妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「よし、メイプルの指示だから頑張って守るか」
「お願いだからコウヨウはその場から動かないで」
「やっぱり提案しといてあれだけどお兄ちゃんは戦った方がいいんじゃない? サリーの指示ガン無視してたし」
「いや、もうある程度敵には噂話を仕掛けておいたから問題ない」
「噂ってあれだよね……DNAプレイヤー……」
「何それ、サリーが前やってたポケットの怪物が出てくるあのゲーム??」
「いや、それっぽいけどそれじゃなくて……」
サリーがコウヨウの言葉を理解したのは、その噂話を他プレイヤーから聞いたのである。
──姿形を変えて、攻撃方法も変えられる、別ゲームのDNAモンスターみたいなプレイヤーがいる
そんな噂を耳にしたのはサリーだけでは無かった。【楓の木】全員がその噂を聞いていたが、それを聞いたコウヨウはこう伝えた。
──あ、それ多分俺ですね
訳がわからんとみんなは言った。だが、コウヨウ曰く、話の内容と自分の行動が一致していたからである。
「えっと、他のプレイヤーから聞いたのをまとめると……ある時は、侍の姿で敵を斬り刻み、ある時は、女性の姿で【多重水弾】を撃ち込まれ、ある時は、赤黒い化け物に変化する……あれ? これお兄ちゃんだよね?」
「俺だと言っただろ」
「やっぱりコウヨウなんだ……」
全部彼である。もっと言うと、そこに黒龍姿と黄金フォルムもあるので、実質5フォルム。まごう事なきDNAモンスターである。ちなみにその噂は相手の陣営全体にも広がっているので、わかる人にはコウヨウだと分かるが、それ以外のプレイヤーは大混乱なのは当たり前だった。
「コウヨウ、分かっているのか? ワンデスで終わるんだからな?」
「わかってますよカスミさん。だからこうして戻ってきたんです、我も死ぬ気はないのでね」
「わ、我?」
「そういえば、たまにコウヨウ君から蒼いオーラが見えるのはどうしてかしら?」
「さあ? ムサシのせいじゃないですか?」
「てへ」
「マジでお前かい」
「お兄ちゃんが昔のサリーみたいになって……サリー大丈夫!?」
「恥ずかしい……」
「アトランティス! そぉれ!!」
「やめて!?」
「ここ! アトランティス!!」
「違う人のネタ出さないで!?」
「思いっきり陸地なんだが……」
コウヨウのせいで厨二病サリーがサリーの中で現れた。コウヨウの言葉とうずくまるサリーを見た人達は、まぁそう言う年頃だからなと苦笑いするが、コウヨウに関しては割とガチの発言である。
「そう言えばメイプル、お前他の人達の部隊にいくんだろ? 行ってこい。俺はここにいるから」
「あ! そうだった……それじゃあね、お兄ちゃん!」
「死ぬなよ」
「大丈夫!」
メイプルはそう言って、みんなの前から消えていったが、コウヨウは少しだけ笑った。サリーくらいしか友達いなかったのに、今ではゲームといえど、ギルドマスターになって、友達も多くてまさかの彼氏が出来た。そんな妹を見ながら笑ったのだ。
「寂しくなった?」
「まぁな」
「でも、嬉しそうだねコウヨウ」
「カナデ、メイプルを頼むな」
「うん。分かってるよ」
「アイツが就職の面接で、学生時代はNWOのギルドマスターをさせて頂きましたって胸張って言わないように見張っててくれ」
「割とありそうで怖い」
そうカナデとコウヨウは笑いながら、彼は夜の奇襲に備えてムサシと少し眠る事にしたのだった。
☆
「ものの数十分で起こされたと言うことは何かあったのか?」
「ごめんなさいお兄ちゃん……【不屈の守護者】使っちゃった……」
「恐らくウィルバードさんだと思う。かなり遠くから狙撃されたらしいから……」
「あの野郎マジで殺し屋になる気か?」
対人戦なので理不尽だとは思わなかったコウヨウだが、やっぱり自分の妹を傷つけられて、少しばかり怒っているのは事実である。ふと、思いついた様に彼はウィルのいた場所をメイプルに聞いて、予想して、そこに歩き出す。
「コウヨウ、どこ行くの?」
「面白い事思いついたから散歩」
「今いなくなるのはちょっと許せないかな。というか私待機って言ってるよね??」
「カナデ、アイツらの策は恐らくメイプルを倒すことの他に、わざと俺の怒りを向こうに持っていくこともあるとしたら?」
「まさかの無視!?」
「なるほど……でも、それが事実なら行かない方が……」
「と言うか行かないでね??」
「安心しろカナデ。行くのは俺だが攻撃するのは俺であって俺ではないかもしれないし俺かもしれないし俺の可能性があったり無かったり」
「ワケガワカラナイヨ」
「あの、コウヨウさん??」
「んじゃ、散歩してくる」
「話聞けよ!?」
そう言って彼はスキルを1つ使い、そのまま駆け出した。
「本当……もう、どうしたのコウヨウは……」
「なんかいつもの兄さんと違うよね」
そんな話をしたカナデとサリー。一方、メイプルを仕留め損ねたウィルバードとリリィは木の上で話をする。
「本当に来るのかな?」
「私は恐らく来ると信じていますが」
メイプルを傷つけたらコウヨウが怒り狂ってこっちに来る。それはウィルとリリィの策であった。にわかには信じられないが、メイプルと同じギルドメンバーであり実の妹であるならば、コウヨウが来てもおかしくない。
「まぁ、リリィの策にかましょう……おっと、どうやら……」
「私たちの勝ちみたいだね」
そこに現れたのは二刀流の侍。即ち2人が確実に仕留めようとするプレイヤーである。ウィルはこの瞬間が1番の好機であると確信して本気のスキルを発動してからすぐに弓を彼に放った。
「【砦落とし】!!」
メイプルでも、ほかのメンバーでも追うことの出来なかった高速の矢が、彼の目の前どころか、首筋という場所に襲いかかる。だが、彼は矢の方向に指先を出して……そのままつかんだ。その瞬間……ウィルバードが撃たれた。
「がっ!? な……何が……」
「ウィル!? くっ……敵は複数……ぐっ!?」
リリィが他の敵を探索する瞬間、同じ様に彼女の腕にも矢が刺さっていた。【ラピッドファイア】の2トップは弓の名手である。そんな彼らが弓矢で撃たれることはまずあり得ない話であった。
「お、黄金装備……?」
最初に気がついたのは体力が2割を切ったウィルバード。一瞬金色の装備が侍装備に変わった姿を見た。彼が追撃が来ない事を確認した後、落ち着いてコウヨウのいた場所を見ると誰もいなかった。消えたのか、と思ったが彼は後ろを向いてそのまま走って行った。弓を撃とうにも手をやられたのもあり撃ちづらく、そのまま断念。
次に気がついたのはリリィ。彼女はコウヨウの行方ではなく、自身に刺さった弓矢。色は金色だと確認した瞬間、すぐに腕から抜けて、ある一点の元に戻っていった。その一点に何かがいると確信したリリィは流石ギルドマスター。痛みに耐えながら魔法をその方向に放つ……
「おせぇよ!!」
だが、そんな声と共にリリィの魔法はコウヨウによってかき消された。少し落ち着いた2人はお互いを心配して、何があったのか整理する。
「コウヨウさんが侍姿で私の弓を掴んでいましたけど……さっき私に刺さった矢は恐らく金色の……?」
「噂で彼が弓を引いている情報があったから恐らくね……ただ、あの一瞬で着替えたのは分かりますが、どうやってあの弓矢を撃ったのか……時間が絶対足りないはず。それにしても……今一瞬彼が2人いた様な……」
「それに関しては恐らく気のせいだと思います……ただ、まさか私達が2人とも撃たれるとは……怒った彼は何をしてくるか分からないからやはり恐ろしい……」
「当たっただけで8割だからね……というか、ウィルが弓矢に当たるなんて……」
「私も驚きました……ですが、彼が弓を撃った時、全く気配が無かったんですよ。コウヨウさんがいつあの金色の弓矢を撃って、私に当てたんでしょう? もっと言うと、あのコウヨウさんにも違和感が……弓矢も確か噂に聞くと即死のはずでは……?」
「どういう仕組みなのだろうか?」
「どうやら……私達や……もしかしたら【楓の木】ですらも知らない情報を彼にまだある、という事なのかもしれないですけど……」
「彼が【楓の木】に隠し事かい?」
「そう言うつもりはありませんが……」
コウヨウが2人いた感じやら、弓を指先で止めたことやら、侍装備にすぐ変わったのに即死の弓矢が刺さったやら訳の分からない事が多すぎて悩みまくったウィルとリリィだが、今現在では対策の措置は無かったという。