金砂城の審神者たち   作:スナエ

5 / 12
夏の夜空に

 夕方。金砂城に沙央の声が響いた。

 

「博多ァ! なんか百鬼夜行前より小判増えたぞ!」

「……百鬼夜行の戦果の報酬と、遠征での小判回収と、花火玉回収の報酬が出とるばい」

「いつの間に、そんな稼いだん?!」

「主、ちゃんと金銭の勘定はした方がよかとよ。開け忘れてた小判入れもたくさんあったばい」

「ごめん! でも、金勘定は、お前の役目だから! 俺は数字に弱い!」

「はぁ、仕方なかね」

 

 収支がプラスになったのなら、博多藤四郎に怒られることもないだろう。

 沙央は、「やったー!」と喜んでいる。

 

「それに、近いうちに大阪城へも行けるらしいぞ!」

「俺の出番ばい!」

「地下100階を目指すわよ!」

 

 ふたりは、「おー!」と拳を天に突き上げた。

 それからも、審神者は花火玉を回収させ続ける。

 そして、燭台切光忠が修業に出たいと申し出てきたのだが。

 

「ダメです。お前は、私に真剣必殺を見せてくれてないので」

「ええ……?」

「お前たちの色々な様子を記録するのが、俺の趣味なんでな」

 

 燭台切は、いまいち納得のいかない顔をして沙央の前から去った。

 

『主、疲労が溜まってるみたいだよ』

 

 端末から、第一部隊の隊長のにっかり青江の声。

 

「本丸に帰城!」

 

 少しして、部隊が帰還した。

 

「おかえり。お疲れ!」

「ただいま」

 

 沙央が確認したところ、へし切長谷部が疲労しているらしい。

 

「長谷部~。お疲れさんだ~」

「主……」

 

 主人に両手でわしゃわしゃと撫でられ、長谷部は疲れがとれていく心地がした。

 

「しばらく休憩な。長谷部、ちょっとついて来て」

「はい」

 

 沙央は、長谷部の手を引いて自室へ向かう。

 部屋にふたりきりになり、沙央は長谷部を座らせてから、抱き締めた。

 長谷部は、嬉しそうにしている。

 

「頑張ってくれて、ありがとうな」

「当然のことをしたまでです」

「……お前は、可愛いね」

「主…………」

 

 そっと、沙央を抱き締め返す長谷部。

 数分間、ふたりは無言で、そのままでいた。

 

「眠い」

 

 ぽつりと呟く審神者。

 

「お疲れですね、主?」

「うん。寝るから、ひとりにして」

「かしこまりました。おやすみなさい、主」

 

 体を離して、長谷部は退室した。

 主の部屋を出ると、にっかりと鉢合わせる。

 

「主は眠っている」

「そう。僕も寝ようかな」

「…………」

「主の部屋には入らないよ」

「そうしろ」

 

 そう言うと、長谷部は立ち去った。

 

「やれやれ」

 

 溜め息をつき、にっかりは、今は沙央に添い寝するのはやめることにする。

 沙央が目覚めて、食事をしてからの夜。

 審神者は、にっかりと一緒に打ち上げ花火を見た。

 

「君は、何を願う?」

「不老不死!」

「ふふ。毎年の七夕の時と同じだね」

「一攫千金だったこともあるわ!」

「はいはい」

 

 ふたりは、用意していたかき氷を食べながら談笑を続ける。

 花火の終わりに、にっかり青江は、沙央の同意を得てから、口付けをした。

 花火の夜は、ふたりの宝石になる。思い出は、心の中の宝箱へ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。