妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「イズさんとカナデのバフ凄いですね。全員一撃なんですけど」
「それは普段からじゃないのか?」
「いや、身体が軽いというか……今にも浮けそうです」
「浮かないで、幽霊みたいだから」
「いやまぁ、浮けるんだけどな」
「え? マジで……あぁ、アレかぁ……」
「【浮遊】」
「「コウヨウ(お兄ちゃん)浮かないで敵にバレるから」」
全員集合して、陣形を整えた【楓の木】は全員で攻めることにした。イズとカナデのバフもあり、コウヨウはいつも通りより楽に相手を斬り刻む。
「油断しないでコウヨウ。いつウィルバードさんとかが来るか分からないから」
「その時はメイプルを片手で掴み上げて盾にする」
「私なの!?」
「なるほど、コウヨウがメイプルを持ち上げて盾の様に使うのか」
「なるほどじゃないよねカスミ!?」
「擬似的な大楯使いですね」
「でも、その方が無敵かもしれません!」
「マイとユイまで!?」
「どっちかと言うと片手剣みてぇだ」
「メイプルと刀片手にそのAGIで突っ込んで来られたら相手は絶対死ぬしかねぇだろ」
コウヨウの冗談に乗ったカスミとユイ、マイは笑い声を上げる。クロムは緊張感ない事を心配するが、イズやカナデは【楓の木】らしくていいと微笑んだ。
「コウヨウ、敵」
「俺が行こう」
「目立たないでよ?」
「たーかくおよーぐは【雷加速】」
「それこいのぼりじゃ……というかあの歌詞『は』だっけ?」
「多分『や』だと思うけどもう当本人いないよ」
その瞬間コウヨウは消えた。そして何人か固まったプレイヤーの驚きの声が聞こえて来るのが同時。
「な!? お前どうした!? なんで消え……」
「うわぁぁぁ!? 身体が……消えていく!?」
「なんだこれ……痛っ……なんでこんなところに画鋲が……」
「おい! お前なんで身体消えかかってんだ!?」
「え? 画鋲刺さっただ……け……」
爆速で消えたプレイヤー達は最後まで何が起こったかわからないまま消えていった。コウヨウはすぐに戻って来て、サリーに伝える。
「全滅です」
「ナイスコウヨウ……ってかどうやったの?」
「ムサシをちょっと棘が長い画鋲に変えて首にチクっと刺しただけです」
「それで一撃なの!?」
「「ナニソレイミワカンナイデス」」
「ユイとマイはどこからそんな言葉が出てきたのさ……」
彼曰くイズとカナデのバフに救われたというが、仮にバフ強化されててもありえない戦闘の仕方である。同じ一撃思考のユイやマイでも実戦は絶対できない動きと立ち回りなのでもはや笑うしかない。
☆
一方でコウヨウ側の敵陣営。つまりはベルベットとヒナタがプレイヤー表示を見てドン引きしていた。いや、正直、ポップアップを見ての方が正解だろうか。
「ヒナタ。あの人本当に……何者なんっすか?」
「分からないから困る……とうとう1000人斬っちゃってるし……」
次から次へと消えていく自軍のプレイヤー名と、それに比例して出て来るコウヨウ何人斬り達成のポップアップのせいで戦意喪失する者も多少はいた。というか恐怖しかない。
「こっちも動かないとまずいっすね」
「うん。なるべく……コウヨウさんに会わないようにしないと……」
「それなら私達も一緒で良いかな?」
「コウヨウさんにはしてやられたからね。4人で行こう」
合流したウィルバード、リリィも連れて、ベルベットとヒナタは【楓の木】のいる場所に向かう……本来なら地形を進んで行くにつれて、【集う聖剣】と対戦カードを組む予定になるはずなのだが、ここで絶対に会っては行けない人間とであってしまう。
「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」
「キュップイ」
「ウィ……ウィル……この声は……まさか……」
「なんて、そこまで特訓やらレベリングやらをやってたわけじゃねぇけどな……」
「だが、主だからこそここまで来れたんだぞ」
「やれやれ……どうしていつも彼は私達が会いたくないときに来てしまうのか……」
「身を捨てても名利は捨てず。俺が死ぬのは心底どうでも良い……が、サリー達が本気で勝ちたがってんだ……可愛い恋人と妹のためなら……テメェら4人くらい俺が止めてやるよ」
「主、正しくは俺達ではないだろうか?」
「く、来るっすよ……ヒナタ」
「うん……ラスボス戦……だよね」
「流石に早すぎるラスボスなんだけどね」
「俺のレクイエムにならねぇ事を祈るぜ」
「私が守ってやろう」
「おかしいな、本来は妹のメイプルの方が頼もしいと言うべきなんだが、お前に言われたら比較もできねぇ」
緊張感に包まれる4人に向かって、武将の名言を口ずさみながら近づいて来る侍……そして喋る刀。腰に付けた2つの刀は誰も見間違えることの無い二刀流であり、彼を守る様に刀のモンスターが4人を睨みつける。
「言ったはずだ、サリーを傷つけるやつ、【楓の木】に手を出すやつは俺が斬ると」
「滅びの歌」
「歌えんの?」
「主が歌うのでは?」
「出来ねぇよ」
誰が忘れるだろうか、誰が放っておくだろうか、誰が平気な顔をしていられるだろうか、彼と会った時に待ち受けるのは……逃げか死か、即ち敗北しかないと言うのに。
「そして誰がラスボスだヒナタさん……まぁ、今回ばかりは仕方ねぇか……1000人斬っといて今更はぐらかしも通用しねぇしな」
「【砦落とし】!!」
「二指しんくう何ちゃら!!」
ウィルが先手必勝とばかりに弓スキルで彼の脳天を撃つが、まさかの二本指で止められた。これ程とは思わなかったと、目を開いたウィルバードを無視して、最強はその弓を二本指でへし折り粒子に変える。ダメージは多少あっても2割しか削れなかった。
「良かった、ギリギリまでカナデのバフが効いたみてぇだな。ちゃんと止めたのにゲームだから余計なダメージがあるけど……やるか、ムサシ」
「
「お前刀だろ」
「みんな、散るんだ! コウヨウのテイムモンスターは大剣になる!!」
「コウヨウ二天……ズバババァァシュ!!」
リリィが3人に指示を出す。固まって動くのが基本的な戦闘戦略だが、コウヨウの場合ムサシが30メートルの刀に変身して纏めて吹っ飛ばされる可能性が大きい。リリィの指示は間違ってない……が、それはムサシだけの対策である。
彼女が指示を出した瞬間……ウィルバードが腹部を全力で殴られた……
「ぐっ!? ば……バカな……いつの間に……」
「俺の妹を撃った罰だ……まだ殺しはしねぇが痛みに耐えろ」
確実に重いコウヨウのパンチを受けてうずくまるウィル。それを無視してベルベットの元に走る。ベルベットは初手から本気でないと死ぬと判断して、ガンドレットを装備して立ち向かう。
「行くっすよ! 【雷神再臨】! 【落雷の原野】!」
「【雷加速】」
「【コキュート……間に合わない!?」
ヒナタの魔法が発動する前に既にベルベットの顔面間近までコウヨウは突っ込んできた。そのまま刀を抜いてベルベットの雷を斬り裂きながら、ベルベット本人ですらもかすり傷だが3割削るダメージを与える。
ベルベットも負けじと両腕で防ぎながら、雷を纏い、彼を撃退することに集中する。
「ベルベット! 私も……」
「ムサシ頼む……なんてな、【毒竜】」
「はぁ!? 何でメイプルさんのスキ……!?」
コウヨウはヒナタがデバフを使って来ることは分かっていた。流石に5桁のSTRがあっても、メイプルでさえ同じ桁のVITがペインやウィルに突破されたのもあり、正直一度でも【コキュートス】などのデバフを使わせるわけにはいかない。
「ある程度どんな手使ってもやってやるさ。ムサシ、役割分けるぞ」
「主、五臓六腑を傷つける攻撃には気をつけろ」
「ご、ごぞう……はぁ?」
「身体に傷をつけさせるなと言う事だ」
妹とのじゃれあい用としてのあのスキルをお見舞いしたが、不意打ちも不意打ちだったのでかなり有利になった。
ムサシの忠告があったが、流石にコウヨウでも五臓六腑を知らなかった。推薦と言えども何でも知っているわけでは無い。知ってる事だけ。
4人があまりの強さや未知のスキルに驚きを隠せていない間、ムサシに指示を出して彼はベルベットを斬り刻む予定だったが……
「【矢の雨】」
「うおっと!?」
突如空から降って来た現れた無数の矢をコウヨウは避けるためにベルベットから離れた。そういえば、殺して無かったと少しばかり反省するコウヨウだが、まぁ仕方ないと思った。
「まさか殴られただけでこの威力とは……STR5桁は侮れませんね」
「それにメイプルさんと全く同じスキルを使うなんて……とんでもないお兄さんですよ」
「安心しろ、それしか同じスキルはねぇからよ。【身捧ぐ慈愛】とか【機械神】とかは確かに欲しいけど……【暴虐】はいらねぇな。気持ち悪い」
「ウィル、気をつけて。油断するとまた殴られるよ」
「そうですね」
「なんか……アレだな……決闘を思い出すな」
リリィによって強化されたウィルの矢を避けた後、彼は思い出す。ペイン、ミィ、メイプルの3人が自分と戦った時を……あの日は確実に負けたのだが、今は違う。戦うのが嫌だったあの日ではなく、今回はみんなのために戦って勝たないといけない。
「繋ぐこの刀は……俺のギアだ……【剣豪の帰還】【宮本武蔵】」
「こ……コウヨウさんが……」
「2人だと……??」
そうしてコウヨウは奥の手を1つ、使って対峙するのだった。
「なるほど……私とリリィを刺したのはこういう原理でしたか……」
「その通り。さっきテメェらを刺したのはこういう原理だ……行くぞ悪者」
「「だとしても!!」」
「「「「いや掛け声がおかしい(っす)!?」」」」
ムサシとコウヨウの声が重なり、第二ラウンドへ移行した。
高く泳ぐ『や』なのか、『は』なのか、リリカルなのか。
1日遅れの鯉のぼりです。