妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
【楓の木】と【集う聖剣】の2つのギルドが作戦会議中である。メイプルとペイン、参謀のサリーを先頭にして策を考えている途中である……が、雰囲気は重苦しく、誰かが発言しようにもしきれない状態が続いていた。
その理由は全員が分かりきっている事であり、未だに信じられない者もいた。だからだろうか、未だに彼が戻って来ると信じている人は存在する。
「殺す」
「やはり……信じられん。あいつは……コウヨウは負けん……!」
「「呪います」」
「カスミ、気持ちは分かるけど……」
「殺す」
「割り切らないと行けないわ。現に、コウヨウ君の反応が消えて、プレイヤーリストにも消えていたんでしょう?」
「「呪います」」
「ああ。イズの言う通りだ、なんか運営の不具合か何かでコウヨウの名前が砂嵐になっているが、あいつはやられたと報告で聞いた」
「殺す」
「それでも……!!」
信じられないと駄々をこねるカスミに対して、イズとクロムは事実を伝える。それでもなお、バグだとかなんだとか言うカスミ。メイプルは彼女に対して一声かける。
「「呪います」」
「カスミ。お兄ちゃんはいないの。分かった?」
「殺す」
「だ、だがメイプル……コウヨウは……というか、サリーもメイプルもあいつの幼馴染として、妹としてお前達がコウヨウが戻って来るのを信じなくてどうするんだ!!」
「殺す……殺す……殺す……カスミ、私もメイプルも本気で信じられないよ。殺す……コウヨウが死んだなんて……殺す……今も実感はない……殺す」
「サリーに関しては信じる信じないよりもメチャクチャキレてるじゃないか!?」
「でも、割り切らないと……勝てない。私達は勝たないといけない……絶対殺す……」
「「呪います」」
「ユイとマイもやばいんだが!?」
カスミは彼女達の、メイプルとサリーの表情を見て何も言えなくなった。すぐに2人から顔を背けたが、眼を腫らしながらも静かに鼻水を啜りながらも冷静な言葉を(サリーは大暴言の嵐だが)告げた2人より、子供なのは自分だと思い知らされるから、何も言わなかった。因みにユイマイはマジで目が笑ってない。濁りまくってる。
「殺す」
「メイプル、俺も信じられない。あいつが、コウヨウが負けるなんてことは俺は許さない」
「「呪います」」
「ペインさん……」
「殺す」
「でも、今は本気でお礼を言いたい。あいつのおかげでヒナタが消えた。向こうの最高戦力を一つでもしっかりと減らしたコウヨウに最高の敬意を払いたい」
「「呪います」」
「そうだよサリー、コウヨウが死んじゃったのは……そりゃ私も信じられないけど……あいつが負けるとか本当に信じられないけど……でも、コウヨウはいつもサリー達のために刀を抜いてくれたから……だから……その……」
「殺す……分かってるよ……フレデリカ……殺す……コウヨウと会ったら、笑顔で報告しよう。私たちが勝ったって……相手は絶対許さないけど……」
「「絶対呪ってやります」」
「いや本当に怖いわアンタたち!? さっきから呪うとか殺すしか言ってないじゃん!?」
「「「殺す(呪います)」」」
「目が笑ってないんだが……」
トップギルドのメンバー全員がコウヨウに敬意を払う。ユイマイとサリーがとてつもないオーラと発言をしていたが。それはとても異例のことでそれ程までに彼の功績は讃えるべきだとみんな思ったのだ。流石にペインも怖くなってきているが。
「コウヨウには俺達からも礼を言わねぇとな。なんてったってプレイヤーとNPC合わせて1000人以上も斬ってんだからよ!」
「寧ろそこまでコウヨウにやらせておいて俺達が不甲斐なかったら、顔を合わせるどころか敬礼してる場合じゃない」
「万が一負けちまったら全員アイツに殴られようぜ」
「「「それは絶対に嫌だ!」」」
ドラグとドレッドが少し冗談めかしながらもコウヨウがやってくれた功績をみんなに思い出させる。これで負けたら1週間くらいコウヨウの釣りに付き合ってやっても足りないのだと。特にフレデリカはマジで殴られたくない。
「そうだよメイプル。君の兄さんは凄いんだ。そんな人の犠牲を僕たちが無駄にするなんてことあっちゃいけないよ……(合わせて、メイプル)」
「カナデ……うん。そうだね……とりあえず敵を倒すために作戦を考えよう、サリー」
「メイプル、アレをやろう。そして、【炎帝の国】を落として、勝とう」
「サリーの言う通り【炎帝の国】さえなんとかすれば、俺達に確実に勝機があるな。イズ」
「ええ、そうね私もコウヨウ君の犠牲を無駄にしないで、全員吹き飛ばせる爆弾を作るわ!!」
「カスミ、それでも……良いかな?」
メイプルは少し申し訳なさそうにカスミに聞くが、カスミは俯きながら頷いた。だが、カスミが頷くと同時に、ユイとマイがメイプルにこう伝えた。
「め、メイプルさん……みなさん……ごめんなさい……」
「カスミさんは私たちのために……」
「やっと元に戻ったか。ユイ、マイ、気にするな。私だって黙っていられなかったんだ……悪いなメイプル、サリー、みんな」
どうやらカスミがメイプル達に怒ったのは、ユイとマイの気持ちもあったらしい。ユイもマイはメイプル達より大人ではない。だからコウヨウが死んだかどうかも定かではないまま、事実でも信じられないまま、作戦会議を始めるみんなに怒りを覚えたのだ。
──お姉ちゃん、どうして師匠がいないのにみんな冷静なの!!
──うん、許せないよね……ユイ……でもコウヨウさんは……
──なら私が聞いておこう。大人ではあるが私もかなり怒っているのは事実だしな
──師匠……本当に死んじゃったんですか……?
──呪います、絶対呪ってやります!
そんな時にカスミが双子の想いを汲み取って代わりに怒りをぶつけてあげた。だが、サリーやメイプル達の心を知って、ユイもマイもカスミもやっとみんなのコウヨウに対する想いを分からされた。
「別に、ユイちゃんとマイちゃんが悪い訳じゃないだろ」
「そうだね、正直本音を言うと僕も兄さんがいないのにこんな作戦会議なんてやりたくないよ」
「カナデ!? 本気で言ってるの!? (ちょっと!? カナデの台本に無いけど!?)」
「安心しろメイプル。俺だってコウヨウがいないのに【楓の木】のみんななんて言いたくねぇ」
「クロムさんも!?」
「はっきりと言わせてもらうが、俺はこんな会議をするくらいなら、今すぐに釣りで釣った魚をコウヨウに持っていってやりたい」
「ペインさんまで……」
「でも、今はイベント中だからな。俺はギルドマスターとして、コウヨウのためにも負けるわけには行かない」
「というわけで、メイプル。やろうか、兄さんのために(これくらい言っておけば何とかなるでしょ)」
みんなの想いは1つにまとまる。ギルドのために、コウヨウのために、味方全員のために、残ったメンバーで相手に喧嘩を売る。それだけである。
『みんな気づいてないかもしれないからとりあえず内緒にしておこうかな? この不意打ちで相手も絶望すると思うし』
『カナデと演技の練習してて良かったなぁ……お兄ちゃん早く戻って来て欲しい……』
一方その間にカナデとメイプルの夫婦だけはコウヨウのあるスキルを知っていたのもあり、相手への不意打ちがてら黙っておくことにしたのだった。
☆
「よくやってくれたベルベット、ウィルバード、リリィ」
「代わりにヒナタが……死んでしまいましたけど……」
「大事な人を無くしてしまった……」
コウヨウを倒した後にウィルとベルベットはミィに報告する。2人の表情は暗いままではあるが、ミィはそれを案じながらこう伝える。
「確かにヒナタを無くしたのは惜しい。お前達だけでなく悲しむ奴らは多い」
「だが、逆に言わせてもらうと、その犠牲だけであのコウヨウを……最強の二刀流を倒した。私もコウヨウに負ける気は無いが、お前達が倒していなければ他の仲間が今も斬り捨てられていただろう」
「それは私も同感です。なんていったって1000人も斬られています。これ以上失うと……私達でも厳しいですから」
「ヒナタ……仇は取りました……あとは【楓の木】と【集う聖剣】ですが……」
「あとは……とは正直言えないメンツだな。コウヨウを倒してもアイツらが待ち受けているのなら、大きく形勢が変わったわけでは無い」
「それでも、コウヨウさんを失った向こうは士気が下がるのでは?」
「そうなってくれると嬉しいがな……どうやらそうは行かないみたいだ」
ミィの見ている方を見るとそこには確実に脅威になる軍勢が攻めてきた。
「コウヨウはいつもメイプルや私が傷付いたら怒ってくれたんだ……私があいつらを討たないで……誰が討つんだ!!」
「お兄ちゃん、今からミィさん達を食べるから……今はゆっくり休んでいて!!」
「「全力で呪ってやります!!」」
「迎え撃つしか無さそうですね」
「行くぞ、2人とも!」
「はい!」
【楓の木】と【集う聖剣】対【炎帝の国】の大規模戦争が、今始まろうとしていた。
「全員皆殺しだぁぁぁぁ!!!」
「「絶殺宣言です!!」」
「ちょっとサリー、ユイ、マイ!!??」
戦争前にまさかの最強プレイヤーの1人と最強プレイヤーの弟子達が大暴走し始めるのだが……