連日の花火玉回収で、審神者と第一部隊は疲れていた。
「にっかり~! つーかーれーたー!」
ふたりきりの自室で、沙央は言う。
「よしよし」
抱き付いて来る沙央の頭を撫でるにっかり青江。
「なーんで、花火玉回収なんてやらされてるのーっ?!」
「なんでだろうね」
沙央は、にっかりの肩に頭を乗せた。
「毎日、異去行って、演練して、遠征出して、江戸周回して、データ揃ってない男士の修行希望断って…………」
「お疲れ様だね」
「あ、光世は修行に出せるようになったんだった。ちょっと行って来る」
「ふふ。うん」
了解を得てから、にっかりの頬にキスを落とし、沙央は大典太光世の元へ向かう。
「光世」
「なんだ?」
「ごめん! もう修行に行ってもいいよ!」
「……そうか。行って来る」
旅支度を終えた光世を、審神者が送り出した。
「いってらっしゃい。気を付けて」
「ああ」
その後、沙央は自室へ戻る。
「光世、送り出したよ」
「さて。どんな刀になるかな?」
「どうなったとしても、俺の大切な刀だよ」
「そうだね」
それから。机に向かって小説を書く沙央の側に、にっかりは控えた。
沙央は、端末のスピーカーから、書いている小説のイメージソングを流している。その曲は、暗くて呪いめいた響きで。
時々、「あー」とか「うー」とか唸りながら、審神者は小説を書いた。
「にっかりはさ、心中ってどう思う?」
「うーん。あまりいいことではないけれど、簡単に止められるものでもないかな」
「そうかもな。私は、海で恋人たちを心中させるのがシュミなんだけど、それが幸せかは分からないんだ」
※小説の話です
「そうしたいから、そうするんだけど、心中を選択したのは、物語なのか? 登場人物なのか? 私なのか?」
沙央は、腕を組んで考え込んだ。
「物語は、自由でいいと思うけれど」と、にっかり。
「でもさぁ、お前たちを見てると思うんだ。“物語を紡ぐことの責任”を。最終的には、物語は受け取り手のものだとはいえなぁ」
「……僕たちは、物語で編まれたとも言えるからね」
「俺は、一度きりの人生が寂しいから、物語という嘘をついてる。他の誰でもない、自分のために物語を創ってる。それって、いいことなのかな?」
「君は、そうするしかなかった人だろう? 決して折れない筆を持って生きてきた人だから、そういう君だから、僕は好きになったんだよ」
沙央の前髪で隠された瞳が、にっかり青江を見つめる。
「ありがとう。嬉しい!」
ギザギザの歯を見せて笑う沙央。
にっかりは、主の笑顔が好きだなぁと思った。
金砂城の日々は、過ぎていく。
時は、流れ続ける。物語の終わりへ向かって。