今朝、大典太光世が修行から帰った。
早起きな審神者は、5時には起きている。自室で小説を書いていると、光世が帰って来たので、出迎えた。
「おかえり、光世」
「ああ」
「おっ。朝日が綺麗だぞ」
「そうだな……」
朝の光は、美しい色彩でそこにある。
主に連れ出されなければ、この光景も見ることもなかっただろう。
「あんたは、俺を何処まで連れて行くつもりだ?」
「光世が来たいなら、何処までも」
「……俺をそんなに自由にしていいのか?」
「そりゃあ、もちろん。お前には、意思があるんだから。好きに過ごせばいい。光世のこと、信じてるしな」
沙央は、ニッと笑った。
「……そうか」
「急に俺の話するけど、ガキの頃は病弱だったんだわ。今も、結構体調崩すけどな。光世がいてくれたら、安心だな」
「枕元に置くといい」
「おう! 疲れたろ? ゆっくり休みな~」
一拍置いて。光世は口を開いた。
「少し、あんたの側にいたい」
「オッケー。じゃ、俺の部屋に来てくれ」
「分かった」
沙央の部屋へ行き、机の前で端末を弄るのを、光世は横で見ている。
どうやら、小説を書いているらしい。
「何を書いている?」
「嘘を煮詰めて煎じてる~」
沙央は、軽口を叩いた。
「…………」
「お前がいない間、考えてたんだ。物語を紡ぐことの責任を。私は、物を語る人間だ。死ぬまでそうだ。誰かの光になるような物語を綴りたい。これが、私なりの世界への愛だよ」
「確か、主の人生も一冊の物語だったな」
「うん。俺の物語に関わってくれて、ありがとう」
「礼を言うのは、俺の方だ」
沙央は、ギザギザの歯を見せて笑う。
「私は、お前たちに人生を懸ける。だから光世は、私に刃生を懸けてくれ。損はさせないぞ!」
「ああ、そうしよう。今更、主を疑いはしない」
光世が、わずかに口角を上げた。
それを見た審神者は、前髪で隠れた目を瞬かせる。
心の中に、その表情を切り取って仕舞う。
「そうだ。燭台切が修行したいって言ってたんだった。送り出しに行こう、光世」
「ああ」
ふたりで燭台切光忠を見送る。
「いってらっしゃい。気を付けて」
沙央は、手を大きく振った。
「さて、そろそろ仕事かなぁ」
「俺は、何をする?」
「今日は、お休み。指示出しが終わったら、俺と娯楽室行くぞ!」
その後。大典太光世は、沙央と協力型のボードゲームを遊んだ。
「審神者になってから、遊び相手に困らなくて助かるわねぇ」
「変わってるな、あんたは」
「よく言われる!」
幼い頃は、絵本しか友達がいなかった沙央。
学生時代も読書ばかりしていた沙央。
大人になってからは、学びも遊びも独りではない。