奇跡の魔法は何も起こさない   作:葉洩 陽透

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詰みと思った瞬間が本番だ

セイア:先攻・ターン8

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』

シールド:5

マナ:7

手札:5

 

ククイ:後攻・ターン9

場:『幼い天使ギメル』『熾天使ラファエル』『天使コクマー』『熾天使ミカエル』『天使ビナー』『熾天使ガブリエル』

シールド:0

マナ:10

手札:0

〔神聖礼拝〕:91

 

 詰み。その言葉を連想する。

 

 ミカエルでアタックできないし、ラファエルでマナは消費した端から回復するし、スキル【神秘の天体観測】でマナ上限がないし、しまいにはまだまだ〔神聖礼拝〕が増えていっている。バトルエリアには6体ものコンテナカード。次のターン、アタックされれば一瞬で終わる。シールド5枚破壊とダイレクトアタックされる。

 これで勝てると思うやつの方が少ないだろう。いま現時点で俺が生きている方が不思議だ。生かされていると言ってもいい。なぜ、ククイちゃんはアタックしないのか、いまだに不明だ。

 何にしろ俺のターンである。

 

「俺のターン、ドロー」

 

セイア:先攻・ターン8→9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』

シールド:5

マナ:7

手札:5→6

 

 シールドが5枚あって、相手はシールドが0枚で、なぜ勝てないのかわからない。

 この状況を打破できるカードは何がある?

 おそらくない。すくなくとも俺のデッキには心当たりがあるカードが数枚入っているが、どうしようもないくらい、引ける確率が低い。そして、勘も告げている。このターンでは引けない、と。

 それでも、どうにかする方法がこのターンで実現できなくとも、対処する方法はある。備える方法はある。ただ、手札にないだけ。

 

 なら引き寄せるだけだ。

 

「スキル【冥府の死霊占い】のターン開始時効果により、墓地から『魔術師の鷹』をセット」

 

 鷹が飛び立った。ゆうゆうと空に輪を描く。

 

セイア:先攻・ターン8→9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』→『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』

シールド:5

マナ:7

手札:6

 

『魔術師の鷹』

分類:コンテナカード

属性:魔

性質:鳥類

コスト:1

スキル:【速攻】→【速攻】(【ガード】)

 

 これ自体は意味がない。しかし、スキルをセットするために必要なのだ。

 

「『血の魔法』を『魔術師の鷹』にセット!」

 

セイア:先攻・ターン9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』

シールド:5

マナ:7→4(7)

手札:6→5→10

 

『血の魔法』

分類:スキルカード

属性:魔

性質:魔法

コスト:3

スキル:【血の魔法】

 

『魔術師の鷹』

分類:コンテナカード

属性:魔

性質:鳥類

コスト:1

スキル:【速攻】(【ガード】)→【速攻】(【ガード】)【血の魔法】

 

【血の魔法】

トリガー:[このスキルがバトルエリアにセットされた時]

効果:〈5枚ドローする。ターン終了時、自分の手札を5枚捨てる〉

 

 10枚のカードを凝視する。これではない。引いた中に、この場を直接凌げるカードはない。

 だが、まだまだ引き寄せるすべがある!

 

「『アヴァロンの林檎の園』を『魔術師の鷹』にセット!」

 

セイア:先攻・ターン9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』

シールド:5

マナ:4(7)→0(7)

手札:10→9

 

『アヴァロンの林檎の園』

分類:スキルカード

属性:魔

性質:庭園

コスト:4

スキル:【アヴァロンの林檎の園】

 

『魔術師の鷹』

分類:コンテナカード

属性:魔

性質:鳥類

コスト:1

スキル:【速攻】(【ガード】)【血の魔法】→【速攻】(【ガード】)【血の魔法】【アヴァロンの林檎の園】

 

【アヴァロンの林檎の園】

トリガー:[このスキルがバトルエリアにセットされた時]

効果:〈1枚ドロー後、そのカードがコンテナカードだった場合、マナ消費なくそのカードをバトルエリアにセットできる〉

 

 はいせーの! らんだむ~らんだむ~

 ここであのカードが出なければ、状況は改善しない。とはいえ、意味がない可能性の方が高いと勘は告げている。それでもアタックされ始めたら終わるのは事実。ここで引け! 当たれ! ドローガチャSSR引き当てろ!?

 

「ドロー!」

 

 はたして、カードはあのカードか。そうでないのか。……

 ドローカードを見る。

 

 どうやら、……当たりが引けたようだ。

 

「刮目せよ! 魔術の王! セット! 『魔王ルシフェル』!」

 

 どうでもよいが、「刮目せよ! 魔術の王!」は言わなくてもよい。ただノリと勢いでだけで言っている。他の人はどうかしらないが。

 

セイア:先攻・ターン9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』→『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』『魔王ルシフェル』

シールド:5

マナ:0(7)

手札:10

 

『魔王ルシフェル』

分類:コンテナカード

属性:魔

性質:天使

コスト:10

スキル:【光を掲げるもの】【堕天せし明けの明星】→【光を掲げるもの】【堕天せし明けの明星】(【ガード】)

 

【光を掲げるもの】

トリガー:[このスキルがバトルエリアにセットされている時]

効果:〈このカードはスキル効果で破壊されない〉

 

【堕天せし明けの明星】

トリガー:[このスキルがバトルエリアにセットされている時]

効果:〈属性・魔以外のカードはアタックできない〉

 

 漆黒の翼。何対もあるそれを大きく広げ、美少年か美少女か分からない中性的な顔。強者の面構え。

 このカードのスキル【堕天せし明けの明星】は属性・魔以外のカードの攻撃権をなくすスキル。これで両者ともに何もできなくなった。まぁ、ククイちゃんのデッキに属性・魔が入っているかもしれないが、その可能性は低いだろう。ここまで属性・聖のデッキで戦ってきたのだ。そもそもミカエルで属性・聖以外アタックできないのだから。

 

「ターン、エンドだ!」

 

セイア:先攻・ターン9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』『魔王ルシフェル』

シールド:5

マナ:0(7)→7

手札:9→4

 

 よく見ると、ククイちゃんは肩で息をしていた。疲れているのだろう。しかたない。ここまで長いゲームはあまりない。俺も経験がない。

 それでもやり切る。

 

 そして、俺の勘が告げている。

 

「……来たよ」

「……」

「宣言するよ。後、2ターンで終わる。………………おそらく」

 

 勝つか負けるかは一切不明。はっきりと終わると断言できない。しかし、もうじき終わる。そう確信できる。

 

セイア:先攻・ターン9

場:『魔女キルケー』『アイアイエー島』『魔術師の鷹』『魔王ルシフェル』

シールド:5

マナ:7

手札:4

 

ククイ:後攻・ターン9

場:『幼い天使ギメル』『熾天使ラファエル』『天使コクマー』『熾天使ミカエル』『天使ビナー』『熾天使ガブリエル』

シールド:0

マナ:10

手札:0

〔神聖礼拝〕:91

 

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