妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「美味しいな、このスイーツ」
「聞いて下さいコウヨウさん!」
「どうした?」
「私達、メイプルさんとサリーさんにギルドに誘われて、加入する事になりました!!」
「これも師匠が特訓してくれたおかげです!!」
「良かったな。めでたしめでたし」
「なので師匠も入りましょう!!」
「何でさ???」
コウヨウ袋叩き事件の後、ユイとマイは彼を誘って美味しいスイーツのお店に誘った。昔から甘い物が好きだと伝えていたコウヨウに対して、それを覚えていた双子。少しでも師匠である彼に喜んでもらう為に誘った。
店に入って、スイーツを食べると結構美味しい。だが、実際は肉体的に食べていないので、体重も増えないというメリット付きである。
これを続けると現実世界で栄養失調になるが、今日くらいはこうして、可愛い双子姉妹と共に美味しいものを食べるのはコウヨウも悪い事だとは思わなかった。
「今の地の文全く関係なくない?」
「何の話ですか?」
「いや……えっと、何で俺が【楓の木】に?」
【楓の木】というのは彼の妹であるメイプルが作ったギルド。話を聞くと少数精鋭で、最近出来たギルドらしいのだが、そこにユイとマイは加入する事になった。
そこまでは別に喜ばしいだけ。ユイとマイはメイプルやサリーに憧れていて、いつか越えるべき存在であると2人は豪語している。そんな人達のギルドに招待されたのなら、何も文句はないだろう。
そこまではいいのだ。ただぁ!! 何故コウヨウが一緒に入らないといけないのかは謎である。
「メイプルさんが、『ユイ、お兄ちゃん釣れてきて』って言ってたからです」
「つれるって漢字が違くなかった?」
正しくは連れるである。何故か魚になったコウヨウだが、マイも同じように伝える。
「サリーさんも、『マイ、コウヨウ釣れなかったらワカルヨネ??』って言ってました」
「2人して俺を魚としか見てねぇじゃねぇか。しかもサリーに関してはただの脅しだよ」
「因みに断ったらどうなるかも伝えますか?」
「殺されるのかな?」
「えっと……コウヨウさんの……を……して……するってコウヨウさんどうしたんですか!?」
「サリーはマイとユイになんて事を教えようとしてんだ……」
とんでもないR18隠語をマイから伝えられたコウヨウは顔面を真っ赤にした。怒りもあるが恥ずかしさが勝つ。マイはマイで自分が何を言っているのは……まぁ、そこまで理解してないだろうと反応から察した。というかそうであってくれ。じゃないと自分がおかしくなる。
ただでさえ(恐らく)自分の方が歳上(のはず)なのに、そう言った話がユイとマイより耐性が無い事になれば何というか……歳上の威厳というか……なんというか……名状しがたい何かに襲われそうだ。
「お姉ちゃん……ドン引きだよ」
「ええ!? 私なにか酷いこと言った??」
「何でお前が分かってるんだよ!!??」
「ドラマやビデオで聞きました!! 意味はあんまり分からないですけど……多分悪い言葉をですよね??」
「分からなくて良いよ。一生分かるな、理解するな。お前達は俺が守る」
双子を見守れ、愛せ、穢すな連合のトップがここに君臨した瞬間である。サリー、お前だけは許さん。愛してるが、許される話では無い。というか、ユイの見たビデオはもしかしなくてもアルファベット2文字の大人向けではと思ったコウヨウ。すぐに頭振って否定した。
「はぁ……嫌だなぁ……」
「なんでですか?」
「あいつらと俺は実力が違う。メイプルは初心者でノーダメージなんて化物ムーブだし、サリーに関してはプロゲーマーだぞ? 俺はダメージも受けるし、回避は刀で受け止めるだけだ、一緒のギルドで役に立てると思うか?」
「師匠STRどれくらいですか?」
「装備込みで多分700とか?」
「「私達をおいてそれ言います??」」
ユイとマイは流石に気分が悪い。自分の上位以上のステータスを持っているのに、ギルドに入ったら足を引っ張るなら、今加入する自分達はなんなのだ、どうなるのだと問うた。
「い、いや……うん……今のは俺が……悪かった……」
「そもそもコウヨウさんは私たちの師匠なんですよ? 私達がギルドに行って師匠が来ないとかありえないと思います」
「漫画とかでよくあるだろ、師匠は弟子に超えられるものだ。いつかお前達に超えられて、俺は荷物だ」
「向こう一年は大丈夫だと思います」
「ユイは何でそんな言葉を覚えてくるんだ??」
向こう一年とか滅多に出ない格言を言ったユイに対して、全ての話が吹っ飛んだコウヨウである。
☆
「「お兄ちゃん(紅葉)ギルド来てよ」」
「何で行く必要があるんですか?」
その翌日、学校で理沙と楓が上級生の彼の教室に殴り込みに来た。上級生の中でも人気の楓と理沙が来たことに対して、周りはざわつくが、目的が紅葉だと分かると微笑ましくそれを見ていた。
「お兄ちゃんがいれば【楓の木】は強くなるからね!」
「堕落の間違いでは?」
「そんなわけないでしょアホ紅葉」
「うるせぇアホ理沙」
なんだと、なんて言いながら理沙と紅葉が睨み合うが、楓からすればただの痴話喧嘩なので放っておく。
「お兄ちゃんの二刀流で私達を強くしてよ」
「逆だ逆、お前らから俺が学ぶんだろ……ってか何で俺がギルドに入るの確定してんだよ? 理由を教えろアトランティス」
「貴方が選ばれし者だからよ……貴方の手で、【楓の木】を邪魔する邪悪な者を……って何言わせるの!?」
紅葉の言葉にノリノリの理沙だが、楓からすると紅葉も厨二病の素質はあるのではと思う。現に、昔理沙の書いた意味不明なグリモワールをスラスラ解読していたからだ。
『お兄ちゃん、理沙のノートなんて書いてるの?』
『えっと……我に集いし精霊は、生きて海の都に凱旋するための道標として、我と共に飽くなき挑戦に挑め……楓、理沙は一緒にゲームしたいって書いてるわ』
『え? そ、そうなの? それなら……お兄ちゃんも一緒にやろう』
『おう、今理沙家に呼ぶから待ってろ』
因みに電話した紅葉に対して理沙は悲鳴に近い声を上げながら、顔を真っ赤にして本条家にお邪魔して、最後まで顔を真っ赤にして3人でゲームして、紅葉のご飯食べて帰ったのは別の話。
「音楽的に言うと?」
「破滅的なスコアに合わせて、全てを喰らう者になりなさい……ってやめろぉ!!」
「お兄ちゃんお兄ちゃん」
「はい、お兄ちゃんです」
「マイとユイが心配じゃないの?」
「うっ……まぁ……保護欲はあるが……」
楓は自分の兄だからこそ、彼の弱点を知っている。それは……彼が困っている人(ほぼ自分より歳下の女の子)を放っておけないことである。
昔から楓と理沙だけでなく、迷子になった歳下の女の子だとかたまに男の子とかを保護してショッピングセンターの迷子センターに届けたりして理沙達に怒られた紅葉。
まぁ、それに関しては彼が優しすぎるということですひと段落ついたのだが、唯一理沙がやめてほしいのはお祭りの時にお化け屋敷付近で毎年この世ならざる子供に声をかける事である。
『理沙、楓、この子迷子みたいでさ……』
『お兄ちゃん……誰と話してるの??』
『え? ここに女の子いるだろ?』
『いないよ? ねぇ、理沙見える?』
『見えるわけないでしょ!? 嫌ぁぁぁ……紅葉が……変なの連れてきたぁぁ……』
『お前ら何言って……ってあれ? あの子どこ言った??』
【惜しかったなぁ……】
普通にホラーである。だからこそと言うのもアレだが、紅葉の性格上、申し訳ないが幼きユイとマイには餌になってもらう。
「マイが寂しそうに言ってたよ……『コウヨウさん来ないのかなぁ』って」
「うっ……」
「そういえばユイも言ってたなぁ……『師匠来ないんですか……寂しいです……私はこんなに師匠の事好きなのに……』だって……紅葉殺して良い?」
「おい待て!? 今の流れから殺人宣言はわけわからん!?」
「私に告白させといて他の女の子の元に行く紅葉が悪い!!」
「お兄ちゃん! 理沙が一生懸命大好きって告白したのに逃げるの!?」
「楓と理沙のバカ! おい……マジでバカ!!」
今日1番の勢いで紅葉の教室が歓声を上げた。中には紅葉が好きだった女子や、理沙と楓のどちらかが好きだった男子は粒子となって消えたのだが、多くのものは応援側に回ったのだ。
「お兄ちゃん! 覚悟決めなさい!」
「コウヨウ! ギルド来い!」
「ゲームの名を呼ぶな!! 全く……非常に良くないねぇ……はぁ……不幸だ」
黙れ紅葉、お前は幸せだ。そういうわけで、仕方なく、本当に渋々、紅葉はユイとマイの為に、面倒だが、【楓の木】という、ギルドに、入らないと、行けなく、なった、のだった。
「怠い」
「「お兄ちゃん(紅葉)???」」
「どうなっても知らんぞ……本当に……」