煩わしいワイシャツに息苦しいネクタイ、元があまりにも短かったのでわざわざ要望を出してロングにしたスカート。硬くて重いジャケット。まったく、制服なんて誰が考えたんでしょうか。私服でいいじゃないですか、めんどうくさい。オーダーメイドが当たり前の時代に制服とか要るんですか?

 はぁ、うだうだ文句を言っても仕方がありません。何事も諦めが肝心です。

 

「時間です。行きましょう」

 

 自室を出て、いつも通りの静かな家の中を進んでいきます。

 

「……?」

 

 ふと視界に入ったテーブルの上、あの人とのやり取りが必要な際に使っているハリセンボンの置物の下に茶封筒が置かれていました。

 

「今月分はもう回収したはずですが」

 

 中身を確認すると予想通りの物が入っていました。……ふむ。まぁ、貰えるものは貰っておきましょうか。何を考えているのかは知りませんが。

 家を出てしばし歩き、待ち合わせの駅に着きました。いずくんはもう少しかかるようです。

 

「ゆめちゃん、おはよう! ごめん、待たせちゃった?」

「おはようございます。大丈夫ですよ、行きましょう」

 

 また走ってきたのか、いずくんは息を切らせながらやってきました。雄英の制服に随分と不器用なネクタイ、いつもの黄色いリュックには私が贈ったキーホルダーが今も付けられています。いやほんとにネクタイの結び方ヘタですね、逆に難しくないですかそれ。

 まぁいいです。いずくんと並んで駅に入ったわけですが。結論だけ言えば、実に残念な事に電車は満員でした。クソが。

 

「いずくん、私はもうダメです」

「な、何か別の通学手段を考えよう! きっとあまり混んでないルートもあるよ!」

 

 動悸がします。気持ち悪い、吐きそうです。

 電車から降り、いずくんに寄り掛かりながらどうにかこうにか歩いていきます。毎日あれに乗って平然としてる人たちは一体どうなっているのでしょうか、正気とは思えません。

 

「そんな都合のいい話ありますかね……」

「大丈夫、僕がなんとかするから!」

 

 頼もしいことです、あまり期待はしないでおきますよ。しかし今日のいずくんテンション高くないですか? 何かいい事でもあったんでしょうか。

 雄英に着く頃には体調もある程度落ち着いてきました。これから教室を目指すわけですが、ここからがまた長いです。随分と歩かされてようやく目的地の1ーAにたどり着きます。

 

「ずっと思ってたけどすごく大きいよね、ドア。バリアフリーかな」

「というより全体的に大きいですね。設計者は過ぎたるはなんとやらを知らないのでしょう」

 

 ざっと6、7mはありそうなドアを眺めながらそんな会話をし、周囲を見回します。

 無駄に広い廊下、高すぎる天井、結果として無駄に移動に苦労します。なんでもかんでも大きくすればいいというものではありません。あとやはり全面ガラス貼りは正気を疑います。

 まぁそれはいいでしょう。後は入るだけなのですが、いずくんは妙に緊張した様子で恐る恐る扉を開けました。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ。てめーどこ中だよ端役が!」

 

 初日からやってますね爆豪さん。あとこの眼鏡も見覚えがあります、実技試験の説明中にいずくんに喧嘩売って笑いものにした奴です。

 やいのやいのと騒いでいた2人でしたが、こちらに気づいた眼鏡が近寄ってくると挨拶してきました。飯田天哉だそうです、一応覚えておきますよ眼鏡。

 

「そっちの君は──」

「泡沫です。どうぞよろしく、飯田さん」

「ああ、よろしく! 泡沫くん」

 

 挨拶をすると眼鏡はいずくんに視線を戻し、実技試験の時の話を始めました。妙にいずくんへの評価が高いですが、一体何があったんですかね。

 それはさておきと中に入って教室内を見回すと見覚えのあるピンクの髪、芦戸さんも合格していたようです。良かったですね。

 

「泡沫、久しぶり! 同じクラスだったんだ! これからよろしくね!」

「お久しぶりです、芦戸さん。元気そうで何よりですよ」

 

 目があった途端に席を立ちこちらに寄ってきました。朝からテンション高いです。圧倒的陽のオーラを放っている芦戸さんに若干気圧されながら挨拶をします。

 ん、後ろに人です。

 

「夢望ちゃん! それにあの時の!」

「麗日さん、お久しぶりです」

 

 そこに居たのは笑顔で此方に近づいてくる麗日さん。こちらも芦戸さん同様陽のオーラを放っていて、どちらかと言えば陰の者な私には少々きついものがあります。

 ……これはこの2人が特別なだけなんでしょうか。それとも皆陽の者だったりするんですかね。今更ですが私、この空間で生きていけるんでしょうか。

 

「プレゼント・マイクの言ってた通り受かったんだね!」

「いや! あのっ……! 本当あなたの直談判のおかげで……ぼくは、その──」

 

 さて、麗日さんに迫られて顔を真っ赤にしながらドギマギしているいずくんですが、まぁ言葉が出ているだけ前回よりは成長してるんじゃないですかね。あと麗日さんは距離感近いと思います、最初に会った時もそうでしたけど。いえ別にそれが悪いというわけではないですけど。

 

「今日って式とかガイダンスだけかな? 先生ってどんな人だろうね。緊張するよね」

「麗日さん、そろそろ止めてあげてください。緑谷さんがフリーズしてしまう、ので──」

 

 そろそろダメそうだなと合間に入ろうとして、床に何かが転がっているのに気が付きました。

 は? え? なんですこれは? 寝袋? いつの間に? 誰ですかこの浮浪者みたいな人は。

 

「お友達ごっこがしたいなら余所に行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

 浮浪者は寝袋から取り出したゼリー飲料を一瞬で吸い尽くし、そんな事を宣いました。

 いずくんたちも気付いたらしく皆で仲良く固まって、もとい引いています。私もドン引きですよこんなの。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。──担任の相澤消太だ、よろしくね」

 

 えぇ……嘘でしょう。寝袋を脱ぎながら担任だと名乗ったこの男。相澤さんは体操着を着てグラウンドに出ろと言い残し、さっさとこの場を去ってしまいました。本当になんなんでしょうか。

 

「んん……! 皆! 一先ずは先生の指示に従おう!」

 

 誰もが固まったまま動かない中、一番早く復帰した眼鏡が皆に声掛けをし、とりあえずは言われた通りにすることになりました。この眼鏡あれですね、クソ真面目な委員長タイプです。学校さぼって水族館なんて行ったらめちゃくちゃ文句を言ってくるような人。間違いありません。

 

 

 

「「「個性把握テストォ!?」」」

 

 うるさ。なんで皆さんそんな息ピッタリなんですか?

 グラウンドに出て早々、相澤先生はテストをすると言いだしました。ヒーローになるなら入学式みたいな悠長な行事に出る時間はないそうです。

 

「雄英は〝自由〟な校風が売り文句。そしてそれは〝先生側〟もまた然り」

 

 つまり? 相澤先生は〝個性〟禁止の体力テストに関してやれ合理的じゃないだの文部科学省の怠慢だのと愚痴を述べた後、なぜか私に視線を向けます。

 

「実技入試のトップは泡沫だったな。中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」

「あー、30とか?」

 

 覚えてませんが、そんなの。ていうか私に何させる気なんです?

 

「じゃあ〝個性〟を使ってやってみろ」

 

 私にボールを投げ渡し、相澤先生は白線の円を指差します。ああ、デモンストレーションをしろと。意図せず1位を取った弊害がこんなところで出るとは思いませんでした。まぁ仕方がありません。やれと言うならやりますよ。めんどうくさい。

 さて、どうやって投げますかね。円に入りながら考えますが、後ろから射殺さんばかりの勢いで睨んでいる爆豪さんが気になって仕方がありません。負けるの嫌いですもんね、あなた。──あ。

 

「では、やりますね」

 

 良さげな絵が浮かんだのでこれで行きましょう。恐らくいい感じに飛んでくれるはずです。ぶっちゃけトレパクみたいなものなので爆豪さんがどう反応するかが気になりますが、まぁいいでしょう別に。

 ボールを上に軽く放り、描いたイメージを現実に出力します。

 

「──エクスプロージョン」

 

 目の前に赤い火球を創り出してボールが落ちてきたタイミングで起爆。大爆発と共にボールは放物線を描いて飛んでいきましたが、土煙がヤバいです。少々手直しが必要ですねこれは。

 

「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 軽く咳き込んでいると相澤先生が手に持っていた端末を見せてきました。記録は824.3m。残念、1000行きませんでしたか。即興絵は難しいですねぇ。

 ちらりと爆豪さんを見ると今にも飛び出してきそうです。が、彼は普段の言動に反して妙に理性的というか、みみっちい性格してるので手が出ることはないでしょう。いずくん相手の時は例外あり、という但し書きは必要ですが。

 

「なんだこれ! すげー面白そう!」

「〝個性〟思いっきり使えるんだ! 流石ヒーロー科!」

 

 後ろでクラスの皆さんがワイワイ盛り上がっていますが、ここで相澤先生の雰囲気が変わりました。

 

「面白そう……か。ヒーローになるための3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

 態度が気に障ったのでしょう。相澤先生はとても意地の悪そうな笑みを浮かべながら、トータル成績最下位を除籍するなどと宣いやがりました。ヤバいですねこの人。

 てかこれいずくん不味いですね? 当人も焦りが顔に出ています。まぁ体力テストで活かせる〝個性〟持ちばかりとも限りませんから、まだ分かりません。

 麗日さんの理不尽だという抗議にも、そういう理不尽を覆すのがヒーローだと平然と言い放ちます。

 

「これからの3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。〝更に向こうへ(Plus Ultra)〟さ、全力で乗り越えて来い」

 

 煽りますねぇ。これただ発破をかけただけな気がしてきました。なんですが、それにしてはどうにも違和感があります。苦手ですね、こういう考えが読めない大人は。

 

 

 

 第1種目:50m走

 

 これは簡単です。箒を出して飛ぶだけでいいですから。距離が短いのでそこまでの速度は出ませんが、急加速で酷い目に遭うよりは記録を下げた方がいいでしょう。

 記録は4.1秒。隣で走った麗日さんが7.15秒でした。

 

 第2種目:握力

 

 うまくイメージ出来ないので普通にやります。見ているとポニテの女子の人が万力出して1200kg出していましたが、握力とは……?

 ちなみに使った後も万力はそのまま残ってました。どういう〝個性〟なんでしょうか。ていうかこれありなら私も記録伸ばせましたね。もう終わった後なのでいいですけど。

 

 第3種目:立ち幅跳び

 

「先生、これどこまで行けばいいですか?」

「逆にどこまで行ける?」

「強いて言うなら飽きるまで、でしょうか」

「……実測は合理的じゃないな。これが終わるまでそのまま待ってろ」

 

 箒に乗ったまま先生に聞くと待機を命じられました。これ成績はどういう判定になるんでしょうね。

 

 第4種目:反復横跳び

 

 普通にやります。

 特に何もないかと思ったら、紫の玉みたいな髪の人がすごい勢いで跳ねてました。何気に身体能力凄いですねあれ、なんで転ばないんでしょうか。

 

 第5種目:ボール投げ

 

 手直しした爆発で2回目をやりましたが、記録は多少伸びた程度でした。存外難しいですねこれ。ところで、しれっと記録無限を出した麗日さんは一体何をしたんですか。

 それはさておき、ここまで〝個性〟なしでやってきたいずくんは大分怪しいですね。残りの種目から考えてもボール投げで記録を出せないと最下位候補その1でしょう。

 

「緑谷くんはこのままだとマズいぞ……?」

「ったりめーだ。無個性のザコだぞ!」

 

 爆豪さんはまぁいつも通りとして、この眼鏡はなんでいずくんのこと気にしてるんでしょうね。あの入試から何があったんですかほんとに。

 当のいずくんは順番が来ても思いつめた表情で俯いていましたが、覚悟を決めたのか思いっきり振りかぶって投球の体勢に入りました。

 結果は──46m。〝個性〟を使わなかった? いえ、いずくん動揺してますね。使わなかったのではなく使えなかった……? 

 

「〝個性〟を消した。──つくづくあの入試は合理性に欠くよ。おまえのような奴も入学できてしまう」

 

 ……なるほど、違和感の正体が分かりました。最初からいずくんを狙い撃ちだったわけです。合格にはしたあたり、雄英側も一枚岩ではないということでしょうか。

 ついでに相澤先生がどこの誰かも分かりました。抹消ヒーローイレイザーヘッド、クラスメイト曰くアングラ系ヒーローだそうです。そのネーミングはどうなんです?

 クラスの皆がコソコソ話している間に相澤先生は首に巻いていた布でいずくんを引っ張り寄せ、あーだこーだと言ってから解放します。要約するといずくんではヒーローにはなれないと言いたいそうです。

 

「嫌いですね、あの人」

 

 おっと。言葉に出てました、危ない危ない。まぁ、言い分自体は正しい面もあります。心情的に納得できるかどうかはともかく。

 いずくんはどうするんでしょうか。先生を納得させるだけのものを見せられなければ除籍はほぼ確実でしょうが、かと言ってぶっつけ本番で上手く行くなんて都合のいい話はないでしょう。

 2投目。さっきと同じようにいずくんは振りかぶり、

 

「スマッシュ──!!!」

 

 凄まじい勢いでボールがすっ飛んでいきました。いずくんの〝個性〟、実際に見るのは初めてですがこんな感じなんですね。使った代償は、指1本です。

 

「先生……! まだ……動けます」

「こいつ……!」

 

 冷や汗をかきながら唇を噛み締め、目に涙を浮かべて。それでもいずくんは赤黒く腫れあがった指で拳を握って先生に言いました。

 まぁ、少なくとも先生からの評価は上がったようですし、私がとやかく言う事ではありませんが。とりあえず指を握るのは痛々しいので止めてほしいものです。入試の時はこれで両足と右腕粉砕したらしいので、それに比べれば全然マシな状況ですけど。

 

「どーいうことだ、こら! ワケを言え、デクてめェ!!」

 

 あ、爆豪さんが飛び出していきました。そういえば言ってませんでしたもんね、いずくんの〝個性〟については。

 いずくんは迫る爆豪さんにガチビビりしていましたが、途中で先生の布に拘束されて事なきを得ます。

 

「ったく、何度も何度も〝個性〟使わすなよ。……俺はドライアイなんだ」

 

 えぇ……目で見て発動する〝個性〟でドライアイは割と致命的なのでは?

 はぁー。まぁいいです、なんだか疲れました。戻ってくるいずくんに声を掛けに行きます。

 

「緑谷さん、その指──」

「あ、大丈夫。このぐらい、全然」

 

 いずくんは強がってそんな事言ってますが、とてもそうは見えません。こっちに寄ってきた麗日さんも心配そうに見ていました。

 

 第6、7種目:上体起こし 長座体前屈 

 

 普通にやります。特筆すべき事項はありません。

 

 第8種目:持久走

 

 飛びます。上位争いをしていたのは私、爆豪さん、眼鏡、髪がきれいに紅白で別れてる男子、原付バイクで走った黒髪ポニテの女子と言ったところです。いずくんはやはり指の痛みが辛いのかダメでした。

 しかしポニテの人は本当にやりたい放題してましたね。万力、大砲、バイク、その他色々。出した道具を消さずに放置しているあたり、一度出したら消せないのかもしれません。

 

「んじゃ、パパっと結果発表。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 こうして全種目が終了し、先生は空中投影ディスプレイで表示しました。結果は、いずくんが最下位です。さて……

 

「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「「「はぁぁぁぁぁぁあああ!!!??」」」

 

 うるさいですね。思わず顔をしかめて耳を押さえてしまいました。

 それはさておき、とりあえずはセーフですか。その顔腹立ちますね、やっぱり嫌いですこの人。

 まぁいいです、こんな事でイライラするのもバカバカしい。いずくんが先生から紙を受け取っていたので見てみると、保健室利用書と書かれていました。

 

「良かったですね。とりあえず保健室行きましょうか」

「あ、うん」

 

 いずくんに付き添って保健室に向かいます。中には入らず廊下で待っていたのですが、なぜかいずくんの悲鳴が聞こえてきました。一体何があったんでしょう。

 治療が終わって出てきたいずくんは気怠げな様子です。実技試験の後もこんな感じでしたっけ。

 

「何やらすごい声が聞こえましたが、何されたんです?」

「え? あー、うん。治癒の〝個性〟で治してもらっただけだよ。あはは……」

 

 遠い目をしています。私に言えないような事されたんですか……? とりあえず、触れないであげましょう。

 着替えて教室に戻ると既に人はまばらでした。私たちも荷物をまとめて帰ることにします。学校初日って普通自己紹介とかするものだと思うんですが、タイミングを逃したのでそういうのなかったですね。

 

「しかし、困りましたね。いずくん完全に目を付けられてますよ」

「うん。早く〝個性〟を制御できるようにならないと」

 

 決意を新たにしているいずくんですが、いやほんとにどうしましょうね。ボール投げを見る限り、どの部位にどのくらいの範囲で発動させるかという部分は調整できるようです。なら後は文字通り力加減ですか。

 何かいい方法はないものかと考えて、校舎を出てすぐ背後から誰か近づいてくるのを感じます。

 

「指は治ったのかい?」

「わ! 飯田くん……! うん、リカバリーガールのおかげで」

 

 居たんですか眼鏡。てっきり帰ったものと思ってましたよ。眼鏡はいずくんの隣に並ぶと当然のように一緒に歩き始めました。

 さも友人同然に振舞っていますが、まだ初日のはずですが。なんなら初対面の印象は悪かったはずですが。んー、まぁ、いずくんは気にしてないみたいですし、もういいですか。クソ真面目なだけで悪い人という感じはしませんし。私との相性は悪そうですが。

 

「おーい! 3人とも駅まで? 待ってー!」

 

 また後ろから人、今度は麗日さんです。飯田さんといい、一体どこに居たんです? 教室には居ませんでしたが。

 

「君は、∞女子」

「麗日お茶子です! えっと、飯田天哉くんに緑谷、デクくん! だよね!!」

「デク!?」

「ん……?」

 

 あれ? いずくんの名前伝えて──そういえば入試後に話した時、苗字しか教えてなかった気がします。それ名前じゃないですよ麗日さん。

 

「あの……本名は出久で、デクはかっちゃんがバカにして……」

「蔑称か」

「えー、そうなんだ! ごめん!! ──でも『デク』って、『頑張れ!!』って感じでなんか好きだ、私」

 

 ちょっと何を言ってるか分からないですね。麗日さんって実は結構不思議な人だったりします?

 

「デクです」

「えぇ……いずくんはそれでいいん──あっ」

「いずくん?」

 

 やらかしました。あー、ここから誤魔化すには──

 

「あ、その、僕とゆめちゃん、後かっちゃんもなんだけど、幼馴染なんだ。で、ゆめちゃんは昔から僕のこといずくんって呼ぶんだけど」

「ああ、だから今日ずっと一緒にいたのか」

「そうなんや! あれ? でもこの前は緑谷さんって」

 

 納得したように呟く飯田さんと入試の時を思い出しているのか疑問符を浮かべる麗日さん。

 いずくんも余計なことを。これもう誤魔化すの無理ですね。

 

「……いつまでも小さい頃の呼び方するわけにもいかないでしょう。少なくとも人前では」

 

 これに関しては私の方が正常なはずです。昔から一貫してゆめちゃんかっちゃんで押し通すいずくんはある意味凄いと思います。

 

「えー、でもそういうの特別な感じがしていいと思うな」

「そうでしょうか」

「そうだよ!」

 

 断言してきました、麗日さんの笑顔が眩しいです。いえ、なんと言われようと人前では緑谷さんで通しますけど、私は。

 まぁなんやかんやありましたが、いずくんに友達ができたのは良いことです。3人の雑談に相槌を打ちながら駅に向かう道中、そう思いました。

 

 

 




このテストの順位ってどう計算されてるのかよく分からないんですよね。
有識者がいたら教えてください。
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