学園都市のウェイストランダー   作:らいらいてー

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暫くは忙しいので不定期更新となると思います。


第三話 速報:運屋クリエ氏逮捕

「おいおい、もっと必死に逃げないとダメじゃないか」

 

 ザイオンでの仕事を終えた際に包帯の男から貰った拳銃を片手で握りしめて背中を向けて逃げ出そうとしている赤いヘルメットを被った少女の背中を撃つ。容赦はしないしできない。私の家(ブラックマーケットの廃墟)を焼くように指示を出した黒幕がいるならば聞きださないといけないからね。

 空薬莢が地面へと落ちるよりも先に45口径弾が相手の背中に直撃し激痛に悶える彼女は床へ倒れ伏した。駆け寄ってその胴体を踏みつけていきつつ彼女を見下ろす。

 

「ひっ……!」

 

「この銃中々イカしてるだろう? 私のお気に入りの銃なんだ。『闇に輝く光』って名前でね。危険な場所に向かう時はこれを懐に隠していたものだよ。50人はこれで殺したかな」

 

「な、何を言って……」

 

「51人目を君にしようかなと思ってね」

 

「ひっ……! な、何でもするから殺すのだけはやめてくれ……! まだ死にたくない……!」

 

 それにキヴォトスの住民は人を容易に殺しうる武器を持っている人が多い割には自分が殺される事はあまり考えてない気がする。銃を突きつけたのだったら殺される覚悟ぐらいは持ってるかなと思ってたんだけど。そこまで考えが行ってないのか、あるいは銃なんて豆鉄砲でしかないのか。まぁどちらなのかは分からないが彼女にはケジメ付けさせるとしよう。

 ブラックマーケットガードのサーバーをハッキングして監視カメラの情報を確認した所、私の家を焼いた連中の指揮を執っていたのはこいつで間違いないはずだ。彼女の使っている銃の銃身に刻まれたペイントが決め手だった。……ヘルメット被って正体を隠そうとしてるなら身元が特定されそうな情報は出来る限り減らすべきなのにそこまで考えが回らなかったのかな?

 

「言いなよ、君の雇い主。誰から雇われて私の家を焼いた。君は特に私に恨みは無いはずだろう?」

 

 正面から彼女へと覆いかぶさり、喉に銃口を押し付けていきつつ、引き金に指をかける。死なないかもしれないだろうが撃たれたら痛いだろう。ホローポイント弾装填してるし。

 

「シラード! シラード社だ! あいつらから雇われてアンタを襲撃するように指示されたんだよ! 敵対組織に雇われたら厄介なので拠点焼いて暫く行動できないようにしろって!」

 

「シラード社……? 前に私に荷物を運ばせた連中か」

 

 便利屋の妨害が入りつつも何とか達成した依頼、その依頼人が私の家を焼いた張本人か。許さんぞ。まぁ私の能力を高く評価してくれてるのは嬉しいけど、それはそれとして奴らに報いを受けさせてやる。

 

「次シラード社の連中に会ったらこう伝えておいてね。私の溜め込んだ換金用の武器や弾薬分殴るって」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「と、いう訳で拠点の仇を取るために君達を雇いたいんだけど構わないかい?」

 

「構わないけどお金はあるのかしら? 流石に無報酬では動けないわよ」

 

 こちらの事情を聞きながらテントにちょこんと座っているアルがこちらにジト目を向けてくる。まぁ家が無い上に彼女達の家に身を寄せることになってしまったけどそこは問題なし。

 

「あるよ、ほら」

 

 拠点が炎に包み込まれる前に持ち出したアタッシュケースの中札束を取り出す。この世界ではまだ紙幣経済は崩壊してない為十分な価値を持っているだろう。大体100万円ぐらいだ。

 

「えっ、こんなにくれるの???」

 

「それは前金だよ。依頼を達成してくれたら追加で300万円支払おう」

 

 私の言葉を聞いて彼女はあんぐりと口を開けた後に、こほんと一つ咳払い。

 

「というかお金持ってるならホテルとか取ればよかったんじゃない……?」

 

「学籍があるならそれでいいかもしれないね、セキュリティが整ったホテルも学籍があるならば宿泊できるだろうし。でも私はまぁほら、学籍が無い人間だからさ。学籍が無い子が寝れる宿のセキュリティなんてないに等しいからね」

 

 実際学籍があったのなら便利屋の子達に厄介になることは無かったんだけどね。まぁ文字通りの流れ者だから学籍ないのは仕方ないんだけど何時か何とかしたいな本当。

 

「ねぇ、クリエ。シラード社とやりあうの? まぁ私も協力するのはいいけど……ロクな噂は聞かないよ? 連邦生徒会にさえも敵対する事を辞さない連中だしね」

 

「『何か』を作って連邦生徒会を脅迫するつもりだって話だったね。でも大丈夫、どこから攻めるべきかある程度考えてるからね」

 

「何~? いきなり敵の本拠地に殴り込むの? クフフ、派手な戦いになりそうだね~」

 

「そうしたいのは山々なんだけど、連中が本社を置いてる場所を調べてみたら既に廃墟になってた。多分本拠地は別の場所に移してるんだろうね」

 

「早速行き詰ってませんか……?」

 

 ハルカの懸念はご尤もだけど、私のハッキングスキルは伊達じゃない。これで何度も危機的な状況を脱してきたからね。

 

「大丈夫、敵の本拠地の場所は分からなかったけど、シラード社が所有している怪しい拠点は見つけておいたよ。そこに殴り込んで情報を集めていきたいと思うんだけど構わないかな?」

 

「ふふん、……この便利屋68に任せなさいっ! 依頼も達成してこのテント暮らしから卒業してやるわっ!」

 

 と、胸を張ってキメ顔をしている彼女であったが、くぅ、と可愛らしい音が響く。どうやら彼女の腹の虫が鳴いてしまったようだ。

 

「……まずは前金で昼食でも食べてくるといいよ、うん」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 シラード社の拠点の1つは治安の悪そうなとある学区の中にあった。一見すれば人気のない廃工場のように見えるが、工場の外周を雇われと思われるヘルメットを被った連中が守っている。ご苦労な事だ。数は40人ぐらいはいるんじゃないだろうか。

 更に重機関銃も高所に設置している。いくらキヴォトスの住民が頑丈と言えどもブローニングM2で撃たれたらただでは済まないんじゃないだろうか。

 

 まずはアレの排除を最優先にした方が良さそうだな。

 

「こちらが先行してあの重機関銃を排除してくるから、皆は排除を確認したら突入してきてね。排除したら合図を出すし」

 

「ん、1人で大丈夫なの~?」

 

「問題ないよ。私は1人じゃないからね」

 

 クエスチョンマークを浮かべているムツキを横目に路地裏に入り、屈んでスニーキングを開始する。それと同時に骨伝導によって身に着けている『彼女』が語りかけてきた。

 

『ふふ♪ 私の事忘れちゃったのかなーって思っちゃったよ♪ こっちの世界でもたくさん冒険しようね?』

 

「温存してたんだよ、君に傷ついて欲しくなかったからね」

 

『えへへ、過保護だな~。でも工場を守ってる雑魚たち相手に遅れは取らないよ? パパっとスニーキングして始末していこうねっ』

 

 ステルススーツmk2。何度も死線を潜り抜けてきた私が愛用した防具。その名の通り隠密任務に適しているだけではなく防具としての性能も非常に高性能だ。そして何よりAIが搭載されていておしゃべりさんだ。彼女のお陰で様々な場所を冒険しても寂しく感じることは無かった。

 

 お茶目な所はあるが彼女の性能と私の強敵から逃げるために鍛えたスニーキング能力は本物だ、音を一切立てることもなくターゲットが配置されている監視塔へと近づいていく。

 

 監視塔の内部には機関銃手とその護衛と思わしきヘルメットを被った不良が2人。

 

「ちっ、あいつら私たちの事をやっすい給料でこき使いやがって……」「仕方ないよ私たちお金無いんだし、仕事があるだけマシだと思うよ」

 

 監視塔のドア、そのドアノブへと手をかけていって僅かな音を響かせていきながら開いて一気に飛び込む。

 

「これじゃあ暫くはパンの耳せいか……ぐふ!?」

 

 サブマシンガンを持っている護衛の背中に膝蹴りを一発食らわせる。膝蹴りを食らった護衛は壁へと思いっきり叩きつけられて、その衝撃で意識を失ってしまったようでぐったりと倒れ伏した。

 

「な、てきしゅ……んぐぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

 もう1人がこちらに視線を向けてこようとしたが遅い。鳩尾に拳を一発。苦しそうな悲鳴を漏らしながら護衛と共に床に転がっていく。

 

「排除完了、と。……ふむ、この重機関銃は有効活用させて貰おうかな?」

 

 合図代わりに監視塔の窓からフレアガンを握った腕を突き出して空めがけてフレアを打ち上げる。工場周辺を護衛している連中もざわつき始めているが、ここからは楽しいパーティの始まりだ。

 

 結論から言えば監視塔に設置された重機関銃を鹵獲した私と便利屋の挟撃を受けて不良たちは蹴散らされた。まぁ遅れは取らないよね。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 廃工場の内部にも防衛設備が存在していたけど、表ほど厳重では無かったため片づけることは容易だった。で、肝心の施設の内部はと言うと……。

 

「なにこれ? 水が入ったタンクが大量にあるんだけど」「こっちには見れミレニアム製の研究器具があるよ~ えー、なになに? 重水製造用設備? 重水ってなーに?」「……基本的に核関連でしか使わないものじゃない?」「原子力発電でもするつもりだったんでしょうか?」

 

 まさかの重水製造施設だった。無駄に施設がデカいなと思ったけどこんなもの作ってるとは驚き だ。連中は確か、連邦生徒会を脅すつもりで何かを開発しようとしてるって言う話だったね。……。

 

 まさかの核テロリストなのか……? だとするならば思った以上にヤバい事に首を突っ込んだかもしれない。

 

 近くに存在する端末をハッキング。それなりにセキュリティは強固だったけどこの程度ならば私の敵じゃない。突破して中身を拝見。

 内容を要約するとここで精製した重水は既にゲヘナ学区内のシラード社研究施設に運び込まれたとのことだ。無駄に広範囲に勢力を展開しやがって許さんぞ。本拠地の情報が厳重に秘匿されてる事から察するに彼等にとって一番重要な施設もそこにあると見て良いだろう。

 

「核テロリストとはたまげたなぁ……。いや、本当に……まさかここに来てからも核と関わる事になるとは」

 

「核と深いかかわりがあるって貴女何者なのよ……」

 

「それはもう本当に深い関りがあるよ。ここで語れば長くなるから割愛するけどね」

 

 アルが胡乱な目でこちらを見て来るけど本当に深い関りがあるんだ。ザ・ディバイドでの一件とか物凄く揉めたしね。いやまぁアレは私が悪いと言えば悪いんだけど。核兵器なんてものはない方がいいよ、本当に。

 

 核の爆心地を何度も見てきた私からすればマジで無くなった方がいいとは思うけど、シラード社の連中は核の事を凄い爆弾ぐらいにしか思ってないんじゃないのか?

 

「ともかく……次の目的地は決まったね、ゲヘナ学区――」

 

 と、言いかけたところでパトカーのサイレンが外から聞こえてきた。ヴァルキューレの犬どもが動き始めたらしい。サイレンの音のけたたましさから察するにかなりの規模とみて良いだろう。1個中隊はここに送られてきてそうだ。

 

 周囲を確認。荒された施設の内部! なぎ倒された防衛兵器の数々! 倒された不良たちによって死屍累々となった外!

 

「あ、これ言い逃れできないやつだね。どうすっかな」

 

「ど、どうするも何もないわよ!? 逃げましょう!?」「これ捕まったら間違いなく矯正局送りだよね!?」「あわわっ!? 私は社長たちと一緒なら矯正局でもいいですけど……」「私は嫌だよ、まだ捕まりたくないし」

 

 うーん、便利屋の子達が逮捕されるのはまずいな。私1人ならばピッキングスキルにも自信があるから逃げられるだろうし……となるとここは彼女達に貸しを作っといた方がいいかな?

 

 巻き込んでしまった以上負い目もあるしね。

 

「……よし、ここは私が囮になろう。私が表で暴れて注目を集めてる間に皆は逃げて」

 

 アルが何か言いたそうにしていたけど、彼女の方は振り返らずにオールアメリカンを構えて工場の外めがけて駆け出していく。時間を稼ぐ事を最優先にしよう。

 

 外に出ると、既にパトカーが何台も止まっていた。防爆装備でガチガチに固めた重装歩兵がいるのも確認できるあたり相手の本気っぷりが分かる。その本気の何割かを普段の勤務に発揮して欲しいものだ。

 

「あー……既に君達は包囲されている。大人しく投降した方がいいよ? 君達シラード社に雇われた不良の子たちでしょ?」

 

 ふむ、てっきりどこぞの誰かが施設内部に不法侵入した事を通報したのかなと思ったけど、彼女達の目的もシラード社だったみたいだね。とは言え中の様子を見られたら不法侵入に加えて器物破損をやらかしてるのはバレるだろうし、ここは便利屋の子達ができる限り遠くへ逃げられるように弁舌スキルを発揮するとしよう。

 

「あの~まず聞きたいんですけど不良って私のどこを見て判断して言ったんですか? 失礼じゃないです?」

 

「ああん? 得体のしれない会社に雇われて武力提供してる時点で不良と言うしかないだろ、矯正局にぶち込むぞ」

 

 くく……酷い言いようだな、まぁ事実だったから仕方ないけど。

 

「では1つ訂正させてほしい。まず1つ目、私は今回はシラード社に雇われてない」

 

「じゃあお前なんでこの工場にいるんだよ」

 

「話せば長くなるよ? 元々私はシラード社に雇われて彼らの荷物を運ぶ仕事に従事していた。でも彼らは私が敵対勢力に雇われる事を嫌がって住んでいた拠点に不良を使って火を放ち傭兵として活動できなくなるように仕向けた。その報復として私は1人でこの場所にお邪魔して彼らの情報を探ろうとした訳だ」

 

 嘘のコツは話の中に真実を混ぜる事。実際は便利屋の子たちを雇ったんだけどこの話を素直に信じてくれるなら私は1人でここにやってきたように彼女は感じるだろう。

 

「お、おう……住んでた場所が焼かれるとは災難だったな……。でもお前結局根無し草じゃねーか。どこの学校に所属してるんだよ」

 

「まずその話をする前にこのキヴォトスにおける学籍制度の欠点について話したいと思うよ、長くなるけど傾聴してくれるかな? そもそも学籍制度とは――」

 

 本題から外れた話題を交えながら十数分ほどヴァルキューレの連中の注目を集め続けることに成功した。お陰で便利屋の子達も逃げられた、と信じよう。私が結局器物破損と不法侵入によって逮捕されてパトカーに乗せられるときに便利屋の子たちは見える範囲にはいなかったからね。

 

 留置所で夕食として頂いたカツ丼は美味であったことはここに追記しておきたい。




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