妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と次回イベント

「次回イベントは大規模対人戦? じゃあ寝てるわ」

「ダメに決まってるでしょ」

 

 アップデートの内容がコウヨウの耳に入った。伝えたのはサリーだが、彼は対人戦と聞いてやる気を完全に0にした。

 

「最強になるって言ったのなら出なさいよ」

「最強になるのはモンスター討伐だけでいいです」

「ふざけんなバカコウヨウ」

「馬鹿とはなんだ馬鹿とは……」

 

 最強になる約束を持った彼であってもプレイヤーキルはやっぱり嫌い。そんな彼は正直全くイベントに対してトキメキが無いのは事実だった。

 

「そんなコウヨウにある人からお知らせ」

「お知らせ? なんだ?」

「まぁ、メイプルにも言ってたけど……えっと……『コウヨウ、お前も逃がさないからな』って」

「ペインさんか……面倒だな」

「もっと言うとミィさんもね」

 

 怠いとコウヨウは溜息を吐く。第一層で旅にでも出るかと本気で言うコウヨウだが……

 

「因みに【thunder storm】と【ラピッドファイア】の人達も私達を狙ってるよ」

「ログインしないわ俺」

「無理矢理にでもハード被らせるけど?」

 

 溜息どころか絶望である。彼の様子を見るにどうやら本気で嫌がっているようだ。しばらく落ち込みながら、立ち上がったコウヨウ。何処に行くのかとサリーが聞くが……

 

「とりあえずログアウトする。夜のご飯作るから……じゃあな」

「え? コウヨウ!? ちょっと!?」

 

 そのまま姿を消した彼。立ち止まるサリーがそこにいた。

 

「サリー! クエスト行こう……ってどうしたの?」

「メイプル……次回のイベントだけど……」

「イベント? 対人戦の事? だったら私達9人力合わせればペインさん達だって……」

「コウヨウが本気で参加しないかもしれない」

「へ? え……ええええぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

 またコウヨウ不在の可能性が大かもしれないと伝えたサリーを揺らしながらメイプルは事情を聞くことにしたのだった。

 

 ☆

 

「ねぇ、紅葉お兄ちゃんほんとに出ないの?」

「今回は本気で出たくはねぇな……ってかその口調直せかなで」

「かなで君とっても寂しいなぁ」

「可愛いから俺と一緒に女装させようかな」

「やめて下さい紅葉お兄さん」

 

 現実世界で家の近くにある図書館で待ち合わせをした紅葉とかなではオセロをしながら会話をする。NWOのイベントの話ではあるのだが紅葉はかなでの問いに首を横に振るだけである。

 

「理由とかあるの?」

「最強にはムサシのためにならないといけないのはわかってる……ただなぁ、俺にはプレイヤー殺しは向いてねぇし……やっぱりやりたくねぇ」

 

 あのギルド対抗の対人戦などに関しては怒り狂って斬り倒したのもあり、冷静になってイベント参加となれば、対人戦は最も紅葉が得意であり、嫌いな事である。

 

「ゲームでも現実でも、やっぱり自分が殺して消えていった奴らを見るのは……堪えるもんだ」

「まぁ……全く分からないってわけじゃないけど……」

 

 かなでもゲームで何人もプレイヤーを葬ってはいるが、それは魔法で倒している。だが、紅葉は刀使いと言うのもあり、その手で、近距離で、人を斬る感触を感じているのだ。そう感じるのが強くなったのは……

 

「わらし……あの子を俺は殺してしまった……」

「あの件は仕方ないんじゃ……」

「それでもよ、小さい女の子が俺の刀で死んだんだ。仕方ねぇからと言葉吐いて刺したが……ごめん、かなで泣く」

「兄さん!?」

 

 急にかなでに抱きついて普通に涙をながした紅葉。慌てるかなでをみながら紅葉は改めて伝えた。

 

「ゲームしてる奴らって凄いんだな……サリーもメイプルも……あ、楓と理沙か。まぁ、言い方悪いけど簡単に人を殺すし、それに慣れている……ゲームとはいえな」

「紅葉はさ……やっぱり僕達からしたら大人だよね」

「恋人が構ってくれないからってギルド勝手に抜ける人間が大人かよ」

「真の理由はそれじゃないでしょ」

 

 かなでは答える。紅葉はゲームでも現実でも、優しすぎると。普通の人間なら現実で出来ないことをゲームでやれるのでプレイヤー殺しでも、釣りでも、何でも喜んで、楽しんでやるのだが、紅葉は違う。

 現実世界でやって良いこととダメなことを、ゲームでも守るルール主義。だからこそ、非情にならないし、他の人よりも一歩引いて大人びた発言が出来る。

 

「それが紅葉の強さであって、弱さだね……非情で無ければ天下は取れないよ」

「天下とか……正直どうでもいいんだけどな……あの野郎……」

 

 別に、最初ゲームをやった時は理沙と楓に誘われたからで、最強も二刀流も釣り師も目指す気は全く無かったのだ。気がついたらそうなってしまって、そう呼ばれてしまった。だからこそ紅葉は常に思う。

 

「よくよく考えるとだ。ゲームに熱を持ってねぇ人間が、ゲームの頂点になったところで誰も喜ばねぇよ。俺も、みんなも」

「難しいね……流石の僕もお手上げだよ」

「人の考えや理論や理想なんて全部となれば誰も理解出来ねえよ……はぁ……イベントやりたくねぇ」

 

 本気で考えてるなとかなでは理解した。それじゃあ、今回のイベントはどうするのかと聞くと……

 

「出ない……予定かな。釣りするか、第六層で幽霊達と遊んでくるよ」

「やめて、流石にそろそろ僕でも怖いから」

「たまにわらしと遊んでる夢見るんだ」

「大丈夫? 連れてかれないでね??」

 

 結局紅葉がイベント参加に対して首を縦に振ることはなかった。

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