「童子切安綱 剥落、ゲットだぜ!」
襖を開けるや否や、沙央は歓声を上げた。
「おめでとう」と、近侍のにっかり青江。
「みんな、お疲れさーん!」
「それで、肝心の童子切安綱は?」
へし切長谷部が尋ねる。
「なんか記憶あんまりないっぽくてぇ。つついたり摘まんだりしても、反応薄いんだよね。だから、別室に置いて来た」
「まあ、突然こんな大人数に迎えられても困るかもね」
「うん。というワケで、お前たちは居間で待機ね~。休んでな」
「分かったよ」
「じゃ、また後で」
審神者は、童子切のいる部屋へ向かった。
「お待たせ!」
「……ああ」
「私の通称は、沙央。35歳。性別は決まってない。というか、よく分からんね」
「分からない……?」
「お前と少し同じだな」
口端を吊り上げ、ギザギザの歯を覗かせる審神者。
「自分が何者か分からないのは、怖いことだ。それでも、今からお前は、金砂城の童子切だ。俺と一緒に目一杯遊ぶわよ!」
「ふむ。わたしは、何をすれば?」
「楽しい思い出を、積んで積んで積みまくるんだ!」
「歴史を守るのでは?」
「それもやる!」
沙央は、手を差し出した。
「これから、よろしくな、童子切」
「……よろしく頼む」
童子切は、そっと審神者の手を取る。
「とりあえず、TRPGでも……と言いたいところだけど、結構難しいからな。まずは、双六だな!」
童子切と手を繋いだ状態で、沙央は居間に向かった。
「おーい! 双六したい奴、集まって~! 娯楽室行くぞ!」
「はい!」
「はーい」
「やりたいです」
短刀が中心に返事をし、共に娯楽室へと進む。
そして、ひとつの双六を箱から出して広げた。
「お化け屋敷双六ね。サイコロ振ってりゃ出来るから」
それから、沙央たちは思う存分遊ぶ。笑い声を上げながら。
童子切は、その様子を見て不思議に思った。
この本丸は、戦と遊びが地続きで、その温度があまり変わらないようで。
「出目が悪い~!?」
沙央は、1ばかり出している。
ちなみに沙央は、TRPGではクリティカルかファンブルばかり出す。
「主、百鬼夜行で使った小判は、どう補填すると?」
「それなんで今言ったの?!」
博多藤四郎の質問に、質問で返す審神者。
「毎日、パチしてりゃあ何とかなるって!」
「賭け事は、負けるばい」
「大阪城に潜れる時まで待っててもらえます?」
沙央は、両手をパンっと合わせて頼み込んだ。
「仕方なかね」
腕組みをして、溜め息をつく博多。
そのやり取りを見て、童子切は、かすかに笑った。
彼の表情を見た者はいない。