学園都市のウェイストランダー   作:らいらいてー

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続いてしまいました


第二話 学園都市キヴォトス

 治安組織が介入しづらい、ブラックマーケットと呼ばれてる地域にある自宅。

 寝転ぶ度に軋む音が響くそろそろ寿命が近づいてきたベッドの上に私は腰かけていきながら、携帯端末を操作して先日の依頼人から送られてきたメールを確認。

 内容としてはシンプル、運んでいた荷物の『中身』も無事だったので運び屋の力が必要な案件があったらまた是非お願いしたい、というものだ。

 

 まぁどうせ私のような裏社会の人間に仕事を頼むという事は運んでいるものはロクでもないものなんだろうけどね。

 中身について深い詮索はしないけど、結構な数と質の追手がこちらを追いかけてきたので多分かなりヤバい代物、なんだろうなぁ。変なトラブルに巻き込まれないと良いけど。

 

 この場所で生活をし始めておよそ1か月ほど、それなりにこの場所に順応できたような気がするけど治安の悪さで言えばかなりのものだ。

 それでも警察機構が生きてるだけ私がかつて生きていた場所に比べると大幅にマシであるが。

 だからこそと言うべきなのだろうか、治安が悪いからこそ荒事が得意な者の需要は高い。

 まぁ悪質な依頼人もざらにいて舐めた態度を取ってるやつもいたがそいつらは全員ぶちのめして分からせてきた。

 

 とは言え学籍が無いと色々と不都合なので近いうちにどこかの学園の学籍は欲しいのだが、はてさて出自の分からない私を受け入れてくれる学校はあるのだろうか? まぁ最悪金を溜めてその金で学籍を買うと言うのもありかもしれない。

 どの場所、どの世界でも言えることだが、金さえあれば大抵の事は解決する。マネー・イズ・パワーの原則はこの場所でも変わらない。

 

「じゃ、今日も仕事しますか」

 

 私以外には誰もいない自宅の中でそう呟いていきながら、愛銃(ラッキー)が収められたホルスターを腰に装着しながら、かつて放射能に苦しみながら回収したライフルを担ぐ。

 確か名前はオールアメリカンだったかな。

 精度とストッピングパワーも高いので荒事には欠かせない武器だ。

 今回の仕事は賃貸マンションを不法占拠している不良たちに少し手荒な方法で退去して頂くというどこぞの不動産屋からの仕事だ。

 私のような裏社会で生きている連中も何人か雇われてる合同任務にらしいけど、まぁ私は私の仕事をするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「あっ、貴女は昨日の!?」

 

「昨日の敵は今日の友というやつかな? 変な縁があるね」

 

 指定された目的地に向かうと、そこには先日交戦した4人組がいた。一番精神的に成熟してそうな子は思いっきり走ってる列車の上から投げ落とした割にはかすり傷すらなく元気そうだ。

 よかった、ちょっと心配だったんだよね。

 

「裏社会で君達も生きてるんだったら、敵と味方が入れ替わる経験ぐらいはしたことはあるだろう?」

 

「それはまぁ、そうなんだけど……うーん」

 

「ま、アルちゃん、今は目の前の依頼に集中しよーよ。えーと、君の名前も一応聞いておいていいかな?」

 

「運屋クリエ。という名前で活動してるよ」

 

「あははっ、明らか偽名じゃん! ま、いいや、よろしくねクリエちゃん。私の名前は浅黄ムツキだよ~。気軽にムツキちゃんって読んでね?」

 

 朗らかに今日も重そうな荷物を持ってきている女の子はこちらに笑みを浮かべてきた。これから一緒に敵と戦う相手なんだから仲良くしないとね。

 

「よろしくね、ムツキちゃん」

 

「……鬼方カヨコ。先日はどうも」

 

「伊草ハルカ、です……」

 

「2人とも昨日はごめん。今回の仕事が終わったら皆にご飯奢るから昨日の事は許して欲しいな」

 

「さり気なく餌付けしようとしてる!? ……陸八魔アルよ。よろしくね、クリエ」

 

 意外と話してみると気のよさそうな子達だね。できれば仲良くはしたいんだけど、裏稼業してるんだからこの子達とも何度か敵として戦う事になるんだろうなぁ。

 

「昨日のお詫びもしたいし、さっさと今回の仕事を片づけちゃおうか。私が先陣を切るよ。援護お願いね」

 

 オールアメリカンに弾倉を装着。弾倉に装填されている弾薬は貫徹力の高いAP弾。コッキングレバーを引いて射撃準備を整える。

 

 それじゃ、仕事をするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 マンションを占拠していた不良たちはそれなりの数がいた。多分30人ぐらい。でもまぁ、装備も貧弱で練度も高くなく連携も取れてるとは言い難い連中相手に我々が負ける道理などある訳が無かった。

 大体10分ほどで制圧完了。不法占拠していた連中は強制的に退去していただくことになった。

 

 彼女達が持っていた武器は私が美味しくいただくことにした。武器を回収して売っての金策は裏社会のトレンドだよ。

 

「ふぅん……貴女中々やるわね。で、でも武器を盗むのはやりすぎじゃないかしら……?」

 

「命まで取らないだけマシだよ。負けた側は何されても文句は言えないからね」

 

 ウェイストランドでの常識だ。この世界ではもしかしたら違うのかもしれないけど。倒して気絶した彼女達から装備をはぎ取ってバッグの中に詰めていく。うーん、このバッグが戦利品で重くなる感覚。最高だ。流石に財布までは取らないのだからそこは気絶している彼女達は感謝して欲しいものだ。

 

「ねぇ、クリエ。昨日の依頼人とは連絡は取りあってるの?」

 

「一応裏社会に生きている人間だから守秘義務というものがあるんだけどね」

 

 武装解除されてノビている不良たちを縛り上げているカヨコからの質問に私は戦利品の状態を確認しながら答える。流石に依頼人の情報を簡単に話すのは裏社会の人間としてはまずい。あ、この銃の状態悪いな、部品取りに使おうっと。

 

「もし、連絡を取り合ってるんだったら悪い事は言わない。関わらない方がいいよ」

 

「へぇ、どうしてなのか理由を聞いて良い?」

 

「……連邦生徒会を脅迫するために『何か』を作っている連中だろうから。結構裏では噂になってる話だよ」

 

 連邦生徒会、確かこのキヴォトスにおける統治機構だったかな? 分かりやすく言うならば戦前の合衆国政府のような存在だ。州政府は各自治区の生徒会といった所だろうか。

 ふむ、そんな噂が流れてたとはね。これはもうちょっとしっかり聞くべきかもしれない。戦利品を物色する手を止めてカヨコの方へと視線を向けなおす。

 

「その『何か』については私は分からない。でも、昨日クリエが運んでいたのは彼らが『ケーキ』と呼んでいる代物だったらしい」

 

「ケーキ、ねぇ。何かの暗喩かな?」

 

 一瞬、脳裏にケーキという単語から嫌な予感がよぎったが、それをかき消す。

 この世界に転生してまで『アレ』と関わることになると想像はしたくなかった。

 

「連邦生徒会も今回の案件には本腰を入れて調査しているようだから、結構な大ごとになりそうだよ。一応気を付けてね」

 

「まぁ、一応留意しておくよ。戦利品の回収も終わったし、そろそろご飯でも食べに行こうか?」

 

「くふふ~♪ ムツキちゃんステーキ食べたいな~」「えへへ……ここ最近パンの耳生活でしたからね……昨日も賞味期限切れ寸前の牛乳に浸したパンの耳でしたし」

 

 もしかしたらこの子たちはかなり苦しい食生活をしているのかもしれない。というか子どもなんだからもっとしっかり食べろ。

 裏社会で生きてるんだからそれなりに稼いでるはずだとは思うんだけどね、食べる物に困るほど困窮してるって事は依頼の成功率は高くないのだろうか? いやでも腕が立つのだからそんな事は無いか。

 となると別の理由でもあるのかな?

 

「ふ、ふふ……。きょ、今日は便利屋68の社長たる私が皆にご馳走するわよっ!」

 

 気前よく振舞おうとしてるのだろうけど、かなり懐事情が悪いのは皆の様子を見てれば分かる。彼女の面子を立てつつここは私が出したいな。私が出す、と無理に言ってもどうやら見栄っ張りな彼女は納得しないだろうし。

 

「んー……社長だったんだね。君が」

 

「そうっ! キヴォトスに悪名を響かせることになるアウトローにして便利屋68の社長! 陸八魔アルよっ!」

 

「じゃ、今日はアルとのコネを作るためにご馳走させて欲しい。悪名高き君とのコネがあれば私も今後仕事がやりやすくなるかもしれないからね」

 

「ふ、ふふ……♪ そうでしょうっ! 私とのコネを作られる事を光栄に思ってもいいのよっ」

 

 こいつチョロいな、裏社会で長生きできるのか他人事なのか心配になってきた。

 

「……ありがと、クリエ」

 

「ふふ、何の事かな? カヨコ。私は君達とコネを作るのが目的なのさ」

 

 これは半分本音。彼女達は強い。だからこそ将来の事を見据えてここでコネを作っておくのは私としても悪くはない筈だ。残りの半分は昨日やり過ぎたかもしれないお詫び。流石に列車の上から投げ落とすのはちょっとやり過ぎたかもしれないしね。

 

 武器を奪われる事になった不良たちについて悪いと思わないのかって? まぁ賃貸マンション不法占拠するような連中だろうし殴られた挙句武器を奪われるのは覚悟の上だろう、多分。

 

「じゃ、今日はステーキをご馳走するよ。懐も潤ってるしね」

 

「わぁい、ステーキ!」「久々に肉が食べられるわねっ、皆!」「お肉……! もう10日も食べてない気がしますっ」

 

 わいわいきゃっきゃっとはしゃぐ彼女達の姿を見て私も思わず笑みを浮かべてしまうのだった。。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 ステーキハウスで彼女達にご馳走した後に帰路に着いてると、メールの着信音が鳴った。内容はとある施設の護衛。依頼人は先日の運び屋としてこちらを雇った人型ロボ。

 少し思案、思案した後に断りのメールを送ることにした。カヨコ曰く今回の案件はヤバいらしい。そして私はこれ以上ヤバい事には首を突っ込むのはごめんだ。

 

 暫くして再び着信音。残念です、の一言だけ送られてきた。これで大人しく諦めてくれると良いんだけどね。

 

 そんな事を考えながら家のある方角を見て見る。

 

 私の自宅の周辺にヘルメットを被ったゴロツキが集まり始める。彼女達の手に握られているのは火炎瓶……。

 

 そして燃え盛る火炎瓶を私の自宅に投げ入れ始めた。

 

「いや冷静に分析してる場合じゃないな、ふざけんじゃないあいつ等ぶちのめしてやるっ」

 

 地面を蹴って一気に加速、オールアメリカンを構えて安全装置を解除。走りながら二投目を放とうとしたヘルメット団の胸部に一発叩き込んでノックアウト。

 

「ちっ、思った以上に帰ってくるのが早かったな!」「ずらかるぞ! 私達の仕事はここまでだ!」「撤収、撤収!」

 

 私が駆け寄ってくるのを確認すると、火炎瓶を投げ入れていたヘルメットを被っているガラの悪い不良たちは蜘蛛の子を散らすように退散し始めていく。いやふざけんじゃないっ、私の家を燃やしやがって!

 

「くっそっ、せめてこの世界に持ってきたものだけは回収しないとっ」

 

 家を燃やされる理由は……やばい、思い当たる節が多すぎて分からない! 戦利品として回収していた武器が入ったバッグを地面に落として燃え始めた自宅の中へと飛び込んでいく。

 彼女達の口ぶりから察するに、誰かからの依頼を受けていたようだけど……私の家を燃やすように指示したやつは必ず報復してやる、許さねぇ。

 

 2階の寝室に駆け上がって、干してあったステルススーツMK2を回収。そこら辺に落ちてあったバッグの中に押し込んでいきながら、ベッドの後ろに張り付けるように隠しておいたアタッシュケースも回収。

 後は銃が並べられているガンケースの中から思い入れのある武器を優先して回収してバッグの中に押し込んでいく。

 廃墟である以上、消火装置などまともに機能してない。なので消火活動を行うのは困難だろう。さっさと必要なものだけ回収して逃げるとしよう。

 

 さらば売る予定だった整備済みの武器、さらば大量の弾薬、さらば食料。

 窓を蹴破って外へと飛び出す、既に火の手は2階まで回り始めていた。火に巻かれる直前で脱出して、地面に着地。物資を運べるだけ持ち出したせいで重くなっていたためか着地すると同時に脚に強烈な衝撃が走って痛む。

 

「……燃えてる、私の自宅が」

 

 寝室のすぐ近くに置かれていた弾薬に引火したらしく、盛大な爆発音を響かせて部屋が吹き飛んでいく。1か月かけて築き上げたものの大半が吹き飛ぶ音。

 私の築いたもので作られる花火を見上げる私の目はきっと死んだ魚のような目をしていた事だろう。

 

「……今日の夜どうしようかな……」

 

 幸いなことに物資と金は持ち出せたが、今日の寝床は失ってしまった。

 

 こんな事をした連中にすぐにでも復讐したいのは山々なのだが、まずは体を休める必要があるだろう。そしてそんな時に便利なものが一つある。

 

 便利屋の子達に作ったコネだ。このコネを活かす場面がやってきたと言って良いだろう。

 

 結局、私は夜を便利屋のテントの中で過ごすことになり、アルたちと雑魚寝しながら夜を明かすことになるのだった。




続きはもしかしたら需要があったら書くと思います。
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