妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「本当に悪魔の力を身につけたみたいだな……吐きそう」
暇つぶしにクエストに挑み、水中でモンスターに殴る蹴るの暴行を加えた疑いがある悪魔コウヨウ。血のような色に身体全体が変化して、両手両足が大きくなったり、血まみれになったりしてモンスターを殴り飛ばしていく。たまに食べるとHPが少し回復した。それでも少し吐き気がするしSAN値が削られる。
「そういえば一回殴り飛ばしたといえ、あの吸血鬼もわらしの親みたいなものだしな……」
あの事件の後、色々感情の起伏があったコウヨウだが、スキルを使いながら第八層を攻略して行く中で、わらしの心はこのスキルにあると考える事にした。
「【名状しがたい何か】。わらし、お前の気持ちとスキルは大事にするぜ」
腕を化物に変化させて、そのままモンスターを喰らい尽くすコウヨウは第八層でも特に問題なく攻略出来る事を確信して、ダンジョン探索を試みたのだった。
☆
「なるほど、潜水服の強化でギルドホームの行けない所が行けたのか」
「うん。そこには本じゃなくて石版があって、ダンジョンのヒントとか書いてあったよ。コウヨウは何か得られた?」
「水中で【海皇】を出したら本物のポセイドンが暴れてくれたな。めっちゃ威力あった」
「うん。後で詳しく聞くね!」
「後、【名状しがたい何か】を出した時、たまによく分からない目が5個くらいあるモンスターを食べてる時が……」
「うん。後で詳しく聞くね!」
「後ムサシ……」
「うん。後で詳しく聞くね!」
もはや恒例となったコウヨウ及びメイプルの1人探索強化報告である。サリーが「うん。後で詳しく聞くね!」botになってしまうのはコウヨウへの恐怖と目を離すとすぐに何かやってのける兄妹は監視がいても止められないことが原因だ。話していたサリー含めて他のメンバーも頭を抱え、メイプルとユイマイは目を輝かせている。
「結構魚モンスターとかいたからコウヨウにはうってつけかもしれないな」
「ここの魚ならコンプリートしましたよ」
「「もう!?」」
素潜りと釣りのおかげでまさかの八層すらも魚をコンプリートした彼は図鑑をみんなに見せた。クロムとカスミが声を出して、コウヨウの図鑑を見るが、しっかりとコンプリートの文字が記載されていた。
「流石二刀流釣り師ね……」
「イズさん。今度船作って下さい」
「ボートが作れたから多分出来るわ。今度作ってみるわね」
「出来たら一本釣りするのでみんな乗って下さいね」
「もはや漁師だろ……」
釣り師のユニーク装備とかあるのかワクワクしながらコウヨウは探索を続ける事にしたのだった。
☆
「こ、コウヨウ……デート行かない?」
「ああ。行こうか」
サリーからデートに誘われたコウヨウは喜んで頷く。どこのお店に行こうか迷っているコウヨウはサリーにウキウキで話しかける。
「どこ行こうか? 第八層だから魚料理が名物らしい……でも結構俺が釣った魚食べてるから違うのがいいか?」
「うーん……お店のご飯も美味しいんじゃないかな?」
「サリー? なんか俺と距離遠くないか?」
「え? そ、そうかな?」
サリーはコウヨウから少し距離を取って話す。せっかく2人きりで恋人なのに、くっついて離れないまでは行かなくてももう少し近くても良いのではないかとコウヨウは思った。
「サリー、もう少し近寄っても良いか?」
「う……うん……」
「え? 倦怠期?」
「違うよ!?」
「臭う? でも、ゲームだから……いや、臭うのか?」
「それも違う……」
じゃあ何だとコウヨウはストレートに伝えるがサリーは言葉を濁す。その代わりコウヨウが気づいたのは少し身体を震わせたサリー……この答えは……
「屋敷……わらし」
「ひっ!?」
「なぁ……サリー……お前もしかして……」
「い、言わないで! 本当に謝るから……!」
「俺がわらしのスキル使うから幽霊に取り憑かれたと思って怖くて近づけないのか?」
「はいそうです! すみませんでした!!」
コウヨウは項垂れたのだった。
☆
「コイツが幽霊に取り憑かれるわけないでしょ、あんたバカァ?」
「わらしの件があるからな。というかお前死んでねぇのかよ」
「私は一応NPCよ……ギリギリね」
「コウヨウ……怖い。吸血鬼でも……怖い」
「失礼ね、私はNPC……多分」
「もう何でもありだろこのゲーム」
サリーがあまりにも怖がるのでコウヨウは彼女を連れて真実を聞きに来た。それは第六層のあの廃墟であり、吸血鬼と戦った場所である。そこにいたのはこの前あった吸血鬼。彼女は普通にコウヨウ達と会話していた。
「大体アンタこの男の恋人だろ? たかだか幽霊1匹取り憑いてるくらいで怖がるとか恋人の風上にも置けないな」
「そういうなよ。サリーは昔からそういうのは苦手なんだから」
「だからと言って愛してるって言った恋人を怖がるのはどうなのよ」
「ぐうの音も出ないど正論だな」
「本当にその通りです……」
何故かNPCに怒られる2人……というかサリー。段々とこの吸血鬼だけは怖く無いのでは無いかと感じてきた。一応クロムのテイムモンスターも幽霊みたいな感じだが、何とか耐えている。それに似た感じが彼女もするのだ。
「こ、コウヨウは……取り憑かれてないの??」
「今は何もいないわよ。呪われてもいない。今はね」
「これから何か憑く言い方やめろよ」
「だって仕方ないじゃない。貴方結構な人間よ? 幽霊を誘き寄せる体質的な意味でね」
「ひぃ!?」
「え? そうなの?」
「話せるなんてもってのほか。でも、死にはしないわ。良い方の幽霊だから大方貴方を守ってくれる。わらしだって本来はそうだった」
「勝手にアイツに呪いがついて来たのはそういう事か?」
コウヨウの言葉に吸血鬼は頷く。わらしだって本当は幸福を持ってくる良い幽霊だったのだ。ただ、怨念のせいで、呪いが勝手について来てコウヨウを苦しめる結果になりかけた事もあり、彼の前から消えた。
「おい、女。いつまでガタガタ震えてるのよ」
「わ、私?」
「私から見たらこの男のお前に対しての愛はとてつもない大きさ。勿論アンタにもあるけど、その恐怖が邪魔して愛が薄い」
「そ、それは……」
「幽霊に慣れろとは言わない。でも、何があってもその男の味方には絶対なりなさい。恋人なら。結婚するなら。絶対そうしろ」
「お前……割と優しいんだな」
「お前に頭を殴られたから性格が変わったのよ」
「そんな仕様があってたまるか」
正直、人間なんて大した事ないという考えを壊したのはこのコウヨウという男に殴られてからであるのは事実だった。サリーは彼女の話を聞いて、少し考えながら彼の腕に抱きつく。コウヨウは少し慌てたのだが、彼女はそのまま離さないし話さない。
「コウヨウ……好き……コウヨウ……怖くない……コウヨウ……恋人……コウヨウ……妹……」
「俺は妹じゃねぇよ!?」
「黙りなさい。彼女は自己暗示をかけてるのよ」
「俺が妹の暗示はかけるなよ」
「コウヨウ……スキ……コウヨウ……アイシテル……コウヨウの邪魔をするオンナハ……アハハハハ」
「おい待てヤベェ方向の暗示かかってないか!?」
ヤンデレサリーは流石にゴメンだとコウヨウは彼女を抱えてそのまま屋敷を脱出した。ふと、後ろから、揶揄っただけなのにとセリフが聞こえたのだが、それどころでは無かったという。
「まぁ、頑張りな。若い2人はまだ道も、可能性もあるんだから……ね」
そう言って吸血鬼は粒子となって消えたのだった。
☆
「コウヨウ! 好き! 大好き!!」
「サリー落ち着け、腕締めすぎ、くっつき過ぎ、というかみんな見てる中でやらないで!?」
「お兄ちゃん顔真っ赤」
「というかサリーはどうしたというのだ……」
「あの吸血鬼変な暗示かけやがったなマジで!?」
催眠が何かの類だとコウヨウは考えるが、別に吸血鬼が何かしたわけではない。サリーが彼女の叱咤激励をもらった事でコウヨウと真剣に向き合おうとした結果……大暴れである。
「もう何も怖くないから大丈夫!」
「それ多分死亡フラグ」
「サリーなんか吹っ切れてない? というか何があったの??」
「とりあえず俺は幽霊が寄ってくる体質らしい」
「お兄ちゃん絶縁して」
「泣いていい??」
「「コウヨウさん(師匠)怖いです」」
「お前らまで……」
メイプルの疑問に1から答えるとなると時間がかかるので、現実世界でお泊まり会と称して事の経緯を説明することになったコウヨウだった。