妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と座敷わらし

「潜水服なんてあるんだな」

「マスターいるー?」

「念のため持っとく」

 

【水泳】スキルが無くてもそこまで問題無かった。第八層ではNPCから潜水服を貰えるらしく、コウヨウも念のため貰っておいた。すぐに釣りスポットに行って釣竿を水の中に沈める。

 

「こうしてのんびり釣りをするのは久しぶりだな」

「そうだねー」

「なぁ、わらし……一つ聞いても良いか?」

「なにー?」

「お前……本当にモンスター……なんだよな?」

「私は元々人間じゃー」

「モンスターじゃないのか??」

「おうともー」

 

 釣りをしながらずっと疑問に思っていたことをわらしに伝える。初めに出会った時は化物になるテイムモンスターとし違和感は無かったのだが、最近とても人間らしく喋ることが多くなったしムサシと同じで人の言葉を話す。

 それに、1つ気がかりだったことはある。かなり前の話ではあるが……

 

「前に吸血鬼倒した時……『娘の糧にするつもりだった』なんて言ってたが、そんなセリフは攻略見ても載ってなかったから……なんか条件でもあんのかなって」

「マスター、マスター」

「なんだ?」

「あのねー……第八層の海の奥……その屋敷で待っているわ……」

「え? わらし??」

「なにー?」

 

 ふと、声のトーンが低くなったわらしとそこから発された言葉に困惑したコウヨウ。わらしは普通に話を続けたが、彼は初めてこの女に恐怖した。

 

 ☆

 

「あれ? コウヨウどこ行ったんだろ?」

 

 サリーはギルドホームで彼を探していた。また釣りでもしているのかなんて考えながら、彼女を置いて釣りに行くなと薄々思っていた。

 サリー、サリーと彼女がいれば喜んで付いてくるコウヨウだが、誰かを助けに行くときや、釣りの時だけはサリーがいても後回し。

 

「なんか、私……釣りに負けてない?」

「そんなわけないだろ〜」

「え? 誰?」

「サリー、やっほー」

「うわっ!? わ……わらし……?」

「わらしだよー」

 

 急に背後から声をかけられて驚いたサリーの前に、コウヨウのテイムモンスターであるわらしがいた。普段の彼女は可愛いのだが、化物になった姿はまだ慣れない。ホラーが苦手なサリーはそれを克服しようとしても無理だったのだ。

 

「大丈夫ー、変身しないからー」

「な、なら安心……なの?」

「サリー、マスターに伝言ー」

「え? コウヨウに?? というか何でコウヨウがいないのに……」

 

 コウヨウはログインしていない事を確認したサリーはコウヨウはどこだと言っても彼女は首を横に振る。結局話を聞く事にしたサリーだが……

 

「私を助けてくれないと貴方が呪われる……勿論現実で……」

「え……え?」

「死にたくないならこの屋敷に来て……そう伝えておいてくれる?」

 

 そう言って、わらしは姿を消した。呆気に取られて時間も止まったサリーの前に、少し経ってからコウヨウが姿を表した。

 

「おう、サリー。学校変わったら課題多くてさ。今ログインした……」

「お願い! 死なないでコウヨウ!!」

「何その次回予告みたいな叫び……ってか本当になんだ??」

 

 あんたが今倒れたら、メイプルやサリーとの約束はどうなるのか……人生はまだ残っている。ここを耐えれば多分勝てるんだから。次回、コウヨウ死す。なんて言葉の全部が出てきてるサリーの台詞にただ事では無いと感じた彼は、彼女から事情を聞いて一言伝えた……

 

「やっぱりアイツはテイムモンスターでは無かったのか……」

「ど、どういうこと!?」

「とりあえず行ってくる。普通に死にたく無いし。俺はサリーと結婚するまで死にたくない」

「結婚だけして死なないで!? 子供! 子供欲しい!!」

「メイプルで充分」

「いらない! コウヨウとの子供が欲しい!!」

「サリーが怖い」

 

 さらっといらない物扱いされたメイプルは今ここにいない。1つ息を吐いて、コウヨウはバグか何かで赤く染まったマップの一部を見ながら、歩きだしたのだった。

 

「私もついていく!!」

「わらしがいるなら恐らくホラーエリアだけど?」

「つ……い……て……い……く……」

「そんなに迷うなら無理するなよ」

 

 結局サリーも一緒にきた。

 

「座敷わらしか……これじゃただの座敷荒らしじゃねーかよ。俺の命のだけどな」

「バカなこと言わないで早く行こう!?」

 

 ☆

 

 場所は水深数十メートルの場所。そこに本来あるはずのない家があった。こんな所に本来出来るはずのない藁の家。コウヨウとサリーはマップの反応からそこに向かった。

 

「待ってたわよ、コウヨウ」

「お前……わらしか??」

「ええ、だけど……その前にこれを見なさい」

 

 辿り着いた先で待っていたのはテイムモンスターの座敷わらし。だが、彼女は成人並みに大人びていた。不思議に思った2人はそのまま彼女の元に歩くのだが。明かりが消えて、代わりに火の玉が家を照らし。シアターの様な画面が家の中で表示された。

 モニターを見ると少女は泣いていた。日本風の藁が合わさった小さい家で幼い時から暴力を受けていた。母親はすでに息絶え、父親は刃物を持って、暴力を受けて泣いてた彼女を刺し殺した。

 場面が変わると、彼女は1つの人形になって海の底に沈んでいた。試行錯誤して魂は自由に飛び回れる様になったが、どうしてもこの世界からは逃れられない。そんなとき、廃墟を見つけた。ここなら住み心地が良さそうだと。

 そうして、少女は本体を別の場所に置いて、魂だけ彷徨っていた。ゾンビやお化け、吸血鬼達と遊んでいたが、まだ足りない。小さい頃から人間と遊びたかった少女は退屈凌ぎにプレイヤーを化物に変身して、噛み砕いてゲームオーバーにして遊んでいた。

 プレイヤー達は少女が遊ぼうと言っても武器を抜いて襲ってきたのもある。段々と嫌気がさして、そのまま食い殺して街に転送させたのだ。

 

「どこかに遊んでくれる人いないかなぁー」

「お? なんか少女がいるぞ、ムサシ念のため構えろ」

 

 そんなとき、1人のプレイヤーが彼女に会った。最初こそは彼女の化物姿に驚いてはいたが、彼女を力任せで止めた挙句、何して遊ぶと聞いてきたのだ。

 

「おままごとして」

「昔妹達とやったなぁ……いいぞ」

 

 そして少女は初めて人間に遊んでもらった。だからこそ、そんな事でも少女は彼についていく事にしたのだった。

 

 ☆

 

「これが私よコウヨウ。逃げずによく来たわね」

「死にたくねぇからな……んで、わらし。お前はアレか、怨念ってやつか?」

「そうよ。元々人間だったこの私が人形に怨念が宿り、貴方に取り憑いただけ」

「マジでゲームシステムじゃないんだな」

「コウヨウ……怖い」

「サリーは下がっててくれ。多分、俺はコイツと喧嘩する」

 

 後ろでサリーがコウヨウに捕まって、震えまくってちょっとしか声も出ない中、コウヨウは先程の邂逅ムービーから答えを出した。

 

「私を殺さないと、貴方は呪い殺されるわ。勿論現実世界で」

「それしかねぇのか?」

「ええ。言ったでしょ、私は仮にも怨念がこの世界に入り込んだもの……元々人を殺す気はなかったのよ」

「まさか、俺が気に入って一緒について行こうとしたら勝手に呪いもついて来たって話じゃねぇだろうな?」

「その通りよ」

「ありがた迷惑にも程があんだろ」

「因みに期限はこのゲームのサ終よ」

「毎日死ぬ可能性あったんだな!?」

 

 そうして、コウヨウはサリーに『天下無双の指輪』を渡してムサシに彼女を任せておいた。彼は静かに刀を抜いて、少し大人びた姿に変わったわらしに声をかける。

 

「せっかくだ、俺とお前。どっちが強いか決めようぜ。俺が負けたら命やる」

「コウヨウバカなの!?」

「やっと喋ったと思ったら罵倒かよ……」

「私が無抵抗で殺されてもいいのだけど……いいわ、マスターとは一度本気でやりたかったし」

 

 そう言ったわらしは化物の姿に変化するが、恐らく今までよりも強いということは分かる。

 

「貴方が勝ったら今までのお礼も兼ねて私の全てをあげるわ……例えば処女とか」

「いらねぇよ!?」

「コウヨウ???」

「浮気はしねぇよ!?」

「幼くして死んだからその快楽だけ知らないのよね」

「知らねぇよ!?」

「マスター、行くぞー」

「どっちが本当の……いや、どっちもか……」

 

 軽快な口調は最後の最後まで彼女らしい。唐突なわらしの言葉に顔を赤らめるコウヨウと幽霊よりも邪悪なオーラで彼を睨むサリー。正直この場にいたくない。

 

「はぁ……仕方ない。命かかってるからやるか……」

「行くわよ」

「速!?」

 

 化物姿のわらしが高速でコウヨウに突っ込んでいくが、彼は二刀流で止める。よくよく考えたら言葉はしっかり話しているわらし。これも何かの影響かと彼は思った。

 

『うぃーす』

「誰だお前!?」

「この姿だと上手く舌が回らないのよ。だからたまにテレパシーでゆっくり落ち着いてのんびりと話してるわ。高速移動は貴方を見て育ったの」

「殺す気ねぇとか言いながら行動が矛盾してんだけど!?」

 

 落ち着いて話しているように聞こえるわらしだが、実際はコウヨウを本気で高速で食いちぎらんとしている。その光景を見てサリーは驚きながらも、彼の命を心配していた。ムサシは奇跡的に襲ってこない幽霊の類を見ながら警戒を強めるが、コウヨウの試合を真剣に見ていた。

 

「主、刀に迷いが見える」

「ムサシわかるの?」

「私は剣豪だから」

「流石最強さんね。私じゃ勝てなさそう」

「うるせぇ、さっさと負けろ。そんで、俺と呪い無しでまた旅するぞ」

「出来ないわ。ここで貴方が私を倒せばこのまま呪いと共に消えるのよ」

 

 その瞬間コウヨウの刀が止まる。コウヨウは先程から話が信じられなかったので、わらしとムサシの3人でこのクエストが終わっても旅が出来ると少しばかり思っていた。だが、それは出来ないとわらしは伝える。コウヨウかわらしのどちらかがこのNWOだけで無く、現実世界から消える。彼女はそう言っているのだ。彼女は化物の姿で微笑みながら彼を見つめる。

 

「切れねぇよ……じゃあ」

「へぇ、薄情なのね。彼女を置いて死ぬなんて」

「お前に言われたくねぇ」

「因みに私に負けたら二度と彼女とは……サリー達とは会えないわ。私は怨念だからこのまま負ければ地獄行き。貴方が死んだら呪いもあるから私と同じ運命を辿る……吸血鬼が私の糧にするって言ったのはそういうことよ」

「あの吸血鬼倒さないと俺死んでたのか!?」

「選べ、人間。死ぬか、生きるか」

 

 一瞬少女の姿に戻り、コウヨウに語りかけるわらし。

 

「1つ聞きたい……あまりにも急だと思わないか?」

「ええ、そうね。でも、私はここにいてはいけない。それは貴方も分かるでしょ?」

「まぁ、そうだが……もう少し期限をおいても……それに、お前はなぜ俺に殺されたいと願った? どうして俺についてきた?」

「愛してるわ。コウヨウ……いえ、紅葉」

「は?」

「コウヨウがウワキスル」

「サリー殿、一旦黙っててやらんか」

「何でムサシこんなに話せるの??」

「とりあえずそこの2人は突っ込まないとして……お前本気か?」

「答えはこれなのよ」

 

 何故彼の名前を、本名を知っているのか。わらしは微笑みを崩さず彼に話す。元々はゲームの世界だけで無く、現実世界の幽霊。彼の本名くらいは分かると彼女は伝えた。それと同時に、彼と共に行動をしているのもあり、彼の優しさや性格に心から惚れてしまったと言った。

 

「優しさに甘えた哀れな女だな。俺はそんな人間ではないというのに」

「少なくとも、今の話を聞いたらそう思うでしょうね……でも、人を好きになる理由なんてそれくらいがちょうど良いんじゃない?」

「確かにな。俺もサリーを愛しているのは幼馴染だったから……の可能性だって否定できんしな」

 

 もしコウヨウとサリーが幼馴染で無ければ、もしかしたら違う女に惚れていたかもしれないし、もしかしたら自分だけ独り身で、メイプルの、妹の恋路を応援するメイカナガチ勢だったかもしれない。だからこそ、好きになる理由なんて些細なものだと言った彼女に同意した。そして……

 

「だが、俺はサリーを総じて愛している。お前の気持ちなんて知るか」

「なら、私を殺せばいい。貴方にはその権利がある。そうしないと……貴方は消えるわよ」

「本当に……お前も……ムサシも……めんどくせぇ奴らだ」

「コウヨウ……どうするの!?」

「仕方ねぇな……お灸でも……」

「主」

「なんだよムサシ、今アドバイスはいらないからサリー守って……」

 

 ──お主は総じて男の人間で、ただの釣り師である。

 

「あぁ……そうか、結局俺は男か……」

「え? コウヨウはレリフルちゃんだからオカマでしょ?」

「ちゃうわ!?」

 

 正直コウヨウにとっては急すぎるし、無理難題にも程がある。それでも、彼はわらしの想いを踏みにじる訳にもいかなかった。彼女は自分に殺されたがっている事は分かっている。自分がどうなるかなんて、自分自身が分かっているのにだ。

 そして今ムサシからその答えは聞かされた。だからコウヨウはそのままわらしのマスターとして……

 

「よし、殺すか。痛むぞ」

「え? ぐっ!!!???」

「じゃあな、わらし。俺からの詫びだ……」

「コウヨウ!?」

「んっ……ふぅ……悪いな、俺は男の人間で死者と一緒にはいれない。好きになるのも生身の女であるサリーが良いんだ」

 

 わらしの胸元を刀で突き刺した。それと同時に、コウヨウはわらしの唇にキスをして、そのまま抱きしめた。痛みに耐えながら驚くわらし。口を離された後、彼から伝えられた言葉……

 

「どうせ死ぬなら持っていけ、サリーには後で謝る」

「フフッ……不思議ね……キスって初めてしたけど……甘く無いわ」

「気持ち悪いならあの世で吐けよ」

「そんな訳ないじゃない……むしろ、優しい気持ちが伝わった……コウヨウ……遊んでくれて……ありがとう……」

「愛してるわ……」

「お前が生きてて幼馴染だったら愛してやったよ」

 

 そう言って、わらしは粒子となって消えた。コウヨウは少し苦い顔をしながら、サリーの元に向かう。

 

「死人に口なしだ……黙っててくれ……ムサシ、ありがとうな。サリーは……すまん」

「私は……コウヨウを殴れば良いのかな?」

「あ、幽霊めっちゃいる」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!?」

 

 こうして、コウヨウの元から1匹、テイムモンスターが消えてしまったのだった。彼がギルドホームに戻る間、流石にサリーも一言言うことすら出来なかった。

 

『マスター、くれてやる』

 

「【名状しがたい何か】及び屋敷わらしの全スキルをコウヨウが獲得しました。これにより屋敷わらしの全ステータスが引き継がれます」

 

 その後、ギルドホームでステータスを確認したコウヨウがサリーに膝枕されながら泣きじゃくっていたのは、また別の話である。

 

『泣くなよばーか』

「なんか……馬鹿にされた気がする……」

「今は泣きなさい。今回は目を瞑っておくから」

「主、泣きたくば泣け。それもまた武士道」

「刀に慰められてるのわけわかんないわよ……」

「コウヨウの口調が狂い出した……」

 

 コウヨウ

 Lv MAX

 HP 450/450

 MP 560/560

 

【STR 10150〈+300〉】

【VIT 150〈+100〉】

【AGI 5150〈+100〉】

【DEX 150〈+100〉】

【INT 150 〈+100〉】

 

 新スキル

【名状しがたい何か】、【無詠唱】、【冥界の施し】

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