妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「ただいま」
「おかえり? お兄ちゃんどこか行ってたの?」
「ちょっと五層? 四層? 忘れたけどそこにな」
「何かあったっけ? もしかして新しい魚?」
「いや、クエスト。新しいイベントの前に行っておこうかと思って」
「お兄ちゃん高熱??」
「お兄ちゃんは平熱」
そんな事を言うコウヨウにメイプルは驚いた。理由を聞くとこれから始まるイベントに備えて、1つだけ完全クリアしたかったクエストがあったらしい。釣りしかしないコウヨウがクエストに進んでいくのは稀である。
「何のクエスト? もしかして新しい刀のクエストかな? でも……それならカスミと行ったらいいのに……」
「いや、多分俺とメイプルくらいしか周回出来ないぞ……あ、メイプルも誘えばよかった」
「えぇ……じゃあ私も行きたかったなぁ……」
「今度行こうぜ、割と簡単だから」
そう軽く言うコウヨウだが、彼の行くクエストは並のプレイヤーでは絶対攻略不可能クエストである。それを割と簡単だと言うこの男とそれに付いていきたかったと言う妹は変人である。
「やっほー兄さん。メイプル」
「「カナデ」」
ギルドホームでメイプル達が会話していると、カナデがログインした。それを見た彼らは2人で名を呼びながら、メイプルはカナデに飛びつきながら歓迎する。
「よぉ、カナデ。俺はどこか行った方が良いか?」
「いや……気を遣わなくても……良いよね?」
「うん、お兄ちゃんの攻略したクエスト話も聞きたいしね!」
「コウヨウまた僕達を置いて高みに辿り着いたの?」
「随分と詩的な文章だが、そんなつもりはないぞ」
そう言ってコウヨウはとりあえずクエスト内容を伝える事にした。
「メイプルと俺が間違って入った鬼のクエストあるだろ? あれ周回して来ただけだ」
「なんだ、あそこのクエストかぁ……」
「因みに……何回??」
「10回。【百鬼夜行】はレベルMAX……Ⅹだぞ」
メイプルは素直に凄いと誉めるが、カナデは目を点にしてコウヨウを見ていた。あの最強鬼を10回も倒したのか。しかもソロで。そんな感想が詰まった目である。
「何回か1回死んだけどわらしが助けてくれた」
「私の命何度もあげたー」
「それ……この前言ってたわらしのスキル??」
「え? カナデ何それ?」
「1回死んでも、テイムモンスターが死んでしまう代わりに俺が生きるスキル。これカナデとメイプルにしか言ってないから内緒な」
「実質ただのコンティニューだよねそれ!?」
「コウヨウは2回倒さないといけないわけだね」
「実際は日を跨げば何度も行けるんだぞー」
クロムの死神スキルの完全上位互換である。100%それが起こるので要は1日でコウヨウを2回殺さないといけないのであるが、わらしが出てきて説明をしてくれた。流石のメイプルも只事ではないことがわかった。
「マスターのためなら死んでも良いわよー」
「そんなこと言われちまったら簡単に死ねねぇな」
「もはやコウヨウ自身が【名状しがたい何か】になってない?」
「それに意外とお兄ちゃんって……結構女の子誑かしてない?」
「してないけど? サリーとしか結婚したくないけど」
「ミィとわらしちゃんとサリーとユイとマイ」
「あの火遊び少女は知らない。俺は結婚して白峯紅葉になる……あ、これゲームで言っちゃダメか」
「いや、僕達しかいないから今だけは大丈夫」
「いや待って!? お兄ちゃんがサリーに嫁ぐの!?」
「だってカッコいいじゃん白峯なんて」
「やっほーメイプル……ってカナデとコウヨウ? どうしたの??」
「サリー、結婚したら俺にお前の苗字くれ」
「何があったの!?」
かくかくしかじかとコンティニュー以外を伝えたコウヨウだが、そんな事よりあの鬼を10回も倒した事にサリーは呆れ返るのであった。
☆
「初めましてですね、ペインさん」
「恐らくだが……この格好の事を言っているのか?」
「ええ、私服……のような装備なんて珍しい」
「こういったお店で堅苦しい格好はな。コウヨウはそのままなのか」
「まぁ、これか、レリフルかしかないので」
「ギルドメンバーから新調してもらったらどうだ? 店でもあるだろう?」
「身長低いのでサイズが合わなくて」
「装備にサイズなんであるんだな」
服よりも釣りのコウヨウがNWOのスイーツショップで出会ったのは【集う聖剣】所属兼コウヨウを除けばNWO名実共に最強プレイヤーであるペイン。いつものような聖騎士装備ではなく、ジーパンに青いシャツなどのコーディネートをしたラフな装備……というか私服のような格好であった。
ペインがこのような装備をするのは珍しい事をコウヨウは伝えたが、彼だって甘いものも食べるし服だって多少こだわりはあると答えた。
「恋人と一緒ではないのか?」
「サリーはメイプルと現実世界で勉強中です。その間に俺はサリー達のために美味しい店をこうしてリサーチ中です」
「なるほどな」
コウヨウの言葉に頷くと、相席良いかと許可を得て彼と向かい合わせで座る。そうして、スイーツを好きなだけ頼みながら普通に食べる。
「ペインさんめっちゃ食べますね」
「コウヨウだってかなり注文しているが」
「まぁ、甘いものは好きです」
「俺もだ、まさか最強の二刀流が甘党とはな」
「妹と幼馴染にケーキとか作ってあげてたら甘党になっただけです」
「俺は元々食べるからな。甘い物は好きだ」
その後、男2人でスイーツを食べているという情報と、その両方がトッププレイヤーであったという情報が交差して、このスイーツ店は大行列が出来たため、サリーとのデートは別の店になってしまったのだった。
☆
「クロム!! 聞いてくれ!」
「どうしたカスミ、やけに嬉しそうだな?」
いつにも無く上機嫌のカスミに対してクロムが何かあったのかと聞くと、信じられない言葉が返って来た。
──ついにコウヨウの刀を弾き飛ばしたぞ!!
「はぁぁぁぁぁぁ!!!???」
カスミの言葉にクロムは目を見張るどころか飛び出す勢いで驚いた。コウヨウの刀を弾き飛ばしたなんて芸当が出来るのは恐らくペインかメイプル、サリーくらいである。カスミもクロムも、レベリングはしているのでコウヨウに一矢報いるくらいはいつか出来ると考えてはいたが、まさかそれが今日実現するとは……そうクロムが驚きながらもついにあのコウヨウが膝をついたのかと聞くと……
「いや、負けたのだがな」
「その状況でどうやって負けるんだよ!?」
「ムサシが……」
「なるほど」
「返事が早いな!?」
「あれは無理だろ」
カスミの言葉にクロムが返して、それに納得する。コウヨウを倒し切っても彼と同等かそれ以上の強さを誇るテイムモンスター2体が待ち受けているのだ。そいつらにやられたのかと聞くと、少し悩みながら違うと答えた。
「ムサシが私を倒したようで倒してなくてだな……」
「どういうことだ??」
「二刀を弾き飛ばした後にわらしに隙をつかれてムサシを装備した一刀流のコウヨウに負けたのだ」
「なるほど……斬ったのはムサシだが、武器として持ったのはコウヨウか……」
後一歩のところだったと答えたカスミ。二刀流のコウヨウを一刀流にまで追い詰めたところは素直に賞賛に値するが、敗北というSSS級のミッション難易度は達成出来なかった。そんなカスミはやっとわかったと1つの確信をクロムに伝えた。
「クロム、戦い続けて確信した。やはりコウヨウはな──だぞ」
「おい……マジかよそれ……」
「間違いない。レリフルの戦いでも薄っすらと可能性は感じていたのだ……コウヨウはその方が強い」
カスミの確信は今までのコウヨウのプレイスタイルを全て否定するような……それでもそれが事実なんだとカスミが本気で思っているのなら、恐らくそれは正しい確信なのだとクロムは恐怖したのだった……
「【二天一流】……私も聞いたり調べたことはあるが、絶対に二刀流である理論は何一つとて書かれていなかったんだよ、クロム」